目が覚めると、既に高くまで日が昇り眩しい光を放っていた。  
ディアナはまだ腕の中にいる。顔が見えず、寝ているのかどうかよくわからない。  
起き上がろうとそっとディアナの腕に手を掛けると、途端に力を篭められた。  
 
「……起きてたのか」  
「うん」  
 
ディアナはそれきり何も言わずに現状の体勢を維持し続ける。  
あまり強く出ることもできず、しばらくの間じっとしていると不意に小さな声が聞こえた。  
 
「ねえ、私のこと、嫌いなの?」  
 
ディアナは顔を上げず、黙ってロイドの返事を待っている。  
ふと、当たり前のようにクレアに言った言葉を思い出す。  
加えて昨日の横暴な行為もあり、身に堪えたのだろう。  
 
「嫌われているならこうして生きてない。」  
 
突然ディアナが顔を上げる。驚いた様子で目を見開いていた。  
 
「本当?」  
 
もう、必要以上に突き放すのは止そうと思っていた。  
小さく頷いて見せると、ディアナは嬉しそうににっこりと微笑んだ。  
 
「悪かった。もういたぶるような真似はしない。」  
 
ロイドが素直に昨日の蛮行を詫びると、彼女の表情が一変する。  
 
「いたぶってたの?わかってたの?」  
「まぁ……」  
 
ディアナは唖然とした表情を浮かべ、勢い良く起き上がりロイドに批難の声を浴びせ掛けた。  
 
「我慢してたのに……!酷い!最低!獣(けだもの)!」  
 
今までの柔順な態度とは打って変わって、遠慮のない猛烈な抗議と罵声が繰り返される。  
見たこともないその姿に、ロイドは思わずたじろいだ。  
 
「ディアナ……?おまえ、どうした?」  
「言うこと聞いてるだけじゃ駄目だと思ったの。これからは言いたいこと言うから、そのつもりでいてね。」  
 
ディアナは得意気にロイドを見下ろしベッドから抜け出ると、浴室へ向かった。  
その姿を目で追いながら、彼女の心にわだかまりが残っていないことを確信する。  
安堵とも何ともつかぬ溜息が出た。  
 
 
その日はジークが何を目的としてディアナを攫ったのか洗い浚い吐かせ、今後の動向を考えなければ  
ならなかった。  
一時の油断が命取りになる相手。唯一の救いはディアナの抹殺が目的でないこと。  
しかし、ディアナは手を打つことを拒んだ。  
親の仇を討つために、そしてその身に受けた屈辱を晴らすために、自分の手で討つのだという強い意志を  
持っていた。  
 
強敵を目標とするのはディアナの成長の上でもプラスになる。  
内心、いい加減白黒はっきりさせたいとは思っていたが、彼女の意を汲み要求を呑んだ。  
 
 
数日後、ディアナの装備を整え彼女の強化計画を練っていると、突然懐に振動を感じた。  
振動していたのはクレアから渡された通信機。  
通信状態にして黙っていると、変声機で声色を変えられた男の声が聞こえて来た。  
 
『よう』  
「…………」  
『何とか言えこの野郎。』  
 
クレアの所属する情報屋集団の長とは、以前の無謀な依頼で話したことがある。  
馴れ馴れしさ、口の悪さから、ロイドは間違いなくケルミス本人であることを確認し、口を開いた。  
 
「何の用だ。」  
『頼みがある。ちょっと使われろ。礼はする。』  
「おまえ、そのために持たせたのか?」  
『当たり前じゃねえか。』  
 
話によると、最近ラストニアの西の海で小さな孤島が発見され、調査依頼を頼まれているとのこと。  
しかし向かった調査メンバーが血塗れで戻り、治療の甲斐も空しく死亡したというのだ。  
付き添いの手練の人間も漏れなく殉職し、その辺の連中に頼むわけにはいかないらしい。  
 
『失敗したら俺達の沽券に関わる。おまえみたいな人外な力を持つ人間の力が必要だ。』  
「誰が人外だ。」  
『リスクが高い分報酬も弾んでやるよ。どうせ金は要らないだろうから、おまえの大好きな剣の情報を  
くれてやる。』  
「……大好き?」  
 
実は、ロイドは類い稀な名剣収集家だったりする。  
愛好家ならば多く存在するが、名剣自体はそれほど存在しないため収集家は数少ない。  
しかしその嗜好を知っている人間は数える程度しかいないはずだった。  
 
『使いもしない剣を溜め込んでんだろ?剣士の風上にも置けない奴め。』  
「何故おまえがそれを知っている……」  
『この俺の情報網をなめんじゃねえ。で、どうだ。引き受けるか?』  
 
不本意ながら、報酬の情報に興味があるのも事実。ディアナの経験蓄積にも役立つかもしれない。  
興味津々に様子を窺っているディアナに視線を送り、ロイドはその依頼を引き受けた。  
 
