「初めての敗北、その先に」 
 
日曜の繁華街。  
まだ日も高く、普段ならデートを楽しむカップルや買い物に来た家族連れなどで賑わっているだ 
ろうメインストリート。  
だが、今そこにはたった3人分の人影しかなかった。  
1人は女、少女と呼んでも差し支えないほどの外見で、ピンクを基調とし多くのフリルをあしら 
った衣装に身を包んでいる。  
アニメなどに登場する変身ヒロインがそのまま画面から抜け出してきたかのような衣装だ。  
そして、彼女はまさしく“それ”であった。  
艶やかな黒髪、そしてその下にある強い意志を感じさせる瞳。  
わずかに腰を落とし見据えるその先には2人の男がいた。  
1人は奇抜なデザインのロングコートとサングラスを身に着けている男。  
緊張に引き締まった少女の顔とは対照的に、その顔には余裕の笑みを浮かべている。  
そしてもう1人は人間と呼ぶのがためらわれる異形の存在だった。  
2本の足で直立してはいるものの、その肩から先は明らかに人間のものではない。  
袖のない服からは無数の鞭のようなものが生えており、肩から先だけを見ればイソギンチャクを 
連想させる。  
 
「今日こそ決着をつけるわ。覚悟しなさい、レザード」  
少女の口から、よく通る凛とした声が紡がれた。  
「こちらとしてもそのつもりだ。我々とていつまでも貴様1人にかまけているわけにはいかんか 
らな」  
レザードと呼ばれたロングコートの男が答える。  
 
事の始まりは突然だった。  
ある日、全てのテレビ局の電波を乗っ取ってレザードと名乗る男が世界に対して宣戦布告を行っ 
た。  
誰もが、最初は何かの冗談だと思った。  
しかし同時に彼の命令を受けた異形の存在が町で破壊行為を始めた事で、それが冗談の類ではな 
いと気付かされた。  
当然すぐさま警官隊が派遣されたものの、彼らでは怪人達を止める事は出来なかった。  
拳銃の弾すら意に介さず暴れまわる怪人に人々が絶望しかけたとき、1人の少女が現場に舞い降 
りた。  
拳銃の弾さえ効かなかった怪人が少女の細腕から繰り出される攻撃で見る見る弱っていく。  
唖然として見守る警官隊の前で、ついに怪人がその動きを止めたとき、1人の救世主が生まれた。  
それから半年、次々に現れる怪人と1人で戦いつづけた少女はついに最終決戦の場に立ったのだ。  
 
 
普通の高校生だった安藤祐美が戦うための力を手に入れたのはレザードの宣戦布告が行われる1 
週間前だった。  
何気なく窓から夜空を眺めていた祐美は空を駆ける一筋の光を見つけた。  
流れ星かと思ったその光は見る見るうちに大きくなり、次の瞬間には祐美の体を貫いていた。  
ショックで一瞬意識を失った祐美が次に気が付いたときには、見なれた自分の身体はそこにはな 
かった。  
見た事もない衣装、ショートカットだった髪は腰まで届くほど伸び、鏡で見る顔もいつもの年齢 
のわりに幼げな顔ではなく大人びたものだった。  
顔だけでなく少々コンプレックスになっていた体型もまるで数年分の成長を一気に遂げたかのよ 
うに変化していた。  
その変化に混乱する祐美の頭に直接響く声があった。  
その声はこの星が狙われている事を告げ、それを阻止しようとしたものの力尽き精神だけの存在 
になった自分の代わりに戦って欲しいと祐美に懇願してきた。  
普通ならとても信じる事が出来ないその話も、変身した自分の身体という証拠を突き付けられて 
は冗談の一言で切って捨てる事は出来なかった。  
だが、もちろんケンカどころか格闘技の経験すらない祐美は戦えと言われても、はいわかりまし 
たと受け入れるわけにはいかなかった。  
しかし、その言葉通りレザードの宣戦布告が行われ、人々が襲われる段になってはそんな事も言 
ってはいられず戦う決心をしたのだ。  
身体の動かし方については、文字通り身体が知っていた。  
そして戦術や必殺技等の使い方は頭の中の声が指示を出してくれた。  
そのおかげもあって、祐美は初めての戦闘でも何とか勝利を収めてくる事が出来た。  
だが精神だけを留めている事は困難なのか、いつしか頭の中の声は聞こえなくなり  
周囲の人間に正体を話す事もできず孤独の中で高校生と正義の味方の二重生活を送ってきたのだ。  
だが、それも今日で終わる。  
今まで後方で指示を出しているだけだったレザードがついに前線に姿を現したのだ。  
レザードさえ倒せば長く辛かった戦いに幕を下ろすことが出来る。  
祐美はそれまでにないほどの緊張感を感じながらその場に立っていた。  
 
