昔々。その昔。  
山の奥でおじいさんとおばあさんが暮らしておりました。  
二人はとても仲が良く、性格も穏やかで、日々二人寄り添うようにして暮らしておりました。  
決して豊かな生活ではなく。子供にも恵まれませんでしたが、  
二人の生活はそれはそれは幸福に満ちたものでした。  
 
ところがある年の冬。とうとうおばあさんが倒れてしまいます。  
 
「ああ…おじいさん。わたしは、わたしはもう駄目です…」  
「何を言っているんだばあさん!わしを一人にするつもりか!?」  
「すみませんおじいさん…。ああ、せめて子供がいれば…。わたしが子供を産めていたら…」  
「おじいさんを一人にすることもなく…その子供も子供を産み…」  
「家族を作り、賑やかにおじいさんの傍に居てくれたでしょうに…」  
 
そう言うとおばあさんは息を引き取りました。  
最後目の端から零れた涙を見て、おじいさんも耐え切れずにその場で泣き出しました。  
ぼろぼろ、ぼろぼろおばあさんの亡骸にしがみつきながら、両目から涙を溢れさせました。  
 
「子供…作ろうよ、ばあさん…!」  
「二人の子供を、作ろうよ…!嫌だよ、おとめちゃん!嫌だよ…!おとめちゃん…!!」  
「ずっと、ずっと一緒に暮らして来たじゃないか…!」  
「わしを一人にせんといてくれよ…!!」  
 
その時でした。  
おばあさんの体がきらきらと輝き始めました。  
 
「おとめちゃん!?」  
 
光に包まれたおばあさんの姿を、おじいさんは慌てて抱きしめました。  
光が包む様子がまるでおばあさんが消えてしまうようで、泣いた顔のままでしわくちゃの手を伸ばしました。  
しっかりと抱きしめている体が、おばあさんの華奢な体が、だんだんと小さくなっていきます。  
光のせいで眩しくてよく見ることは出来ませんでしたが、  
このままおばあさんが小さく小さくなって消えてしまったらどうしようかとおじいさんは怯えました。  
だから必死でおばあさんの体を抱きしめ続けました。  
光が収まったとき、おばあさんはまだそこにいました。  
しかし。  
 
「……おとめちゃん?」  
「あ、あれ…?おじい、さん…?」  
 
その姿は十代の、その名前の通りの「乙女」の姿になっていました。  
 
 
つややかな黒髪。くっきりとした二重。  
若い頃の姿のままでした。村でも評判の美少女だったおばあさんは、あの時の姿のまま、  
おばあさんの記憶を持ったまま、おじいさんの腕の中に居ました。  
 
「これ、は…?」  
 
驚愕するおじいさんに、おばあさんは笑います。  
 
「仏様が、お情けをくれたのかもしれません。わたしが、死ぬ間際、せめておじいさんに子供を産めたら…と願ったから…」  
「だから…おじいさんに子供を産んであげられるまでは…と…」  
 
おばあさんは、いや、おとめさんは、おじいさんをそっと畳に押し倒しました。  
おばあさんの黒髪がふわりとおじいさんの頬にかかり、おじいさんは花の香りがする、とぼんやりとする意識の中で思いました。  
まるで夢の中のような意識の中。それでもおとめさんの美しさはさっきの光よりももっともっと眩しく、  
そして、鮮やかなものでした。  
 
するりと着物が脱ぎ捨てられました。  
張りのある肌。ピンと立った乳首。  
そして、うっすらとした茂みに隠れたおとめさんの「女」が、仰向けになったおじいさんの目の前に差し出されました。  
 
「それでも…仏様のくれた時間が、いつまでなのかは、わかりませんから…」  
「だから…おじいさん。子作り、しましょう…?今すぐ…」  
 
ほんのりと顔を赤くしながら、そっとねだってくるおとめさんに、  
おじいさんは泣いてぐしゃぐしゃの顔のままでむしゃぶりつきました。  
 
寝そべったおじいさんの顔の上に、おばあさんのあそこがある姿勢でした。  
脚を大きく開いて跨る姿になっている為、おじいさんの目の前にはぷっくりとしたおとめさんのお豆が丸見えでした。  
チロ。と舌を尖らせてお豆に軽く触れさせると、それだけでおとめさんはんん、っと身を捩りました。  
 
