ディアナは初めてロイドに出会った時から、ずっと彼の背中を見てきた。  
性格、仕草、癖。持ち前の緻密さ、強かさに憧れ、少しでも彼について知り、近付こうと努めてきた。  
しかし今、気付いた。自分が如何に愚直だったか。  
肝心なことを何もわかっていなかったのは、他でもない自分だったのだと思い知った。  
ディアナが求めたロイドの姿。今、自分を守るために命を落とした姿こそが、彼の全てなのだ。  
 
崩れ落ちるロイドを抱き留め、ディアナはその場に座り込んだ。  
鼓動が伝わって来ない。呼吸もない。名を呼んでも何の反応も示さない。  
これが、『死』なのだ。  
一筋の涙が頬を伝う。彼はいつも、如何に過酷な現実であろうとも目を逸らさずに受け止めるよう諭してきた。  
これから一生、彼の存在しない世界で生き続けなければならない。そんな現実を、受け入れられるはずがない。  
知らぬ間に放たれた、ディアナの命を狙った魔道兵の追撃。  
それは、かつてないほどの強力な詠唱結界により弾かれ、消え去った。  
息のないロイドを抱き締めたまま、ディアナは彼の耳元で囁く。最も神聖で、最も罪深い呪法。  
 
 
過去にディアナはロイドと共に、ケルミスの依頼でドラゴンの棲む洞窟へと赴いた。  
現れたレッドドラゴンを倒した末に手に入れた、禁呪魔法の習得権利。ディアナはそこで、何を得たのか。  
 
親愛なる者を失った人間ならば、誰もが一度は願うこと。  
 
死者の蘇生。ディアナは亡き母、エルネストにもう一度会いたい一心で、蘇生魔法の修得法を探した。  
しかし、壁に刻まれていた蘇生条件。それを読み解き、は肩を落としてロイドの元へと戻った。  
最早この世に存在しない、魂の器となる母の肉体。それが絶対条件だったのだ。  
 
しかし、今は違う。彼の肉体も魂も、今、ここに在る。  
迷っている暇はない。時間が経つにつれて魂が剥離し、術の成功率は下がり行く。  
破壊された細胞を強制的に再生し、ディアナは祈る思いで彼の魂を繋ぎ止め、器である肉体に留まらせた。  
未だ携えている魔の杖が、淡い光を放つ。この杖は、破滅を導く杖などではない。単なる魔力の増幅器だ。  
その増幅の幅があまりに大き過ぎるため、知らずに使うと予期せぬ事態を招く。  
杖の性質を理解していれば、制御は可能なのだ。  
 
前方から近付く人の気配。人影が落ちても構わず詠唱を続けるが、不穏な空気を感じ取り、ディアナは顔を上げた。  
その身なりと威厳に満ちた態度から、他の魔道士よりも明らかに位の高い人物であると窺える。  
ふと、彼の法衣に刻み込まれている国章が目に留まった。  
それは、争いの舞台となった列島で目にした、ロベリアのシンボル。  
 
──まずい。そう思うと同時に、ディアナは自分が起こした事の重大さに気付く。  
ロベリアは規律を重んじる国。今自分が唱えている術は禁呪魔法。  
ディアナが犯している禁は、魂の輪廻を狂わせる、魔道の最大の禁忌。  
 
ロイドが殺されてしまう。咄嗟にそう思ったディアナは直ちに詠唱を中断し、視界の端に捉えたアルセストの  
元へと彼を送り込んだ。  
共に移動はしなかった。彼から気を逸らすためだ。  
目前で佇む司祭らしき老人が、忌々しげに呟く。  
 
「今の術は……」  
 
俯き、押し黙るディアナの顔を持ち上げ、彼は目を細めて視線を注ぐ。  
碧い瞳に宿る強い意志。長く、美しく波打つ金色の髪。全て、エルネストが持っていたものだ。  
 
「似ているな。そうか、エルネストの娘……。生きていたか。まさかラストニアについていたとは」  
「私を殺すの?」  
「そのつもりでいたが、それだけでは貴様の犯した罪は拭い切れん」  
 
狂気さえ感じ取れる瞳を湛え、彼は傍らの魔道兵へと合図を送る。  
両腕を掴まれて身動きを封じられ、ロイドの生死を確認できないまま、ディアナは魔道帝国ロベリアへと連行された。  
 
 
重苦しい雰囲気が漂う城の大聖堂。ディアナは蔑みの眼差しを向ける最高司祭の前で、兵により拘束を受け、  
頭を下げさせられていた。  
 
「蘇生術の行使は大罪に当たる。貴様も一端の魔道士ならば、それくらい知っていよう」  
 
人に生を与えることは、死を与えるよりも罪深いとされる。  
蘇生術の行使。それは、人の命を軽くする行為。  
失われた命が戻り得ると人々に知れると、逆に死が蔓延するとされている。  
従って、蘇生術の使い手は存在自体が許されない。  
 
「血は争えんな。エルネストも蘇生術を心得ていた。それだけではない。  
 あの村は、禁術の使い手の集落そのものだった」  
「でも、誰も使っては……」  
「使う使わないの問題ではない。使い手であること。それだけで罪なのだ」  
 
傍らの兵により首に突き付けられる、細身の剣。共に最高司祭は処刑を宣告する。  
 
「神の御前で貴様の命を断ってくれよう。言い残すことはあるか」  
「…………」  
 
ディアナは禁を犯したのだ。理由はどうあれその罪は重い。  
しかしまだ、この世に未練が残っている。ロイドの生存を確認するまで、死ぬわけにはいかない。  
 
「まだ……、見届けなければならないことが……」  
「あの男のことか。息を吹き返したところでいずれ我々があるべき姿に戻してくれる。心置きなく先に逝くが良い」  
「三日でいい……、三日だけ、自由に……」  
「ならん。逃がしはせん」  
「必ず戻ります。お願い……します……」  
 
