執務室の奥、書斎の机には実は細工がしてあって、手錠のように両手を拘束できる。  
 そのまま机の上にべったりと上半身をのせさせると、腰から下は女だと爪先立ちでやっと床に  
触れるといった姿勢を強制的に保てるというわけだ。  
 「すみませんでしたって言ってるじゃないですかぁ」  
 尻を突き出す格好をさせられても、いつもと変わらず生意気な口を聞いてくるアリサ。  
 こういう奴には何を言っても無駄だから、僕は身体に教えることにしている。  
 短めのスカートをめくると、きゃっと声をあげて足をばたつかせた。  
 椅子に座ったまま、僕は自分の足で彼女の動きを封じた。  
 使用人の制服である黒のストッキングが太ももと尻で伸ばされ薄く肌色が透けていた。  
 制服指定は年若い執事長だが、いい仕事をしてくれる。  
 「めくんないでくださいよ!」  
 お遊びとたかをくくっているのだろう、気軽に文句を言ってくる。  
 だが、今日の僕は怒っている。  
 鍵つきの引き出しを開け、道具を取り揃えてどれを使おうか思案する。  
 愛でる時には指と舌でいじりたおすが、今回みたいに調教メイン用の道具もある。  
 筆を選びながら、ストッキングから透ける桃色の割れ目に目をやる。  
 この前の軽いお仕置きでパイパンにしてあるので、クリトリスの具合がよくわかる。  
 大きめだがころんとした可愛いげのあるクリトリスだ。  
 こういうクリトリスには弾力のあるしなやかな筆が合う。まったくもって個人的な好みだが。  
 さらに大きいクリトリスには細みの筆で細部を丹念に、小さいクリトリスには逆にぼったりした筆を選ぶ。  
 試しにくすぐるように一撫でする。悪くない手応えだ。  
 「ひゃ、あははヤダァ」  
 拘束されてるくせに緊張感がない。  
 「お前、毛が生える前にしでかしたら容赦しないって言っといたろ」  
 「だって……」  
 「口答えまでするか」  
 しゅっと強めに筆でなでる。だがストッキング越しではもどかしいだけの刺激だろう。  
 言い忘れていたが下着は履いていない。  
 執務室に呼び出すときにそう指示しておいた。もちろんお仕置きのために。  
 「ご主人様ってヘンタイですか?」  
 「まあそうかな」  
 適当に受け答えしつつ、手を動かしクリトリスをなぶる。  
 じわっとあふれてきたぬめりを筆先にとり、クリトリスの形をうかびあがらせるようにストッキングにぬりつけていく。  
 「……ん……は……」  
 濡れて張り付いてクリトリスの形があらわになるにつれて吐息が荒くなっていく。  
 筆の弾力がクリトリスを捕らえ、弾くように左右になぶる。  
 「ん、ん、んくっ……」  
 口は生意気だが反応は素直で好感がもてる。  
 しゅるしゅると筆先をまわしてクリトリスをこねると、脚をつっぱり尻を持ち上げだした。  
 クリトリスが膨らんでいき、愛液と摩擦でストッキングがクリトリスを晒すようにほどけて緩んでいき、ついには  
ぽっかりと穴をあけた。  
 黒に浮かぶ紅いクリトリス。ねっとり濡れてひくひくと絶頂を待っている。もう一撫で、あと一撫で……  
 ぎりぎり達する寸前を見計らい筆をはずし、次の道具を物色する。  
 「ええ? ちょっと待ってくださいよご主人様、ほんとにお仕置きなんですか?」  
 寸止めとイキっぱなし、どちらが女にとって苦痛なのか男の僕にはよくわからない。  
 どっちも地獄だろうなと思いはするが。  
 「ああ、今日はお仕置きだ。本気のな」  
 開いた穴からクリトリスを慎重にはずし、細長い棒に持ち替えると、ちゅぷり、と音を立てて極矮小な穴に  
棒を差し込んでいく。  
 「あ、うぐ……な、なんですかそれぇ……」  
 震えながらアリサが呻く。  
 「ここがクリトリス、ここが膣、ここはなんだか知ってるか?」  
 僕は指で順に押さえ付けてやる。  
 「え? そんなとこに何かありましたっけ……?」  
 「尿道だよ」  
 そう告げてじわりと棒を引き抜いてやる。  
 