「ああ…おとめちゃん…おとめちゃん…!」  
 
尖らせた舌先で、執拗にお豆さんをねぶりまわせば、おとめさんはたまらない、というように片腕を畳についてしまいました。  
なにせ長年連れ添った仲です。相手の体の事は何もかもお互いにお見通しでした。  
おとめさんの一番感じる場所を、おじいさんはよく知っていました。  
だから感じさせようと、そこばかりを執拗に狙いました。  
 
「おじい…、っ…!ああっ、だめ…!ごさくさん…!だめ…!!ごさく、さん…!!」  
 
おとめさんのお豆さんは、小さめの形をしていました。  
よくよく見詰めなければ、そこにお豆があるのかどうかすらわからない程です。  
おじいさんはまず舌でお豆さんの付け根を擽る事から始めました。  
こうすると皮でぴったりと包まれていたお豆さんが、皮の中でむずむずと動き出すのを知っていたからです。  
ぴくぴくとおとめさんの太股が震えます。つぅうっ、と透明な雫が一筋、おとめさんの白い肌を伝っていきました。  
おじいさんが舐めているから、その唾液がついてしまったから、ではきっとないでしょう。その証拠におじいさんはちゅうう、と時折何かを零すまいと啜っていました。  
 
「はあ…おとめちゃん、もうこんなにして…」  
「い、いや…だめ…!いわないで、ください…!」  
 
黒髪をぱさぱさと揺らし、赤くなって首を振るおとめさんを、おじいさんはいとおしそうに見詰めました。  
 
「ああ…おとめちゃんと…あの頃のおとめちゃんとまたこう出来るなんて…」  
 
すべらかな肌。  
匂いたつような色気。  
一緒に過ごして来たどの時代のおとめさんもおじいさんにとっては大好きなおとめさんに違いはないけれど、  
それでも目の前に居る若々しい容姿のおとめさんは、おじいさんを興奮させるのに有り余るものを持っていました。  
下半身が熱くなってくるのが、はっきりとわかります。  
ああ。この年で、またこういう事をする事があるなんて。  
しかも、生涯ただ一人と心に決めたこの人と。またこうして。  
 
ふと、おじいさんはおとめさんの腰に触れている、自分の手のことが気になりました。  
皺くちゃで。ヒビ割れていて。長年の野良仕事で黒ずんでしまった手のひら。  
まるで女神様のようなおとめさんに、この手で触れていいのだろうか。  
おじいさんは躊躇いました。  
 
「ごさくさん…?」  
 
その様子を見ていたおとめさんが、どうかしたのかと心配そうにおじいさんを見下ろしました。  
 
「どうか、しました…?」  
「ああ、いや…」  
 
おじいさんは自分の手を見ます。  
綺麗な姿のおとめさんと比べて、今の自分はなんと老いてしまった事でしょう。  
手のひらをまじまじと寂しそうに見詰めるおじいさんに、感じる所があったのでしょう。おとめさんはそっとおじいさんの手を取り――そのまま、自分の秘所へと導きました。  
 
「おと…っ!?」  
「ねえ、ごさくさん…さわって、くださいな…」  
 
おとめさんは自分から、おじいさんの指先をお豆にこすり付けました。  
腰を揺らすようにして。掴んだ手でまるで自慰をするような感じで。  
ぬるり。としたものがおじいさんの手を濡らします。  
そのぬめりがお豆に擦れて、おとめさんは気持ち良さそうな吐息を吐き出しました。  
 
「ここ…ここが、すき、なんです…」  
「こうして、ごさく、さんの、手で、触られるのが、昔から…、っ」  
 
手の甲でただ擦っているだけなのに、おじいさんは指先を動かしてもいないのに。  
だんだんと皮を持ち上げるように中のお豆は膨らんで、とろとろとしたものは止まることなくおじいさんの手を濡らしました。  
 
「おとめ、さん…!」  
「あ、あ…っ。おねがい、おねがい、だから、っ…」  
 
さわって。というおとめさんの懇願は、おじいさんの指先の動きで掻き消えました。  
もう押し上げんばかりになっていた大きさのお豆さんを、おじいさんの指が摘んでそのまま強くつねりました。  
ひうっ。と掠れた声を上げ、大きく背中を仰け反らせて――  
おとめさんはびくびくと数度身を震わせ、絶頂を迎えました。  
 