涙ながらに訴えるディアナに、変わらず蔑みの眼差しを向けつつ、彼は何か思い立ったように唇を歪めた。  
 
「……ならば、貴様の慈悲を問うてくれよう。名と罪を伏せて大罪人として世界に通達する。  
 貴様の命を惜しむ者が如何程にいるか。程度によっては考えを変えても良かろう」  
 
ディアナを救う意志を持つ者を、ロベリアに集わせる。人数次第で考慮しても良いという条件。  
如何にも聖職者らしい考えだ。しかし、赤の他人のためにわざわざロベリアまで赴く人間がいるだろうか。  
 
そう思った矢先、ディアナはふと思い出す。  
彼は知らないだろう。ディアナを愛する者が、数多く存在する大陸があるということを。  
貿易都市ミランダの西の森に棲む妖精。彼女が、ディアナを愛する人間を大量に生み出してしまったのだ。  
そしてその中心地は、裕福層が多い貴族の街。多少の支出は惜しまずに、ロベリアまで訪れるかもしれない。  
微かに差した光。見えた僅かな希望に縋り、ディアナは提示された条件に合意した。  
 
 
その日のうちに全世界へと発信された通達に、明くる日より徐々に人が集い始めた。  
悪夢に侵された村、リスレに立ち寄っていた旅人。ディアナの解放ではなく、引き渡しを求める者。  
その他、今までロイドの目に余る所業の尻拭いとして重ねてきた善行が功を奏し、数日後にはそれなりの人数に  
達していた。  
半数以上が同一の大陸から足を運んだ者である上、興味本位で訪れた者も多いだろう。  
それでもディアナにとっては願ってもいないことだった。  
 
両手をそれぞれ鎖で繋がれ、魔を封じる魔方陣が描かれた部屋に監禁されていたディアナに告げられた現状。  
司祭も考慮せざるを得ないはず。護衛の魔道士を連れて直々に部屋を訪れた最高司祭に、ディアナは改めて解放を  
求めたが、返された答えは予想に反するものだった。  
 
「私は自由など約束していない。考えを変えると言ったのだ。集った者共は有効に使わせてもらう」  
「な……!?話が違……」  
「易々と逃がすわけがなかろう。貴様は神を冒涜し、神の領域を穢したのだ。  
 償いたければ、まずはそれ以上に貴様自身が穢れるが良い」  
 
彼はディアナから希望を奪い、代わりに傍らの魔道士を残して一人部屋から立ち去った。  
愕然とするディアナに近付く魔道士。彼は乱暴にディアナの衣服を剥ぎ取ると、強引に開脚させた足首を鎖で繋ぐ。  
 
「な、何を……」  
「これが命令だ」  
 
即座に紡がれる、聞き覚えのない言霊。床に描かれた魔方陣が光を放つ。  
魔道士はディアナから離れ、二体の魔獣を召喚した。  
 
「罪人に手を出す趣味はない。下準備はこの二匹に任せる。調教済みだ、噛み付きはしない」  
 
地獄の番犬ヘルハウンド。死を与えるとされる二体の獣はゆっくりとディアナに近付き、敏感な鼻で女の匂いを  
漂わす場所へと辿り着くと、舌を差し出した。  
一体はディアナの身体を踏み倒して胸の先を、もう一体は開かれた内腿の間を。  
長くざらついた舌を出し、丹念に舐めて行く。  
 
「う……あぁっ……!や、め……!」  
「言いたいことはそこの二匹に言え」  
「そ、んな……っ、ぁ、あっ……!」  
 
地獄から呼び出された獣は機械的な、同じ動きを繰り返す。それが逆に快感を募らせ、ディアナを昂ぶらせる。  
甘い痺れに耐えることに神経を使い、ディアナは気付かなかった。  
皮肉を言ったもう一人の魔道士が召喚した、もう二体のヘルハウンド。  
一体は空いた片胸へと舐めつき、もう一体は内腿に顔を埋め、僅かに震え始めている陰核に触れる。  
 
「いやっ……あ、んっ……!」  
 
二人の魔道士による視姦。四体のヘルハウンドが同時に与える愛撫。  
一定のペースで、色々な方向から胸の突起を舐められ、ディアナは耐えられずに恥辱の声を上げた。  
片側に這う舌が離れる瞬間、もう片方の乳首が舐められ始め、リズム良く、交互に舌で弾かれる。  
息を吐く暇が全くない。  
 
そして二匹掛かりで愛撫される下半身。  
涎に濡れた舌が窪みを割って奥へと差し込まれ、そのまま何度も出し入れされている。  
その間も常に陰核を舐められ続け、呼吸もままならない。  
溢れる蜜も残らず掬い取られ、変わらぬ愛撫が続けられ、しかし達するには刺激が弱い。  
いくら腰を捻っても舌は離れず、逃げられないことを痛感させる。  
 
どれほどの間、獣に貪られていただろうか。  
様子をただ眺めていただけの魔道士の合図で、四体のヘルハウンドはディアナから離れ、消え去った。  
息を乱したディアナに再び魔道士が歩み寄り、手にしていた小瓶から抜かれた指が近付けられる。  
彼はこれも命令であると告げ、蜜で潤い切った秘部に丁寧に指を這わせ始めた。  
 