「今回の相手を今までと同じだとは思わない事だ。こいつは貴様を倒す為に改良に改良を重ねら 
れた最終型。  
 いかに貴様が強かろうと敵ではない。やれ!」  
レザードの声と同時に、それまで垂れ下がっていた怪人の触手が一斉に祐美に向かって殺到した。  
「くっ……」  
とっさに後ろに跳んだ祐美の目の前でアスファルトが削られていく。  
いくら変身中は肉体的に強化されるとはいえ、まともに食らえばただでは済まない威力だった。  
だがいくつもの戦いをくぐり抜けてきた祐美に焦りはない。  
(あれだけの数に一斉に攻撃されたら、接近戦では不利。なら遠距離から)  
右手に力を集中させる。  
「食らいなさい!」  
わずかに光を帯びた右手を振り上げると、手刀をつくって袈裟懸けに振り下ろした。  
普通なら全く間合い外の無駄な行為にしかならないが、変身中の今は違う。  
手の軌跡に生まれた三日月型の光が怪人に向かって一直線に向かっていく。  
対する怪人は触手を壁の様にして防御姿勢をとった。  
光が次々と触手を切り裂いていく。  
だが光は触手を1本切るごとに力を失っていき、本体に届く前に消失してしまった。  
切り取られた触手の先端は、怪人の足元で打ち揚げられた魚の様に跳ねる。  
(1発で駄目ならもう1発……)  
再び右手に力を集中させ始めた祐美の前で、怪人は驚くべき行動に出た。  
切られた触手の切断面を合わせるかのように、本体側に残った触手が地面の上でのたうつ先端部 
に伸びる。  
するとあっという間に切断面は接合され、触手は元の形状を取り戻していた。  
「なっ!?」  
その驚異的な再生能力にさすがに祐美も息を呑んだ。  
 
この技はどうしても溜めが必要な以上、そう連射は出来ない。  
ここまで短時間で再生されては何発打っても効果はなさそうだ。  
そう判断した祐美は無駄撃ちを避ける為に、右手に集中させつつあった力を一旦元に戻した。  
再生を終えた怪人がお返しとばかりに触手を伸ばしてくる。  
それらをかわしながら祐美は頭をめぐらせた。  
あの再生能力を見るかぎり、生半可な攻撃では自分の魔力を消耗させる結果にしかならない。  
となると威力重視の接近戦用の技を使うしかないだろう。  
遠距離用の技の中にも1つだけ圧倒的な威力を持ったものはある。  
だが、それは本当に最後の手段だ。  
その技は威力はあるものの、一度放ったら全魔力を放出するまで止める事が出来ない。  
それでは、まず間違いなく怪人は倒せるだろうがその後レザードと戦う事ができないのだ。  
「どうした。離れて避けているだけではそいつは倒せんぞ」  
怪人の数メートル後ろで高みの見物を決め込んでいるレザードが嘲る様に言葉を放つ。  
意を決して祐美は前に出た。  
それまで以上の勢いで襲い来る触手を紙一重で避けながら距離を詰めていく。  
ある程度まで近づくと、それまでの前や横からの攻撃に加え、背後からの攻撃も加わりついに完 
全にかわしきれなくなった。  
その醜悪な外見からくる生理的嫌悪を抑えて、体裁きだけでは避けきれなくなった触手を左手で 
弾く。  
手袋越しに生温かく弾力を持った感触が伝わってきた瞬間だった。  
祐美は接触面から一気に力が抜けていくのを感じた。  
左手を中心に生まれた脱力感は一瞬にして全身に伝わり、膝が崩れかかる。  
「くぅっ!」  
その隙をついて伸びる触手を視界の端に捉えた祐美は、崩れそうになる身体に鞭打って背後に跳 
んだ。  
間一髪追撃は避けられたものの、せっかく詰めた間合いは再び離されてしまった。  
 