『恩に着るぜ。せめてもの配慮だ、サポート役を一人を付けてやる。そいつに案内して貰え。』  
 
案内役の人間と落ち合う時間を確認すると、すぐに回線が切られた。  
 
「何?情報提供?」  
「使いっ走り依頼。」  
 
ロイドが簡単に事情を説明すると、ディアナはまるで子供のように目を輝かせた。  
赴く先が未開の地であるということに興味をそそられるのだと言う。  
落ち合う日時は今日の昼過ぎ。ロイドは適当に時間を潰し、待ち合わせ場所である酒場へと向かった。  
入口に設けられているウエスタンドアを通り、指定された隅の席へ足を運ぶ。  
そこに座っていた人物と目が合うなり、二人はそのまま押し黙った。  
 
「…………」  
「…………」  
 
ディアナはやたらと嬉しそうな顔をしている。  
案内役を担うその人物が、沈黙を破るように先に口を切った。  
 
「何であんたが来んのよ……」  
 
席に座っていたのは他ならぬクレアその人。不満に満ち溢れた視線をロイドに注いでいる。  
 
「あたし、帰っていい?」  
「ケルミスに報告するぞ。」  
 
おもむろに通信機を懐から出してみせると、クレアは慌てて止めに入った。  
 
「じょ、冗談よ、やめてよ!あいつ平気で減給するんだから!」  
「わかったからさっさと案内しろ。」  
「くっ……道理であいつ、相手の名前言わないわけだわ。」  
 
クレアは大きな溜息をつくと、諦めたように席を立った。  
 
「クレアさん、宜しくね。」  
「あなたがいるのがせめてもの救いね……」  
 
満面の笑みで挨拶するディアナに取り繕ったような笑顔を向けると、クレアはすぐに酒場を後にし二人を  
港へと連れ出した。  
用意されていた小型のクルーザーに乗せられ、目的の島へ向かい発進する。  
 
「船の操縦免許なんか持ってたのか。」  
「小型船だけね。だから適任と言えば適任なんだけど……」  
 
クレアはロイドを横目で見遣る。  
 
「あたし、戦闘はプロじゃないの。何かあったら守ってよね。」  
「努力する。」  
「…………」  
 
如何にも憂鬱そうな様子を見せ、彼女は舟を走らせ続けた。  
数時間後、辿り着いたのはが緑生い茂る小さな孤島。  
気温も高く、目前に立ちはだかる密林は正に熱帯雨林。  
 
「先に言っておくけど、報酬の情報が欲しいなら三日以内に片付けてここへ戻って来ることね。」  
「報酬?情報?」  
「あなた聞いてないの?」  
 
ロイドはディアナには報酬の件は話していない。  
下手に詮索され、自分の趣味を露呈するのは願い下げだった。  
 
「早く行け。案内役だろ。」  
「これから日が沈むけどいいのね?モンスター出るわよ。弱いらしいけど。」  
「問題ない。」  
 
クレアはベルトに括り付けられているシザーポーチから位置確認装置を取り出し、現在位置と方角を確認する。  
 
「目的地点でもあるのか?」  
「戻って来た連中、皆死ぬ間際に洞窟のドラゴンにやられたって言ってるの。何かあるとすればそこね。  
場所は森の奥。後はこのスタート地点さえ記録しておけば方角を頼りにいつでも戻って来れるわ。」  
「す、凄い……」  
 
生まれて初めて見る機器に、ディアナは興味深そうに関心を寄せている。  
現在位置の登録を終えると三人は密林へと足を踏み入れた。  
辺りはすぐに暗くなり、周辺から低級モンスターの蠢く気配が伝わってくる。  
照明はクレアの持つ小型のサーチライトと、ディアナの灯す小さな炎のみ。  
無論その日のうちに辿り付けるはずもなく、ある程度進んだ先で休息が取られた。  
高かった気温は一転して下がり、明かりと敵避けを兼ねて焚き火を起こす。  
 
「全然襲って来ないな、こいつら。」  
「臆病な種類らしいわ。寝首を掻くタイプだって話だから、見張りよろしく。」  
「…………」  
 
つまり寝るなということだった。  
一掃しても良いが数が多い。後から沸いて出てくる敵の相手をするのは労力の無駄でしかない。  
クレアはディアナと一緒に横になると、からかうような視線をロイドに送った。  
 
「じゃあ寝るけど、変な気起こして襲っちゃ駄目よ。」  
「おまえを襲って俺に何のメリットがあるんだよ……」  
「……あんた、それレディに対して失礼だと思わないわけ?」  
 