はあ、はあっ、と荒い息が、おじいさんの耳を擽りました。  
うっすらと汗ばんだ肌が、かすかに漏れる月明かりの中で照らされています。  
窓の向こうには満月。  
長い長い黒髪を垂らし、上気し、赤くなった顔の中、水気を帯びた瞳がじっとおじいさんを見詰めておりました。  
 
「ごさく、さん…」  
 
おじいさんの手を、おとめさんはそっと握ります。  
自分の体から溢れた愛液で、おじいさんの手は汚れてしまっていました。  
それを丁寧におとめさんは舐めとっていきました。  
 
「あなた、だけなの…あなた、だけ…」  
「わたしの、全てを知っているのは…」  
「わたしの体に触れたのは、後にも先にもあなただけ…」  
 
指先に。爪の上に。おとめさんは口付けを落とします。  
大事そうに。いとおしそうに。  
とてもとても大事な気持ちを、ひっそりと伝えるように。  
達した直後の余韻のせいなのでしょうか。おとめさんの姿はそれはそれは卑猥で。  
けれども美しく。暗闇の中まるで白い肌はそのものが輝いているようでした。  
 
「…あなたに…、触れられるのが、好きなんです…。  
 あなただから、ごさくさん、だから…。  
 触れられて、嬉しいんです…。  
 あなただからこんなにも、わたしは感じてしまうんです…。  
 この手のひらで、ずっとあなたはわたしを甘やかしてくれましたね…。  
 わたしは、あなたの手のひらが、今も昔も、とても好きです…」  
 
昔から決して綺麗な手のひらではなかったけど。  
それでも、分厚い皮膚も。皺の刻まれた指先も。どれも自分を今まで守ってきてくれたあなたのもの。  
ひとつひとつ丁寧に。おとめさんは自分の心の中をおじいさんに伝えていきました。  
そしてゆっくりと、再び自分の中心に、その指をそっ、と押し付けました。  
 
「いくらでも。いくらでも…。あなたになら、触られたいんです…。お願い。ごさくさん」  
「わたしを、もっと…」  
 
その続きは羞恥のせいか、おとめさんは口に出す事は出来ませんでしたが。  
おじいさんはただ笑って。  
そっとおとめさんに口付けました。  
 
「あん、っ…!あ、ああ、あー!」  
 
あられもない声が、狭い家の中で響いていました。  
体勢を逆転され、おとめさんが畳の上に仰向けになっている姿でした。  
その脚の付け根の辺りに、おじいさんが顔をうずめています。  
ゆっくりと硬く尖らせた舌先でおとめさんのお豆を転がしながら、おじいさんは笑って言いました。  
 
「おとめちゃん…わかる?これ…」  
 
ぴん、とおじいさんはおとめさんのお豆を弾きます。  
あうう、っと苦しげな声を上げ、おとめさんがもがきました。  
おじいさんは笑ったままです。決して苦しさから出た声ではないと、知っていたからです。  
 
「おとめちゃんは触れるか触れないかくらいで、舌でねぶられるのが好きだよね…」  
「昔から、ずっと変わらない…」  
 
いまだおとめさんの大事なお豆は、皮を被ったままでした。  
しかしおじいさんはその皮をむいてしまおうとはしません。  
そうっと、そうっと皮の上から、舌先を動かし、舐め回していきます。  
一度、何十年も昔、ついつい好奇心に負けておとめさんのお豆を剥いてしまって、  
あまりに敏感すぎるその箇所への刺激に耐え切れずおとめさんが失神してしまってから、  
おじいさんはそこを触る時には非常に慎重になっていました。  
でも、触るとおとめさんは腰をくねらせて非常に感じてくれるので、そうっと、そうっとゆっくりと触るのはやめませんでした。  
 
ぷるぷると皮に包まれたままのお豆さんが、与えられる快楽にその身を震わせていました。  
ほんの僅かに見える皮の向こうのお豆さんは、すっかり当初の面影もない位に膨張しており。  
もう限界、と訴えているようでもあり。更なる刺激を待っているようでもありました。  
 
