「この森は森精の領域だ、人間の領域ではない、立ち去れ」  
「あいにくと俺は『獣人』なんだよ」  
「? 普通の人間にしか見えないが」  
 
奥深い森が少しだけ開けた場所、すなわち泉のそばでこのやり取りは行われた。  
質問者は無表情な女。水を汲みに来たのだろう。皮製の水筒を胸元に抱え、奇妙な回答にその長い耳をひねった。  
回答者は無感情な男。釣りをしているのだろう。木枝の釣竿を空ろに見据え、投げやりな口調で耳長女に答えた。  
 
しばしの静寂、よじれていく耳。  
 
「おまえには耳も尾も毛皮もない、獣の気配もない。それなのに『獣人』なのか?」  
「俺には耳も尾も毛皮もないし、満月の夜に変身もしない。それでも『獣人』なんだよ」  
 
またしばしの静寂、無表情と無感情、巻貝のようになる耳。  
 
「おまえの名前が『獣人』なのか?違うとしたら頭の病気なのか?」  
「俺の名前は『獣人』ではないし、いたって正気だ」  
 
刹那の沈黙、無表情と無感情、ピンと上を向く耳。  
 
「何を言っているのかさっぱり分からん! 説明を要求する! 」  
「住んでいた村を追い出された『おまえのような危険で卑しいやつは獣同然だ、二度と俺たちの前に姿を見せるな』だそうだ」  
「つまり『獣人』とは追放者(アウト・ロー)のことか」  
 
耳は正常に戻った。  
 
「なるほど、要するにおまえは村長の息子と幼馴染の少女を取り合って権力の差を見せ付けられ、袋叩きにあって村からたたき出されたというわけだな。合点がいった・・・何を寝そべっている? 」  
「いや、ちょっと、心が痛くて」  
「極めて客観的かつ明瞭に事実を述べたまでだが?こんどは何を痙攣している?」  
「いら、ちょっと、腹が減って」  
森精は「なんだ、そんなことか」という顔をして一言。  
「光合成すればよかろう」  
「で・き・る・かー!」絶叫  
一秒で反論された。  
「む、そういえばおまえの髪は緑ではないな、許せ」  
 
そう言い残すと無表情な深い翡翠色の髪の森精は森の奥に姿を消し、しばらくして帰ってきた。  
 
「非常用の干し肉だ。食べるが良い」  
「いいのか? 非常用なんだろ?」  
「弓はHighlanderのたしなみ、情はDryadのたしなみだ。遠慮はいらぬ」  
「いただきます」その声にさっきのような抑揚はなかった。  
 
男はそれこそ飢えた獣のように肉をむさぼった。まるでこの世の中には、他に気になるものなど無いかの様に。その横で森精は説明をはじめた。  
曰く、森精とは森の中でひとりでに産まれる生き物であり(もぐもぐ)動物と植物の中間の生き物である(もぐもぐ)  
動物のように動き回り獲物を獲って食べる事も出来(もぐもぐ)  
植物のように光合成を行う事もで出来る、ある意味完成された種族である(もぐもぐ)  
また『森精』とはこの種の幼生の名前であり(もぎゅもぎゅ)(ひく)  
成熟して動物であるエルフ ――優れた運動性を得、光合成の能力を失い、山地で村を作り狩猟と牧畜で生きていくHighlander―― になるか(がつがつ)(ぴくぴく)  
植物である樹精 ――昼間は木、満月の夜は人の形を取り、動物と心を通わせることができるdryad―― へと生まれ変わる(ん!んぐっ)(ぴくぴくぴく)  
森精はいわばそのための準備期間であり、どちらになるかは本人の意思に委ねられている(ごきゅごきゅごきゅ)(ぴくっ、ぴくぴく)  
種族の習慣として、その決定に干渉しないために森精は孤独のままに成長することになっており(っぷはーっ・・・ふう)(ぴくぴくぴく!)  
その為に森精の前には姿を見せることが無いようにしながら、エルフは物資面、樹精は生活面の安全を影から支える事が掟となっている・・・(げっぷ)  
そして今、森精はガマンの限界を超えた。  
 