ひんやりとした、冷たい感覚。まるで何かを塗りたくられているような。  
しかし指が通り過ぎると、そこは一転して熱を帯びる。  
通り過ぎた指が小さくそそる陰核へと達すると、ディアナは飛び上がり、高い声を上げた。  
跳ねる身体に迫る拘束の手。すぐさまもう一人の魔道士により腰を押さえられ、何事もなかったかのように陰核に  
指が這う。その指もすぐにディアナの入り口へと移動し、縁を沿うように徐々に内部を侵食した。  
 
どう見ても、前戯を目的としたものではない。触れた箇所の神経が、異常なまでに研ぎ澄まされる。  
これは女を堕とすための、或いは悦ばせるための催淫剤なのだ。  
ディアナはそう理解するも、この状況はどうにもならない。  
指の届く範囲まで薬を塗り込まれ、膣全体が疼く感覚にディアナは目を固く閉じ、震えていた。  
 
小瓶が空になった頃。二人の魔道士は息を上げて苦しむディアナを残し、部屋から消えた。  
身体が熱い。下腹部が疼く。誰か、この苦しみから解放して欲しい。  
真っ先に、一人の人物がディアナの脳裏を過る。しかし、彼はここにはいない。生きているかさえわからない。  
 
再び涙が溢れた。都合の良い解釈で約束を違えられたディアナには、もう彼の生死を確認する術はないのだ。  
司祭の言う通り大人しく罪を受け入れ、死を選ぶ方が賢明なのかもしれない。  
彼が生き返らなかったならば、死後の世界できっと会える。  
生き返っていたならそれで良い。彼ならば、命を狙われたところで殺されることはない。  
 
そう思っているうちに、再び部屋の扉が開いた。  
丈の長いローブで全身を覆い、フードを深く被り顔を隠した何者かが、ディアナに近付く。  
 
「やっと見つけた……」  
「……?」  
 
性別は男。声色からわかる。  
彼は突然目の色を変えて猛る自身を晒け出し、ディアナの秘部に充てがう。  
 
「っ!」  
 
ディアナは思わず顔を顰めた。  
感度を極限まで高められているその場所は、何かが触れるだけで著しい快感を伴う。  
充てられただけで反応してしまうならば、挿入などされたらどうなるか。想像すらしたくない。  
 
「あ……、あなた、誰……?」  
「この姿じゃわからないね。でもこれは脱げない。脱ぐなと言われてるんだ。そんなことより挿れるよ?いい?」  
「いや、待って!まっ……、ぁぁああっっ!!」  
 
勢い良く腰を叩き付けられ、既に限界が近かったディアナは身体を仰け反らせて果て、死を望む思考は一瞬にして  
吹き飛ばされてしまった。  
 
「あれ?もう逝っちゃったの?まだまだ続けるんだから、もう少し我慢しなきゃダメだよ。  
 勃たなくなるまで続ける。それが君を助ける条件なんだ」  
 
眉を顰めるディアナに彼は軽快な口調で現状を説明しつつ、腰を打ち始めた。  
 
「他の男にも抱かせるのは癪だけど、まずは助け出さないと意味ないからね。  
 罪が許された後は好きにしていいって言うから、その時君を奪えばいい。……って、聞いてる?」  
 
彼の言葉は耳には入っていたが、ディアナはそれどころではなかった。  
彼は軽く小突いているつもりなのだろうが、ディアナの身には凄まじい快楽となって襲い来る。  
まるで膣全体が弱点となったかのように、彼が僅かに腰を引き、僅かな摩擦を与えるだけで身を焦がすような  
電流が身体を駆け巡る。  
 
「や、あ、ぁあ……っ、んっ……!」  
「随分感じ易いんだね。前に僕が抱いた時は凄く余裕だったのに」  
 
やはり、彼は妖精が残した副産物。蔑みすら感じ取れる視線を注ぎ、彼は徐々に強く、怒りをぶつけ始める。  
 
「僕の知らないうちに罪人だなんて……」  
「あ、あっ、や……」  
「大人しく一緒にいれば、こんなことにはならなかったのに……」  
「やめ……!あ、ぁああっ!」  
 
急激に増し行く快感。彼はディアナの行動を戒めながら、腰の振りを速めて行く。  
とにかく摩擦が辛い。ただの抽送が凄まじく辛い。  
薬を使われていることなど知らずに、彼は遠慮なく腰を打つ。  
声を殺しても殺し切れない。彼が耳元で囁く愛の言葉も、全く頭に入らない。  
聞いていないと気付かれると尚更激しく突き立てられ、ディアナが酷く喘ぐほど彼は満足げに快楽を与える。  
 
やがて彼は、自分を追い込むように激しく腰を打ち始め、ディアナの叫びと共に達した。  
精が飛び散る感覚。ディアナの腹部に向かい白濁した粘液を放った彼の陰茎は、固さを保ったまま元の位置へと  
埋め込まれ、再び暴れ出す。  
 
「いやぁっ!ぁぁああっ!!」  
「勃たなく、なるまで、って……、言ったよね。次の奴のためにも、中に出すなって言われてる分、好きなだけ  
 させてもらうよ」  
 
薬の効果がいつまで続くのかわからない。しかしその効能故、切れても変わりはないだろう。  
感度の急激な上昇に伴い、既に異常なまでに過敏な身体にされているのだ。  
その後も彼は、罪を拭うという建前の下、泣き叫ぶディアナを全力で犯し続けた。  
 
