8時40分 某国ミサイル基地_資材搬入路  
 
「大統領め、何が『コープマンミサイル基地を調べてくれんかね』だ。一人なんて聞いてないぞ。」  
一人の迷彩戦闘服姿の男が通路の角で呟く。  
男はファントムと言うコードで呼ばれ、とある作戦に参加し全面核戦争を阻止したこともある傭兵だ。  
そして彼は大統領から直接命令を受け潜入活動している“存在しない兵士”である。  
 
「足音は一つか。隠れる場所は……あのドラム缶の陰しかないか……」  
ファントムは通路の端に無造作に置かれていたドラム缶の陰に入った。  
小柄な金髪の女兵士が歩いてくる。新兵か、あるいは実戦に出た経験がまったく無いのか隙が多すぎるように見える。  
「うーん。やっぱりむし暑いなあ中米は。これってもしかして左遷された?入隊して一年しか経ってないのに……キャッ!……」  
そして警備兵が傍を通過した瞬間、地面に引き倒す。警備兵は地面に叩き付けられた衝撃で気絶した。  
「なぜ新兵がここに居る?女……しばらく寝ていろ。」ファントムはMk21と言う名の睡眠薬を注射した。効果時間は4時間位だ。  
所属不明部隊だと……装備はベトナム戦の時の陸軍か?骨董品ばっかりだな。対空銃座は40mm機関砲、目視照準か。ヘリも落とせんぞ。  
そして武器を奪い、無力化したが……身体を触っているうちに性欲が頭をもたげてきた。  
「この女、良い身体をしているな。性欲をもてあまして任務に支障をきたしてもいかん……協力してくれ。」  
「誰か?ウゥッ……」「何者だグハッ……」誰何してきた兵士を気絶・殺す。  
ファントムは周囲の警備兵達を無力化して、女兵士を担ぎ上げるとミサイル発射施設に入った。  
女兵士を背負ったまま地下一階まで敵に見つからずに行き、第三倉庫と言うところに入った。  
木箱とロッカーが大量に置かれている……どうやら事務用品倉庫らしい。  
こちらから入り口が見え、逆に入り口から容易に発見されないようにロッカーの陰に女兵士を横たえた。  
 
女兵士の腹側は二人分の汗を吸いぐっしょりと濡れて楕円形に変色し、濃淡二色迷彩みたいになっていた。  
カーキ色の戦闘上衣を脱がすと水色と白のストライプのタンクトップがあった。認識票が掛かっていたので見る。  
『エリス=モリガン 二等兵 94E5M67G23 正規兵 』  
張り付いたタンクトップを捲り上げると飾り気の無い白いブラが現れた。どうやらPXで購入した物らしい。  
汗の匂いに少し顔をしかめたが起きる様子は無い。まだ30分しか経っていないのだ。  
よく対薬剤訓練している兵士でも一時間は目を覚まさないシロモノを投与されたのだから当たり前だ。  
「じっくり見つめていたいがあまり時間がないんだ、悪いな、お姫様。」  
ファントムは乳首を口に含み、舌先で乳首を転がす。左手でズボンのボタンを外し、白いパンティを右にをずらす。  
そして、クリトリスを指先で弾いたり、首筋を舐めてみたり、舌と舌を触れ合わせて彼女の秘所を濡らした時……  
ビーッビーッビーッ『緊急放送、緊急放送。西館搬入路警備隊通信途絶。各員第三種警戒配置。繰り返す……』  
「誰一人として交代に現れない警備部隊、つながらない内線電話…バレて当然か。まあいい、これだけ濡れれば問題ないだろう、入れるぞ。」  
ファントムは迷彩服の股間のボタンを外して男根を引き出すと、エリスの秘所にあてがう。  
「処女か……」  
そして一気に刺し貫く。そうして二分ぐらい経った頃ゆっくり動く。  
「グッ……グッ……グッ……ウグッ……」呻くが起きる気配はない。  
そろそろ射精のときが近づいて通路を戦闘靴で走る音と怒号が近づいてくる。  
「第三班、そっちを探せぇ!寝てる奴等も動員しろ。」  
「悪いな、はぁ……はぁ……くっ……あ……やってしまった……」  
萎えた男根を引き抜く時に破瓜の血が混ざった精液がエリスの女陰から少し垂れた。  
「C4用雷管、機関砲弾の発射薬、机に入ってたビス、コード、金属製弾薬箱を組み合わせると。後はロッカーを倒して積んで破片防御。」  
「此処が最後だ……気をつけろ。第三班、突入する。」  
抗弾盾を持った兵士に続くように三人の兵士が突入フォーメーションを組みながら第三倉庫に突入してくる。  
「此処には無いはずの弾薬箱からコードが延びている?まさかっ……ドアの向こうに逃げ……」  
数秒後、爆発音が轟いた。瞬間的に数千の破片が飛び散り、抗弾盾を貫通し男たちを貫く。  
穴だらけのロッカー中空装甲を踏み越え、混乱しているドア前監視員二人を一瞬で射殺。  
エリスを背負い地下15階の休憩室に向かう。  
 