ぷ・ち・ん  
 
「ヒトの話を聞けーっ! 黙々と食ってるんじゃなぁーいっ! 」  
「うを!」さすがに感情が動きました。  
 
無表情のまま怒声を上げる森精、だが、平時は地面と平行な耳がまっすぐ上を向いているあたり相当怒っているらしい。  
・・・顔輪筋に変化がないまま息が荒くなる様は、はっきり言って怖い。  
 
「で、おまえは何になるんだ」  
なだめる様に男は問う。  
「・・・まだ決めてない」  
無視されていなかったと分かり、気分を直したらしい。森精の耳が元に戻った。  
 
「そっか、それよりもメシ、アリガトな」  
そういって男は微笑んだ。  
「何度も言うが弓はHighlanderのたしなみ、情はDryadのたしなみだ。気に病む必要はない」  
 
森精はクールに答えてふいっとそっぽを向いた。だがその耳はぴくぴくしていた。  
 
「そういう事情なら考慮しないでもない、ただし、面倒事を起こすんじゃないぞ、わたしは面倒事が嫌いなんだ」  
「ああ、わかった」  
 
男はまた無感情に戻った。「さっきまでのほうが気に入っていたのに」そう思いつつ、森精は泉から去った。  
 
いかにも面倒くさげな最後のセリフとはうらはらに、森精は毎日泉を訪れた。エルフに保護され、樹精に見守られているとはいえ、いままでずっと一人ぼっちだった身、自分以外の「ヒト」が刺激的だったらしい。  
男が目覚めると、森精は傍らにいた。  
初日は十歩の距離、次は七歩の距離、五歩、三歩・・・  
すぐ隣に腰を下ろすのに、そう時間は必要なかった。  
 
男は追放者だった。生まれ育った村から見捨てられたショック、恋に破れた悲しみが男を無口にしていた。だが、いつしか傍らの存在に心を開いていった。  
森精が近づくと、男は話しかけていた。  
初日は一言、次は二言、三言、四言・・・  
楽しげに語り合うのに、そう時間は必要なかった。  
 
日々は過ぎる。  
 
 
「今日は森でうさぎ狩りだっ」  
「Dryadは動物の友じゃないんかい?」  
「highlanderは優れたハンターだ」  
「・・・そら俺の1.3倍足速くてトーゼンだなあ・・・うを! 」  
「当然だ、わたしは人間のようにブザマにコケたりはしないのだ。あ痛ッ」  
「耳長いと大変だねえ」  
「〜〜〜っ」  
 
「あー、熊、熊、この対立は当方も大変遺憾に思っており・・・」  
「どーしたDryad(仮)」  
「たしかにここはその方の縄張りでこの蜂の巣はそなたがまさに取ろうとしていたのは事実だ、しかし・・・そんなに唸らなくても」  
「ダッシュでツッこんできていきなりふんずけられれば熊だって『俺を踏み台にしたなっ』ぐらい思うぞ」  
「あやまる、あやまるけど、これを三時のおやつにしたいのは私たちもおまえと同じなのだ、だからその・・・」  
「(無言で靴紐を結びなおす)」  
「走るぞ人間!」  
 がお〜  
 
「チクショウ、また今日もボウズだなこれは」  
「気にするな、太陽と水があれば私は生きられる」  
「俺が死ぬの」  
「まあ、がんばるが良い、わたしはのんびり光合成する、おやすみ」  
「・・・暇つぶしにおまえの耳いじってやる、ほれほれ」  
「あっ、や、こらやめッ、あぁッ」  
「みみ、あかくなってふるふるしてる」  
「〜〜ッ」  
「ますますあかくなった。って、あ・・・」  
「魚が逃げたな、今晩はすきっ腹を抱えて眠るがいい」  
「ごはんわけてください森精様」  
 
