翌日、ロイドは再び地下へ下り例の部屋の存在を確認したが、マリシアの言う通りそこには扉など存在しなかった。
ついでに既に活動中のアルベニア兵の様子を暫らくの間視察すると、今日もマリシアの部屋へ向かった。
「この国の将官は駄目だろ……」
「え?」
軍事には一切携わっていないであろうマリシアを相手に、ロイドは真っ先にアルベニア軍を批判する。
「新兵の割合が多すぎる。本当に検問してんのかあれは。」
「私はよくわかりませんが……、早急に戦力を揃えているのでは?」
「寝床の確保のためだけに、身体張ってまで他国に力を貸すか?地下で様子を見ていたが、王女に近付く目的で入軍してる連中が結構いるぞ。」
「そう……でしょうか。」
「これだけ忌み嫌われているこの俺が、追放もされずに未だここに居るのもおかしい。そもそもこうまでして他国に手を出す必要性が見出せない。」
困った様子で応対するマリシアに、ロイドは問答無用で畳み掛けた。
事実、ただの寄せ集めの軍隊に団結力など期待できるはずがない。
「マリシア。出撃の時はいつもどこにいる?」
「部屋で様子を眺めています。父に軍事には関与するなと……」
「せめて姿を見せてやれ。士気が上がるぞ。」
マリシアは暫し悩んでいたが、ロイドの助言に対し礼を言うと素直に承諾した。
「貴方も、戦地へ向かわれるんですか?」
「俺が出ると士気が下がる。」
「そ、そうですか。」
苦笑する彼女を背に、用事があると告げ部屋を出ようとすると、今日も背後から呼び止められた。
恥ずかしそうにもじもじしているマリシアに、ロイドは思い出したように口付けすると今度こそ部屋を後にした。
「ロイド、暇ー……」
一度部屋に戻ると、ディアナがなかなか解かれない監禁命令に不服を唱えていた。
「お城の中、見て来ていい?」
「単独行動は駄目だ。」
「じゃ、ついて来て。」
無理もないが、一歩も引く様子が見られない。
ロイドは渋々ディアナの要求を呑み、その日は日没まで散歩に付き合ってやることにした。
条件は既に揃っていた。
城内において、自分が憎まれるべき存在であるということ。
アルベニア軍が、各々の欲望に忠実に集結しているということ。
そして、マリシアが自分に惚れ込んでいるということ。
焦る必要はない。残るは行動を起こすのみ。
上手くいけば、陰でディアナを捜している人物が姿を現すはずだった。
その目論見を確実なものにするためにも、ロイドはその夜も次の夜も、マリシアの元を訪れ彼女を愛した。
全ては降りかかる火の粉を払うための行動。ディアナを追う者を消すためだった。
そして訪れた出陣の時。広場からは既に号令が聞こえている。
ロイドはディアナに何が起きても決して手を出さないよう、常に周囲を警戒するよう指示を出し、彼女を部屋に残した。
マリシアの姿はまだない。ロイドは構わずに軍の司令官の前に堂々と姿を現すと、警戒した様子で迎えられた。
「何用でしょうか。」
「……アルベニア軍も高が知れているな。」
唐突に行われた挑発に、司令官を務める男は不快な表情を見せる。
「相手も小国とは言え、この軍勢で本当に勝てるとでも?」
「……何が言いたい?」
「これだけいい加減に戦力を掻き集めて、内通者がいるとは考えないのか。」
「ここにいる者全員の経歴は既に報告を受けている。」
「俺の分もか?」
眉をひそめる司令官を余所に、ロイドが言わんとしていることをいち早く察したアルベニア国王が口を挟んだ。
「……ロイド殿。まさか裏切るのではあるまいな。」
「……裏切るも何も」
マリシアが訪れるまで時間稼ぎをするつもりだったが、城内への出入り口付近に彼女の気配を感じ取ると、ロイドは迷わず計画実行の引き金を引いた。
「手を貸すと言った覚えはない。」
手を出さないのなら、今ここにいるはずがない。故に、言い放たれたその言葉は、敵対宣言と同義となる。
瞬時にその場が緊迫感に包まれた。相手はラストニアを勝利に導き続け、強大国家に成長させた策略家。厄介事になる前に討たなければならないはずだ。
「現時点を以て貴様を敵と見なす!陛下、御命令を!」