声も枯れ果ててしまうのではないかと思うほどに鳴かされ尽くした頃。  
ようやく彼の番が終わり、「またね」と軽々しい一言を残して彼は部屋を後にした。  
間髪入れず、部屋に足を踏み入れる二人目。全身をローブで覆い、フードを深く被る姿。  
先程の彼と全く同じ姿をした男は、身体を汚され、息を切らすディアナに歩み寄る。  
 
「申し訳……ございません。これも貴女のためです……」  
 
彼は謝罪の言葉を述べ、ディアナに覆い被さった。  
直後、再び下半身を襲う圧迫感。遠慮がちな抽送にも拘わらず、与えられる確かな快楽。  
彼の動きはどことなくぎこちないが、確実に薬に侵された蜜壁を擦って来る。  
 
貴女には恩がある。助けたい。  
そう繰り返し、自己の行為を正当化しながら、彼は腰を打ち続けた。  
 
「やぁ……、ぅ、あっ……!」  
 
ディアナが苦しげな声を漏らす度、彼は罪悪感に苛まれるかのように動きを止めるが、思い直したようにすぐに  
行為を再開させる。  
いくら腰を振っても、恩人を助けるという義務感から交わっているせいか、彼はなかなか達しない。  
それが逆にディアナを途切れぬ長い快楽に浸し、苦しめる。  
しかし、相手も曲がりなりにも男。昂りに煽られ、彼は急に激しく腰を打ち始めるが、その時間もやはり長かった。  
全身を貫く著しい快楽。最早、耐えられない。  
 
「はぁっ!だ……、めっ!ぁぁああぁっ!!」  
「うっ……!」  
 
共に絶頂を迎え、彼は地へと精を放つ。  
未だ猛る自身を仕舞い込むと、彼は心を傷めた様子でディアナから離れ、出口へと向かった。  
しかし、扉に手を掛けた瞬間。彼はそのまま動きを止めた。  
 
監視でもされているのだろう。扉が開かないのだ。  
ロベリアが提示した救出条件。続行不能になるまで、罪人であるディアナを辱めること。  
その条件を満たさない限り、部屋に入った者は精を出し尽くすまでディアナを犯さなければならない。  
 
彼は再びディアナに自身を捩じ込み、謝罪を繰り返しながら全速力で腰を振った。  
少しでも早く、自分が達するために。  
 
「ああぁっ!いやああぁっ!」  
「耐えて、下さい……、すぐに……、終わります……!」  
 
良心の呵責に耐え、彼も全力でディアナを突き立てる。  
耳に障る水音を立てながら、泣き叫ぶディアナを無心で犯す。  
それでも、やはり後ろめたい気持ちが尾を引き、彼はなかなか達しない。  
込み上げぬ射精感に焦り、彼は尚更激しく腰を打つ。  
 
悪循環の中、結局ディアナは長い時間を掛けて全力で犯され続け、三人目が挿入を始めた頃には声もほとんど  
出なくなっていた。  
 
「や、やめて……、もう……やだ……」  
「……あの街で、私と二人で静かに暮らしていればよかったのに」  
 
三人目の彼もディアナを愛する者。  
自分の元を離れたことを愚行とし、彼は強く腰を打ちながらディアナを責める。  
控え目な抽送が続いたかと思えば、大きく腰を回し出す。  
敏感にされた膣全体を強く擦り回され、ディアナは枯れたはずの声を再び絞り出された。  
 
彼は自分が達しないよう調整しつつ、罰と称して幾度もディアナを突き上げ、果てさせる。  
悲鳴が途絶えることはなく、むしろ酷くなる一方。  
 
「これが終わったら、私の街へ来てくれるだろうか?」  
「いや……っ、いやぁ!」  
 
交渉に応じる余裕など皆無。身に余る快楽に耐えるだけで精一杯で、考えることは愚か、答えることすらできない。  
交わりの拒絶を交渉拒絶と捉え、彼は気を悪くしたように無言で腰を振り続けた。  
欲望を抑えた、淡々とした抽送。悶え、喘ぎ続けるディアナを、異様に長い時間を掛けて苦しめる。  
 
とにかく今の状況を脱したい。その場凌ぎのつもりでディアナが辛うじて頷くと、彼は満足げな笑みを浮かべ、  
嬉しさを訴えるかのように猛烈な勢いで腰を打ち始めた。  
 
「やっ!やだっ!ぁああ!」  
「早く頷いていれば良かったんだ。今、終わらせてあげよう」  
 
膨張する彼の陰茎が深く突き入れられる度、伴う摩擦が熱い痺れを呼ぶ。  
奥までは薬が届いていないとはいえ、生じる快楽は尋常ではない。  
 
やがて彼も自分を追い込むように激しく腰を叩き付け、首を振って悶え続けるディアナの叫びと共に小さく呻き、  
精を吐き出した。  
 
名残惜しげに立ち去る彼に代わり四人目が訪れるかと思いきや、部屋に現れたのはロベリアの魔道士。  
片手にグラスを携え、彼はぐったりとしているディアナに近付く。  
 
「それだけ叫べば喉も渇くだろう。これを飲め」  
 
魔道士はディアナの顎を押さえて唇を開き、グラスの中の透明な液体を流し込む。  
無臭で、何の味もない液体。飲み干すと、彼はにやりと笑い姿を消した。  
火照った身体が更に熱を帯びる。強い疼きを覚え、ディアナは悟った。再び薬を飲まされたのだと。  
 