横で話を聞いていたディアナが一瞬不思議そうな目をロイドに向けたが、すぐにクレアへと戻しジャケットの  
端を小さく引っ張る。  
 
「クレアさん」  
「ん?」  
「どうしたらそんなにスタイル良くなるの?」  
「……へ?」  
 
何の脈絡もない問い掛けに、クレアの口から間の抜けた声が上がった。  
クレアはちらりとロイドに視線を送り、ディアナの質問の意図を推測する。  
 
「あなた、そんなにあれの気引きたいの?」  
 
ロイドを親指で指し、哀れみの表情をディアナに向けている。  
 
「え!?」  
「難儀ねぇ。同情するわ。」  
「おまえらさっさと寝ろよ……」  
 
聞くに堪えず、ロイドは二人を早々に休ませる。  
ディアナとクレアの相性がそれほど悪くないのは先程の会話からも見て取れる。  
 
ロイドは内心、安堵していた。おそらくこの先ずっと、自分の依頼担当者がクレアである可能性が高いからだ。  
身を潜めて生きているのはケルミスも同じ。あまり多くの人間の目に触れたくないのはわかっているはず。  
そう推察しつつ、ロイドは辺りが明るくなるまで、燃料となる草木を炎にくべては周囲を警戒し続けた。  
 
焚き火が消え、明かりがなくとも周囲の景色を目で認識できるようになった頃、ロイドは地面に寝そべる二人を  
叩き起こした。  
食料は木に生る果実。道の途中で二人に投げ渡し、先を急ぐ。  
しかし洞窟らしき岩陰はなかなか見つからず、太陽の位置から察するに既に昼を過ぎていた。  
 
「本当にこっちで合ってるのか?」  
「さぁ?森の奥としか聞いてないし。」  
 
案内役のくせに役に立たない。  
ロイドはそう思いながらも、勘を頼りに道なき道を掻き分ける。  
傾斜した道を進んで行くと、やがて崖に突き当たった。  
 
「はずれね……」  
「ちょっと待って、下見て!」  
 
戻ろうとするクレアを引き止め、ディアナは崖の下を覗き込む。  
小さな洞窟が木の葉の隙間から垣間見える。しかし、注視すべきはそこではない。  
洞窟の周辺に武装した兵が点在していた。  
 
「ロイド。あれ、あんたのとこの兵じゃないの?」  
 
突き立てられた国旗に描かれているのは、双剣が模られた盾とそれを支える獅子。  
それは紛うことなきラストニアの国章。  
 
「……クレア。知っていたわけじゃないだろうな。」  
「ラストニア兵が調査しに来てるなんて聞いてないけど?」  
 
クレアは涼しげな顔で否定する。どこか引っ掛かる物言いだった。  
 
「おとなしく下りたら?いつ引き上げるかわからないし、何日も待ってたら報酬貰えないわよ。」  
 
様子を窺っていると、やけに負傷者が多く洞窟へ向かう気配もない。  
救援を待っているのだとしたら、当分ここを動かないだろう。  
洞窟の入り口はひとつではないが、位置的にどうしても兵の目に留まってしまう。  
ディアナの催眠魔法等には頼れない。対策防具を装備されていれば、不審者がいることがばれてしまう。  
移動魔法も使用できない。確実に認識できる場所にしか移動できず、その魔力消費は人数と距離に  
比例するのだそうだ。  
苦慮する様子を見せるロイドにディアナは不思議そうな顔を向けた。  
 
「ロイド?敵じゃないんでしょ?出て行けないの?」  
「自分から居場所ばらしてどうする。」  
 
ロイドは国を無断で出ている。既に自分を捜すラストニア兵の姿も見ている。  
足が付くことを避けるため、宿の記帳や口座等、名前を必要とするものには偽名まで使っている。  
ただ、ディアナがそれを知らないだけだった。  
 
「日が落ちるまで待つ。それまで絶対に下りるな。」  
 
ロイドはそう指示すると、日没までその場で息を潜めた。  
兵の様子を観察していたが引き上げる気配は微塵も感じられず、作戦を練っている様子まで窺える。  
それでもなかなか良案が無いようで、洞窟内へ立ち入る様子は全く見られない。  
苦戦を強いられても退却しない理由。この洞窟には何かあるのだろう。  
 
日が沈み洞窟の前に火が熾(おこ)された頃、行動が開始された。  
 
「って言っても、結局出て行くしかないんでしょ?見つかるんじゃないの?」  
「考えがある。クレア、そこでおとなしくしてろ。」  
 
崖の高度的に跳んで下りられないことはない。  
洞窟付近の様子を窺うクレアに動かないよう指図し、ロイドは静かに彼女の背後に回る。  
怪訝な表情を浮かべるディアナに立つよう合図すると、躊躇いなくクレアを蹴り飛ばした。  
 
「ちょっ……!?」  
 
クレアが悲鳴を上げて急斜面を転がり落ちている間に、ロイドはディアナを抱えて素早く崖を下りる。  
闇に紛れ、ラストニア兵の注意がクレアに向いている隙に、洞窟内へと進入した。  
 
「ロイド!?クレアさん、どうするの!?」  
「ラストニア兵とドラゴン、安全なのはどっちだ。」  
「で、でも……、ロイドがいること言わない?」  
「そんなことしたら俺に半殺しにされることくらい、あいつならわかってる。」  
 
