「っ…お願い、やめて…」  
床に組み伏せられている彼女は涙声で訴えた。表情は窺えないが、おそらく不安と恐怖で満ちていると思う。  
尻を突き出す形でうつ伏せになっている彼女に覆い被さり、敏感な場所を弄る。  
「…でも先輩、もうぐしょぐしょだよ?」  
耳元で囁いて指を入れると、ビクッと身体が跳ねた。  
「や…ぁ…っ」  
グチュグチュと音を立ててかき回す度に、愛液と押し殺した喘ぎがこぼれる。  
そんな先輩が可愛くて、もっと声を聞きたくて、更に激しく責めようと固くなった自身をあてがった。  
「っ…!だめ、それは――」  
先輩が言い切る前に一気に突き入れる。深く浅く、優しく激しく。  
先輩が強く感じてくれる場所を探しながら、夢中で腰を振った。  
「あんっ、やあっ…はっ、ああっ!」  
この行為が終われば元の関係には戻れない。きっとどうしようもないぐらいに壊れてしまう。  
もちろん先輩は悪くない。これは理性を抑えられなかった自分のせいだ。  
だから。だから今だけは。  
「りんくん、凜…くん、凜くん…っ!!」  
凜。俺はこの名前が嫌いだ。小さい頃から女みたいとからかわれて、うんざりだった。  
でも先輩に呼ばれるのは嫌じゃなかった。  
最初は周りの奴みたいにからかかったりしないからかと思った。でも違った。先輩は自己紹介の時に確かに笑っていた。  
でもそれは名前に対してじゃなくて、『よろしくね』という意味だった。  
多分きっかけはあれだと思う。先輩の笑顔に、俺は惹かれたんだ。  
「っ…凜…くん、凜くん、凜くん…!」  
甘い息遣いの合間に俺の名前を呼ぶ。嫌なはずなのに何故そんな事をするんだろう。  
でも、もっと呼んで欲しい。こんな最低な事をしているのに。もうそんなふうに呼ばれる権利なんてないのに。  
「せん、ぱい…!俺、もう…っ」  
「凜くんっ…なかは、だめ…!あんっ、あ、ああっ、――――!!」  
もう限界だと感じて引き抜いた直後に先輩はイッた。気を失ったらしく目を閉じてぐったりとしている。  
もう終わった。もう戻れない。今の事はきっと一生癒えない傷になっているだろう。  
服の乱れを整えて自分が汚してしまったものの始末をしながら、そんな事を考えた。  
もう夢は見れない。  
「…ごめん。先輩」  
自分勝手で最低だけど、あなたが目を覚ますまでは夢を見させて下さい。  
そう心の中で呟いて、俺は先輩の頬にキスをした。  
 
 
おわり  
 

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