こんな身体で犯されては、本当にどうにかなってしまう。同時に現れた四人目を目にし、戦慄が走る。  
姿を隠した男はディアナに近付くが、挿入はせずに内腿の間に顔を埋めた。  
一方的な陵辱が避けられないならば、せめて少しでも気持ち良くなって欲しい。  
彼はそれだけを言い残し、蜜と薬で濡れたまだ誰も触れていない陰核を口に含み、吸い上げた。  
 
「やああぁぁっ!」  
 
叫びながら身を捻るディアナの腰を押さえ、彼は丹念に舌を這わせ、しゃぶり尽くす。  
強く鋭い快楽に、ディアナはそれだけで何度も達した。  
舌と唇による長い愛撫が終えられると、待っていたのは遠慮のない挿入と抽送。  
奥まで貫かれた瞬間、媚薬がディアナの全身に甚だしい痺れを与え、次の一突きでディアナはあっさりと  
果ててしまった。  
 
「……そ、そんなに気持ちいいですか?」  
 
彼は驚いた半面嬉しそうな笑みを浮かべ、嬉々として腰を振る。  
突かれる度に襲い来る、悶絶し兼ねないほどの快楽。  
先程までとは比べ物にならない苦しすぎる快感に、声の代わりに涙が零れた。  
震え続けるディアナの身体を更に悦ばせようと、彼も容赦なく最奥まで突き立てる。  
 
限界など、とうに超えている。耐え切る力など残っていない。  
まだ四人。あと何人いるかもわからない。  
五人目も六人目も全く同じ格好で、愛を囁きながら全力を尽くしてディアナを犯した。  
意識を失うと魔方陣が光り、意識を取り戻すまで身体に電流を流す。  
そしてまた、最早何人目かもわからない人間に犯され始める。  
 
どれほど過剰な陵辱に耐えても、次々と同じ姿の人間が現れ、ディアナを犯しに掛かる。  
同じ姿。中の人間など、いくらでも換えられる。終わりなど存在しないのだという暗示。  
 
懸命に腰を振る彼らを非難することはできなかった。彼らは、ディアナを救うためにロベリアに訪れたのだ。  
最高司祭が問うた慈悲。ディアナが慈悲深い人間であるほど、無慈悲な仕打ちに苦しめられることとなる。  
解放する気など端からない。心を完全に破壊し、最後に命を奪うのだろう。  
ロベリアの思惑を理解するほど、ディアナの心から希望が消える。  
文字通り、終わりなき陵辱。自我を完全に失うまで、解放されることはない。  
 
その日最後の浄罪行為が終えられると、再び魔道士が姿を現した。片手に異型の道具を持っている。  
何かの物質を繋ぎ合わせ、即席で作られたような短い棒状の物体。側面に鏤められている疣のような突起が、  
見ていて気持ち悪い。  
魔道士はそれを、男の精液と自身の愛液に塗れたディアナの秘部に押し当てると、強引に最奥部まで捩じ込んだ。  
 
「うっ……!?」  
「休憩時間は三時間だ。その間、これを装着して休むがいい」  
 
四人目の男にしゃぶり尽くされた場所にも、何かが押し当てられている。  
魔道士は意地の悪い笑みを残し、捩じ込まれた異物の根元を押し込むと、中で何か、どろりとした液体が  
噴射された。  
おそらくこれも、媚薬なのだろう。最悪なことに、最奥まで満遍なく浸されている。  
そして、彼が手元で何かを操作した瞬間。突如生じた痛烈な快感が、ディアナの身を貫いた。  
 
「ああああぁぁっっ!!」  
 
全体を揺さぶる強い振動。最奥部で暴れ回る先端。  
肉壁を掻き回す突起。擦り込まれる液体。  
とても、耐えられるものではない。  
止めに体力を回復させ、背を向ける魔道士に向かい、ディアナは悲痛な懇願を繰り返す。  
 
「待っ、て……!これ、取……っ!ぅ……ああっ……」  
 
無情にも魔道士は足を止めず、振り向きすらせずに姿を消した。  
幕を開ける生き地獄。快感を得るほどディアナは挿入された異物を締め付け、突起を自身に食い込ませる。  
食い込んだ突起が更なる快楽を呼び、再び異型の道具を締め上げる。  
 
最悪の悪循環。この状態で三時間、耐え続けなければならない。  
最奥を突かれるような、或いは抉られるような感覚。定期的に噴出され、擦り込まれる液体。  
あまりの快楽に息ができない。いくら手を伸ばそうとしても手首は鎖で繋がれ、異物を取り除くには至らない。  
 
終わらない絶頂。途切れない悲鳴。休息を得るには、意識を手離すしかない。  
しかし、体力を回復されてしまっている今の身体では、当分の間気絶することはないだろう。  
 
死んだ方がましとさえ思えるほどだった。このままでは、本当に精神を破壊されてしまう。  
希望はただ一つ。ロイドが命を取り止めること。彼の救助を待つしか、この苦しみから解放される道はない。  
生死を確認できていない人間に縋るほど、ディアナは追い詰められていた。  
 
どれほどの間、助けを求め続けたかわからない。  
心を喰らう快楽に耐え切れず、ディアナは涙を零して愛する人の名を叫び、意識を絶った。  
 
 
翌日も、道具の代わりに捩じ込まれた肉欲により、数え切れないほどの絶頂を迎えさせられた。  
虚ろな瞳に涙を湛えるディアナを彼らは慰め、宥めながら、愛惜しそうに腰を振り続ける。  
何周目なのだろう。抵抗不可能な女を犯すことに罪悪感を覚える人間は既に去り、ディアナを欲する者のみが、  
浄罪という名の陵辱に及ぶ。  
手酷く犯せば犯すほど、ディアナの罪が許されるという最高司祭により与えられた陵辱の口実。  
故に罪悪感などなく、彼らは他の誰よりもディアナを悦ばせようと、回数を重ねるごとに勇み立つ。  
合間には喉と秘部を潤す媚薬を流し込まれ、夜はディアナの中で暴れ回る異物に意識を奪われる。  
感覚が鈍ることはない。薬の効能か、常に鮮明で痛烈な快感が神経を侵していた。  
 