無論、ディアナを納得させるための理屈に過ぎない。  
足手纏いの排除も兼ね、洞窟進入のために利用しただけだった。  
 
ある程度まで進んだところでディアナを下ろし、炎を灯させる。  
足元に見えるのは乾いた血痕。人骨も時折見られた。  
道はうねりつつも一本道だったが、気掛かりだったラストニアの残兵もいない。  
隅に散らばる骸の数も増して来た頃、大きなドーム状の空間に出た。  
 
「行き止まり?ドラゴンなんていないんじゃ……」  
 
ロイドは歩を進めようとするディアナを手で制する。  
 
空間の中央には大きな魔方陣が描かれている。  
そしてその奥の壁は、まるで壁画のように大量の文字で埋め尽くされていた。  
 
「ディアナ。あの文字見えるか。」  
「うーん……、もう少し近付かないと。」  
 
ドラゴンが現れるとすれば、どう考えても目前に描かれている怪しげな魔方陣。  
とはいえ立ち止まっているわけにもいかず、文字を確認するために魔方陣を避けて壁に近寄る。  
 
その瞬間、魔方陣が強烈な光を放った。直後そこに現れたのは、一頭の巨大なレッドドラゴン。  
大きく轟く咆哮で侵入者を威嚇し始める。  
 
「こいつか……!」  
 
ロイドは即座に剣を抜き、ディアナは腰に括り付けられていた短い杖を構える。  
戦いの火蓋を切ったのはディアナが唱えた魔法障壁。  
すぐにそれを掻き消すかのように、レッドドラゴンは灼熱の炎を吐き出した。  
炎が収まり視界が開けた瞬間、ロイドは剣を携え敵に斬りかかる。  
ほんの小手調べのつもりだった。  
レッドドラゴンの鱗に刃が届くかと思った瞬間、強烈な反作用の力が働いた。  
咄嗟に防御体勢を取るも、ロイドは壁に強く叩き付けられた。  
 
「ロイド!?」  
 
ディアナに他人の身を案じている暇はない。  
レッドドラゴンの攻撃の照準はすぐにディアナに移り、前足で叩き潰そうと彼女に襲い掛かる。  
軽やかな身のこなしと状況に応じた魔術で攻撃を交わしているが、反撃する余裕がない。  
ロイドはその隙に、傍に転がっている小石を手に取り敵に向かって弾いた。  
それは先程と同じく、鱗に届く直前に数倍もの勢いで逆方向へと弾き飛ばされた。  
原理はよくわからないが、剣で倒すことができないということだけは理解した。  
ロイドは地を蹴り、逃げ回るディアナを捕捉する。  
 
「この状態で唱えられるか?」  
「やってみる……!」  
 
ディアナは片腕で抱えられたまま攻撃魔法の詠唱を始める。  
攻撃の回避は全てロイドに任せ、完成した魔術を高らかに唱えた。  
白い光の粒子が集結し、巨大な光線と化して敵を真正面から貫く。どう見ても直撃している。  
様子を窺っていると、真横から風を切るような音が聞こえた。  
その気配から既(すんで)の所で跳躍し、振り回された尻尾を交わす。  
 
「効いてない……?」  
「いや……」  
 
元々ドラゴンは魔力が高く、耐性もある。恐らく多少は効いている。  
しかし物理攻撃が効かないということがどうしても解せなかった。  
 
ドラゴンの鱗は鋼のような硬さを持つ。故に剣によるダメージが乏しいのならば理解できるが、  
衝撃が跳ね返るという現象がどうしても理解できない。  
 
反撃の手立てを考える間もなく、レッドドラゴンは大きな咆哮と共に風の魔術を発動させた。  
その瞬間、視界の端で壁の文字が光った気がした。  
敵の頭上を中心として放たれる、音速を超える真空波が二人を切り裂く。  
ロイドはディアナを庇い、壁へ体当たりするように射程圏外へ移動し、風の刃を回避した。  
切り傷の多さから異様な刃の速度を鑑みる。真空刃の速度はせいぜい音速程度のはず。  
 
「ロイド……これ」  
 
ディアナの声に気付き同じ方向に目を向けると、文字が刻まれている壁が目前にあった。  
彼女はその壁の文字を見つめている。  
 
「全部禁呪魔法……」  
「禁呪魔法……?」  
 
意外な文字の正体に、ロイドは思わず問い返す。  
禁呪魔法。それは万物のあるべき姿を歪ませ、自在に操る魔術。  
使い方次第では由々しき事態を引き起こし兼ねないために使用を禁じられているが、そもそも扱いが難しく  
習得できる人間自体少ない。  
先程光った壁の文字がレッドドラゴンの魔術に呼応していたのだとすれば、頭を悩ませていた異常な現象にも  
合点がいく。  
 