感情を持つ生き物である以上、日々を共に過ごし、互いの距離が縮み、相手を好ましく思うようになるにつれて、どうしても気になってしまうことがある。ある日の夕暮れ時、とうとう、森精は男に尋ねた。  
何気ない風を装って、ただほんの思い付きだという風に、耳を強張らせながら問う。  
「おまえの幼馴染って、どんな娘だったの?」  
 
真っ暗な夜の森、森精はひとり、森を歩く。  
エルフの原型としての目は闇を見通し、樹精の雛形としての感覚は森の生命の位置をとらえていた。  
故にその歩みに遅滞はなかった。  
真っ暗な夜の森、森精はひとり、森を歩く。  
まっすぐな性格は思考の停滞を許さず、若々しい情緒は想い人の言葉を仔細漏らさず反芻していた。  
故にその回想に遅滞はなかった。  
 
――おまえの方が美人だよ  
夕日に照らされ、茜色に染まった景色の中、オレンジ色をした男は照れくさそうにそう言った。  
――あいつはおまえみたくスラッと背が高くはなくてぽっちゃりしたちびっ娘だったし、髪もそんなきれいな緑のストレートじゃなくてふわっとカールした赤毛だった。  
おまえの三分の一も凛としたところなんてなくっていつも俺の後ろ付いて回ってて、でも家では何くれとなく世話焼いててくれて、そんなところはしっかりしてて、料理もうまくって、そういうところ褒めると可愛く照れて、  
で、そのままコケて「てへへ」とかごまかしたりして、そんなドジっ娘な毎日の中でも時々すごく女らしい仕草見せたりして  
 
・・・私のほうが美人、といった割には形容句はその娘のほうが多いのね、あと鼻の下伸びてる  
耳が上を向いた  
 
――俺はそんなあいつが好きで、ずっと傍に居たい、というか居るのがアタリマエだと思ってて、あいつの病気の親父さんも認めてくれてて、俺の親は二人とも死んじゃってたからあとはもう何の障害もなく告白、後、婚約、というところまで行ったんだけど  
 
・・・どこまでイッたんですかこのオトコは  
胸の中のモヤモヤしたものに突き動かされ、耳は真上を向いた  
 
――でも・・・  
 
男の声のトーンが落ちる。意思表示に忙しかった耳は本来の役目に集中した。  
 
――あいつの病気の親父さんを、あいつは見捨てられなかった。俺は貧乏だったし、あいつに言い寄ったのは俺だけじゃなかったんだ。  
 
それが・・・  
 
――そう、村長の息子。いつも取り巻き連れててさ、俺のことを「貧乏人め」って見下してた。正直気に食わなかったけど、野郎の言った『愛だけで暮らしていけるか』の言葉がすごく耳に痛かった。その言葉は正しいと思っちゃったんだよ。  
 
おまえ・・・  
 
――ただ認めたくなかった。頭の中ワケわかんなくなって、気付いたら野郎を殴り倒してた。で、そのまま追放されちまったわけ。  
 
・・・  
 
――ただまあ『こんなことしかできないおまえでは彼女を幸せにできん』とか俺に言ってたって事は、まあ野郎があいつを幸せにしてくれてるんだろうね。  
 
そう言って、オレンジの逆光を浴びた男はさびしそうに笑った。  
そのとき、私は理解した。私はこの男を愛している。男も私を好いている。しかし、男が愛しているのはここにいない「そいつ」なのだということを。  
茜色の時間の中、いっそ憎たらしいほど素直に受け入れていた。  
 
だから。  
夜の森を歩きつつ決めた。  
その娘に会ってみよう。  
会って話をしてみよう。  
何を話したら言いか良く分からないし、もしかしたら大喧嘩するかもしれない。娘を焚きつけるかもしれないし、反対に嘲るかもしれない。  
なにをしたら良いか全く決まってないけれど、何かせずにはいられない。だから今、ここにいる。  
そうこうする内に、男から聞いた娘の家――森を背負って建つ村のはずれの一軒家――のそばまで来た。  
・・・人間という、まだ良く知らない種族の知らない個人(しかも恋敵!)にいきなり話しかける度胸はない。  
森の木の上から、森精の視力で覗くことにした。  
家の中では男の言ったような赤毛の小柄な娘が…  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
男の男根を咥えていた。  
 
