「……良しっと。綺麗にツルツルになったわね。後、数回はレーザー脱毛をしないと完全な永久脱毛にな  
らないと思うけど、小学生らしい無毛の身体になったわね」  
 女医は智花のなめらかな腋下や恥丘を指の腹で擦り、すべすべの感触を楽しんだ。四肢の薄い無駄毛も  
レーザーを当てたため、本当に首から下は産毛しか生えてなかった。産毛が人口の光をうけて黄金色に小  
麦の穂を生やしているような美しい乳白色の大地であった。  
「それじゃあ、智花ちゃん。服を着て帰りましょうね」  
 脱毛針の鋭い疼痛に散々悲鳴をあげた智花は、抑制を外されると肩を震わせて啜り泣いた。口の中に猿  
轡として噛まされていたパンティは全身を黄色に染め上げていた。電気針の疼痛による失禁の後片付けに  
彼女のパンティは雑巾代わりに使われたのだ。  
「はい。智花ちゃん、3枚目の最後のパンティよ。ちょっと汚れてるけど穿くわよね」  
「…………」  
 織江が差し出したのは3枚目のパンティであった。しかし、それは真新しい生活観漂う純白ではなかっ  
た。2枚目のパンティだけではおしっこを吸い取れなかったために、3枚目も雑巾として利用されていた  
のだ。汚れは2枚目の比ではなかったが、3枚目は二重構造のクロッチの部分から臀部にかけて黄色染み  
を吸収していた。織江がわざと智花がお漏らしした後のように汚したのだった。  
「小学生みたいにパイパンになったら、急に甘えん坊になって穿かして貰いたいのね」  
「うっ……き、気持ち悪いよぉ……」  
 智花は股間を覆う冷たく湿気た気持ち悪い感覚に新たな涙を頬に流した。こんなパンティは穿きたくな  
かった。しかし、電気針の圧倒的な疼痛による暴力は彼女の抵抗心を抑圧していた。少女はお肉の疼痛に  
弱い。言うことを素直に聞かないといつでも脱毛針から電気を流すと嚇されたばかりの智花にとって、言  
いなりになるほかに選択肢を見い出せなかった。  
 
 濡れたパンティを穿かされ、超ミニスカートに上着を着替えて裸体を隠すことができても、まったく気  
持ちは晴れなかった。室内に漂うアンモニアの匂いと医大生の臭そうな顔と侮蔑の視線が痛かった。  
「智花ちゃん、小学生の身体に近づけて貰えたんだから、先生や医大のお兄さんお姉さんにしっかりと挨  
拶をしなくちゃだめよ」  
「…………」  
(な、なんで、なんで?……智花、あんなに痛い思いしたのに……そ、それに小学生になんてなりたくない  
のに、無理やりに永久脱毛されたのに……あ、挨拶なんてやだよぉ……)  
「電気針でプチュッと刺されないと、智花ちゃんはイイ子になれないのかなぁ?」  
 織江が嚇すような台詞を語り、智花のお尻をキュッとつめられた。電気針の鋭い疼痛に比較すれば、お  
尻をつめられるなどたいした痛みではなかった。しかし、電気針の痛みをまざまざと思い出してしまう効  
果は十二分にあった。智花は俯いたままで小さな声で挨拶をした。  
「あ、ありがとうございました……」  
「聞こえません。誰の何をどのようにして貰って嬉しいのか教えてください」  
 学生の1人から揶揄するような小馬鹿にした口調が響いた。「もう1回やり直しね」と言う感じで織江  
が智花の背中を押す。  
「と、智花の……い、いらない毛を……しょ、小学生らしくして貰って……う、嬉しかったです」  
 智花は泣き声を震わせながら挨拶するのが精一杯であった。これでようやく病室に帰られると思うと今  
すぐに帰りたかった。織江に手を引かれながら一生、大人の飾り毛が生えないように処置された部屋から  
退出するために歩き出した。織江の手の片方はビニール袋に包まれた汚れた2枚目のパンティが握られて  
いた。  
 