「こいつ、この壁に刻まれた術を使ってるとみて間違いないな。」  
「多分……」  
 
あらゆる侵入者が血祭りに上げられたのは、禁呪魔法に抗う術を持たなかったため。  
強力な力に抗うためには、より強い力で捻じ伏せるしかない。  
この洞窟のドラゴンを倒すためには、強力な魔道士の存在が必要不可欠なのだ。  
ロイドは止まる気配のない猛攻を避けながら、反撃の機会を窺い続ける。  
 
「長期戦はまずい。ディアナ、何か手はあるか?」  
 
剣が通用しない上、悠長に作戦を練る暇もない。  
ディアナが手詰まりならば、一旦退却しなければ全滅は必至。  
彼女は思い詰めた表情で黙っていたが、意を決したようにロイドに顔を向けた。  
 
「ロイド、下ろして。護らなくていいから時間稼いで。」  
 
ロイドはすぐにディアナを下ろし、レッドドラゴンに向かい囮役を演じる。  
ディアナは地に降り立つと、小さな声で今は亡き母に懺悔した。  
杖を胸の前に掲げ、虚無を呼ぶ言霊を紡ぐ。瞬時にディアナを黒い結界が覆い、全ての攻撃を遮断する。  
 
一定レベル以上の魔術には、術者を護る詠唱結界が伴う。そしてその強さは、唱える魔術のレベルに比例する。  
レッドドラゴンが使用する禁呪魔法すら凌ぐその結界は、更に上級の禁呪魔法でしか有り得ない。  
大魔道士エルネストも禁呪魔法の使い手として知られていたことを思い出し、ロイドは敵の気を引きながら  
ディアナの魔法の完成を待った。  
 
「離れて!」  
 
詠唱終了を意味する声と共に胴体を蹴り、反作用の力を利用してレッドドラゴンから距離を置く。  
ディアナはすぐに、その先の禁じられた真言を口にした。  
 
瞬間、空間が割れた。そうとしか表現のしようがない。  
隔離された空間の中心部が大きく歪み、直に大きく渦巻く超重力と化す。  
それはまさに、濃縮された小型のブラックホール。  
レッドドラゴンは咆えることも許されずゆっくりと分子レベルまで分解され、吸い込まれるように消滅した。  
 
ディアナは息を吐き、すぐにロイドの元へ駆け寄り傷を癒す。  
 
「禁呪魔法なんか使えたのか……」  
「今のだけ。切り札として母様がひとつだけ教えてくれたの。絶対使うなって言われてたけどね。」  
 
物理攻撃が跳ね返されたのは、力のベクトルとその大きさを強制操作されたため。  
風の刃が異様に早かったのは、空気抵抗を極限まで減らされたため。  
いずれも自然のあるべき姿を侵す、魔道の禁忌。  
 
回復を終えると、ディアナは静かに壁の文字を見つめた。  
勝利と共に手にしたのは、レッドドラゴンを倒すことができた者にのみ与えられる、新たな禁呪魔法の  
習得権利。  
しかしディアナは壁の一画しか見ていない。食い入るように綴られている文字を読み解いている。  
やがて、彼女は気を落とした様子でロイドの元へ歩み寄る。ロイドはその様子には敢えて触れずに声を掛けた。  
 
「もういいのか?」  
「うん。こんなの宝の持ち腐れ。」  
 
熾烈な戦いから一転して閑散とした空気に包まれたその空間を出ると、壁の文字は最初から  
存在しなかったかのように跡形も無く消え去った。  
ロイドは横目でそれを確認し、洞窟の入り口へと歩みを進めた。  
 
 
入口にはまだラストニア兵の姿が見えたが、帰りは容易い。  
ディアナは既に元来た道を認識している。イメージと距離感さえ掴むことが出来れば、空間を渡って  
移動することができる。  
クレアの姿がなかったが、一先ず道を戻ることにした。  
 
「クレアさん、どこに……」  
「ここよ」  
 
傍らの木陰から声が聞こえると同時に、クレアが不機嫌そうな顔で目の前に立ちはだかる。  
ロイドに罵声を浴びせかけるかと思いきや、シザーポーチから位置登録装置を取り出しロイドに突きつけた。  
 
「これ、壊れたから。」  
「何やってんだおまえ……」  
「誰のせいよ!」  
 
空に輝く月のおおよその位置から、既に真夜中になっていると推測できる。  
あと一日で海辺まで戻らなければならない。  
 
「生きて戻って来たようだし、この際あたしを足蹴にしたことは目を瞑ってあげる。でも方角が  
わからないんじゃどうしようもないわ。諦めてそこで屯(たむろ)してる兵士達に聞いてみたら?」  
「……クレア、おまえどうやって兵の包囲から抜け出した?」  
「迷子の探検家のふりしただけ。」  
 
それが本当ならば、二人が出てくる前に方角を尋ねに戻っても不思議には思われなかったはず。  
どうも先程から兵と接触させたがっているように見えたが、口には出さなかった。  
 