 
小柄な赤毛の娘である。髪はゆるくカールしたショートで、背は森精より一回り低く、胸はふた回り大きい。ぱっちりとした大きな目は、綺麗と言うよりはかわいらしい。  
咥えている男根は太さは成人男性の指約三本分、長さは不明だが娘の咽が不自然に膨れている以上、おそらくかなりのものだろう。男の腰は小刻みに前後し、娘の咽を犯していた。  
 
――口に男根を咥えるフェラチオと違い、咽の奥まで突き通すイラマチオでは「突き刺しっぱなし」は危険な行為である。  
食道に入れるのが普通だが、咽喉内の異物は気管をも間接的に圧迫し、呼吸困難、窒息死を引き起こす。  
小刻みに動かすことで快感を呼び起こすだけでなく、呼吸を確保しているのである。閑話休題  
 
森精の目が点になった。そんなことはお構いなしにベッドに腰掛けた男は足元に跪いた娘の髪に指を絡ませ、前後運動を続けている。どうやら何かしゃべっているようだ。森精は耳をすました。  
 
「よ、っと。うまくなってきたな」「ふぅぅぅっ、ふむぅぅぅぅぅっ」  
「はじめは俺のチ○コを見ることも出来なかったってのに、ニンゲン変われば変わるもんだ」「むぅっ、むぅぅぅぅッ」  
「うほっ、ノドもうまく使えるようになったもんだ、出すぞッと」「うぐぅーっ、んっ、んっ、んっ」  
「ふぅ、・・・言わなくても分かってるようだな、フェラいっとけ。裏んトコもっと丁寧に、そう、そうだ」  
 
・・・傍目には男が無理矢理咥えさせているように見える。しかし、「そう見えるだけ」なのかもしれない。  
跪く女、跪かせる男。  
自分と「彼」に置き換えてみる。  
・・・在り得る。いつもいつもそれでは夢もロマンもヘッタクレもないが、たまに、そうたまに、まあ・・・三回に一回ぐらいなら、そういうのも良いかもしれない。  
少し濡れた。  
 
だがやはり、森精はあまりに若く、無知だった。二人の姿に目と思考を奪われていたと言う事は、すなわち、それ以外を見ていなかったということに他ならない。  
 
「おまえも楽しめよ」  
家の中の男は、部屋の暗がりに向けてそう言い放った。  
 
「相変わらず見せ付けてくれますね、新婚さん」  
どことなく嫌味ったらしい口調で、二人目の男は言った。  
さっきから見ていたのだ。結婚一週間目の妻に男根を咥えさせた夫と、  
四つんばいで男根を咥えた新妻の秘所と菊座を、  
真後ろから、委細漏らすことなく。  
「犬のようにはいつくばって」「ふぅん!」「おら、まだ掃除の途中だろうが」  
そしてゆっくりと歩み寄り、  
「はしたなく腰を振る様を」「むふぅぅっ、んむ、んむう」「全く学習しないオンナだなオマエわ」  
その臀部に顔を寄せ、  
「他の男に見られて」「んんんん!んんーっ」「こんなんいつものことじゃねーか」  
鼻を鳴らして匂いを嗅ぎ、  
「そしてこんなにも此処を溢れさせている。まったく」「んっ、んんんんんっ」「ってこのセリフも飽きるほど繰り返したっけなあ」  
太腿から尻を撫で上げ  
「悪いおんな、ですねぇっ!」  
パシン!「んんんんんんーっ!」「歯、立てんじゃないぞ」  
音高く、女の尻を平手で叩いた。  
そのまま男はまるで憑かれたかのように叫び、そして打った。  
「ああ、全くアナタは変わっていない!」ぱしん!ぱしん!「んーっ!んーっ!」  
「いかにも苦し気に見せかけながらも!」ぱしん!ぱしん!「んんーっ!んーっ!」  
「叩かれるたびに内股を濡らし!」ばしん!「ん!んんーっ!」「真っ赤に腫れた尻を小刻みに震わせるのです」  
男はそっと、真っ赤に張り詰め、その体積を増した女の尻を撫で、耳元でささやいた。  
「ここに男が欲しい・・・とねえッ!」  
じゅぷり。  
「んんんんんぅぅ〜〜ッ」  
たっぷりと濡れた音を立てて、男の隆起が女の秘唇に突き刺さり、女は大きく呻いた。  
明らかに快楽に染まった声で。  
「本当に、半年前となんら変わらない」  
 