 急に恐怖に煽られたのか、声もなく、一切の身動きを無理に止め、突き出した尻だけをふるふると  
わななかせた。  
 時間をかけ全部抜き取ると、アリサの目の前にその細長い棒をちらつかせ、耳元で囁く。  
 「小さい穴だから専用のがあるんだよ。  
 ……目をつぶるな。つぶつぶが付いてるだろ、これが中をしごきあげてくれる」  
 「や……や、いや……」  
 未知の恐怖に人は弱い。まあ僕もそうだが。  
 ましてや女が自分の知らない箇所を他人の手でいいようにいじりまわされるなど言語道断だろう。  
 僕が椅子に座りなおす間、アリサはこの現状から逃れようと今さら暴れだしたが、脚を押さえて  
尻をつかまえ、尿道口に指を添えると、脅えたように抵抗をやめた。  
 僕の動きに躊躇がないとわかったんだろう、下手に動いて自分の身体を傷つけてしまうのを避けようと、  
彼女はじっとおとなしくなった。  
 意外に賢いところもあるんだな。  
 尿道に棒の丸い先をあてがってから、おしつけていた指をそっと離し、棒を奥まで飲み込ませていく。  
 「い、や……いや……ご主人様やめてください……」  
 声を出すのさえ恐がっているようなかすれた懇願。  
 僕がそんなもの聞くわけがないというのに。  
 棒のつぶつぶが中の肉を押し広げて進んでいく。  
 クリトリスに近いあたりがこりこりとひっかかるような感触を手に伝えてくる。  
 撫でるようにそこを弄ぶと、クリトリスがほんの少しだけ身震いした。  
 快楽と恐怖がないまぜで、彼女の理性を侵食していくのが手に取るようにわかる。  
 ふっと息をクリトリスに吹きかけると、軽く喘いで身体をかたくした。  
 弾みで膣が締まり尿道もゆがむが、弾力のある棒だ、問題なく動かし続けれる。  
 クリトリスが勃起してくるにつれて中の手応えもはっきりと変わっていった。  
 こりこりとふくらみを擦る音さえ聞こえてきそうだった。  
 クリトリスを指でつまむと、明らかな嬌声があがる。  
 いじめるように潰したり離したりを繰り返すと、膣からとろりと粘液が流れだし、棒に絡みついていった。  
 ローションみたいにてらてら光り、尿道越しにクリトリスを責める恰好の道具となっていく。  
 「ひ、や、ご主人様やめてぇ……」  
 アリサの声も色がましていき、抜き差しというよりは擦り撫であげるといった感じの動きに、脚をびくびくと  
震えさせて応えてくる。  
 ストッキングの小さなほころびを通して尿道からクリトリスを責めるというのもなかなかにヘンタイだな、と  
今更ながら苦笑いがこみあげくる。  
 ぬるぬるになってきたクリトリスを優しくもみあげ軽く引っ張ったり押し潰したり、じっくりと愛撫してやると、  
また尻を突き出し震えだした。  
 背がのけぞりきる前に、指を離し棒の動きもとめる。  
 いまだ絶頂に達っせない肉の疼きを全身から匂わせて、ぐったりと汗ばみながらアリサが脱力する。  
 だが息を整えるように声をしぼりだし、  
 「……もうしませんてばぁ……そんなに怒ったんですか〜?」  
 と挑発まがいのことを口走る。  
 「なんだ、余裕じゃないか」  
 尿道に棒をつっこんだままストッキングの裂け目を広げ、小さめのバイブを手に取ると、濡れ緩む膣に  
ねじこんでいく。  
 「……っ! いや! それは嫌! そこは駄目なんです!!」  
 尿道に刺さったままの棒を気にしてか、腰を動かさないように、でもありったけの声でアリサが抵抗する。  
 「ん? 処女か?」  
 アリサは顔を真っ赤にさせて黙り込む。  
 こいつはまだ僕を分かっていない。  
 ただのクリフェチだってだけなのに。  
 処女膜があるとして、その手前にクリトリスは位置しているのだ、何の問題もない。  
 まあいい、アリサには後で説明してやろう。  
 血が出なければ納得もするだろう。あるいは甘い考えかもしれないが。  
 