「南に向かえばいいんだろ?」  
 
ロイドは周囲よりも比較的高めの木を見つけ、容易く頂まで登ると満天の星空を見上げた。  
捜すは北の方角を示すポラリス。弱く輝くその星を見つけると、地面へ跳び下り向かうべき方角を指し示した。  
 
「流石プロの知能犯……」  
 
犯罪者呼ばわりされる筋合いはないが、もう突っ込むのも面倒だった。  
方角さえ分かれば、休息を取る時間を考慮しても十分に間に合う。  
その日も見張り役を押し付けられ、三人は焚き火の元で身体を休めた。  
 
 
辺りが明るくなるとすぐにまた出発し、海岸へ向かう。  
それなりに距離があったため、辿り着いた頃には日が傾き掛けていた。  
 
「じゃ、詳細報告はケルミスに直接よろしく。あたしはただの案内役だから。」  
 
たいして役に立たなかった気がするが、黙っておいた。  
クレアは泊められていたクルーザーにひとり乗り込み、エンジンを掛ける。  
 
「報酬が欲しいなら、夜までそこでじっとしてなさい。じゃあね。」  
 
ディアナに向かって手を振り、彼女は舟を走らせ水平線の彼方へと消えてしまった。  
 
「夜までって……どういうこと?」  
「さぁ。」  
 
置いて行かれた以上、言われた通りおとなしく待つしかない。  
ロイドがその場に腰を下ろすと、ディアナも隣に座り込んだ。  
 
「ロイド、眠そう。」  
「そりゃそうだろ……」  
 
何やらにやにやと顔を覗き込んでくるが、眠気もあり無視を決め込む。  
やがて日が落ちると、遠く彼方に光が見えた。一隻の小さな舟のようだった。  
それは見る見る島の方角へと近付き、海岸へと辿り着く。  
すぐに一人の船員が舟を降り辺りを見回すが、二人に気付くと慌てた様子で駆け寄ってきた。  
 
「遭難者というのは君たちか!?」  
「え?そ、遭難……?」  
「この島に遭難者がいるから救助して欲しいとの連絡が入ったんだ。さぁ、早く舟へ!」  
 
十中八九、ケルミスの仕業だろう。  
ロイドは困惑しているディアナの背中を押し、船員に言われるがまま救助船に乗り込んだ。  
ほどなくして巨大な客船へと導かれ、「避難」の名目で乗船を許可される。  
 
「本当にいいの?」  
「ケルミスの意図だ。問題ない。」  
 
行き先は貿易都市ミランダ。珍品の取引が盛んな都市だが、最近では裏取引が多く行われ闇市場と  
化しているという。  
曰くつきの剣が出回っていてもおかしくない場所だった。  
適当に事情説明を済ますと、二人は空き部屋へ案内された。  
今日は客が多く満室状態だったそうだが、出航直前に一部屋分だけキャンセルされたらしい。  
 
「あいつ、手が込んでるな……」  
 
ロイドはひとり呟きながら部屋の鍵を閉め、彼に連絡を取る。  
洞窟内の出来事を簡単に報告すると、街に着いたら再度連絡を入れるよう促され、対話が終わる。  
通信を切られる前に、ロイドは先日からずっと引っ掛かっていた疑問をケルミスに投げ掛けた。  
 
「ケルミス。正直に答えろ。」  
『何だ?』  
「クレアは本当にただの案内役か?」  
『はは、何勘繰ってんだよ。役に立たなかったか?』  
 
実際、島への移動しか役に立っていない。しかも島の位置など、経緯と緯度さえわかれば済むこと。  
どうしても急ぐのならば、場所を知っている魔道士を送り込む方が早い。  
位置確認装置が壊れていなければ多少役に立ったのかもしれないが、そもそも本当に転落の際に壊れたのかも  
疑わしい。  
 
『考えすぎだろ。こっちも忙しい。もう切るぞ。』  
「待て、まだある。」  
『今度は何だ……』  
 
声色が変えられていても、早く切ろうとしている様子が良くわかる。  
 
「ラストニアにあの島の情報を流したのはおまえか?」  
 
『……何故そう思う?』  
 
根拠はない。ただ、タイミングが良すぎると思っていた。  
 
「……勘だ」  
『それじゃあただの濡れ衣だな。もういいだろ、切るぜ。じゃあな。』  
 
一方的に通信が切られる。  
裏を返せば、証拠があれば濡れ衣ではないということ。  
巧みに詮索をかわされた気がしてならなかったが、今気にしてどうなることでもない。  
壁に剣を立て掛け、身体を休めるため椅子に座り目を閉じると、途端に睡魔に襲われた。  
 