数名のアルベニア兵が槍を構えその矛先をロイドへと向けると、アルベニア王は止むを得ぬといった面持ちで「裏切り者」の始末を命じた。
即座に拘束に掛かる槍兵を相手に、ロイドは軽く抵抗する素振りを見せるもあっさりと捕まった。
異変に気付き、助けに出ようと身を乗り出すディアナを横目で強く睨み付けその動きを制す。
例え国王が指令を出さずとも、この絶好の機会を利用して自分を討ちに来る人間が必ずいるはずだった。
ロイドはゆっくりと、目の前で自分の命を狙う銃兵を見据える。
直後、数発の高らかな銃声と共に飛び散った鮮血は、ロイドのものではなかった。
空中に散る血しぶきが、美しく舞う碧い髪を赤く染めていた。
「マリシア…様……?」
掠れた声で呼ばれたのは、国を挙げて護るべき自国の王女の名。
呆然と立ち尽くす槍兵を振り払い、ロイドは自分の身代わりとなったマリシアを見下ろした。その表情に悲しみの色はない。
ロイドはその場に屈み込み、苦痛に顔を歪めながらも身を案じるマリシアを抱き起こした。
「ロイド…様……」
「…………」
「この国の…ために……、死なれては……」
マリシアは息も絶え絶えに、自国軍の非を、そして何の力もない自分が恋い慕ってしまったことを詫びた。
肺を撃たれている。どう見ても致命傷だった。
「……愛している」
何の意味も持たない、せめてもの弔いの言葉を送ると、マリシアは嬉しそうに微笑み静かに目蓋を閉じた。
その途端、軍は崩壊を始める。所詮、ロイドに物を言う度胸など持ち合わせていない人間の集まり。
やり場のない負の感情は引き金を引いた数名の銃兵に矛先を向けられ、その混乱に乗じて乱闘を始める輩も出る始末。
王女を目的として入った新兵は国に従う理由を失い、国王に子種がないことを知っている国の関係者は戦意を喪失する。
マリシアの死は、事実上のアルベニアの滅亡を意味するからだ。
狙いはアルベニア軍の無力化。
何者かが軍を使ってディアナの捜索を企んでいるのなら、この惨状を目の当たりにして黙っているはずがない。
兵の離散。失望の声。悲痛な王の嘆き。そして、目の前で今も尚繰り広げられる惨劇。
ロイドはそれを他人事のように眺めながら、静かにその人物を待った。
全ては指名手配を避けるため、自らの手を汚すことなく遂行された計画。
思惑通りだった。……ここまでは。
「……随分回りくどいやり方をしたものだな。」
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ロイド、おまえだな。他人の根城を荒らしやがって。」
ゆっくりと振り向き上を見上げると、1人の魔道士がマントをはためかせ佇んでいた。
「……ジーク」
魔道士ジーク・シルヴィリア。
シルヴィリアという大魔道士一族の家名は、ラストニアの国家勢力並に有名だ。
そして過去にロイドが直々に応戦し、唯一決着を着けられなかった相手でもある。
まずい、と思うと同時に、最悪の展開が脳裏を掠めた。
「解せんな。何故わざわざ俺を誘き出した。」
「…………」
ロイドは黙っていた。
余計なことを言うと、ディアナの存在に感付かれる恐れがあるからだ。
このような小国の揉め事にわざわざ首を突っ込み、黒幕を誘き出した理由。
ジークは何かに気付いたように辺りを見回すと、窓から僅かに顔を出しているディアナの姿を目に留めた。
直後、彼の姿が一瞬にして視界から消えると、ロイドはその意味を瞬時に理解しディアナに向かって叫んだ。
「ディアナ!来い!」
ロイドが要求したのはジークが使用したものと同じ、空間移転魔法による移動。
ディアナは直ぐに詠唱を始めるが、それは背後から掛けられた思いも寄らぬ問い掛けにより中断された。
「エルネストの娘か?」
「……!?」
久しく耳にした母の名に、ディアナは思わずその声の元へ振り返る。
ジークは向けられた表情からその答えを察し、即座に催眠の呪を唱えると、いとも簡単に彼女を捕らえた。
倒れかける彼女をマントで包み込み、勝ち誇った表情でロイドを窓から見下ろすと、たちまちその姿を消してしまった。