そこで余裕を見せつけるかのように触手の動きが止まった。  
いつ動き出しても対処できるよう油断なく構えながら祐美は自分の身体に神経をめぐらせる。  
左手は痺れた様に動かない。他の手足も動かないというほどではないが重りを付けられたかのよ 
うに反応が鈍くなっていた。  
何より問題なのは魔力の減少だった。  
(触れただけで魔力を吸い取るとは厄介ね。離れていれば避けられるけど攻撃は届かない。近づ 
けば避けきれない。なるほど奴が自信たっぷりなだけはあるわ)  
「降参して我々の尖兵となって働くというなら命は助けてやるぞ」  
レザードがそんな言葉を掛けてくる。  
サングラスのせいで目元は見えないが、その口は明らかに嘲笑の笑みを刻んでいた。  
だが、祐美は先ほどの攻防の中で勝機を見出していた。  
再び祐美が前に出る。  
応じるように動きを再開させた触手をかわしながら進んでいくが、やはり先ほどと同様かわす動 
作に徐々に余裕がなくなっていく。  
祐美は再び訪れたかわしきれない一撃をようやく脳の命令に反応を返すようになった左手で叩き 
落した。  
即座に襲ってくる脱力感。  
今度こそは祐美は片膝をついてしまった。  
そこを狙って一斉に襲いかかる触手。  
「終わりだな。あっけないものだ」  
そうレザードが呟いた瞬間だった。  
触手に覆い尽くされようとしていた祐美の姿が消えた。  
少なくとも怪人の目には消えた様に映っただろう。  
 
実際には祐美は触手が到達する直前、片膝をついた状態から陸上のスタートの様に一気に前に出 
たのだ。  
そのあまりに多い触手の数が災いし、触手自身が低い姿勢で触手の波の下をくぐり抜けた祐美の 
姿を隠す壁の役割を果たした。  
怪人がその事に気付いたときには、すでに祐美の姿は懐にあった。  
しゃがむような姿勢で見上げる祐美の視線と、見下ろす怪人の視線が束の間交錯する。  
触手を戻しているだけの時間の余裕は怪人にはなかった。  
「消えなさい」  
厳かな声と共に怪人の胸の前にかざされた祐美の右手から光が迸る。  
その一撃で怪人の上半身が吹き飛んだ。  
下半身が後ろに倒れ、最初の攻撃の後と同様千切れた触手が地面の上でのたうちまわる。  
しかしそれを拾い上げる主はもはやこの世に存在していなかった。  
やがて触手がその動きを止める頃、祐美はゆっくりとレザードに視線を向けた。  
「残すは貴方だけよ」  
「まさかあれまで倒されるとはな。私はまだ貴様の事を過小評価していた様だ」  
「貴方とのおしゃべりに付き合う気はないわ。消えなさい!」  
話しながら体内で高めていた魔力をかざした手から一気に解き放つ。  
全魔力を放出する祐美の必殺技だ。  
怪人との戦闘で消耗している以上長期戦は不利、そう考えた祐美は一気に勝負に出た。  
先ほど怪人を倒した攻撃とは比べ物にならない光の奔流がレザードに向かって押し寄せる。  
「正義の味方が不意打ちなどという手を使って良いのか?」  
とっさに障壁を展開し光の流れを押し止めながらレザードが問う。  
「黙りなさい。貴方を倒して戦いを終わらせる。それが今の私の全てよ」  
光が一段と強くなった。魔力だけでなく生命力すらも力に変えて解き放っているかのようだった。  
その力に、障壁が徐々にレザードの側に押されていく。  
 
「くっ、これほどの力とは……」  
初めてレザードの顔に焦りが浮かんだ。  
(いける……)  
その表情に祐美は勝利を確信した。  
当初レザードの前1メートルほどに作り出された障壁は既に30センチほどまで迫っている。  
だがそれまでの焦りの表情から一転してレザードの顔に再び笑みが浮かんだ。  
「え……?」  
その笑みに虚を突かれた祐美は視界の端で動いた何かに反応する事が出来なかった。  
生温かく弾力を持った感触が全身に絡みつく。  
それと同時に、先ほで手で触れた時の何倍もの勢いで力が流れ出していく。  
祐美の全身には地面の上で動かなくなっていたはずの触手が絡み付いていた。  
見る見るうちに祐美の手から迸る光が弱まり、ついには放出が止まる。  
そして全身を包む脱力感に祐美は手をかざしている事すら出来ずに地面に倒れ込んだ。  
今もなお力を吸い取られつづけ急速に意識が遠のいていく祐美の耳に、近づいてくる足音と声が聞 
こえた。  
「安心するがいい。すぐに殺しはせん。貴様にはやってもらう事があるからな」  
その言葉に答える事も出来ず、祐美の意識は闇に落ちていった。  
初めての……そして取り返しがつかない敗北、だった。  
 
