月が雲ひとつない夜空にきらきらと輝いている。
そのおだやかな光が窓から差し込んでいる洋室の古びた扉が音をたてて開く。
たてつけがあまり良くないのかドアが軋む音をさせながら人がはいってくる。
妖精といったような儚さ、神々しさをまとっている女性だった。
腰まで伸ばしたブロンドの髪は独特の結い方をしており些細な振動にもさらさらと揺れる。
暗い部屋の中で月の光をあびて金色の髪の毛は輝いている。
わりと背が高くそして無駄な脂肪はない洗練された肉体と少しながく尖った耳が目をひく。
彼女はいわゆるエルフという種に属している。
「……お、おい。ユノ、入るぞ」
若干ハスキーな声で遠慮しがちに部屋の主に呼びかける。
「可愛い―――――――――! 可愛いよフィーちゃん! さすが僕の恋人っ!」
それは彼女のカラフルな花柄パジャマについての言葉らしい。
「うぅうるさい!可愛くない!これはおまえが用意したものだ!」
布の間から白磁のような白い肌を時折のぞかせて彼女は恥ずかしがる。
そして彼女は壁の近くに置いてあるベットにむかってゆく。
寝具から半身おこした一人の男がいた。
雪のように白く、病的なほどに痩せている。
先ほどユノと呼ばれた男だ。
彼はほんとうにうれしそうな表情を浮かべ、毛布のはしを少しあげて彼女をうながす。
「どーぞ。それじゃあいっしょにねよう!」
「……本当に一緒にねるのか?その、私は…………」
彼女は恥ずかしそうにうつむきながらつたない返答をする。
「ほら、恋人同士だから恥ずかしくないよ。」
わずかに彼女は考えたのちにベットの端に近づく。
「わ、私のほうが恥ずかしい」
「大丈夫だよ。ほら早くこっちにおいでフィネちゃん!」
布団をぱたぱたと手で叩く男に自分のなまえをよばれてビクッとする。
「……はい」
うつむきながら弱弱しく返事をする。
男の方を一睨みしてからおそるおそると毛布の中に体を滑らせる。
彼には背をむけるかたちにして真新しい寝具の匂いを嗅ぐ。
すこしの間だけ沈黙が月明かりの指す部屋に訪れる。
いまの自分の状況は何処から間違えてしまったのかと彼女は考える。
彼女は現在、二百二十二歳になる。
一ヶ月ほど前ほどにエルフの偉い人にスパイのようなことを命じられ、
彼のもとでうまく恋人役として同棲し観察と報告の日々となった。
こんな任務は好まなかったが上からの命令なので仕方がないと引き受けた。
いまでは自分の十分の一ほどしか生きていない彼に可愛がられている。
彼はかなり奇妙な性格をしていた。
彼女の背後から声が聞こえる。
「ねぇ、フィネちゃん。お休みのキスはしてくれないの?」
じっと彼女の瞳をのぞきながら近づく。
「キ、キス? 接吻のことか? や、よせッ。こんな……んんっ」
閉じようとする口の間から少し強引に舌を入れ彼女の舌に絡ませる。
彼女の唾液をユノがのみ込み、フィネは恥ずかしさより屈辱を味わっていた。
「ちゅぷ……んっ、ふっ。しゅとっぷ!」
数分間そうしていたがなんとか彼をやめさせたと思ったとき、
すでに彼女の胸部には彼の手がまわっていた。
そうしてゆっくりと彼女のあまり大きくない乳房を撫でる。
「なにしてんだぁああああああああああああああああ」
布団が軽快に舞う。
彼女はその長い耳までも真っ赤にしながら警戒態勢に入る。
胸の前で手を組みあたふたする。
「恋人のスキンシップだよ! 人間の世界では当たり前のことなんだ。
でも、それも君のことがすきだからなんだよ」
婚前の男女がこのような事をするのはどうかと思ったが
ここで拒否するのは恋人らしくないのか、と彼女は思考する。
体をちょっと触られるだけじゃないか、必死に心のなかで暗唱する。
「本当に一緒にねるだけなんだよな……?」
二人の間に流れる時間がとまったがすぐに彼の言葉が静かに流れ出す。
「はい」
「本当なんだな……?」
フィネはからだの力を抜いて彼に身をまかせる。
「よかったぁ、フィネちゃん」
どこにそんな力があるのかと思うくらいに彼女の体をひょいとだっこの状態にもっていく。
子供をあやしている母という感じで、まるで彼女が幼児になったみたいだ。
「う、うん。……そうか」
元は白く透き通った肌が朱に染まり緊張して口がうまく動いてない。
彼のか細い腕が彼女の頭を優しく撫でていく。
「うぅ……こんなの」
彼女にとっては芝居でも自分より下に認識している生物に上から接されるのは
こころの中に変な気持ちを生み出す。
それと同時に悔しくもあるが何とも言いがたい安心感で彼女を満たしていた。
ここ最近、異国の地での緊張が続いていたからかもしれない。
「フィーちゃんの髪の毛さらさらだぁ! 君のきゅーてぃくるがこう……」
うれしそうに髪の毛をいじくるユキはただただ純粋なように見える。
彼は可哀相にもすっかり彼女の演じている魅力の餌食になっていた。
しばらく頭部を撫でまわしていた彼は最大の疑問に気がついた。
「耳触わったらどうなるの!?」
彼の枝のように細い太ももの上に乗っていた彼女は動揺する。
「そっ、それだけはだめだ!
