俺は今まどろみの中にいる。身体を包むのは衣服と空気ではなく、柔らかな何か。一部の隙も無く俺の周りを覆っている。  
それは締め付けもせず、緩みもせず、ただみっしりと俺の周りを覆い、暖かなぬくもりと穏やかなリズムを伝えてくる。  
それは日差しのあたる音、水を吸い上げる音、吹き抜ける風の音。  
そして「彼女」の微笑だった。  
そのリズムは、何を求めて彷徨うことも無く、遷ろうこと無く、失うこと無く、「もう欲しいものはみんな、ここにありますよ」とでも言うように穏やかに刻まれている。  
その微笑とぬくもりのリズムが、俺に全身に染み入ってくる。  
ただひたすらに、心地よい。  
もう「あの日」から、一体どれほど過ぎたのかわからない。わからなくてもいい。ただ、おだやかなぬくもりと、それに包まれまどろむ自我が、  
「その時は近い」と告げている。  
 
楽しみだ。  
 
またやってくる「その時」を待ちつつ、まどろむ俺の意識は眠りに落ちた。  
 
月光が頬にちくちくする。おれはゆっくりと目を開いた。するとそこは夜の森。あの日と変わらない満月と森と泉だった。  
ちゃぷん  
水音に身を起こし、振り返る。するとそこには、  
 
樹精がいた  
 
泉のなかにに腰まで浸かり、目を閉じて髪を一房すすいでいる。女らしいなまめかしいラインをなぞる長い髪は水面で円を描いて広がっている。  
そのうちの一房を、大きな胸の前ですすいでいる。  
「♪〜〜♪♪〜〜」  
無心に、楽しげに、髪を洗いながらかすかに歌っている。  
彼女が目を開いた。華の様な微笑が広がる。  
「おはようございます。それとも、こんばんわ、かしら」  
そういいながら樹精は水面を割りつつ、こちらに向かって歩いてくる。  
「あなたの寝顔を見ていたら、もう我慢出来なくなって、火照ってしまって」  
縦に長く整った臍が水面から出た  
「少しでも落ち着こうと水を浴びていたのですが」  
ぱしゃん、繊手がすくった水が、彼女の胸で弾ける  
「こうしていても、『これがあなたの飛沫だったなら、きっととても熱いだろうに』と考えてしまうほど昂ぶってしまって」  
下腹部の陰りと、肉感的な太腿が水面から出た。  
「早く目を覚まして欲しい、と思っておりました」  
ぱしゃり、彼女は陸に上がった。足首まである緑の髪はぺったりと身体に纏い付き、半端に俺の視線を遮る。  
その隙間から見えた内腿は、水とは違う液体できらきらと輝いていた。  
俺の下腹部で、もぞりと立ち上がるもの。  
それを熱い目で見た樹精は、俺の首に艶かしい両の腕を絡ませ、  
「また、今夜も愉しみましょう、たっぷりと、朝まで」  
と俺に口付け、舌を絡ませつつ俺を押し倒した。  
三十日ぶりの満月、三十日ぶりの「その日」、樹の姿ではできない事。  
それの始まりは、彼女からのアプローチだった。  
 
樹精は普段、樹の姿しか取れない。人の形を維持するには莫大な力が必要なのだ。丸々一ヶ月間力を蓄え、  
さらに満月の力を借りてようやく人に化生する。  
また、樹精はその樹の身体のうちで一人だけお気に入りの人間を養うことができる。  
中の人間は老いる事無く、飢えることなく生きることができる。  
そして満月の晩が来るたびに、囲われた人間は美しい彼女たちと情を交えるのだ。  
それは何不自由なく満たされた一生と言えるだろう。  
少なくとも、俺はそう思っている。  
 
俺の身体の上で、樹精の肢体が踊る。舌を吸いあい、胸板の上で身をくねらせ、豊満な胸をひしゃげさせる。  
その間ずっと、実にうれしげな鳩のような含み笑いは絶える事無く、俺の耳朶をくすぐっていた。  
やがて・・・彼女の身体が樹液で艶光り、その豊満な胸がヌルヌルと俺の胸上で滑り出すころになると、  
俺の逸物はすっかり準備が整っていた。  
丸々一ヶ月間達する事無く愛撫され続け、わずか一晩に極上の女を味わいつくす。  
そのサイクルを何度も繰り返した俺のそれは、臍まで反り返るほどのサイズとなっていた。  
いまは二人の腹の間でビクビクと自己主張するソレを、樹精は尻だけを持ち上げ、すっかり濡れそぼり、潤みきった秘所へと招き入れた。  
じゅぷっ  
「はあぁぁぁぁぁ・・・おおきぃ・・・」  
媚粘膜への一ヶ月ぶりの鮮烈な刺激に、樹精は深く感じ入った。  
しっくりと馴染みつつも一生飽きの来ないであろう彼女の中で、俺はより大きく男根をいきり立たせた。その膨張を受けて、彼女は腰を振り始める。  
始めはぴったりと身を寄せ合っていたのだが、やがて彼女は焦れて騎上位へと体位を移した。  
 