 
薄暗い部屋で祐美は目を覚ました。  
(ここは……?)  
全身を気だるさが包み込んでいて、思考も上手くまとまらない。  
だが時間が経つにつれて徐々に意識を失う前の事が思い出せてきた。  
(私……負けて……)  
勝利を確信した瞬間、倒したはずの怪人の触手に纏わりつかれてそのまま意識を失ったのだ。  
どうやら、意識を失っている間にこの部屋に運び込まれたらしい。  
そこまで思い至ったところで、祐美は力が入らない身体を鼓舞して起きあがろうとした。  
しかし、1辺3メートルくらいの正方形の台の上で、仰向けに大の字で寝かされている祐美は起き 
上がる事が出来なかった。  
両手首と両足首、そして腹部に金属の枷が嵌められていてせいぜい動かせるのは首くらいだった。  
捕らえておいて身体を自由にしたままで放置しておくわけはない。考えてみれば当たり前の事だっ 
た。  
身体を動かす事を諦めると、今度は体内の魔力の残量を確かめる。  
戦闘で根こそぎ奪われたものの、どれくらいの時間かはわからないが眠っていたおかげでわずかに 
回復していた。  
とはいえ、戦うにはあまりにも心許ない量ではあったが。  
 
「ようやくお目覚めかな」  
祐美が自分の状態を確かめていると、扉を開けてレザードが部屋に入ってきた。  
祐美は唯一動く首を倒してレザードを睨みつける。  
大の男でも正面から受ければ思わず怯んでしまいそうなその視線にも、レザードは全く動じる気配 
を見せなかった。  
むしろその視線を心地良いものとして笑みを持って受け止める。  
「捕らえられ拘束されていてもそんな目が出来るのか。面白い、それでこそ堕とし甲斐があるとい 
うものだ」  
 
「こうやって相手を動けない様にしないと安心できない臆病者なんて、恐れる必要はないわ」  
祐美はわざと挑発するような台詞を放った。  
動けない祐美にとって、レザードが直接姿を見せたのは最後のチャンスだった。  
身体が動かせず、魔力もほとんどない祐美にもまだ1つだけ攻撃手段が残されている。  
自爆、戦いが始まって間もない頃頭に響く声に教えられ、だが決して使ってはならないとされた禁 
じ手。  
普段祐美の使う魔法では威力そのものよりも制御のために割かれる魔力が大半である。  
ありったけの力を叩きつける必殺技にしても、力が狙った方向以外に行かないように細心の注意で 
制御しているのだ。  
逆に言えば、制御さえ考えなければ少ない魔力でも莫大な威力を生み出す事が出来る。  
発生源である祐美から全方位に放出された魔力は範囲内の全てのものを一瞬にして焼き尽くすだろ 
う。  
もちろん最初の犠牲になるのは中心部にいる祐美本人だが。  
(ごめんなさい……お父さん、お母さん……)  
自然と両親や友達の顔が思い浮かぶ。  
もちろん祐美とて死にたくなどない。  
だがここで祐美が完全に敗北すれば、その守りたかった人達の笑顔が失われるのは明白だ。  
祐美は込み上げてきそうになる涙を抑えて覚悟を決めた。  
「ますます、その澄ました顔が泣き叫ぶ顔に変わるところを見たくなったぞ」  
臆病者呼ばわりされたのが癇にさわったのか、レザードが嗜虐的な笑みを浮かべながら祐美の方へ 
と歩み寄ってきた。  
もはや抵抗などできないと高を括っているのか、その足運びは無造作だ。  
祐美は表情からその意図を悟られない様に、細心の注意を払いながら距離を測った。  
(攻撃が届くまで後3メートル……2メートル……1メートル……入った!)  
だが、すぐには発動させない。  
確実を期すためにはせめてもう1メートルは近づかせたい。  
だが、祐美の期待に反して突然レザードが足を止めた。  
 