 短いので浅いところにはまりこんだまま落ちてはこないバイブを作動させる。  
 ごく微弱な振動が尿道にいれてある棒に伝わり、クリトリスを中から揺さぶりだした。  
 「いやあっいやああああ! やめてご主人様やめてぇぇぇ!」  
 僕は椅子に深く腰掛け、机の上に脚を投げだして後ろの窓を見上げた。  
 月が見える。春の満月。  
 荒い呼吸に啜り泣きが混ざって、ごめんなさいと何度も呟くのが聞こえる。  
 クリトリスに視線をやると、ぶるぶると中から伝わる振動でまるで踊っているようだった。  
 「死んじゃうっ死んじゃうぅ……」  
 抜けそうになってきたバイブを元の位置まで押し込み、クリトリスの裏めがけて角度を調節する。  
 「いやあああっひんじゃうひんじゃうよぉぉぉお」  
 尿道用の棒に手を添えてごくゆるくしごいてやると、情けない喘ぎをあげて小さく潮を吹いた。  
 「ゆるしてゆるしてゆるしてやめてぇぇぇっ」  
 快楽の先には凶暴な欲望が待っているのを、この女は本能的に知っていて、それで許しを乞うているのかな。  
 身体はイキっぱなしでびくんびくんと跳ねつづけて、ろくに呼吸もできてはいまい。  
 「俺に逆らうとどうなるか分かった?」  
 よだれだらけの唇がわかりましたと動く。  
 僕はなぜだかわからないが、この女に情が湧いてきている。  
 不思議だ、この感覚。  
 純情さなど持ち合わせてはいないと自分では思っていたが。  
 バイブをくるっとまわしただけで、ぴゅっとまた潮が吹き上がった。  
 濡れるのも構わず、僕は顔を近づけて舌をつきだしアリサの踊るクリトリスをやわらかく押さえつけた。  
 僕の舌の上でぷるぷるぷるっとクリトリスが喜ぶ。  
 「ああんいやあああんんご主人様ぁああああ」  
 アリサも歓喜の声をあげて甘く叫ぶ。  
 僕は少しだけ考えてからバイブの振動をとめた。  
 替わりに手でまわしつつコリっとした膨らみをこすり、尿道棒もそっと動かす。  
 すっかり固くなった手応えを確かめ尿道棒のいぼがクリトリスの根元を刺激するようにゅぽにゅぽと抜き差しする。  
 激しい機械的な享楽に終わりを告げるつもりで、尖るクリトリスに舌を絡ませ、ゆっくりと深く吸い上げた。  
 「あっああああっはああああああんん……!」  
 極まったように身体をのけぞらせ、アリサは震えた。  
 さっきよりも大量の潮を吹き上げながら。   
 
 
 お仕置きの顛末、事の発端。  
 「そんなに怒るとは思わなかったんです」  
 「言い訳の常套句だな。悪いが聞き飽きてる」  
 「私、紅茶のミルクあっためる派なんですよね。だからつい」  
 「何が正解かの話じゃない、俺の好みで動けと言ってるんだ」  
 ぶーっと膨れっ面を見せるアリサが正直、可笑しくもあるし、腹立たしくもある。  
 「でも私、意外な共通点見つけちゃいましたよ」  
 「なんだ」  
 「紅茶好きってところです」  
 にかっと笑う顔を、もう一度泣き崩してめちゃくちゃに喘がせて、狂うほどによがらせて、懇願と絶望でうめつくしたい。  
 「ですよね」  
 「……何がだ」  
 「おそろい、ですよね」  
 こいつもこいつで、どこかおかしい。  
 指をデコピンの形にしてアリサの額へと近づけた。  
 彼女は反射的に僕の目の前で無防備に目を閉じる。  
 
 その手を取って、口づけた。  
 驚いたように目を開ける彼女の唇へ、そっと自らのを寄せる。  
 逃げないように抱きしめたいと手が震える。  
 でも違うんだ、本気かどうかを教えてほしい。  
 彼女の瞳が揺らぎ、まぶたが降りていく。  
 それを見て僕の心臓が痛いくらいに跳ね上がった。  
 何も言わずにキスだけして、舌も入れられずに、ぬくもりとしめやかさに感動すらしていた。  
 こんなのはあれだ、狂気の沙汰だ。  
 ありえない。たかがひとりの凡庸な女に心震わすなんて。  
 つまりは僕も凡庸だったってことか……  
 ぎこちなく抱きしめる僕に、遠慮なく抱きつきかえすアリサ。  
 狂わせたつもりが狂っちまったと、まあそういう話だったわけか。  
 まあいい……それも悪くない。  
 「……アリサ」  
 ──初めて名前を呼んだことに彼女は気づいただろうか。  
 「はい! ご主人様」  
 僕の期待に反して、やっぱりアリサは場違いな返事をした。  
 
 
 
 
 