地獄のような日々は、三日三晩続いた。既に希望などなかった。  
身体中を男の精で汚され、内腿の下にも白く濁った液体が溜まっている。  
 
死んでしまいたい。たとえ救いの手を差し伸べられたとしても、これほどまでに穢されてしまってはロイドに  
顔向けできない。  
絶望に打ち拉がれ、生気のない嬌声を上げながら何度も達せられたディアナに、再び薬の服用の時間が訪れる。  
口内に注がれる、透明な液体。これ以上飲まされては身も心も持たない。  
グラスから顔を逸らして口内の液体を吐き出すと、魔道士は眉をひそめ、懐から取り出した棒状の異物を  
ディアナの中に乱暴に捩じ込んだ。  
 
「いや!待……っ」  
 
慌てて上げられ掛けた制止の声は、再び注がれた液体により妨げられた。  
グラスが空けられると、魔道士は片手でディアナの口を塞ぎ、内腿の間に手を添える。  
途端に薬を噴出しながら奥深くを穿り回す拷問道具。これだけはどうしても我慢できない。  
 
手を振り解こうと首を振るディアナの頭を、魔道士は腕を回して固定し、薬が漏れぬよう力を込めて口を押さえる。  
葛藤の末、結局異常な快楽に意識を持って行かれ、注がれた液体全てを飲み込んでしまった。  
彼はディアナから手を離しても振動を止めてはくれない。  
止まぬ快楽に喘ぎ苦しむディアナの姿を、魔道士はただ黙って傍観している。  
 
「こ、れっ、止め……てっ……!いやっ……ぁああっっ!」  
 
素直に服用に応じなかった罰なのだろう。  
激しく身動ぐディアナを気が済むまで泣き喚かせると、彼はようやく道具を回収し、姿を消した。  
結局薬を飲まされた挙げ句、奥深くまで塗り込まれてしまった。次の陵辱が恐ろしくて仕方がない。  
 
次の人物を部屋に招き入れ、自動で閉じる扉。おそらく遠隔操作されているのだろう。  
その扉が人力では開かないことを確認すると、鎖で繋がれ、憔悴したディアナの姿を彼はただ黙って見下ろす。  
陵辱に怯える身体を隅々まで視姦した後、必死に後退るディアナを押さえ、無言で行われた挿入。  
予め把握されていたかのように最も触れられたくない箇所を真っ先に突かれ、ディアナは思わず煽情の声を発した。  
それだけは許して欲しい。腰を引かない彼に、意思を伝えようと口を開くも、出たのは言葉ではなく悲鳴。  
最も避けたい場所を集中的に突かれ、ディアナは両手で押さえられた腰を必死に捻り、泣き叫びながら制止を  
訴え続けた。  
金属音を響かせながら暴れる手を彼は優しく握ると、動きを止めずにディアナの耳元に口を寄せる。  
 
「少し……我慢しろ」  
 
聞き覚えのある小さな声。ディアナははっとして目を見開いた。  
全く遠慮のない腰使い。徹底して相手を甚振り、嫌がる度に一層激しく自分を刻み付ける犯し方。  
そして、恋い焦がれて仕方がなかった深い翠の瞳。  
 
失われた希望が僅かに蘇る。  
しかし、絶頂を強いる凄まじい快楽が邪魔で、相手が誰なのか認識する余裕はなかった。  
彼はそれきり押し黙り、握る手に力を込め、薬に浸された最奥を執拗に捏ね繰り回す。  
 
「っあっっ!!あああぁっ!!」  
 
ディアナは震え、涙を流しながら何度も果て、彼が再び腰を打ち始めた頃には正気を失ったように酷く  
泣き叫んでいた。  
腰に腕が回される。彼はそのままディアナを抱き竦めて腰を突き出すと、長時間に渡る陵辱体勢に入った。  
確実に深い快楽を煽る場所を捉え、黙々と突く。叫びながらいくら「やめて」と訴えても止めてくれない。  
 
残る理性はあと僅か。手を強く握り返して唇を噛み締め、幾度限界を訴えたかわからない。  
彼は全く耳を貸さず、ただ無言で同じ場所を淡々と突き続ける。  
声を詰まらせながらも必死に喘ぎ、快感を紛らわせていたが、全く終わる気配がない。  
他の男ならば、既に精を放っている。最早声も枯れそうだったが、彼の抽送は決してディアナを黙らせない。  
 
今まで幾度も経験し、苦しめられてきた持久力。  
未だに差し伸べられない救いの手を求め、ディアナは今にも力尽きそうな声で『彼』の名を呼んだ。  
一瞬だけ動きが止まるも、直後、彼は急に速度を上げ、快楽を貪るようにディアナを貫き始めた。  
 
「あっ、あ、っ!いやっ、待っ……!!」  
 
切なげな悲鳴に煽られるかのように、彼は一層強く腰を打つ。  
時折思い出したように激しく中を掻き回しては最奥まで貫き、穿り回しては腰を引いて突き上げる。  
永く、我を失うほどに喘がせられる、激しい抽送。  
 