(え……?)  
危うく顔に出かかった驚きを慌てて呑み込んだ。  
今レザードが立っている場所はちょうど効果範囲ギリギリの場所だ。  
一か八か発動させるか、それともまだ待つべきか逡巡している祐美にレザードは声をかけてきた。  
「どうした、やらんのか? ここならちょうど届くだろう?」  
「なっ!?」  
今度こそ祐美の顔に驚愕の色が浮かんだ。  
全て読まれている、その事実が祐美の頭の中を絶望で埋め尽くしていく。  
「我々も貴様の事を過小評価したせいで多くの怪人を失ったが、先ほどの戦いといい今といい貴様 
も私の事を過小評価しているようだな。  
 この状態で貴様に出来ることなど魔力を暴走させての自爆くらいだと容易に想像がつく」  
レザードのその言葉に、祐美は言葉を返す事が出来ない。  
「まあ、やらないというならそれでも良い。こちらとしても死んでもらっては困るしな」  
そう言うとレザードは後ろに下がった。  
その動きに祐美が我に返ったときには既にレザードは効果範囲の外に出てしまっていた。  
「死んでもらっては困るって……どう言う意味よ」  
祐美は何とかその言葉だけ喉からしぼりだした。  
だが、動揺からくる声の震えは隠しきれない。  
そもそもずっと侵略の邪魔をしてきた自分を、レザードは文字通り殺したいほど憎んでいるはずで 
ある。  
にもかかわらず生かしたまま連れてきたという事は何らかの意味があるはずだ。その意味はあまり 
考えたくないが。  
「戦いの最後に言っただろう。貴様には今まで邪魔をした分、我々の役に立ってもらうと」  
そう言ってレザードが指を鳴らすと天井の中心、ちょうど仰向けに寝かされた祐美の臍の上あたり 
に穴が開きそこから黒くて四角い物体が下りてきた。  
その前面にはレンズがついている。それはカメラだった。  
続いてカメラが出てきた穴の隣、祐美の顔の正面に当たる部分からはスクリーンが姿を現す。  
そこには大の字に磔にされた祐美の姿が映し出されていた。  
 
「これならば身体が動かせなくても、自分の身体が今どんな状態なのか分かるだろう」  
レザードは嗜虐的な笑みを浮かべながら言う。  
「さて、まずは最初の仕事だ。入れ」  
レザードが部屋の外に声をかけると、扉を開けて一様な戦闘スーツに身を包んだ男達が部屋に入っ 
てきた。  
その数は十人、組織の中でも最下層の位置におり、一般人ならともかく祐美にとっては数十人で一 
斉に襲いかかられても怖くない相手だ。  
そんな戦闘員達が祐美が磔にされた台を取り囲んで視線を注いでくる。  
覆面をしているため表情は窺えないが、その視線の先が胸や股間などに集中しているのは明らかだ 
った。  
「こいつらは貴様のせいで任務は失敗続きでな。身体を使ってストレスを発散させてやってくれ」  
戦闘員による人垣の向こうからレザードが声をかけてくる。  
その言葉を合図としたように、人垣の中から1人の戦闘員が前に出てきた。  
そのまま台に上がり祐美の横で屈むと、衣装の胸の部分に手を伸ばしてきた。  
「ちょっと、やめなさい」  
その手から逃れようと祐美は必死にもがくが、拘束された身体では伸びてくる手から逃げる事など 
出来るはずもない。  
普段なら相手にもならない戦闘員に手も足も出ない事に、悔し涙が込み上げてくる。  
そして無情にも部屋に布を裂く音が響き渡った。  
魔力によって鎧の役割を果たし、本来戦闘員程度の力では破る事など出来ないはずのコスチューム 
も持ち主の魔力がほとんど枯渇している状態ではただの服と強度は大差ない。  
下着ごと胸の部分を剥ぎ取られた衣装の下からは、形の良い乳房と先端に赤い石のついたペンダン 
トが放り出された。  
仰向けの状態でも形が崩れない張りのある乳房に周囲で見ている戦闘員達の視線が一斉に集まるの 
が肌で感じられた。  
外気に触れた乳房は緊張と羞恥でフルフルと小さく震え、桜色のつぼみが上品に頂点で息づいてい 
る。  
スクリーンに映し出された胸だけを露出する自分の姿に、祐美は慌てて首を横に倒した。  
その顔は羞恥でほんのり赤く染まっている。  
 