 おまけ  
 
 
 ヘンタイだわこの人。絶対ヘンタイ。  
 穴が痺れてよだれがでまくって、とても言えたもんじゃないけど、気持ち良すぎて昇天しちゃいそうだけど、  
絶対ヘンタイ。  
 ぶるぶる震えていじめてくるバイブと尿道棒に悶絶してるのに、舌までクリに押しつけてきて、逃げようにも  
手錠だし。  
 あ、すごい、すごい……  
 クリが震える……  
 舌のざらざらがこすれて気持ち良い……  
 あふっまた潮吹いちゃった……  
 ぴゅうってちょっとだけ何かが出ちゃう感触。  
 おもらしとは違う感触。  
 ああ、ていうかもらしちゃいそう……  
 「ごしゅじんさまぁトイレ……でちゃううう」  
 「出せば?」  
 舌を離さず返事される。  
 「て、てじょうはずしてくらさぁい……!」  
 「駄目だ。まだ遊び足りん」  
 くいっとバイブの角度を変え、さっきより舌を深く押しつけてくる。  
 「いやぁあだめぇえええいくうううううう」  
 がくがくと腰が跳ね、愛液が飛び散る。  
 イキっぱなしって狂うのと同義よね……  
 お腹の奥底が熱くてクリが燃えてて、制服が汗びっしょり。  
 「いくぅいくぅぅぅぅううごしゅじんさまぁぁぁぁあああ」  
 どっかの神経が焼き切れたような感覚を感じたときにはもう遅かった。  
 身体が制御を離れて、ちょぼちょぼともらしていく。  
 
 終わった嫌われる……と思ったのに終わらなかった。  
 延々と責めが続く。  
 おもらしが太ももを熱く流れていく。  
 それを見据えられていじりたおされて、気が狂う。  
 「やだっやだっやだっやだっやだ!!」  
 もう勘弁して生きてけないこんなの。  
 泣く私に構いもせずに、クリをじっくりと味わうよう舌が隅々までねぶってくる。  
 ひだも皺も皮も芯も、クリトリス全部を女より熟知しているような舌先の動きが、背筋を痺れさせて脳髄を貫き、  
羞恥を跳ね飛ばして骨の髄まで絶頂感で満たしていく。  
 ぬっちょぬっちょと音までさせて尿道棒が抜き差しされ、クリがどうしようもなく喜んで勝手にイっちゃう。  
 「ゆるしてぇおねがいですごしゅじんさまおねがい……っ!」  
 あふれでる液体ごとクリをいじめて責め抜く手が最高。ヘンタイだけど最高。  
 こんなに乱れて懇願してもやめないどころかさらに執拗になってきて容赦もしない。最高ですご主人様。  
 「いやあああいやぁぁぁぁあああ」  
 ご主人様ご主人様。  
 「やめ……やめてぇぇぇぇえええ」  
 心おきなく叫べる。いやって言える。  
 それでも終わらない。手加減されない。ゾクゾクする。  
 イキつづける身体が本当に気持ち良くて、おかしくなって、狂っていくのがはっきりわかって、深い業の中に  
堕ちていくのが快感で。  
 「お前笑ってるぞ」  
 そう指摘されてももう構わなかった。  
 「はいぃ……きもちいいれすううごしゅじんさまぁ」  
 にやっと微笑む気配がたまらなく嬉しくて、身も心も捧げつくす満足感でいっぱいになる。  
 「へぇ……」  
 私の変わりようにご主人様は気を良くしたみたいで、バイブも尿道棒も抜いて、長い指を入れてくれた。  
 生身の肌はやっぱり違う。膣へのひっかかりとか動き方とか、おもちゃとは比べ物にならない。  
 いつのまにか舌のかわりに指でクリをつままれていて、根っこから粘っこくこすりあげられる。  
 硬くてこりっとした芯が皮ごとねちねち揉まれ、甘美すぎる快感が身体のすみずみを這いまわる。  
 「いい、いいですううすっごいですうぅぅぅ」  
 汗まみれでしるまみれでクリだけで自分が出来てる感じ。  
 それでもこの享楽には逆らいがたい。  
 「……ばかな女」  
 そう呟かれたのに、愛されてると思ってしまうのは本気でばかな証拠ですから構いません。もっと言ってください。  
 ああ、ご主人様……  
 フェラも挿入も要求してこない男。クリトリスだけを愛でる男。  
 身体には傷がつかないように細心の注意をはらってくれてるのがわかる。それでいて精神には容赦しない。  
 壊し尽くして狂わせて笑ってる。  
 そのためなら私のどんな液体にもまみれてくれる。  
 もうどこにも行けない。  
 ご主人様の側以外に行きたいとこなんかない。  
 「……ごひゅじんさまぁ……」  
 耳に低く響く愉しげな笑い声を聞いて、失神しながら失禁した。  
 
 
    end.  
 
 
 

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