耳への愛撫などはエルフの女が真の思い人に捧げるものであってだなっ。人間とは……」
だが遅かった。
彼はもう彼女の長い耳を撫で始めていた。
「ひゃっ! おいっ、やめろぉ……んっ。耳はっ、だめぇ。ああんっ」
そんなことにかまわず彼はさらに優しく愛撫していく。
「フィネちゃんたら、もうっ可愛いなぁ。
たっぷり可愛がってあげるよ。エルフの耳攻めは夢だかからねっ。」
満面の笑みを浮かべながら膝の上のエルフに微笑みかける。
だんだんとフィネの体が火照ってきて服の中に熱が充満する。
「もうしまいにしろぉ! あっ、やめっ」
「僕ら自他ともに認めるパーフェクトカップルじゃないか。もう君は本当にかわいいなぁ」
青白い顔を爽やかにやにやさせながら今度は耳を嘗めはじめる。
「…………んっ。出会ってまだ短いじゃないかッ」
彼女は耳をさわられて本能的に興奮してきてしまい頬を赤く染めている。
もともと森での生活で聴力が発達しそれとともに感覚神経も発達したのだろうか、
などと考えながらユノは耳を弄ぶ。
本当にうれしそうな笑みを彼は浮かべながら、彼は子供がからかうかのよう指で耳をはじいた。
「やぁっ、やめなさいっ」
彼女の目から涙がすこしこぼれた。
「もうこんなに可愛い君がわるいんだぞぉ! それに恋人なんだからだれも責めないよ」
敏感に感じてしまうエルフにユノは喜んでやさしくぺちゃぺちゃと舐めつづけた。
「ひゃぁうんっ。なっ、なめちゃだめ。なめないでええええええええッ」。
いままでの数百年、自慰など数えるほどしかしなかった彼女はすぐにイってしまった
「フィネちゃん。可愛い」
そういいながら今度は右手を彼女のショーツに突っ込みまさぐる。
「ショーツのなかべちょべちょ」
彼女はからだをねじらせて彼の手を外にどける。
黙っていた彼女は涙目になりながらプルプルと怒りと羞恥で体を震わせている。
「いやぁ。私はエルフなんだぞぉ、この世の生物の長たる種だぁ」
小さな声で彼女はつぶやいているところを後ろからぎゅっと抱き締められる。
「愛と君の前ではそんなこと僕には関係ないよ」
彼は指を月明かりに照らしながら口に運んでおいしそうに舐める。
「ひゃっ、そんなのなめるなぁ。わたしの、わたしのっ……」
顔を赤くしながら恥ずかしそうに彼をとめようとする。
「じゃあ、そろそろ本番をしましょう」
彼はいとおしそうに彼女の頭と耳をその手のひらでやさしくなでた。
「それではお召し物をお脱ぎいたしましょう。お姫様」
そういって彼女の肢体を隠している花柄の小さなパジャマを脱がせる仕草をする。
「…………わかったから、自分で脱ぐ」
お父様、お母様すみません、フィネは大事な貞操を人間ごときに渡してしまいます。
自分は任務を必ずや達成しますからと彼女は決心した。
パジャマに震える手をかけて、じわじわとぬいでいく。
しばらくするとかたちはいいが彼女のあまり大きくない胸、
淡いピンク色をしている小さめの乳輪、
無駄な脂肪のないきゅっとしまった腰回りがあらわになる。
背が高く痩せていてスレンダーだ。
金色をした陰毛が彼女の性器のまわりをぼんやりと覆っている。
「フィネさんのおっぱいちっちゃくてかわいいね。手のひらサイズ」
彼の腕が伸び彼女の胸にぴたっとくっつき、そのまま揉みしだく。
最初はフィネも絶えていたが、長い間揉まれていると快感が体に走る。
「あ゛あぁっ、そんなにつよく揉むなぁ」
体をくねらせながら必死に発情しまいとしているのがまた艶めかしい。
だんだんと乳房全体がうっすらと朱に染まる。
彼女の小さい乳首も勃起してかなりエロい。