「どうした? せっかくだから今の自分の姿をじっくり観察してみたらどうだ」  
そんなことを言われても出来るはずがない。  
祐美は頑なに首を倒し目を固く閉じつづけた。  
「見ないというならそれでも良いがな」  
そのレザードの言葉が耳に届いた直後だった。  
『いやあぁぁぁぁぁっ!』  
耳をつんざくような女性の悲鳴が部屋の中に響き渡った。  
自分は声を上げていないし、この部屋に自分以外女性はいない。  
となれば声の発生源はスクリーンしかいない。  
祐美は恐る恐るスクリーンに目を向けた。  
そこには先ほどまでと違い、自分の姿は映っていない。  
その代わりに画面には見覚えのある少女が映し出されていた。  
「あ、晶子!?」  
その少女は祐美の親友の進藤晶子だった。  
いつまで続くかわからない戦いの日々に不安に押し潰されそうなる祐美を、いつも気遣ってくれて 
いた少女だ。  
もちろん祐美も本当のことを話す事は出来なかったが、その気遣いが本当に嬉しく心の支えになっ 
ていた。  
それが何故……、祐美の頭はパニックに陥った。  
晶子は祐美と同じように大の字で磔になっている。  
その横には1人の戦闘員が屈みこみ彼女の首筋にナイフをあててていた。  
変身中こそ努めて気丈に振舞っている祐美だったが、普段はむしろ人よりもおとなしい少女である。  
そんな祐美とは対照的に晶子は活発で物怖じしない性格だった。  
だが、そんな晶子もこの状況では死への恐怖から顔を強張らせて滝の様に涙を流している。  
「私立聖綾高校1年3組、出席番号12番進藤晶子。同じクラスの出席番号2番安藤祐美とは親友 
と言える間柄。これで正しいかな?」  
追い撃ちをかけるようにレザードが手に持った資料を読み上げた。  
「ど、どうしてそれを……」  
自分の正体が知られていた事に祐美は愕然とした。  
 
「貴様はつくづく我々を甘く見ていたようだな。この程度とっくに調査済みだ。  
 ついでにあの娘がどうなるかは貴様次第だと言っておこう」  
「あ、晶子には手を出さないで。お願い……」  
祐美の口から弱々しく懇願する言葉が漏れた。  
今までそこにいた気丈なヒロインは既にいなかった。  
そこには親友を人質に取られ、ただ許しを請うしか出来ない無力な少女がいるだけだ。  
「それは貴様の態度次第だと言っているだろう。これから私の指示に従わなかった場合、その都度 
あの娘が苦しむ事になる。  
 それで構わないというならいくらでも刃向かえばいい」  
そんなことが祐美に出来るはずはない。それを分かってのレザードの発言だった。  
「わ、わかりました。私なら何でもします。だから晶子だけは……」  
その答えにレザードは満足そうに笑みを浮かべる。  
「だがいっそのことさっさと理性を崩壊させて自分で腰を振るようにした方があの娘のためかもし 
れんぞ。  
 あのままでも恐怖のあまり気が狂うかもしれんからな。  
 ともあれ、まず1つ目だ。瞬きくらいは大目に見るが、スクリーンから目を離すことは許さん」  
「はい……」  
今度は画面が2分割され、右半分に祐美、左半分には晶子が映し出される状態になった。  
同じ体勢で拘束されている2人の姿を並べられて、祐美の中でかつてない絶望感が頭をもたげる。  
「そうそう、言い忘れていたな」  
レザードが今思い出したとばかりにそんなことを言った。  
「な、何ですか……?」  
まだ何かあるのだろうか、祐美はそう思いながら問いかける。  
反射的にレザードの方を向きそうになり、慌てて視線を戻した。  
 