そそり立つ肉棒が彼女の内臓を押し上げる。その感触に樹精は身を何度もよじった。  
俺の上で何度も跳ね回り、大きく揺れる彼女の肢体。その中でも一際激しく揺れる巨乳を両手で掴み、激しくこね回した。  
「あん、やん、もっと、もっといじって、こねて、むにゅむにゅってしてぇ」  
始めのうち樹精は背を仰け反らせて喘いでいたのだが、胸を刺激されるうちに身体を前へと倒してきた。  
目の前まで来た乳首を口に含み、舐め、食み、彼女の乳肉と樹液を満遍なく味わう。右、左、右、左、右と思わせて左。  
そのフェイントに、彼女はあっさりと陥落した。  
「むねぇ、胸でいっちゃう、いっちゃうのぉ」  
「ずいぶん早いな」  
「だって、だってぇ、久しぶりなんだもの、ずっと待ってたんだものッ、イ、イくぅうっ」  
彼女は全身を痙攣させて達した。一ヶ月ぶりの刺激に身体が心よりもだいぶ敏感になっているせいか、ずいぶんと早い。  
だがこのテンポにもお互いすっかり慣れている。そう、これはいつもの準備運動だ。  
だからいつものように彼女の尻たぶをしっかりと掴み、激しく腰を打ち込んでゆく。  
「あぁっ、イッたばかりでっ、はあっ、び、敏感になってるのぉッ、はげ、激しッ、もっと激しくして・・・ッ」  
わざと浅いところばかりを突き、彼女が焦れてきたところで深く奥を抉り、達したところで奥を強く擦り付ける。  
「はっ、はっ、はっ、もっとぉ、もっとふか・・・ぁぁぁあいッ!イイ、奥が気持ちっ、いいぃのおぉ」  
その度に変わる彼女の音色を聞いているうちに、俺にも限界が訪れた。インターバルのせいか、互いに相当早い。  
「俺も射精るッ、お、おおぉぉおッ」  
ドクン!ドクン!ドクン!  
「射、射精てるぅ、とっ、とっても濃いぃの、わたしの子宮押し上げてるのぉッ。あ、熱ぅいぃ〜ッ、熱いのでまたいっちゃうのッ」  
一ヶ月間溜まり続けた精液が彼女の胎内を焼く。それは射精の勢いとあわせて、弾丸のように子宮を打ちつける。その感触に、彼女はまた達した。  
そのまま息を整える。俺のものは彼女の膣内で未だ硬度を保っていた。  
「んんぅ。やっぱりいいの・・・だから上のお口でも味あわせてください・・・」  
そういうと彼女はズルリと腰を抜き、俺の足元にしどけなくすわった。  
そのまま張り詰めた両の乳房で俺の肉棒を挟み、楽しそうに微笑んだ。  
「御奉仕、いたしますね」  
 
樹精は座ったまま身を乗り出し、男の下腹部に身を預ける。胸が大きくひしゃげ、男の下腹に重圧を加えた。その状態で乳房を圧迫し、乳奉仕を開始する。  
「うふふ、ひくひくしてるの。れろ、んちゅっ」  
そのまま己の乳を揉み、亀頭に舌を這わせた。敏感な部分を舌先が擦るたびに、男はうめき声を上げる。  
だが、舐めるだけの口奉仕では、樹液に濡れた胸乳の狭間で暴れまわる肉棒はヌルヌルと逃げ回ってしまい、与えられる快感は断続的なものとなってしまう。  
じらされる感覚に男はかすれた声で哀願した。  
「もう・・・咥えて、くれないか・・・」  
「うふふ、どうしましょうかね〜、ちゅっ、はぢめてのときは、さ〜んざんじらされましたものねぇ〜、れろっ」  
「まだ・・・根に持ってたのか・・・くぅっ」  
「いじわるなあなたに、はっ、おかえし、ですっ、えいっ」  
「うあぁぁあっ」  
樹精は楽しそうに上半身を前後させる。ぬめる胸が男の下腹部でスライドし、胸の谷間を亀頭が激しく出入りする。自在に動く樹精の緑髪は男の脇、指の股などの性感帯を這い回る。  
その刺激は快感だったが男が達するにはいささか足りず、また髪の一房はそそり立つ男根の付け根を強く縛っていた。  
じくじくと先走りの液をにじませながら、とうとう男は哀願した。  
 