 少女と同性の医大生たちは自分たちより圧倒的に可愛らしい智花に羨望を感じていた。しかし、そんな  
彼女たちの劣等感は奉仕特待生という弱い身分の相手に対して見せる訳には行かなかった。医大生という  
高い矜持が奉仕特待生ごときに羨望の念を抱いた事実が許せなかった。恥ずかしそうに退出しようとする  
少女にもっと何か敗北感を与えないと気分が晴れそうになかった。  
 そう思ったのは1人だけでなく、女子学生グループの多数の統一認識であった。こういう時の女子のイ  
ジメは陰湿で男子の比較にならない。  
「奉仕特待生が身分不相応にパンティなんて穿くからお漏らしするのよ」  
過ぎ去ろうとする智花の背中に1人の女性の声が突き刺さった。すると呼応するように次々と智花の話  
題が話され始めた。  
「小学生でもお漏らしなんてしないわよ。臭くて堪らないわ」  
「ほんと、奉仕特待生は小便臭くて嫌よ。モルモットみたいな匂いがするもの」  
「いくらモルモットみたいな扱いをされるからって、モルモットの匂いとは違うわよ。トイレみたいな匂  
いならわかるけど」  
「そう言われてみたらトイレっぽい臭いがするわね」  
「そう言えば、あの子、蛭間先生に尿道括約筋に弛緩剤を注射されたみたいよ」  
「えっ? それじゃあ、本当の失禁娘になってオムツなしじゃあ生活できないんじゃないの?」  
「そうみたいね。どんなに可愛くてもお漏らし美少女なんてまともな恋愛はできないわね」  
「あははは、奉仕特待生自体がそもそもまともな恋愛なんてできないって」  
「それもそうね。ハハハハ!……」  
 
 智花は聞こえよがしに投げつけられる嘲笑に蒼褪めた。  
(せ、先生が……弛緩剤を注射?……ど、どういうことなの?……失禁娘? お漏らし美少女? 注射が原  
因なの?……そ、それにまともな恋愛ができないって、そ、そんなことないわ……な、何回も告白された  
ことあるもん……で、でも、本当に、智花、おトイレの匂いがするの?……や、やだよぉ、おしっこの臭い  
がとれなくなっちゃったら、誰も智花に告白してくれなくなっちゃうよぉ……)  
智花は白衣に身だしなみを整えた女子学生の揶揄に心の中を掻き乱された。小中時代だけでなく生まれ  
てから双子の兄と容姿がお人形のように可愛いとちやほやされて育ってきていた。それだけに女子学生の  
一言一言の侮蔑の言葉は少女の無垢な心に土足で踏み躙る行為であった。  
 そして、尿道にされた注射によって失禁症になっているのではないかという恐怖にも似た不安が、心の  
闇を深くするのであった。  
*      *      *      *      *  
「蛭間先生が永久脱毛の記念に診察室に来るように言っていたわよ」  
 美容整形外科外来から病棟のナースステーションに戻ると1人の看護婦に言われ、智花たちは再び1階  
まで降りた。  
 永久脱毛の記念だなんて智花を馬鹿にしきっていることに気分を害したが、蛭間医師に聞きたいことが  
あったので少女は言われるがままに来た道をまた戻った。  
 夕方付近になり、1階の待合室にはほとんど患者の姿は見えなかったが、それでも、椅子に座っている  
患者にスカートの中を見られるのではないかという不安があった。そして、患者の好奇に満ちた視線や医  
療スタッフの無関心な視線が集中すると小水の芳香がしているのではないかと恐怖感があった。  
 できる限り織江の影に隠れながら廊下の隅を移動して、今朝、剃毛された「腎・泌尿器科」とプレート  
の書かれた診察室に通された。  
 