「貴様の映像の方は世界中のテレビに生中継されている。  
 テレビ映りが少しでも良くなるようにせいぜい努力する事だ」  
一瞬何を言われているのか理解できなかった。  
一拍置いてその言葉の意味が頭に浸透してくる。  
「な、何でそんな事……」  
「貴様の2つ目の仕事だ。自分たちを守っていた正義の味方が捕らえられて汚された挙句、自ら淫 
らに腰を振っている姿を見ればいかに愚かな民衆とて敗北を悟るだろう」  
「い、いやぁ……」  
事も無げにいうレザードに祐美は絶望に満ちた声を上げた。  
この状態からでは実際に中継されているのか確かめる術はない。  
だが宣戦布告の際に全ての電波を乗っ取った事は事実だ。やろうとすれば可能な事は確かだった。  
それまで無機質にこちらを見ていたレンズの向こう側に、突如何万、何十万の視線が感じられる様 
になる。  
全世界に自分の痴態が晒されることに対するあまりの羞恥に思わず祐美は顔を背けてしまった。  
『や、やだ、やめてぇ……』  
その行為の報いとばかりに晶子の悲痛な声が部屋に響く。  
祐美が慌てて視線を戻すと、晶子は刃物によって上着の中心を縦一直線に切り裂かれていた。  
はだけられたその服の下から臍と、下着に包まれた乳房が露出する。  
『あ、あぁ……』  
晶子の股間の下に水溜りが生まれ、見る見るうちに広がっていく。  
恐怖のあまり失禁したようだ。  
しかし本人は恐怖のあまりその事にも気付いていないのか、呆然と宙の一点を見つめたまま弱々し 
い声を上げている。  
祐美はその姿を見ていられなかった。  
だが目を逸らせば、晶子はもっと酷い目にあわされる。  
「やれやれ、躾の出来ていない娘だ。罰としてもう1枚切り裂いてやれ」  
レザードがそう言うと、何らかの手段で指示を受け取れるようになっているのか戦闘員がスカート 
の端に刃物を当てた。  
そのまま一息に切り裂いていく。  
1枚の布となったスカートがどけられると、晶子は下着だけの姿になった。  
露わになったショーツが先ほどのお漏らしでぐっしょりと濡れているのが、画面越しでも一目瞭然 
だった。  
 
「なっ! 私は画面から目を離していないのにどうして」  
上着の時はともかく、必死になって視線を固定していたにもかかわらず切り裂かれたスカートに、 
祐美は思わず抗議の声を上げた。  
「言っただろう。あれは粗相をしたあの娘に対する罰だ。貴様の行動に対するペナルティとは関係 
ない」  
「そ、そんな……」  
と、それまで放心していて動かなかった晶子が、濡れた内股に外気が当たる感触のせいか我に返っ 
た。  
しかし上着だけでなくスカートも失い、しかも腰の下にある生温かい液体の正体に気づいたとき、 
晶子の精神の糸が音を立てて切れた。  
「いやっ、いやぁ、いやあぁぁぁ! だれか、だれかたすけてよぉ! パパぁ、ママぁ、ひろみぃ 
……」  
必死に身体を揺すって助けを求める晶子。  
だが、変身した祐美にすら壊せない枷を晶子程度の力で破壊できるはずもなく、唯一動く首だけを 
左右に振って叫びつづける。  
その叫びはいつ息を吸っているのかと心配になるほどの鬼気迫る勢いだった。  
自分の名を呼び助けを求める少女の姿に祐美の胸は張り裂けそうになる。  
だが彼女と同様身体の自由を奪われ、こちらからは声を届ける事も出来ない祐美に出来ることは何 
もなかった。  
(ごめん、ごめん晶子……。私の巻き添えにしちゃって……)  
祐美の目からついに涙が零れ落ちた。  
「これではやかましくて敵わんな。おい、黙らせろ」  
黙らせる、その単語は祐美の頭の中では殺すという単語に変換された。  
「や、やめて! 殺さないでぇ!」  
今なお続く晶子の叫びと、新たに加わった祐美の悲痛な叫びが二重奏となって部屋を満たす。  
この期に及んでも祐美の視線が画面から外れなかったのは奇跡と言ってもいいだろう。  
「安心しろ、殺すわけではない。なにしろ大切な人質だからな」  
レザードが人質の部分を強調して言う。  
一方画面の中では、1度画面から消えた戦闘員が手に何かを持って戻ってきた。  
それはピンポン玉より少し大きい球体でゴルフボールの様に表面にいくつもの穴が開いていた。  
その球体の両端にはベルトがついている。  
 