女の腰を両手で鷲掴みにし、男は大きく腰を動かし始めた。自らの欲望そのままに、深く、強く腰を叩きつける。  
クチュクチュという結合部の水音、ぱんぱんと鳴る腰と尻、獣のような男の息遣いと、いまだ夫の逸物を離さない女の呻き声。  
ある意味、単調とも取れるリズム。  
その単調な動きが、一分、二分と続くうちに、変化をきたした。  
水音はずちゅずちゅと粘り気を増し、腰と尻は線から円へと動きを変え、  
汗に塗れた女の裸は上気して桜色に染まり、地に引かれてその量を増した胸は快感からその先端を尖らせ、女の腕は力を失い、今は肘で身体を支えていた。  
上の口はいまだに夫のモノを咥えていたが、それは当初の「やめろと言われなかったから」という理由ではなく、「はしたない喘ぎがもれないように」という、女の理性の最後の防波堤へと存在を変えていたのだった。  
だが、その防波堤は決壊しようとしていた。  
「口も飽きたし、後ろ貸してくれよ」  
怒張と唇の間に、銀色の橋がかかっていた。  
 
男は半ば脱力した女の身体をくるりとひっくり返し、ぐったりとなった身体を自分にもたせ掛け、ふとももを抱えて立ち上がった。  
まだ少女といってもいい小柄な身体は、陵辱者にとってはなんら負担にならないらしい。  
その背後に、彼女の夫が迫る。小さく窄まった後ろの穴に、いきり立った先端が触れる。  
「やめ、やめてください・・・後ろは・・・おしりはきついんです・・・」  
赤い髪と桜色に染まった身体をちいさく震わせ、少女ははかなく抵抗した。無論聞き入れられるはずはない。  
「きつい?嘘言うな『バックから尻』何回繰り返したと思ってる」  
「でも、でもぉ、つらいんです・・・うぅっ!」  
「腸液溢れさせといて言うセリフじゃない、なっと!」  
「うはあぁぁぁぁッ」  
前と後ろを両方貫かれて女はよがる。軽く気をやり、一瞬虚脱する。  
すると力の抜けた身体は奥の奥まで男たちのモノを迎え入れることとなり、苦しみと合い混じった快感を全力で脳へと送り込むこととなった。  
その刺激から逃れ、腕を目の前の男の首に回して身体を揺すり上げれば張り切った胸――特に乳首――を男の胸板と擦り合わせることとなり、  
さりとて腰へと回した足で身体を支えようとすれば、連動した括約筋が前後の男へと鮮烈な快感を供給し、その見返りを嫌というほど受け取ることとなる  
・・・足の指が握り拳を作るほど踏ん張った為か、一瞬意識が白くなったほどだった。  
 