「あ、ぅっ!」  
 
皺皺のおじいさんの指が、そうっとお豆さんを摘み上げます。  
きゅっ。きゅ。と数度扱くように指先を動かしてやれば、おとめさんは涙目でおじいさんを見上げました。  
指先の皺がいい具合に、おとめさんのお豆を刺激しているようでした。  
厚くなってしまった指先の皮膚もどうしようもないくらいの刺激で、  
おじいさんが何かすればするほどに、おとめさんは身悶え、あらぬ声を響かせました。  
 
「ひ、ん、っ…」  
 
幼い子供のような声を、おとめさんは漏らしました。  
おとめさんの中へとおじいさんは指先をそろりと差し入れて、  
お豆さんの裏側をこりこりと刺激していったのです。  
 
彼女の嬌声に混じり、くちゅりと水音が響きます。  
かすかな衣擦れの音。そして肌が触れ合うかすかな音。  
お互いの名前を呼ぶ声。ぱさぱさという音はおとめさんの髪が揺れる音でしょうか。  
お豆さんの裏側を刺激したそのままで、おじいさんはお豆さんにも口を寄せ、ちゅうっと吸い付きました。  
ころころと口の中で転がし、口全体に含んで吸い。舌でねぶり回し、歯で弱く噛む。  
その都度おとめさんは泣き声のような声で、何度もおじいさんの名前を呼び、  
全身に汗の玉を浮かび上がらせて、その白い肢体をくねらせ、果てました。  
 
「ごさく、さん」  
 
おとめさんの腕が、おじいさんに伸ばされました。  
 
「おとめちゃん」  
「ごさく、さん。おねがい…、もう…っ」  
 
荒い呼吸。上下に動く胸。  
自分だけを見つめてくる視線。  
大事な大事な、いとしい人。  
 
おとめさんが何を求めているのか、おじいさんはわかっていました。  
だから焦らす事などなく。その体を寄せていきました。  
 
「おとめ、ちゃん…」  
「吾作さん…。愛してます。愛して、います…」  
「うん、わしもだ…お留ちゃん…。わしは、ずっとお留ちゃん、だけだ…!」  
 
ぎゅうっ。とお互いにお互いを抱きしめて。  
二人は混じり合うように、体を重ねていきました。  
二人の他には何もなく。お互いの体しかありませんでした。  
 
でも、それで充分でした。  
 
 
――――翌朝。  
 
おじいさんが目を覚ますと、隣にはおとめさんが居ました。  
白い布団の中。白い着物で。白い髪の毛で。  
一糸乱れた様子もなく、布団の中で静かに眠りについていました。  
…あのまま、自分は泣き疲れ、夢を見てしまったのだろうか…とおじいさんは考えました。  
おとめさんはおじいさんと共に過ごした時間の姿のまま。  
おばあさんの姿で永遠の眠りの中に居ました。  
 
そろりとおじいさんはおとめさんの顔を撫でます。  
ひんやりとした硬い皮膚の感触が返って来ました。  
まるで女神のような、天女のような美しさだったあの頃のおとめさん。  
でも、この顔のおとめさんも誰よりも美しい。とおじいさんは思いました。  
 
「…う、っ…」  
 
ぼろぼろと。おじいさんは両目から涙を零しました。  
夢の中、おとめさんは何度も「愛している」と言ってくれました。  
それが、とても嬉しくて。  
嬉しくて嬉しくて。  
夢の中で何度も相手に返した言葉を、おじいさんは夢から覚めてからもおとめさんに伝えました。  
 
「自分もだよ…自分もだ…」  
「愛してるよ…お留ちゃん…!おとめ、ちゃん…!あいしてる、よ…!」  
 
ぼろぼろ。ぼろぼろと止まることなく涙はずっと両目から溢れ続けます。  
声も涙も枯れるほどに泣いても、悲しみは癒える事はありませんでした。  
おとめさんとの楽しい記憶も、消える事はありませんでした。  
 
 
あなたに出会うことが出来て。  
自分はとても幸福でした。  
 
 
それからおじいさんがどう過ごしていたのか、それは誰も知りません。  
ただ、おじいさんはただ一人をずっと愛し、とてもとても幸福だったといいます。  
 
 
おしまい。  
 

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