仰け反る身体を強く抱き締めながら、彼は容赦のない陵辱を続けた。  
時間感覚など最早ない。油断すると発狂し兼ねないほどの、甚だしい快楽。  
永遠に続くのではないかと思えるほどに長い時間を掛け、彼は泣き叫ぶディアナの理性を喰らい続ける。  
やがて込み上げる欲望を解放するため、彼は徐々に息を乱し、荒々しく腰を打ちながら手を伸ばす。  
不意に弄られる結合部。探し当てられた陰核は、自覚できるほどに熱く疼いていた。  
そこへ押し当てられた指が、小刻みに震え出す。瞬間、猛烈な痺れが脳を直撃した。  
 
「いっっ!あぁあああっ!!」  
 
ディアナは痛烈な絶叫と共に果て、彼を強く締め上げる。  
収縮する蜜壁を押し分け、尚も続けられる抽送。  
声も出せずに震えるディアナを執拗に責め立て、彼は更なる快楽を要求する。  
極度の快楽に悲鳴を上げる身体を鞭打つように、彼も全力でディアナを追い詰める。  
薬の盛られた身体を必要以上に犯され続け、研ぎ澄まされた神経に直に快感を送り込まれているようだった。  
 
ディアナの自我を飛ばし兼ねないほどに激しく犯し、無理やり引き出した快楽を貪り尽くすと、彼はようやく  
長い陵辱を終え精を放った。  
二度目はなかった。おそらく一度で済ますために、長い時間を掛けて行為に及んだのだろう。  
 
退去を告げる扉の解錠。その直後、彼は待ち侘びていたかのように行動を開始した。  
懐から現れ、投げられたナイフは扉のセンサーを破壊し、ディアナの手足を拘束する鎖は、忍ばせられていた  
短剣により断ち切られた。  
 
「おい!貴様、何を……」  
 
即座に取り押さえに現れた魔道士を返り討ちにすると、白濁した粘液にまみれ、あまりに熾烈な陵辱に身動き一つ  
できなくなったディアナを抱き上げ、彼は部屋を飛び出した。  
向かい来る魔道兵。彼は顔を隠したまま、攻撃の隙間を縫って兵を撒き、物陰に隠れてディアナに視線を送る。  
しがみ付いて離れないディアナを目に留めると、彼は城を脱出せずにある場所へと向かった。  
 
神が祀られし礼拝堂。敵の目を盗んでその場所まで到達し、彼は開放された入り口から中の様子を窺う。  
中央に見える人影は、最高司祭のものだった。  
国の風習なのだろう。護衛すら置かず、一人神に祈りを捧げている。  
 
「すぐに終わる」  
 
司祭以外に誰もいないことを確認し、彼は一言だけ残してディアナをその場に横たえた。  
片手には抜き身の剣。焦点の合わない視線を向けられつつ、そのまま堂々と司祭の元へと向かう。  
 
放心状態だったディアナは、その後の出来事を鮮明には覚えていなかった。心に残った光景はただ一つ。  
剣を薙いで血を払い、鞘に収める彼の目前で、項垂れて座り込む血塗れの最高司祭の姿。  
彼はロベリアの首領の命を、神の御前で奪ったのだ。  
神の加護を得られずに死すこと。神に仕える身としては最大の屈辱だろう。  
 
後は逃げるのみ。彼は再びディアナを抱き抱えて城の外へと脱出し、追っ手を背に全速力で駆け抜ける。  
彼がロベリアの地理に詳しいかどうかはわからないが、向かう方角に迷いは感じられない。  
耳に届き始める心地良い流水音。途端に視界が開け、崖に挟まれた巨大な滝が現れた。  
彼は恐れることなく閉ざされた道へと向かう。  
背後から迫る追っ手。前方に迫る断崖絶壁。これから行われる無茶な行動が、手に取るようにわかる。  
滝壺に嵌まると脱出は不可能。それを見越し、しっかりと自分にしがみつくディアナを抱き締め、彼は川ではなく  
崖へと身を投じた。  
 
覗き込む魔道兵を遠退かせ、近付く水面。彼の合図と共に大きく息を吸い込むと、大きな水柱を立てて二人は  
川の激流に呑まれた。  
水を吸い、重りとなるローブを脱ぎ捨てた彼に、水圧に引き剥がされないようディアナは腕に力を込めて抱きつく。  
 
追っ手は振り切れるだろうが、この先は一体どこに行き着くのか。  
不安はあったが、恐怖はなかった。ただ彼を信じ、身を委ねていれば良いのだ。  
 
辿り着いた先は、流れが緩やかな湖。水流に体力を奪われ、湖畔に流れ着いても二人は暫く動けずにいた。  
押し当てられた胸から伝わってくる、命の鼓動。  
身体を起こされ、三度目の絶望から救い出してくれた人物の姿を目にし、ディアナは改めて犯した咎を自覚した。  
 
ロイドの生存は罪の証。ディアナはこの時を以って、正真正銘の咎人となった。  
 
「……余計なことを」  
 
相変わらず憎まれ口を叩くロイドに飛び付き、ディアナは謝罪を繰り返しながら声を上げて泣いた。  
勝手な行動を取ったこと。ラストニアを出るために、ロイドの敏捷さを封じたこと。  
敵を欺き、危険を冒してまで救出させてしまったこと。そして、取り返しがつかないほどに穢れてしまったこと。  
 
いくら許しても首を横に振り、多数の男との交わりを気にして止まないディアナの身体を、ロイドは優しく支えて  
水中へと沈めた。  
半裸状態の身体を撫でられ、未だ疼き続ける場所に与えられる圧迫感。  
 