休憩室の中は誰もおらず、設備が充実していたのでもう二回……  
そこで寝かせると管制室に向かう。  
ファントムは地下15階のサイロで、戦略核搭載弾道弾を発見し、銃撃戦の末制圧した。  
管制室に突入した時そこはもぬけの殻だった。そこに残されていたプログラムから一人の狂信的反露主義者……リッパー将軍の恐るべき計画を知った。  
ここから米国領に核ミサイルを発射し、報復核攻撃と言う名目でロシアに核攻撃を行うつもりだったのだ。  
リッパー将軍の指揮下にある第586戦略爆撃航空団所属のB-52Hが空中発射巡航ミサイルを抱き発進した……  
 
11時32分 管制室  
 
衛星通信で依頼者である大統領に尋ねる。  
「大統領、俺はどうすれば良い、この自動発射管制装置についてまったく分からんのだが。」  
『今朝亡命してきたロシア人研究者の話によるとサイロの物理的破壊。弾体の破壊しかない。』  
「なんだって!こっちは軽火器しか持ってないんだぞ、それに核弾頭搭載と言うこともある。プログラム書き換えでは駄目なのか?」  
『あらゆる妨害に対抗し、人の心情に左右されない絶対抑止力……それがゼウス計画だよ……』  
「アンタは?例の亡命した研究者か?」声が変わったことに驚いたが冷静に問いかける。  
『違う……ストレンジラブ博士だ。総統……いや、大統領の技術アドバイザーだ。ちなみに私はドイツ人だがね。』  
『こっちは586戦略爆撃航空団と基地に立てこもったリッパー派を何とかする。頼んだぞファントム。』  
 
サイロ中に仕掛けたC4に時限装置を取り付け、整備用のフォークリフトにエリスを乗せて通路を爆走する。  
資材運搬用エレベーターに乗り込み地上へと向かう。ブザーと共にゲートが開いた時目の前には……  
「任務ご苦労。しかし手間を掛けさせてくれる。……まあ良い、生きて帰れると思うなよ。」  
東館に出てしまったのだ。男たちがM-16A1をファントムに向けたその時……。  
地形追随飛行で現れたMH-6攻撃ヘリと二機のMH-60のミニガンで一掃された。機体左右のベンチシートに座っていた隊員達が東館に突入したとき……  
爆発音が轟き、火柱が立った。急いでファントムはエリスを背負い、MN-60に乗り込み基地へと離脱した。  
ロケットの燃料は激しく燃え、三日ぐらい燃え続けた。もっとも、その後の放射性物質除去作業のほうがはるかに時間と人手を要したのだが……  
反乱事件はロシア政府の協力も有りすぐに解決したが……大規模な人事異動があり、軍内部の危険思想排除がより一掃強化された。  
 
ファントムとエリスはこの事件の一年後結婚し、夫婦で傭兵となり活躍する。事件の後から結婚までの間に何があったのかは不明。  
 
 
終わり。  
 
 
 
用語集  
 
某蛇な人のゲーム(ボウヒヘビナトノゲーム)…家庭用ゲーム、携帯ゲーム機のゲームソフト。巨大な機械兵器と蛇の名を持つ兵士達の物語。  
 
ファントム(ファントム)…27歳、元特殊部隊員。任務とは何か悩み、気楽な?傭兵業に転職するも個人的な知己である大統領の依頼を受けているうちに『伝説の傭兵』という称号を周囲より与えられた。  
 
エリス=モリガン(エリス=モリガン)…24歳、正体不明部隊の兵士。本人はただ左遷人事と思っているが、事件の黒幕により“裏切者”に仕立てられてしまった女性。処女を奪われてしまうが…事件後、軍を辞め傭兵となる。  
 
戦闘服(セントウフク)…戦闘をする際に着用する服。単色あるいは迷彩が施されており、各国の運用思想が滲み出す一品。  
 
MK21(マークニジュウイチ)…エトルフィンをベースに調合した架空の麻酔薬。これを戦闘で用いると化学兵器禁止条約に抵触するが、今回の事件は反乱事件の鎮圧のためと言うことで通している。  
 
化学兵器禁止条約(カガクヘイキキンシジョウヤク)…化学兵器の使用を禁じる条約。しかし抜け穴が有る。「国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的」ならOK。  
 
戦闘上衣(セントウジョウイ)…戦闘服の上着。やはり各国の個性が出る。男女別に用意されているところもあれば、共用のところもある。女性用は胸部などのデザインが異なっていたり、女性の体型に裁断されているようだ。  
 