「た、ッ頼む、イかせてくれっ、これじゃあ、生殺し、だっ」  
「うふふ、それじゃ、イかせてあげますね、えいっ」  
「!う・・・くあああっ!!」  
どくっ、どぴゅ、どぴゅぅぅぅう  
樹精は男根の拘束を解くと同時に、亀頭に髪の毛を一筋差し込んだ。その敏感な場所への強烈な刺激に男は噴水のように精液を迸らせる。  
その濁流を、樹精は避ける事無く顔で受け止める。  
「きゃっ、いっぱい、いっぱい射精てますぅ・・・すっごい、どろどろぉ・・・息ができなぃ・・・」  
目に入らないように瞼を閉じ、顔面を生々と染める白濁をうっとりと受ける様は、恍惚の極みとしか言い様が無かった。  
白濁はビクビクと暴れる肉棒により広範囲へ振り撒かれ、樹精の前髪、額、瞼、鼻、頬、口、顎、耳などを白一色に塗りたくった。  
やがてねっとりと垂れ始めた精液は、樹精の形のいい顎を伝い、胸の谷間へと下ってゆく。  
胸で扱いて最後の一滴まで絞りつくした樹精は体を後ろへと倒し、舌を伸ばして顔の精液を舐め取り始めた。  
「うふふ、れろ、こぉんなにいっぱい・・・顔中、べたべた・・・れろっ、おいしい・・・」  
やがて舌の届く範囲をなめ取り終わると、左手一本で上体を支えなから、右手でおなかまで垂れ始めた精液をかき集めて啜り始めた。  
「やぁん、おっぱいだけじゃなくって、おなかまで垂れちゃってるの、ペチャッ、まだまだいっぱい・・・ペチャッ・・・あん、耳についたの、ナカまでねっとり入っちゃってるぅ・・・」  
それは樹精の媚態。男を軽くいじめ、目の前で淫猥に振る舞い、欲情を煽り立てる巧妙な誘い。  
その証拠に森精の秘唇は期待にこぽこぽと内容物を溢し続け、二度の放出にもかかわらず男のモノは隆々とそそり立っている。  
ちろりと樹精が男を盗み見たとき、男は樹精の足首を掴んで身体を引き倒していた。  
「きゃぁぁん」  
その悲鳴はどう聞いてもうれしげだった。  
 
男は樹精の足首を肩に担いで胎内に押し入った。屈曲位、それは最奥を突くための深い結合。樹精の身体のバネと男の腰のバネが協力して、  
より深く、より激しい挿抜をうみだす。  
「あっ、あっ、あっ、あっ、はげしイイッ、と、とってもふかいのっ」  
「さっきのおまえを見てたら、頭がどうにかなっちまったみたいだ、くっ、しばらく、とまれそうに、ないッ」  
「んはぁあぁッ、奥、おくぐりぐりしちゃ、だ、メェぇっ」  
男は限界まで樹精の身体を折り曲げ、そのまま膣奥で探るように円を描いた。それだけでも火花のような快感が生じ、樹精はちいさく絶頂を迎え続けたが、  
男の目的はまだ達成されていなかった。  
めり  
「ひゃぅぅぅぅぅぅっ、うそ、そんな、ソコはあぁぁっ」  
めり、めり、  
「は、挿入ってくぅ!子ィ、子宮に挿入ってるのぉっ」  
ぬるん  
「あひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」  
子宮口を探り当てた男の亀頭が、針の穴ほどの隙間をこじ開け、内部にめり込んだ。  
 