「ついでに、一週間前渡した浣腸、ちゃんと使って準備してたみたいだな、アタんないぜ」  
「い、いわないで、くだっ、さぁぁぁッ」  
そうしないとはしたない事になるから、掃除するのも自分だから。  
だから決して、こんなことを望んだわけじゃ、ない。  
 ずっ ずずっ ずっ ずずっ  
「はああ あああっああああっああっ」  
  にちゃ にちゃ ぬちゅ ぬちゅ  
前後のリズムの微妙なズレが、女に休息を許さなかった。だがそのリズムも次第に収束し、ある一点へと導かれていく。女の背が次第に反り返っていく。  
「いや、イヤ嫌、いく、イッちゃいますぅッ、もうダメェェェェェッ」  
「1、2、3でいきましょうか」  
「O.K。いち、にィのォ、さンッ!」  
「はっ、はッ、はぁァァァァァンッ」  
どぷっ ドクッ ドクン  
高みへと押し上げられた意識の中で、女は自分の中ではじけた二つの迸りを感じていた。  
熱く、激しく、忌まわしくも、心地良い  
女は朦朧としたままずるずると男の身体を伝い落ち、ひんやりとした床に身を預けた。  
吐息に合わせ大きく弾む胸と、いまだ閉じきらず白濁の溜まりを作る前後の穴。  
その朦朧とした時間の中で、女はドアの開く音を聞いた。  
 
「お、来た来た。遅いよオマエら」  
「それじゃあ、『森の村青年団有志による会合:第137回目を始めますか」  
 
欲望に目をギラつかせ、怒張が天を突く四人の遅刻者たち。  
夜はまだ、始まったばかりだった。  
 
「というわけでさ、この前しとめた熊のデカイの何の、さすが俺!って感じ?」  
「むっ、ちゅっ、はむ、ちゅぷ」  
側位の次期村長の妻の足を大きく割り開き、肉棒を突き込みつつ男は自慢した。  
次期村長の妻は、目の前に投げ出された男の野太い足を胸の谷間に抱え込み、その足指に舌を這わせている。  
『会合』開始から二時間。  
万事この調子だった。  
男たちは日常の1コマ々々を、まるで道端でする世間話のように語り合い、  
そのついでに、女を犯した。  
町で見た大道芸、しとめた獲物、新たな産業の模索、賭けポーカーの勝敗。  
口で、胸で、秘所で、ベッドでうつ伏せになり、膝を立てて大きく掲げられ、女自らの手で割り開かれた菊座で。  
白濁を吐き出し、女の髪でソレをぬぐった。  
まるで人形のように従順な女は、ガラスのような目で諾々と従った。  
頑健な若者六人の精力には、まるで果てというものが無かった。  
 
一体なんでこんなことになったんだろう。  
人形になりつつ、次期村長の妻―少女―は空ろな問いを繰り返していた。  
病気の父を見捨てられなかったから?  
幼馴染―お兄ちゃん―が貧しかったから?  
恒久的に薬を買えるだけのお金を、あの男―夫―が持っていたから?  
一体いつまでこんなことが続くんだろう?  
関係を持ってから半年して、父は死んでしまった。  
その時はもう、式は済んでいた。  
義父は穏やかなだけの人で、息子の乱行に気付いていない。  
お兄ちゃんも、もう、いない――  
 
「ところでアイツ、覚えてる?」  
胸と口で夫に奉仕しつつ、後ろから男根を受け入れたときに意識が戻ったのは(新たな産業:特殊サービス業による男性観光客の誘致、筆頭、村長の妻>それサイコーにすら無反応だったというのに!)、その話題の人物のことを考えていたからだろう。  
いつも、ずっと、一時も忘れることなく。  
「あー、俺のドレイ横取りしようとしたビンボー人だろ?」「妻じゃないのかよ」  
笑声  
「あンの身の程知らずならとっくにくたばってんだろ?森でバケモノにでも食われてさ」  
後ろから貫かれる。  
「荷物取る暇も与えずに村から追い出しゃ死ぬっての」  
サイボドードの酒を煽る。  
「あの時のリーダーのセリフ、かっこよかったっすねー『こんなことしかできないおまえでは彼女を幸せにできん』ってやつ」  
順番待ち  
「まーな、俺ってほら、ナイスガイだし」  
律動加速  
「幸せにしてるのかなあ、これで」  
菊門に指、ぬめりをかき出す  
「女の幸せ、目一杯」  
白濁、放出  
ギャハハハハハ  
 