「ロイド?眠いの?寝るの?」  
 
目を開けるとディアナに顔を覗き込まれていた。  
海岸にいた時から、何やら様子がおかしかったことを思い出す。  
 
「疲れてるんでしょ?寝るならベッドで寝たら?」  
「ここでいい。」  
 
不満気な表情を浮かべながらも、尚もディアナは食い下がる。  
 
「動けないの?そんなに眠いの?」  
 
いつになく鬱陶しい。ロイドは無視して再び目を閉じると、そっと腕に手を添えられる感触を覚えた。  
そしてその直後、突如全身を襲ったのは脳を直撃するような高電圧。  
 
「目覚めた?」  
「…………」  
 
ロイドは無言で立ち上がり、ディアナをベッドに俯せに突き倒す。  
そのまま膝で背中を押さえ片腕を引っ張り上げると、ディアナが苦痛の声を上げた。  
 
「痛い痛い!」  
「望み通り誘い込まれてやったぞ。これからどうするつもりだ?」  
 
もう暫らく痛めつけていると、耐えられなくなったのか掴んでいる側の手から再び電撃が放たれた。  
ディアナはすぐに起き上がり、ロイドを仰向けに倒してその上に座り込む。  
偉そうに胸を張るその姿がやけに滑稽だった。  
 
「何がしたいんだおまえは……」  
「逆襲。」  
 
柄にもないことを笑顔で言って退ける。  
 
「ロイドが弱ってる時じゃないと怖くてできないの。」  
 
威張って言う台詞ではないが、彼女にとっては今が報復の機会らしい。  
ディアナはにやにやしながら再び顔を寄せる。  
 
「屈辱?ねぇ、屈辱?」  
「……この程度で?」  
 
挑発してみると、むっとした表情で顔を遠ざけ、彼女は何やら考え込む様子を見せる。  
どうしても屈服させたいようだった。  
 
「じゃあ、襲ってあげようか?」  
 
ロイドは予想もしなかった提案に眉をひそめた。  
 
「あれだけ全力で嫌がってた奴が何を……」  
「だって私のこと、嫌いじゃないんでしょ?嫌いじゃないってことは……」  
 
一週間ほど前の朝の会話を思い出し、ロイドはすぐにその先を否定した。  
 
「待て、好きなんて一言も言ってない。」  
「いいの。私が勝手にそう思うようにしてるの。」  
 
ディアナは始終笑顔だった。逆にそれが本気であることを窺わせる。  
やがて彼女の手がベルトへと伸びた。  
 
「おい、やめろ。」  
「ん?なんで?嫌なの?」  
 
ロイドの制止の声に、ディアナは尚更嬉しそうな顔を見せる。今の彼女に拒絶の言葉は逆効果だった。  
しかし、別段心配はしていない。ベルトが外されたところで不意に動きが止める。  
このままでは未遂に終わってしまうことに気付いたのだろう。  
 
「…………」  
 
先程とは一転し、困った顔でロイドを見つめている。  
彼女はほとんど性行為の知識を持っていない。勃たせ方がわからないのだ。  
もしかすると、自分も濡れなければ痛みを生じることも知らないのかもしれない。  
 
ディアナは面白そうに観察されていることに気付き、悔しそうに意気込むと、身体を倒して四つん這いになり  
ロイドに顔を近付けた。  
自然と胸が押し付けられる形になるが特に気にする様子もなく、唇を塞がれる。  
稚拙なその舌使いは、かつて経験した動きを真似ているようにさえ感じられる。  
 
このまま長く続けられていては眠ることなど到底できない。  
ロイドは一度満足させてやればおとなしくなるだろうと思い、彼女の拙い行為を手伝ってやることにした。  
痺れは既に薄れている。手が動くことを確認すると、舌を押し返して彼女の側に侵入する。  
 
「!?」  
 
驚き、咄嗟に唇を離そうとシーツに手をつくディアナの頭を手で押さえる。  
そのまま脚を絡めて太腿を開かせると、未だ湿っていないその場所に指を差し入れ、ゆっくりと掻き回した。  
後ずされば自然と指が深くまで達し、前へ進めばより近寄らせようと腰を追われる。  
ロイドから離れようと肘を伸ばすが、決して離さない。半ば拘束しているようなものだった。  
ディアナはどうにも身動きできず、小さな声を漏らしながらロイドに翻弄され続けた。  
中が十分に潤っていることを確認し、徐々に動きを速め何度か軽く果てさせると、一度その拘束を解く。  
 
「んっ……、はぁっ……!な、何を……」  
「まだ続けるのか?」  
「何か、違う……」  
 
まだ満足していないようだった。  
ロイドは不本意ながらいきり立ってしまった剛直物を取り出し、ディアナの濡れそぼった秘所に押し当てる。  
 
「座れ。これが希望なんだろ。」  
「う……」  
 
軽くとも、絶頂を迎えたことで一段と感じやすくなったその身体には、触れるだけで辛いのかなかなか腰を  
下ろせずにいる。  
 
「大口叩いた割りに随分消極的だな。できないなら退けろ。」  
 
悪びれる様子もなく言い放たれたその言葉に、ディアナはロイドを睨み付け、覚悟を決めた様子で腰を沈めた。  
しかし思い切りが足りなかったようで、まだ僅かに腰が浮いている。  
 