「蛭間先生、白石智花さんを連れてきました」  
「おっ、来たか」  
 織江の紹介でカルテに書き物をしていた中年医師は椅子を来訪者の少女たちに向けた。若い二人の医師  
の姿は見えず、広い診察室には蛭間だけであった。  
「のどが渇いただろう。今、ジュースを出してやる」  
「いえ、お構いなく」  
 看護学生の織江はやんわりと拒否したが、蛭間は気にせずに診察室の奥の部屋に行くと、冷蔵庫を開け  
てオレンジジュースを二つのコップに注ぎ分けた。そして、自分はインスタントコーヒーを作るとオレン  
ジジュースを智花たちに渡した。智花はじっと無言のまま警戒するように蛭間を窺い見ながら、ジュース  
を口に含んだ。  
 パンティを噛まされていたことと、緊張の連続で咽喉はカラカラであったため、冷たいジュースは心地  
良かった。一辺に全部飲み干してしまうと、お行儀が悪いと母親に叱られていたので、半分飲んでコップ  
から口を離した。  
「せ、先生……今朝した注射は何なのですか?……」  
「いきなり質問か?まあ、待て」  
 意を決して出た智花の問いを保留させると蛭間は、コーヒーカップを机に置き立ち上がった。そして、  
先ほどの別室に行くと大き目の箱を持って帰ってきた。  
「永久脱毛を終わらして小学生に近づいた智花へのプレゼントだ」  
 蛭間の言い方には感に障るものがあったが、それでも綺麗にリボンや包装紙でラッピングされた箱を渡  
されると胸が少なからずときめいてしまう。オレンジジュースを診察台に置き、両手で手渡された箱の重  
みに何が入っているのだろうという期待を持ってしまう。  
 
 智花は誕生日にしろクリスマスにしろ、プレゼントは包装されていて開封するまで何が入っているかわ  
からないことが好きだった。まるでプレゼント自体の中身を知るまでは包装紙自体がビックリ箱であり、  
一つの演出で心躍る瞬間であった。だから、少し笑顔になって医師に開けて良いか目で確認した。  
「ああ、それは智花のものだから開けなさい」  
「何が入っているのかなぁ?」  
 織江は智花の気持ちを代弁するような台詞を述べた。開封しても良いと許可が出た智花は、リボンを優  
しく解き、包装紙をゆっくりと丁寧に外した。しかし、箱に描かれた物を現れると智花の手が急に止まっ  
て表情が硬直してしまった。  
「早く全部開けなさい」  
「智花ちゃん、プレゼントが何なのか早く見せて」  
 二人に促され智花はしぶしぶと箱を空けて中身を取り出した。先ほどまでの楽しい気持ちは微塵もなか  
く、今まで貰ったプレゼントの中で最悪の代物を手にとった。  
「良かったわね、智花ちゃん。これで小学校にランドセルを背負って通えるわね」  
「…………」  
 大げさにはしゃぐ織江の隣で智花は沈鬱な表情をしてその代物を眺めた。小学生の通学鞄であるランド  
セルは新品でピカピカの赤い革製品であった。よく目立つように『ほうしとくたいせい・しらいしともか』  
と背中の部分にはワッペンがつけられていた。  
「い、いらない……」  
 
「小学生といえばランドセルだろう。順健大学附属の初等部の通学鞄はランドセルと決まっているんだ。  
校則さえ守れないようだと、小学生も進級させて貰えないぞ。そうなると永遠に奉仕特待生だな」  
「そ、そんなぁ……」  
「それが嫌なら、嫌な顔をせずに今すぐランドセルを背負ってみるんだ」  
「う、うぅ……と、智花、本当は中学生なんだよぉ……」  
(ら、ランドセルなんて嫌だよぉ……中学生だったのに恥ずかしいよぉ……)  
 智花は泣き出しそうな情けない表情になって、ランドセルを肩に背負った。あらかじめ測っていたかの  
ように肩ベルトの長さはピッタリであった。思春期時代の1歳でさえ年齢差は大きかった。1つだけ年上  
でも智花はひどく大人に見えたし、反対に1つだけ年下でも自分よりずいぶんと子供に見えた。少女は素  
敵な大人になることに強い憧れを持っていた。智花は成長ばかりに重点を置いていた。だから、中学生に  
なってからは特にランドセルを背負っている子たちを見ると子供っぽいと思い、セーラー服を着ている自  
分が少し誇らしかった。2度とランドセルなんて背負うことはないと思っていた……それだけに、屈辱感  
も羞恥心もひとしおであった。  
「思った以上に似合っているじゃないか」  
「そうですね。ランドセルを背負うともとが中学生って思えませんね」  
「まあ、これでもっと胸が小さかったら完璧な小学生の4、5年生くらいだな」  
 二人の勝手な物言いに智花は俯いた。長い髪が頬を少し覆い隠しながら赤いランドセルの肩ベルトにか  
かる。色合いのコントラストが綺麗であったが、それ以上に他人の目を引く場所はCカップの乳房であっ  
た。上着が左右の肩ベルトに引っ張られることによって乳房の形を如実に現していた。智花が陥没乳首で  
なかったら乳首の形も生地に浮いて見えていただろう。  
 