「……っ!!」
魔道士が現れることは読んでいた。
先日見つけた封鎖された扉は、恐らく結界か何かの効果が切れたためにたまたま現れた、別の空間とを繋ぐ道。
もしくは、あの空間自体が魔道の力で作られたものであると踏んだからだ。
実力は左程気にしてはいなかった。
仮にディアナと対峙したとしても、今の彼女の力ならば勝てると思っていたからだ。
にも関わらず、連れ去られてしまった。
ロイドの計画の失敗要因。それは、予想を遥かに超えた大物が掛かってしまったということ。
助けないわけにはいかない。
ロイドは強く拳を握り締め、急いで城を出た。
──目を覚ますと、ディアナは見知らぬ場所に横たえられていた。
朦朧とした意識の中辺りを見回すと、そこは書斎のような印象を受けた。
「目が覚めたか」
突然掛けられた自分を捕らえた人物の声に、ディアナの意識ははっきりと覚めた。
起き上がると、自分に近付く魔道士の風貌をした男が視界に入る。
「誰……?」
「シルヴィリアって家名、聞いたことくらいあるだろう。」
その人物は大して興味も無さそうにそのまま名を名乗ると、1枚の写真をディアナに向かって弾く。
「ディアナと呼ばれていたな。これはおまえに返す。」
ひらひらと舞い落ちる写真に映し出されていたのは、幼い自分を抱く母の姿。
ロイドにディアナが狙われていると確信させた写真だった。
「母様を知っているの?」
「…………」
一瞬だけばつが悪そうに目を逸らされたが、すぐに何事もなかったかのようにその先を告げられる。
「エルネストを殺したのは俺だからな。」
突然の告白に、ディアナはその意味を理解することができなかった。
「どういうこと……?」
「……あの惨状の中、何故1人だけ生き残ったのか不思議に思ったことはないか?」
言葉の意味を理解できずにいるディアナに構わず、彼は続けた。
「俺の力ではエルネストには勝てなかった。だからおまえの命を使わせてもらった。」
「どうして……?母様が何をしたの?」
「善悪は関係ない。戦争なんてそんなものだ。俺は雇われの身だった。ただそれだけだ。」
淡々と真実を伝える目の前の母の敵よりも、自分を守るために母が死んだのだという事実にディアナは動揺した。
「娘の生存が約束だからな。おまえは俺が後々保護するつもりだった。そこを奴に先を超されたんだ。」
「…………」
「その写真はエルネストが持っていたものだ。姿から生存がばれないよう俺が回収した。」
敵ではない、と主張しているようにも聞こえた。
「……私をどうしたいの」
ディアナは俯いたまま小さな声で問い掛けるが、彼はすぐには答えなかった。
じっと見られているような気がした。
「……師を持つなら魔道士の師を持て。あいつと居てもおまえは伸びない。」
自分の元で強くなれ、ということなのだろう。
「そんなこと……!」
「飽くまでロイドの肩を持つのか?あいつの人間性はおまえもよく知っているだろう。」
ジークの言い分を否定することはできない。
決して彼が善人でないことはわかっている。しかしディアナがロイドを慕うのは、最早理屈ではなかった。
「私を救ったのはあなたじゃない」
強固な意志を感じ取るも、それでもジークはそれを崩しに掛かる。
「ロイドがおまえを仲間にしたのは、エルネストの血を引く魔道士を敵に回したくないからだ。あいつはそういう奴だ。」
「わかってる」
「城の人間が何故奴をあそこまで嫌うかわかるか。前線に立つ者ほどあいつのやり口を知っているからだ。」
「…………」
「アルベニアの騒動もどうせ奴の仕組んだことだろう。あのえげつない手口を目の前で見て何とも思わなかったのか?」
ディアナはジークの言葉を振り払うように首を振った。
「あなたは母様を手に掛けた……」
「任務のためだ。この程度、ロイドの足元にも及ばない。」
「それでもあなたが殺した!」
ロイドの所業を一切聞き入れず、とにかく自分を目の敵にするディアナに、ジークは明らかに苛立った様子を見せた。
「奴に残りの人生を捧げる気か。代々受け継がれてきた魔道士の血を絶やすつもりか?」