「乳首たってるよ。僕のような人間相手でも感じてくれるの?」
幸福そうな顔をして指先で今度は乳首をつまんでひっぱたり戻したりする。
きゃっ、と彼女が驚いたようにしてあまい嬌声をだす。
彼女はただ恥ずかしそうに上気した体をさらさらしている。
「姫は舌で転がされる方がお好みかな?」
目の前のエルフを抱き寄せると彼女の乳房にしゃぶりつく。
「フィネちゃんの、おっぱいおいひぃよ」
「ひあああぁっ、あ゛ぅっ。吸っても乳なんぞ出るかぁ」
そうしてあえぎ声が部屋の中に響く。
それをしばらく聞いて満足したのか彼は口をはなし彼女の股に視線を落とす。
彼女の女性器を凝視してから両手で触る。
ぐちょと水分を含んだ音とともに桜色をした性器がひろがる。
あたりに特有の臭いが漂う。
「綺麗だね。あまり使ってないのかな?」
「そんなことするわけっ、や、やめろっ、じっくり嗅ぐなッ」
彼女の股からときおり愛液が垂れて真っ白なシーツに丸い染みをつくる。
恥ずかしいのと見られている快感で膝ががくがく震えてしまう。
「フィネさんのいい匂い」
陰部に鼻をあて少し大げさに臭いをかぐ。
「こんなっ、エルフである高貴なわたしがっ……人間なんかに」
悪態もついてみたが彼に頬をぷにぷにとつつかれる始末だ。
さっと押し倒されて横に添い寝する状態にされて性器にゆっくりと指がはいってゆく。
侵入をはじめは一本でも拒んでいたが徐々に指がどんどんと増える。
いやらしく前後に数本の指が透明な粘液とともに出し入れされていく。
「あ゛ぁ、ひゃめぇ」
彼の指に彼女の膣内のひだが吸いついてねちょねちょした液がからみつく。
全身の力が抜けユノのされるがままになっているところへ彼の下半身が迫る。
「フィネちゃん、気持ち良くなってきた? そろそろ挿れてもいい?」
「待てっ、おい、そんな……」
すぐさま彼女の顔の前でズボンを脱いで膨張して大きくなった陰茎を出す。
だいぶたまっているのか先走り汁がでてかなりグロテスクだ。
「これが……男のおっ、おちんちん…………」
手で顔を隠しながらわずかな隙間から遠慮がちに見つめる。
「こんなにもおおきくなるものなのか? 昔、沐浴で見たお父様のは親指くらいしか……」
彼が寝そべっている困惑している彼女の股を開かせる。
「もうこれだけ濡れてれば挿れても痛くないよね?」
まず彼女が赤ん坊のように仰向けに寝ているところへ丁寧に向かいあう。
そしてぐりぐりと彼女の中に男性器がのみ込まれてゆく。
彼女の体だビクッとしながら初めて味わう感覚に身をゆだねている。
腹部に自分のものではないものが入っていてなんだか不思議な感じだ。
「う゛っ、そんなぁっ、おちんちんが挿って、おなかがっ」
うれしそうにしている彼はすこしづつ腰を動かしては休めたらりする。
だんだんと動きが激しくなるとそれに合わせて彼女が甘い声を出す。
エルフも新鮮な感覚に酔いしれて腰を振り始める。
「君のエッチな穴、キツキツで気持ちいいよ。それにぷりぷりのひだが吸いついてくる」
「そんなこと言うなぁ。わたしはエルフだぞぉ」
頬を染めた顔を隠すようにして抗議する。
すかさず彼は彼女の体の異変を的確に告げる。
「この、淫乱エルフっ! こんなにエッチな涎をたくさん垂らしてるくせにッ」
「うぅっ……。このわたしが淫乱なんて……ああ゛ぁっ!!!!」
ユノはまた一気に腰を大きく動かす。
「いっ……あっ、うごいちゃだめぇええ!!きちゃうっ、なにかきちゃうぅううう」
快楽に負けぬように我慢しながら一生懸命訴える。
「どうしようかな? このいやらしいエルフのお姫様は」