「ここで、イくよ」  
「はぁあっ、ふかい、ふかいのぉ、そこ、感じすぎちゃ・・・ぁぁぁぁぁあっ」  
樹精のセリフを最後まで待たず、男は律動を開始した。  
根元を締め付ける陰唇、茎を撫で回す膣内の襞、そして亀頭にぴったりと吸い付く子宮口。  
その三重の快楽が男を突き動かし、女は悶絶しつつ律動を受け入れた。  
「はっ、はっ、はっ、キツ・・・すごくイイ、もっとはげしくイくよッ」  
「はぁぁぁぁあ、イ、イクイクイクイクッ!イッてるのぉ、ずっとずっといってるのッ、イキッぱなしになってるのっ、  
イク、またイクッ、いくいくいくいくうぅっ、とまらないのぉ、ひイイぃぃぃイイッ」  
やがて樹精は激しく頭を打ち振り、男に限界を告げた。  
「も、もぉらめっ、らめぇ、げんかいぃなのぉ、ああ、ダメ、らめ、もうらめぇぇ」  
「イクよっ、子宮に直接射精すッ!」  
「うん、うんうん、ひて、きて、射精してイッれわたしのいちばんふかいところあなたのせーえきでいっぱいにしてぇぇ!」  
ドクン!  
「あひいぃィッ!・・・はいってる、ドクドクってあなたのがはいってきてるの・・・そのたびにキモチよくなっちゃうのぉ・・・」  
男の精が女の最奥にたたきこまれる。その感触を樹精は腰をガクガクと震わせながら受け止め、脈動の数だけ絶頂を迎えた。  
射精が止まったところで男は―ぴったりと吸い付いている膣内からやや強引に―男根を抜き出した。  
その衝撃で一度だけ樹精はピクンと痙攣したが、そのままぐったりと虚脱した。  
とろけきった全身の筋肉を投げ出し、目は空ろに宙を見つめて涙を流し、口はだらしなく半開きのまま涎をこぼし、未だ閉じきらぬ秘唇は白濁を溢れさせ続け、  
満足そうに桜色に染まった胸を喘がせている。そしてうわごとのように、  
「もっと、もっとあなたを感じたいの・・・」  
とつぶやいていた。  
 
男の肉棒はもう限界だった。しかし樹精は期待している。男は悩んだ。  
正直いつもよりも樹精は無理をしていると思う。その理由にも心当たりがある。しかし、いやだからこそ、無碍に断るのも気まずい。  
そしてひとつの考えにたどり着く、これは初めての試みだった。  
樹精の身体を調べる。程よく全身から力が抜けている。  
「今ならできるかも」  
そうつぶやいた男は女の秘部に手を当てる。  
「なにを、するのぉ?」  
「見てれば分かるよ」  
いぶかしげな樹精に男は一言だけ答え、慎重に五本の指をそろえてゆっくりと慎重に内部へと突きこんだ。  
つぷぷぷっ  
「!はうっ」  
「よし、切れたりしないな、そのまま、そうっと・・・」  
そのまま緩んだ膣穴を押し開き、男の右腕は胎内を押し進む。二種類の粘液が膣口からどぽどぽと押し出されてゆく。  
「はうっ、はあぅぅぅぅっ、おなか、く、苦しっ・・・のぉ」  
「ここでストップ、っと」  
「はあ、おなか、はあ、はあ、すごくもりあがってる・・・」  
樹精は力の入らない首をかろうじて下げ、卑猥に形を変える自分の下腹部を見守った。指先が子宮口に触れたあたりで男は侵入をやめ、女の目を見てつげる。  
「膣内、このまま撫でるよ」  
「はっ、はひぃ、そこも、撫でて、可愛がって、くださひぃ」  
自分のすべてを捧げる、その感触に森精は微笑み、荒い息を整えて目を閉じた。胎内の愛しい腕に思いを馳せる。  
くにゅ、ぐにゅ、にゅるっ  
「ふわぁぁあん!ナッ、膣内、撫で回されてるの・・・ひゃうん!指、ゆびぃ、ばらばらに、いろんなトコ、なでてるぅ」  
視覚を制限し、触覚に集中する。下腹部を内側から這い回る指を感じる。  
・・・これでこの人の指が触れていない場所はひとつも無くなった。そう思うと樹精の内部が潤いを増して活性化していく。  
 