「村の殲滅に手を貸しておいて何を……!もう帰して!」
とにかくロイドの元に戻りたい一心で、ディアナはその場に立ち上がり攻撃魔法の詠唱を始めた。
その様子を黙って見ているジークに構わず続けるが、全く魔力が漲っていないことに気付きそれは中断される。
「…………?」
「自分の胸を見てみろ。」
言われるがままに自分の胸元を覗くと、そこにははっきりと、魔封じの印が刻まれていた。
ロイドから常に肌身離さず持つよう言われていた魔封じ対策の防具は既に外されている。
ディアナはここに来て初めて身の危険を感じた。
「魔道士を捕らえるんだ。基本的なことだろう。」
ジークはにやりと笑うと、ゆっくりとディアナに迫る。
「単刀直入に言う。俺の女になれ。悪いようにはしない。」
「い、いや……」
後退りするも、背後は壁。逃走の手立てを考える間もなく、ディアナは壁に身体を押し付けられた。
「断るのなら手荒な真似をすることになる。」
ディアナは気圧されながらも首を振り、拒絶の意を示す。
その様子を見、ジークはディアナの両手を掴むと、聞き取れないほど小さな声で何かを呟いた。
「あうっ!!」
瞬間、掴まれた手を中心に猛烈な痺れがディアナを襲う。身体に力が入らず、その場に座り込んでしまった。
その身に受けたのは、神経への干渉魔法。麻痺状態に陥っていた。
ジークは指先すら動かすことのできない状態のディアナを押し倒し、その身体に手を伸ばした。
「やっ……やめて!」
「止めて欲しいなら要求を呑め。」
既に下腹部より不快な感覚を覚えていた。このままでは手込めにされるのは必至だった。
「母様を殺した人になびくわけが……!」
「……ならば力ずくで手に入れる。」
ジークは言いつつディアナの下着を剥ぎ取ると、自分のものをそこに突きつける。
「もう一度言う。俺の女になれ。」
明らかな脅迫行為を受けるも、ディアナは決して首を縦には振らなかった。
「や、やめて、おねが……ああぁっ!!」
言葉を発している最中に、不意打ちのように身を貫かれる。
すぐに、何度も腰を強く叩き付けられた。
「あっ!あぁっ!いやぁ!!」
「……。痛がらないんだな。」
ジークの目の色が変わる。そのまま強く腰を引き寄せられ、色々な角度から執拗に何度も突き回された。
その時々の条件に対する反応を見られているようだった。
「や、あぁっ!ん……!」
ロイドに散々蹂躙し尽くされたその場所がばれないように、出来るだけ声を殺す。
ジークはそれに気付くとディアナの表情をじっくりと観察し始める。
的確にディアナの最も嫌がる場所を探り当てると、確認するように何度も強く突き上げた。
「ああっ!あんっ!や、やめ……!」
ディアナは目を固く閉じ、直に訪れるであろう更に過激な凌辱を覚悟するも、彼の取った行動は予想とは正反対のものだった。
正確に狙いを定め、それなりの速度でそこを突く。それは決して激しいものではなかった。
「んっ……あ、ぁあっ!」
ジークは何も言わずに淡々とディアナを突き続ける。
ロイドに無理やり味わわされた、気が狂いそうになるような快楽ではない。
耐えられそうで耐えられない、その身に溜め込まれ、決して絶頂には届かない快楽。
神経を磨耗する凌辱だった。
「は……あぁっ……!お…お願いっ……、やめっ……!」
「何度も言わせるな。受け入れるなら止めてやる。」
「……っ!!」
ディアナがどれほど懇願しようとも、ジークは無言で犯し続ける。
「や、あぁぁ……っ!や、やだっ……」
「…………」
「っ……そ、それ、辛いの……!」
「……そうか」
「いや……あ、ああぁっ!!」
何を言っても全く取り合って貰えない。
身体的快感と精神的不快感に苛まれ続け、ディアナは始終辛そうな表情を見せたが、決してロイドを裏切るようなことはしなかった。
長時間に渡り喘ぎ続けるディアナに疲労の色が見え始めた頃、ジークは唐突に口を開いた。
「……ディアナ。耐え続ければいずれ解放されるなどと思うな。」
言うとすぐに回復魔法を唱え、自分共々その身体を癒す。
回復したのは体力。磨り減らされた精神力が癒されることはない。