「さて、それではそろそろ時間も来るだろうから、昨日の注射の説明をしてやろう。ランドセルはそのま  
ま背負ったままだぞ」  
 智花はランドセルを降ろすことを許されず椅子に座らされた。パンティの湿った感じが椅子に座ること  
で、皮膚に密着してゾクッとするほど変な感じが背筋を駆け抜けた。嫌悪感で片付けられない感触であっ  
たが、性知識が乏しい智花は気持ち悪いと判断する以外の感情をまだ持っていなかった。  
「これを見るんだ。なんだかわかるか?」  
「…………」  
「学生さんはわかるな。智花に教えてやってくれ」  
「膀胱の断面図です。智花ちゃん、膀胱はおしっこをためる場所だよ。模型も女性用の膀胱と尿道がある  
のよ」  
「そうだな。これは膀胱の断面図だ。まあ、それ以外に筋肉や腰椎や仙骨からの神経もこれでわかるよう  
になっているんだ」  
 智花は蛭間が取り出した精巧な模型を目の前にして説明をされた。  
今は少女のキョトンとした愛らしい瞳だが、これからする説明を智花が理解した時の反応を考えると興  
味深かった。  
「膀胱の中におしっこが溜まると、この膀胱の中に圧力が加わるんだ。そのことを内圧と言うんだけど、  
膀胱内圧が18、9cmH2Oになると尿意を感じるんだ。どれくらいの量かわかるか?」  
 成績が優秀で理科も得意な方であった智花だが、医師の説明を充分に理解できなかった。わざと理解で  
きないように中年男が説明している節さえあった。わからないと頭を振って意思表示をすると、蛭間が説  
明を再開した。  
 
「大人で膀胱に尿意を感じるのは400mlくらいになってから急に感じようになるんだ。智花ちゃんは10ml  
だろうと300mlだろうと膀胱内の尿量の違いに気づくことはまずないんだ。まぁ、智花ちゃんは子供だか  
250mlくらいから尿意を感じているかもしれないけどな」  
 智花は中年男が何を言いたいのか頭にクエスチョンマークを浮かべていた。わかったのは尿がたくさん  
溜まらないとおしっこをしたくならないということだけであった。  
「そして、ここの筋肉は膀胱に近い順から内膀胱括約筋と外膀胱括約筋と言うんだ。この筋肉は智花ちゃ  
んがおしっこしたくなってもお漏らししないように我慢する筋肉なんだ。で、内膀胱括約筋は下腹神経で  
不随筋なんだ。不随筋とは自分の意思で動かせない筋肉のことだ。智花ちゃんがおしっこをしたくなった  
ら自然に漏れないように抑えてくれるんだ。だけど、外膀胱括約筋に比べるとその力が弱いんだ。で、外  
膀胱括約筋は陰部神経の支配による随意筋で智花ちゃんが自分自身の意志でお漏らししないように力を込  
める筋肉なんだ」  
「ふ、二つの筋肉で我慢してるの?……」  
「普通の人はそうだけど、智花はちょっと違うんだ」  
「ど、どういうことですか?……」  
 智花の典雅な表情がみるみると不安の相を浮かべてくる。中年男は意地悪く分厚い口の端を歪めながら  
いっそう低い不気味な声で結論を述べた。  
「智花ちゃんの外膀胱括約筋は弛緩してるから、内膀胱括約筋だけでお漏らししないように我慢してるん  
だ。おしっこの穴付近からチクッと刺した注射の薬は筋肉弛緩約の薬で智花ちゃんは、自分の意志でおし  
っこを漏らさないように我慢する筋肉が、収縮しておしっこを我慢できないようにゆるゆるになったんだ。  
だから、智花ちゃんは残念だけど夜尿症にもなるし、どんなに気を付けてトイレに何回も行ってもお漏ら  
しの失敗をするような女の子になっちゃったんだ」  
 