認識票(ニンシキヒョウ)…通称ドッグタグ。個人を識別するために用いられる金属製の板。記載される情報は国によって様々。二枚セットになっており、死亡している場合一枚を発見者が回収する事によって発見済みを知らせる。  
 
PX(ピーエックス)…売店。ポストエクスチェンジの略。飲食物から下着などの必需品まで何でも売ってる店。基地内のコンビニと思ってもらえると話が早い。  
 
対薬剤訓練(タイヤクザイクンレン)…使用が予想される薬剤に身体を慣らす訓練。自衛隊では催涙剤で満たしたテントの中でマスクを外したりするらしい。経験者によるとかなり目が痛いが教官たちはピンピンしているそうな……人間か?  
             諸外国の特殊部隊・工作機関等においては、自白剤や激痛剤などを始めとした薬剤に耐える訓練をしているらしい。  
 
第三種警戒配置(ダイサンシュケイカイハイチ)…作品内の部隊における侵入者警戒警報。通称、レモンジュース。第一種・第二種は正規軍と戦う時に発令される。  
 
誰何(スイカ)…誰であるか問うこと。自衛隊においては3度誰可しても答えない者は、捕獲するか刺・射殺する。まず駐屯地に侵入してくる馬鹿などそういないはずだが……  
 
戦闘靴(セントウカ)…戦闘時に履く靴。編上げが一般的。トラップ対策に鉄板が入っている物や、ベトナム戦争時に、足跡が裸足で歩いた様に残り足跡を偽装するといった物も作られた。  
 
C4(シーフォー)…白い粘土のようなプラスチック爆薬。安全性の高さは有名で、どんな衝撃を受けようが暴発する事はまず無く、火に投げ込んでも燃えるだけ。確実に起爆させる唯一の方法は、起爆装置または雷管による方法だけである。  
 
雷管(ライカン)…火薬・爆薬に点火するための器具。筒の中に入った点火用火薬に電気を流して点火する。そして、その爆発の衝撃で点火する。 →C4を参照    
 
発射薬(ハッシャヤク)…銃弾を発射するための火薬。パウダーと呼ばれる。  
 
破片防御(ハヘンボウギョ)…ファントムのセリフ。爆弾攻撃の際の死亡者の三分の一は破片が当たる事で死ぬ。後は爆発の衝撃波とか二次災害とか高熱で死ぬ。  
 
抗弾盾(コウダンタテ)…防弾性能を持った金属製の盾、イメージできない人は機動隊の盾の硬い素材版とでも思ってください。近距離で爆発したため役に立たなかった。→破片防御を参照  
 
中空装甲(チュウクウソウコウ)…戦車の装甲の形式のひとつ。装甲板と装甲板の間に空間を設けることによって(以下略)ここでは破片から身を守るために大量のロッカーが使われた。  
   
B-52H(ビーゴジュウニエイチ)…1952年から改良を重ね飛び続ける戦略爆撃機。米空軍によると2045年まで運用される予定らしい…… いつまで使う気だ…  
 
サイロ(サイロ)…弾道ミサイルを発射する地下施設。核爆発にも耐えられる強度を持つが、防爆シャッターをファントムに全開放されており、全焼した。  
 
ストレンジラブ(ストレンジラブ)…大統領の技術アドバイザーらしいが、何故か「総統」と呼び間違えるドイツ人。 元ネタは『博士の異常な愛情』  
 
リッパー将軍(リッパーショウグン)…今回の事件の首謀者とされる人物。反露感情から自作自演の報復核攻撃を行おうとした……が阻止され、基地にオレンジ作戦を命令する。基地に篭城するが謎の自殺を遂げる。 元ネタは『博士の異常な愛情』  
 
地形追随飛行(チケイツイズイヒコウ)…ほふく飛行・NOEとも呼ばれる飛行法の一種。地形に合わせて低低空で飛ぶ。被発見率を下げることができるが、地面に激突する危険性も高い。  
 
MH-6(エムエイチシックス)…卵形の特殊部隊用小型ヘリコプター。活躍が見たい人は映画「ブラックホークダウン」を見ればいいと思う。  
 
MH-60(エムエイチシックスティ)…特殊部隊用ヘリコプター。UH-60ブラックホークヘリの特殊部隊仕様。どんな機体か想像が付かない方は→MH-6の後半参照。  
 
放射性物質(ホウシャセイブッシツ)…放射線を出している物質。人為的に製造した物などで放射線被曝すると体中の細胞が死に、ジワジワグズグズ死んでゆく非常にアレな最期を遂げることになる。どっかのスパイみたいに盛られ、内部被曝することもある。  
 
どっかのスパイ(ドッカノスパイ)…アレクサンドル・ヴァリテラヴィチ・リトビネンコ氏のこと。ポロニウム210を盛られて体内から内部被曝し、かなり苦しんだ末、2006年11月23日死亡した。→関連 放射性物質   
 
 

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