その嘲り笑いに隠れて少女の小さな呟きは誰の耳にも聞こえなかった。  
「嫌、嫌」という呟き。  
それは肉欲に煽られた感極まるものとは違う、真っ黒な絶望に満ちたものだった。  
 
何も知らないお兄ちゃん。「好きだ」って言ってくれたのは三ヶ月前。  
もう三ヶ月遅かったね。  
その時にはもう、知られちゃいけない秘密抱えてた。  
今はもう、生きているのか分からない。  
第一もう、会わせる顔無いよ  
こんなにいやらしいこと、いっぱいされて  
もうすっかりなれちゃって・・・悦んでる  
カラダとか、ココロのどこかとか  
もう、もどれない  
 
空っぽになっていく心に反比例して、その空ろを別なものが埋めていく。  
肉の昂ぶり  
それに身を任せてしまえば、もう悩む必要は無くなるから。  
どうせもう幸せになれないのなら、せめて不幸にはなりたくない。  
その思いが、少女の体を支配した。  
「そろそろ終わりにしねえ?」  
「んじゃいつもので締めようか」  
などという言葉を聞きながら、  
少女はベッドに仰向けになり、右の手で自らの胸を揉みしだき、左の手で秘裂と肉真珠を擦り上げ、膝を立てた両足を男たちに見せ付けるようにゆっくりと開きながら、口を開いて言葉を紡ぐ。  
「わたしは・・・次期村長の妻であり・・・皆様の奴隷です・・・  
口でも、顔でも、胸でもおなかでも、手でも足でもココでもおしりでも  
皆様の精を受け止めます。  
だからお願いです  
いつものように、私の身体で精いっぱい気持ちよくなってください・・・」  
その目は空井戸のように空ろだったが、口元は淫蕩に歪んでいた。  
 
まず一人がベッドに横になり、自らのペニスをそそり立たせる。  
その上に少女が自ら腰掛け、菊座で肉棒を受け止めてゆく。  
そのまま男の上に寝そべり、全身を大きく開く。  
一人が腹の上に座り、己の肉棒を少女の胸で挟み込む。  
枕元から一人、のけぞる少女の口に自分の分身を突き入れる。  
その日もっとも有益な話題を提供したと判断されたものは、蜜を垂らしてヒクつく秘裂に己を収めた。  
ジャンケンに負けた二人は両手。  
肉欲と体液に塗れた、いつものフィナーレだった。  
 
ずっ、ずちゅ、ぬちゅ、ぷちゅっ  
男たちは各々手前勝手なリズムで快感を汲み出して行く。  
下から怒張を突き上げ  
興奮した心臓のリズムに合わせてひくひくと痙攣するペニスを少女の膣内で暴れさせる。  
上を向いても型崩れしない豊胸を粘土のようにこね回し、その谷間を擦る。  
赤黒い男根に繊手を絡みつかせ、その上から自らの手を重ねて扱き上げる。  
浅く、深く口腔を犯してゆく  
それらの雄の高ぶりに、少女はいつに無く積極的に答えていた。  
 
「おしり、もっと締めますね、ん、んんっ」と自らの尻穴に力を入れ。  
「そこ、そのザラザラしたところ、もっと強く」と腰を擦り付け、足で抱きこむ。  
「おっぱい、もっとぐにゅぐにゅしてぇ」と背筋を伸ばして胸を突き出し。  
「あは、一滴残さずしぼって見せます」と親指でカリを擦りつつ、鈴口にひとさし指を突き立てる。そして、  
「ん、んぐっ、んむぅ」口いっぱいに頬張った男根を、喉輪を使って締め付けていた。  
 
汗と、雄液と、雌汁。  
複男一女がドロドロになりつつ絡み合うさまは、まるでひとつの生き物のようだった。  
雌を火種に燃える雄  
雄を餌にみだれる雌  
いまはもう、どちらがどちらをむさぼっているのか分からなかった。  
 