「や、やだぁ……も、戻して、戻してください……」  
「無理だ」  
 顔面蒼白になった智花は泣きつくように中年男に身を乗り出した。しかし、少女の懸命の訴えを一言の  
もとに却下した。  
「1回、筋肉弛緩注射したら、その筋肉の弛緩は薬の効果が切れるまでどうすることもできないな」  
「い、いつ切れるのですか?……」  
「正確なことは儂もわからないが、たぶんかなりの量を注入したから2、3年の間は失禁するようになる  
だろうな」  
 智花は呆然と絶望の表情を浮かべた。ブルブルと身体が震えて涙が頬をつたい、細い顎から首へと向か  
い首輪にまで流れていた。そして、少女は自分の身体に異変を感じた。  
「そろそろ聞いてきたようだな。先ほど智花たちが飲んだオレンジジュースには利尿剤というおしっこを  
出す薬が入っていたんだ」  
『えっ』  
 智花だけでなく織江も信じられないという表情をした。  
「はははは、看護学生さんには悪いことをしたな。後でお小遣いをあげるよ。まあ、実験に付き合ってく  
れ、先ほど儂が説明したが、随意筋である外膀胱括約筋の力があるとないとでの違いを、智花、お前自身  
が身を持って体験しろ。看護学生さんは正常な膀胱括約筋を持っていてジュースも全部飲んでいる。智花  
はジュースを半分しか飲んでいないが外膀胱括約筋が弛緩している。その違いをこれから体験させてやる」  
智花より織江の方がたくさん利尿剤入りのジュースを飲んだため効き目が早かったのか、膝小僧を擦り  
合わせて尿意と戦っている。智花の方がいくぶんに余裕があると智花自信は思った。  
「それでは、互いにトイレに行ってきてもいいぞ。そう長く我慢できないだろ?」  
 
「はい、行ってきます。少しの間、失礼します」  
 よほど切羽詰っているのか、織江は挨拶もそこそこで椅子から立ち上がりトイレに向かった。すぐに智  
花も織江の後を追うようにトイレに向かった。すぐ外に外来用トイレがあり織江が女子トイレに消えてい  
く、3メートルほど後を追っていた智花も廊下から女子トイレに入ろうとした瞬間に突然の崩壊が訪れた。  
「えっ、……や、やだぁ……と、止まってよぉ!」  
 ――ジョロジョロジョジョジョ…………  
 見る見るうちに智花のパンティに温かい水分が覆うと、吸収量の越えたパンティから大量の小水が濁流  
となって大腿を伝わり河川となったり、そのままパンティから床に滝となったりした。ミニのスカートも  
汚しながら小水は床に黄色い水溜りを形成した。  
 智花の悲鳴によって、何事かと駆け寄ってきた患者や医療スタッフに囲まれるようにランドセルを背負  
ったままの少女は、女子トイレの手前でパンティのまま放尿を続けた。  
「見ないでぇぇ!」  
 智花は立ち尽したまま悲鳴をあげて壁に手を預けた。周りの視線が顔を上げなくても突き刺さる。その  
視線から逃れるように下を向いた眼下には、彼女の転落を象徴するように黄色い雫が勢い良く垂れ流れて  
いた。  
(ど、どこまで出るの?……と、止まってよ……お願いだから、おしっことまってぇ!……)  
 いくら自分の意志で止めようとしてもおしっこは出尽くすまで止まることがなかった。最後には中年医  
師が言ったように400mlほどの大量の排泄量であった。  
「うぅぅ……」  
 