「もっと、もっと、激しくして・・・あなたを感じさせてぇ」  
ぎゅっ、膀胱のあたりを圧迫する。  
「そこ、おしっこ漏れちゃいそうっ」  
ぐにゅり、襞の間を指が掻き探る。  
「ひぅぅうっ!あっ、あっ、あっ、激しぃ・・・」  
男の親指、人差し指、薬指、小指が胎内で握り拳をつくり、そのまま抜き差しが開始された。ただ一本立てられた中指が子宮口に何度かあたり、  
そのままつぷつぷと内部に侵入していく。本日二度目の進入を、敏感なソコは震えながら受け入れた。律動のたびに内部が収縮、痙攣し、出口の無い飛沫が内部にたまってゆく。  
「ま、またぁ子宮に、入ってるの・・・あぁぁあ・・・キツいの・・・」  
「またここでイかせてあげるよ・・・そらッ」  
「ひあぁぁぁっ・・・スゴイ・・・いく・・・いくの、あっまた、またいっちゃうのッ」  
ガクガクと腰を震わせる樹精。気持ちは昂ぶっているようだが、身体はもう限界のようだった。  
一度終わってしまったら、次はまた三十日後になる。  
その気持ちが身体に無理を強いてでも性交を続けさせようとしているのだろう。  
男は樹精のその気持ちがうれしかったし、腕一本で乱れ狂う大好きな樹精に萎えた男根が再びそそり立ってきたが、そろそろトドメを指すことにした。  
中指を子宮内で折り曲げ、そのままぐりぐりと腕をねじる。効果は劇的だった。  
「イクぅ、イクッ、ナカで指が、暴れてるっ、いい、いいのっ」  
「このまま抜くよ」  
「まって、まだ、まだ続けてほしいのっ」  
「これ以上は身体壊しちゃうよ。だから、これでおしまいッ」  
ぐぽおっ、ぷしゃあぁぁ  
「あぁぁあぁぁあぁぁっ!」  
内壁を抉りながら引き抜かれてゆく腕。その感触で樹精は絶頂に押し上げられ、膣内にたまった愛液を吹きだし、そのまま失禁してしまう。  
ぐったりとなった樹精に、男の精液が振りそそぐ。  
たぱたぱと振り掛けられた白濁は、女の肌の上をすべり、地面へと流れ落ち、愛液と尿と混ざって溜まった。  
 
ちゃぷ、ちゃぷ  
「今日もすごかったです。腰、抜けちゃいました」  
「俺の腰もガクガクいってるんだけど」  
ちゃぷ、ちゃぷ  
「一人で立てるだけマシです、あぁ、冷たくて気持ちいい・・・」  
「手、離してもイイ?」  
目を覚ました樹精と男が、泉の中で身体を洗っている。  
といっても後遺症で一人で立てない樹精を男が後ろから抱きかかえ、水に浸している、というのが正しいかもしれない。  
ともすれば欲情に暴走しそうになる樹精の目を覚まさせるための水浴、という言い方もできそうだ。  
「・・・今日もまた、終わりですね」  
「次の機会をお楽しみに、ってな」  
「でも!」  
「・・・まだ死んだりしないよ、当分の間は」  
樹精に取り込まれた人間は『老い』からは開放される。しかし、それは決して『死なない』わけではない。  
愛する人が眠りに就き、そのまま目を覚まさないかもしれない。そう思うと樹精は居ても立ってもいられなくなってしまうのだ。  
そんな不安に駆り立てられた恋人の気を、茶化すようにして男が逸らせる。  
 
「大体なあ、今のペースで続けてみろ、あと三回もしないうちに俺腹上死しちまうぞ、このインラン」  
「ひ、ひどっ、あなたがいっつもいっつもわたしにえっちなことするからこうなったんでしょうが!」  
「今日も、おまえから始めてきたクセに」  
「うぐ・・・・・・そ、そんなおっきなおち○ちんしてる人が責任転嫁ですか恥ずかしい」  
「ソレとこれとはあんまりカンケーないと思うんだが」  
「インランなんていわれたら女の子は傷つくんです!」  
「じゃあ、次の満月は二回でオシマイな」「そんなの嫌」「即答かよ」「当然です」「居直った」「人間誰しも譲れないものはあるんです」  
「おまえ人間だったっけ?」「言葉の綾です!」「なら、俺が譲れないものは・・・」「?」  
接吻。  
「おまえって事で」「やっぱりずるい・・・けど、うれしいです」  
樹精が男にしなだれかかる。どうやら仲直りしたらしい。  
 
この場所には森と、泉と、月と男と女しかない。  
しかし男も女も、森と、泉と、月とお互いの身しか必要としていなかった。  
三十日周期で繰り返される完成された世界がまた一巡りし、空に浮かぶ月だけが、それをいつまでも見下ろしていた。  
 
樹精 了  
 

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