「うしろ、おしり、おひりィッ、あうっ、いいで・・・ふぅ、いいですぅ  
まぁえぇ、はあッ、もっと深くぅ、もっともっとキツく、きゃうっ、子ィ、子宮まで犯してェ・・・ッ」  
露にされた雌性の涎とともに吐き出される嬌声と、  
「ああッ、胸、きゃふっ、おっぱいイイッッ、ん、乳首、ちくび擦り合わせてェ、きゃん!  
おててもそう、さきっぽとか、竿だけじゃなくって、ふッ、袋にも御奉仕させっ・・・てェッ!  
喉の奥まで、んちゅ、めいっぱいつっこんでキモチ良くしてくださ、ひぃぃぃぃ」  
滴る淫液をバックに紡がれる肉欲に、雄群はただただ行為の激しさで答えた。  
強く、弱く、押し付け、捻り、震わせ、昂ぶらせる。  
終わりはもう、すぐそこだった。  
「きッ、きもちいい、いいですぅ、ん、もっと、もっと、ああッ、イクッ、やっ、やだ、とまんない、イクのとまんないよぉ」  
女は小さな決壊を迎え、  
「とめッ、止めてぇ、もう動くの止めてぇ、壊れちゃう、おかしくなっちゃうぅぅぅ、ひいっ」  
それでもなお高みに押し上げられ、  
「ひいっ、ひいィ、イイ、おち○ぽイイ、いいですッ、もっと、もっと、おち○ぽ、いっぱいおち○ぽぉぉ」  
やがて混濁した意識のまま、  
「おち○ぽ、出して、精液、せーえき、塗りたくってッ、ナカも、外も、お口もおっぱいもおなかも前も後ろもぜんぶからだ中ドロドロにしてぇぇぇッ」  
全身を大きく痙攣させて、  
「い、いっクぅぅぅぅぅぅうぅぅぅうっっッ!!」  
その心と身体を真っ白に染めていった・・・。  
 
「あー、すっきりした」  
「いつもより激しかったんじゃね?」  
「奴隷の自覚が出てきたんだろ」  
「だから妻じゃねえのかよ?」  
放出を終えた男たちは、そんなことをいいながら女の身体をベッドの脇に押しやった。  
虚脱した女はそのままベッドを滑り落ち、足を広げたまま床にずり落ちていった。  
空ろな目とだらしなく半開きになった口、ぐったりと投げ出されるままの肢体。揺れる乳房。  
そのすべてが、自分たちの白に塗れている。  
雄の征服欲を最大限に満たしきる淫猥さに、男たちの怒張が再び天を突いた。  
「・・・せっかくだ、最後に口に出してやる・・・・・・そお、らッ」  
どくっ、ぶびゅ、ぶびゅるるる  
六条の白濁が女の顔の下半分を白く染め、口の中に白い水溜りを作った。  
放心した表情を変えないまま女の喉が動き、ソレを嚥下していった。  
・・・・・・・・・  
一人きりの家、冷えていくからだ、粘りつく体液。  
それらの中で、少女はただ、静かに涙を流している。  
身体を覆う白が、まだらに溶けていった。  
 
森精はとぼとぼと森を歩いていた。  
結局目的は果たせなかった。見たもの、聞いたものの衝撃はあまりに大きかった。  
頭ががんがんし、胸がどきどきし、腰がじんじんする。  
「彼」をめぐる境遇、人間たちの残酷さ、・・・そしてさらけ出された性。  
それは年若い森精の脳の許容範囲を軽く上回っていた。  
 
私はどうしたらいい?  
その問いが彼女の頭の中でぐるぐる回る。回り続ける。  
彼はこのことを知らない。では、知ったとしたら。  
怒るかもしれない、悲しむかもしれない。いずれにせよ大きなショックを受けるに違いない。  
感情表現は下手だが心優しい彼はこの事実に耐え切れるのだろうか。  
そして何より、彼とあの娘の時間は決して巻き戻りはしない・・・。  
 
足を止める。  
心も決まった。  
私は――  
 
1.彼を傷つけたくない  
2.彼にうそはつけない  
 
 

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