 ようやく放尿が終わっても智花から一定の距離を置いた人たちは、誰も手を差し伸べてくれなかった。  
蛭間も距離を置いて惨状を見ている一人であった。女子トイレ前は息を呑んだように静かになり、少女の  
啜り泣く声がやけに大きく聞こえた。その後、女子トイレの中から戸の閉まる音と水を流す音が聞こえて  
くると足音とともにすっきりした顔の織江が出てきた。  
「智花ちゃん、また、お漏らししたの?……」  
「あ、あうぅ……」  
「看護学生さん、智花は今日何回お漏らしをしたんだ?」  
「これで3回目です。支給されたパンティが全部汚れてしまいました」  
 織江と蛭間のやり取りに野次馬がざわめく、美容整形外科外来から帰るときに浴びせられた揶揄よりは  
ましであったが、それでも少女の失態を揶揄する発言が多く、彼女の心は傷つけられた。度重なる失禁は  
智花にとって一生拭いきれないような汚点であった。  
「まあ、今日漏らしたばかりだと完全に乾いてないだろうが、一番はじめに漏らしたパンティと穿きかえ  
るんだ」  
「や、やだぁ……ゆ、許してください……も、もう二度とお漏らししませんから、あんなの穿かさないで  
ください……」  
「本当に二度とお漏らしをしないと約束できるのか? 約束を破ったらどうして貰おうか、そうだな、智  
花がお漏らしばかりしてまったく排尿のサンプルデータが取れないから、今度漏らしたら、床にお漏らし  
したおしっこを口で掃除して貰おう。小便が身体の中に入って新しい小便になるし、床も綺麗になるし一  
石二鳥だろう。それができるなら新しいパンティを与えてやっても良いぞ」  
 
「うぅ……」  
「どうするんだ? お漏らし智花」  
 蛭間が提示してきた条件は智花にとって到底できそうにない劣悪な条件であった。だからと言って、お  
漏らしをしたパンティを穿くなどという気持ち悪いこともできなかった。彼女が導き出した答えはもっと  
も忌避していた物であった。  
「お、オムツを穿かせてください……」  
「どうして、智花はパンティが穿きたかったんだろ。新しいパンティでも失禁パンティでも好きな方を穿  
かしてやると言ってるだろうが」  
「ぱ、パンティ……は、穿きたくありません……」  
「パンティを穿きたくないことないだろう。普通は3歳児からパンティを穿いて過ごしているぞ。それで  
も智花はオムツが穿きたいのか?」  
 陰湿な蛭間は智花の羞恥心や屈辱をどこまでも搾り取る。頬を紅色に染め上げた智花の瞳にはいつのま  
にか、真摯に哀願するようなキラキラした潤んだ瞳になっていた。汚されて貶められてなお瞳の色は清純  
無垢な輝きがあった。状況が悪ければ悪いほどその輝きは最高級の宝石のように美しかった。  
「お、オムツが穿きたいです……」  
「小学生のくせに、赤ちゃんが穿くオムツが穿きたいんだな」  
「は、はい」  
「それなら、みんなの前で大きな声でこう宣言するんだ」  
 中年医師が耳元に近づいてくると智花はビクッと震えた。そして、囁かれる言葉を聞くうちに上着を握  
り締めた両手に力が入るのが見えた。しかし、彼女は抵抗らしい抵抗をせずに生まれてから綺麗な言葉し  
か語ったことのないような初々しい唇から羞恥に満ちた宣言を奏でた。  
 
「み、みなちゃま……き、聞いてくだちゃい……ほうちとくちゃいせいの白石智花は……お、おちっこも  
ひちょりでまんぞくにできない赤ちゃんです……と、智花は、ちょ、ちょうがく5年生でちゅが、オムツ  
小学生とちて、オムツをはかちぇてくたちゃい……」  
 
 
…………続く  
 
 

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