すぐに彼は腰は静止させたが、
彼女の火照ったからだは満足がいかなくなったらしくまだ動作を続ける。
「ねぇ、フィネちゃんのおまんまんがまだほしがってるよ」
「そんなわけあるかぁ……」
そう言いつつもねだるかのように甘い嬌声を響かせながら腰をこすりつける。
こんなことを数時間もつづけていた。
動きに波をつけることで性的絶頂に達せない彼女は理性が崩れてくる。
ただ快楽を得ようと自ら腰を動かす。
「ちゃんとお願いできたらしてあげるよ。私のエッチなエルフさん」
「やっ、いやぁっ、いじわるしないでぇ。
ほしいですっ、ちょうだいっ、くださいっ。気持ちいいのぉおおおおおお!!」
もうプライドのかけらも残っていないように必死にのどを震わせ叫ぶ。
彼女は半身を起して彼の体にしなだれかかり、まるで本物の恋人のようにキスをせがむ。
唇と唇が触れ合う。
男の舌が彼女の咥内に侵入し舐めまわし彼女はこそばゆい顔をして、
いつもの凛とした表情を崩してだらりとさせる。
「んっ……。んむぅっ、んっ」
ユノは彼女を抱っこするようにしてそのまま腰を上下に動かす。
彼女の膣もそれに合わせてきゅうきゅうと彼の陰茎を締め付ける。
「フィネちゃん、もうっ膣内に射精すよっ」
「あ゛あ゛あ゛あああぁぁっ、だめぇっ、膣内はだめええええええええぇ!!!!!!」
もう彼の男性器は限界に達して彼女のなかに精液をぶちまけた。
白い精液が結合部分から入りきらずにあふれて噴き出す。
久しぶりにこの部屋に静寂がもどる。
「あぁっ、やめろっていったのに……」
だらんと彼女は息を荒げながらその美しい肢体を投げ出した。
はたして体の構造が同じである人とエルフが交わったときに何が生まれるのだろうか。
ハーフか、人か、エルフか、それとも何も生まれないのだろうか。
そんなことをふと思いついてユノはふふっ、と笑みを浮かべる。
「はやくぬいてぇ。シャワーを、シャワーをはやくあびなきゃ」
彼が抱きついていて彼のうでから必死に抜け出そうともがくも抜け出せない。
やっと行け出したときにはユノは彼女の上で眠りについていた。
おそらく数時間は目覚めないだろう。
彼女が恋人として潜入してから見たことのない彼の寝顔をまじまじと見た。
「なっ、何をやっているんだ。わたしはッ」
今まで彼は好意はみせたが隙はみせなかったが、やっとこれでこの施設の資料室を探ることができる。
彼女はその前にシャワー室に行き、
その清流で念入りに汗や彼の唾液、精液がこびりついた髪や乳房、陰部を重点的に洗った。
洗っても洗っても中からだらりと精液が出てくる感じがする。
しばらくしてはじめて資料室に入ると中は紙束でいっぱいに満たされていた。
命令により必要なもの、めぼしいものだけ袋に詰め込んでいるとふとひとつの論文の束がふってきた。
題は『人間と亜人種の共存生活』のようなことが記されていた。
何となくページをめくる。
彼女はそれに書かれていることを見てひどく赤面して大切な資料の入った袋を落とした。
○
私はこの論文を机の上にいったん置く。
その昔、百年くらい前に国家研究員にスパイが接近し、
人とエルフが一時期ひとつ屋根の下で暮らしたことがあったらしいと記述してある。
よくプライドの高いエルフと傲慢な人間が一緒にくらしたな、とふふっと笑みを浮かべる。
執筆者は女エルフにだいぶ惚れてしまっていたのか、彼女の自慢で半分が埋まっていた。
途中でこれは無くなっていて、この後どうなったか知ることはできなかった。
私はさっと耳に髪をかけてその場を後にした。