ディアナは下腹部の圧迫感が増す感覚を覚え、顔色を変えた。
「いや……!もういや……!」
「承諾するか?」
ジークは頑なに首を振るディアナをその瞳に映すと、再び無言を決め込み僅かにその速度を上げる。
「あっ!ぁ、ああっ!や……」
身体が癒されたことにより、絶頂手前でくすぶり続ける快楽がより鮮明になる。
それはどれほど耐え続けても決して尽きることはなく、ディアナの精神を限界まで追い込んでいった。
「っ……!!も、いや……!助、け……、ロイド……」
ロイドの名を口にした瞬間、中を勢い良く穿られ、ディアナは思わず絶叫する。
「あっ……あああぁぁっ!!」
「こういう状況で他の男の名を呼ぶものじゃない。」
ディアナはここで初めて絶頂を迎えるが、それは一度では済まなかった。
「いやあぁっ!やめてぇっ!!」
「何か言うことはないのか?」
彼は未だに動きを止めない。ディアナは泣きながら謝罪の言葉を口にするが、それでもその動きは止まらなかった。
「他に言うことがあるだろう。」
「ああぁっ!お、お願い!いやああぁっ!!」
「…………」
そのまま一切折れずにいると、有無を言わさず暫らくの間泣き喚かされ、再び心身の衰弱を目的とした凌辱に一転される。無論、回復も忘れない。
快楽の蓄積の強要が再開された。いっそのこと気を失いたかったが、それは決して許されなかった。
終わりなき凌辱が、延々と繰り返された。
ディアナに束の間の休息が与えられたのは、それから半日後。日が変わった頃だった。
「……上手く手懐けられたものだな。少し休ませてやる。よく考えることだ。」
「…………」
最早返事をする気力もない。
ジークはぐったりとして動かないディアナを見遣ると、部屋から姿を消した。
身体の痺れはとうに消えていたが、逃げ出す気力など残されてはいない。
疲弊し切った身体が、休息を欲していた。ディアナは目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。
数時間後、たいして疲れも取れないうちに名を呼ばれ目を覚ます。
「ディアナ。起きろ。」
目を開けても、あまりの疲労感に身体が動かない。
そうしているうちに未だ乾いていないそこへいきなり挿入され、奥深くを突かれ始めた。
唐突に与えられ始めた快楽に悶えながらも、意識がはっきりせず、目の前の人物を認識できない。
「んっ……!あっ……ロイ、ド……?」
「……おまえは」
強く腰を掴まれる。
「一度言うだけではわからないのか?」
突如強烈な快楽が身を貫き、ディアナはようやく自分の状況を理解した。
「いっ……あっ!ああぁぁっ!!」
乱暴に突き上げられ、捏ねられ、掻き回される。
ディアナは何とか謝罪するが、今度はなかなか許されなかった。
「いやあぁっ……!ごめ、なさいっ……ああぁっ!!」
ジークは謝罪など一切聞き入れず、しばらくの間一方的に激しく攻め立てる。
気絶寸前までディアナを追い込むと回復魔法を唱え、その動きを止めた。
「で、気は変わったか?」
「…………」
ディアナは激しく息を切らし暫らく何の反応も示さなかったが、残された力を振り絞るように弱々しく首を振った。
「……強情だな。母親にそっくりだ。」
言うと、彼は再び責め苦を与え始める。
「ついでに言っておく。助けは期待しない方がいい。奴の力ではここへは来れない。」
「っ……!」
ことごとく希望を奪われ、屈服を強要され、ディアナの口から漏れる苦しげな声も酷く弱々しいものとなっていた。
その日は回復魔法に物を言わせ、朝から晩まで犯され続けた。休息は与えられたが、それは再び襲い来る凌辱に対する恐怖心を煽るだけのものだった。
深夜になり、ジークはディアナの著しい衰弱を確認すると、睡眠の確保も兼ね一旦その場を離れた。
朝の一件以来一度も達せられず、行き場のないもどかしい熱に苦しまされていた。要求を断るとどうなるか、存分に思い知らされた。次を耐え抜く自信はもうなかった。
「……ロイド」
ディアナは彼の存在だけを希望に、深い眠りに落ちる。
その頬には涙が伝っていた。