「座れと言ったはずだ。」  
「わかってるっ……!」  
 
ディアナは身体を強張らせ、少しずつ腰を下ろしていく。  
やっとの思いで根本まで中に埋めると、ディアナはそれきり動かなくなった。  
 
「これで満足なのか?」  
「ち、違う……」  
 
少しずつ腰を動かしてみせるが、すぐに止まってしまう。  
締め付け具合から察するに、彼女の力ではもう無理のように感じる。  
決して気持ち良くないわけではなかったが、ロイドはそんな素振りは微塵も見せなかった。  
 
「ディアナ」  
「……え?」  
「動くならこれくらい動け。」  
 
言うとすぐに腰を掴み、大きく前後に揺さぶった。  
 
「え!?や、ちょっ……!あぁっ!!」  
 
一頻り揺すってから止めてやると、ディアナは手を付き苦しそうに息を上げる。  
急かすと再び腰を動かし始めるが、それはとても小さな動きだった。  
暫らく好きなようにさせた後、ロイドは面倒臭そうに口を開いた。  
 
「ディアナ」  
「え?」  
「寝ていいか」  
「…………」  
 
ディアナは悔しそうに身を震わせ、悔し涙を湛えた顔を勢い良くロイドへ向けた。  
 
「だめっっ!!」  
「!?」  
 
飛びつかれた直後、本日三度目の電流が流れる。  
蓄積されたダメージと残留する痺れから動けずにいるロイドを目に留め、ディアナは我に返った。  
慌てて回復しようと差し出された手を何とか鷲掴みにして見せると、ディアナはびくりと動きを止める。  
 
「……おい」  
「……はい」  
 
掴んだ手を強く引き寄せ、ディアナの体勢が崩れたところで身を捻り、ベッドに張り倒す。  
 
肩に手を掛け無理やり仰向けにするとゆっくりと自身を埋め込み、ディアナが身動ぎし始めたところで一気に  
深くまで貫いた。  
 
「あぅっ!!」  
「……何か言いたいことは?」  
「……ね、眠いなら寝た方が……」  
「…………」  
 
腰を掴み、蜜を掻き出すように何度も鋭く突き上げる。  
たちまちディアナが苦悶の表情を浮かべた。  
 
「おい、もう一度言ってみろよ」  
「あぁっ!や、やだ!これじゃ、意味ない!」  
「知るか!できないなら最初からするな!」  
 
気が立っていたが、約束通り行為の最中に痛めつける真似だけはしない。  
代わりに自分の愚行を後悔させるため、とにかく快楽を引き出し体力を奪い続ける。  
 
「いやぁっ!なんでこうなるの!」  
「あぁ?自業自得だろ?」  
 
苛立ちを露わにした口ぶりに、ディアナは怯んだ様子で言葉を詰まらせた。  
無駄に神経を使う戦闘を経た後仮眠すら取れず、ディアナからは何度も攻撃魔法を食らわされる始末。  
おかげで全く長持ちしそうになかったが、先に達してはディアナが図に乗る。  
ロイドは早々に昂りを感じ始め、すぐに動きを止めた。  
ディアナはその様子から疲労を察し、息を整えつつ心配そうに口を開いた。  
 
「ロイド……、回復する……?」  
「…………」  
 
再び動き始めざるを得ない言葉だった。攻撃を受けた相手に回復されるなど以ての外。  
突如再開された抽送に、ディアナは驚いて声を上げた。  
 
「な、なんで!?あっ、やぁ、んっ……!」  
 
決して先に力尽きないよう、ゆっくりと中を掻き回す。  
必然的に優しい動きとなり、ディアナは従来の激しい刺激とのギャップに戸惑うように小さな嬌声を漏らした。  
その声には拒絶の響きはなく、むしろ受け入れているようにさえ感じたが、今のロイドにはどうでもいいこと  
だった。  
耳に触れていた喘ぎが大きくなって来た頃、徐々に強く腰を打ち絶頂へと追い立てる。  
ディアナはその先を欲するような声色で拒絶の言葉を発した。  
 
「いやっ……!も、だめっ……ああぁぁっ!!」  
「っ……!」  
 
ディアナはすぐに限界まで昇り詰め、自分の中を貪る熱い塊を強く締め上げると、それが止めとなりロイドも  
同時に限界を迎えた。  
吐精後の脱力感が甚だしい眠気と化す。ディアナは息を切らし、焦点の定まらない目でロイドを見つめている。  
ロイドは最後の力で何とか着衣を整えると、力尽きるようにベッドに倒れ込んだ。  
 
「……寝る」  
 
ディアナが寄り添って来る気配を感じたが、既にほとんど意識はなかった。  
自分を呼ぶ彼女の声が耳に届く前に、ロイドは完全に眠りに落ちた。  
その表情には、僅かながら屈辱感が滲んでいた。  
 
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!