「まっ……、待って、今は……」  
 
薬がまだ効いている。抱かれるなら効果が薄れてからでなければ、彼にまた乱れ切った姿を晒すことになる。  
そんな都合など知る由もなく、彼はゆっくりと腰を打ち始めた。  
隅々まで肢体を撫で、湖の水で穢された身体を清め、内側からディアナを穢す。  
身体を支えていた手が離されると、ディアナは安定感を求めてロイドの首に抱きついた。  
水の抵抗が邪魔で、思うように動けないのだろう。  
彼は空いた手でディアナの腰を引き寄せ密着させると、自身に纏わり付く潤いに満ちた壁を、或いは圧迫を  
待ち侘びる最奥を、ゆっくりと掻き回す。  
 
冷やされる肉体。熱が篭る陰部。  
水の冷たさと彼の煽る快感が堪らなく心地良く、ディアナは思わず艶かしい声を上げた。  
恥ずかしさから声を押し殺すも、ディアナが息を乱すまでロイドは腰を回し続ける。  
 
しかし今更何をされても、多数の男に犯され、回された事実は拭えない。  
気が咎め、ディアナが僅かな抵抗を示すと、ロイドは密着したままディアナの身体を草むらへと上げた。  
落とされる深い口付け。同時に始まった、先程とは打って変わった激しい抽送。  
ディアナを極限まで追い詰めた、忘れようも無い快楽が蘇る。しかし、全く不快ではない。  
 
それでも、多くの男の手がついた身体しか委ねることができない罪悪感から、本音とは真逆の言葉が口を衝く。  
 
「……、だ、だめ!私……」  
 
強引に唇を外して発された拒絶の言葉の意味を彼は正確に把握し、動きを止めはしなかった。  
むしろ、逃すまいとディアナを強く抱き締め、首筋に唇を寄せる。  
他の誰でもない。最もディアナを穢したのは自分であると認めるまで、彼は息を吐く間も与えずにディアナの  
身体を揺すり続ける。  
しかし、認めたところで事実は覆らない。ロベリアがどれほど非道な手段で、過酷な責め苦をディアナに  
与えたとしても、ディアナが魔の道理に反した重罪を犯したことは紛れもない事実。  
村の殲滅を謀った最高司祭はロイドが討ってくれたのだから、残るは神を冒涜した罰を受けるのみ。  
つまり、命を絶つだけなのだ。  
 
「……いい加減にしろ」  
 
その訴えを、ロイドは一蹴した。  
神など存在しない。信仰は自由だが、それを理由に命を絶つなど絶対に許さない。  
穢れることで罪を償うと言うのなら、いくらでも償わせてやると。  
 
追っ手を警戒し、ディアナを連れて木陰に潜み、彼は贖罪を強要した。  
精を出し尽くしては指で、或いは舌で、ディアナの全てを弄び、再び己を強引に挿入しては奥深くを求める。  
敵に気付かれぬよう、声が上がり掛ける度に塞がれる唇。  
優先されるのは、お互いの体力よりもディアナの救済。  
彼はラストニアで提示した条件を再び突き付け、延々と同じ行為を繰り返す。  
 
酷い目に遭う時は決まって、ロイドの意に反した行動を取った時だった。  
犯した罪よりも、彼が与える精神的重圧の方がディアナにとっては遥かに重い。  
もう何も考えずに彼に従い、傍に居続けることだけを考えるべきなのだ。何より自分自身が、それを望んでいる。  
 
縋る思いで頷き、涙の滲んだ瞳を向けるディアナに、ロイドは深い口付けを落として追い込みを掛けた。  
薬の作用、そして彼を求める心が、与えられる快感を極限まで増幅させる。  
ロベリアで受けた屈辱の記憶全てを、完全に塗り替えてしまうほどだった。  
女の悦びと引き換えに全てを奪われ、何かを植え付けられるような感覚。  
それが人間の欲望なのか、ディアナが求めていた愛情なのかはわからない。  
痛みを感じるほどに強く抱き締められ、心に確かな安堵を感じつつ、ディアナはロイドと極致を共にした。  
 
息を乱し、余韻に浸りつつ、弱々しく手を伸ばして彼の背を掴み解放を拒む。  
口付けを求めると、彼は惜しみなく与えてくれた。  
全てを失った末に手に入れた、最も危険であると同時に、最も安全な場所。  
自分の居場所をもう二度と手離すまいと、ディアナは腕に力を込めた。  
 
 
木々により光を遮られた、薄暗い空間。一本の大木の陰で、二人は束の間の休息を得ていた。  
咎人としての烙印を押されたディアナは、この先も永遠に命を狙われることとなるだろう。  
だからこそ、ロイドは誓う。ディアナに貰った命。全てを賭して、ディアナを守り抜くこと。  
裸体を隠すようにロイドに身を寄せながら、ディアナはこの先の平穏を願った。  
 
「私、ずっとこのままでいい。ロベリアにはもう、関りたくない」  
 
ロベリアに限った話ではない。いざこざに巻き込まれるのは、もう沢山だった。  
逃げ隠れする毎日でも構わない。ただ何事も無く、共に過ごすことができるだけで十分なのだ。  
しかし、今のままではディアナの望みは到底叶わないことを、彼は断言する。  
 
「だったら、まだやることがある」  
 
事態を好きなだけ引っ掻き回し、最悪の展開にまで陥れてくれた人物。  
元凶となる存在を抑えなければ、平穏など訪れない。  
ディアナはロイドの口から、信じられない言葉を耳にした。  
 
「……ヴェルニカへ行くぞ」  
 
彼の瞳は確実に、敵を捉えていた。  
 
 

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