「いやぁっ、たすけ……うむぅ!?」  
再び近づいてきた戦闘員に怯え、一層大きくなった晶子の叫び声だったが  
口にその球体を押し込まれて叫びは急にくぐもったものになった。  
そのままベルトが首の後ろで固定されると、晶子はもはやうめくような声しか出せなくなる。  
とめどなく溢れる涙と競うように、口の端からは涎が流れ出していく。  
「晶子……」  
命を奪われはしなかったものの、その痛々しい姿に自然と祐美の叫びも力を失っていった。  
「さて、向こうの心配ばかりしている場合ではないぞ。こちらもそろそろ続きと行こうか。  
 なにせカメラの向こうでは何万という男が貴様の痴態を今か今かと待ちわびているだろうからな」  
ことさら男の視線を意識させるその言葉に、祐美の中に羞恥心が蘇ってきた。  
胸だけを露出させられた今の姿は、成長した身体には少々不釣合いとも思える少女趣味な衣装とあ 
いまって下手をすれば下着姿以上に扇情的といえる。  
その姿を目の前にいる十人の戦闘員とレザード、そしてカメラの向こうの数えきれない男達に視姦 
されていると思うだけで祐美の顔はこれ以上ないほど紅潮した。  
そんな祐美を横目に、側にいた戦闘員が懐から小瓶を取り出すと、栓を抜き祐美の胸の上に掲げる。  
中には琥珀色の液体が入っており、瓶が傾けられるにしたがい液面が徐々に瓶の口へと近づいてい 
った。  
「な、何よそれ……」  
祐美の中に謎の液体に対する恐怖が生まれる。  
そしてついに最初の1滴が剥き出しになった祐美の右の乳首の側に落下した。  
その液体はとろみを持っており、ゆっくりと胸の曲線に沿って谷間に向かい流れていく。  
その間にも瓶の口からは1本の筋となって液体が流れ落ちてきて、あっという間に胸の谷間に河が 
出来あがった。  
微かに甘い匂いが漂ってくる。  
その液体は戦闘員の懐に入れられていたせいか冷たくはなかった。  
だがそれ自体の温度は人肌程度でも、液体が肌に触れることで気化熱を奪われ、ひんやりとした感 
触が胸を包み込んだ。  
 
しばらくすると冷たさが一転して、胸全体が痒みを伴った火照りに襲われた。  
そこだけ体温が数度上昇したような錯覚に襲われ、猛烈な痒みが脳を貫く。  
手を拘束されていなければ反射的に両手でかきむしっていたかもしれない、それほどの痒みだった。  
「か、痒い……いや……こんなの……」  
その痒みを解消しようと祐美は身じろぎするが、謎の液体で濡れ光る乳房をプルプルと揺らすだけ 
で一向に痒みは治まらなかった。  
「なんだ、もう感じているのか?」  
レザードの呆れたような声が聞こえてくる。  
「か、感じてる……?」  
「気付いていないのならば自分の目で確かめてみるがいい」  
その言葉と共に祐美を映していた画面の右半分がズームし、そのスペース全体に胸が大写しにされ 
る。  
小刻みにゆれる乳房の頂点、桜色のつぼみが先ほどと比べ明らかに大きくなっているのが見てとれ 
た。  
「触れられてもいないのにそんなに勃起させるとは、淫乱な正義の味方もいたものだな」  
「ち、ちがう……これはあの液た……ふぁ、あ……ああああああ!」  
反論しようとした直後、乳房の上に影が落ちたかと思うと戦闘員の手が濡れ光る乳房を鷲掴みにし 
た。  
そのまま力任せに握られると、乳房から信じられない量の快感のパルスが身体中に向けて放たれる。  
それはまるで熟れ過ぎた桃を力いっぱい握ったときに溢れ出る汁の如き大量の愉悦だった。  
同年代の少女に比べ発育が遅く、体型にコンプレックスを持っていた祐美は性に関して過度に臆病 
になっており男性相手どころか自分で慰めた事すらなかった。  
そんな祐美はこの圧倒的な快楽の前に為す術もなく高みへと突き上げられるしかなかった。  
「もうイッたのか? どうしようもない淫乱だな」  
「あ……イ、く……?」  
ようやく頭を埋め尽くしていた白光が薄らいできたところで、今度は背徳感が込み上げてきた。  
 
生まれて初めての絶頂を憎むべき敵の、よりにもよって最下層の戦闘員によって与えられたことは  
わずかに残っていた祐美の正義のヒロインとしての自尊心を粉々に打ち砕いた。  
しかしそのショックも、胸の上で動きつづける戦闘員の手によって生み出される尽きる事のない快 
感の前に押し流されていく。  
「あ……はぁ……やめ、てぇ……それ以上されたら……またぁ……」  
変身前と違い、充分なボリュームを持つ乳房が手の中で形を変える様子が画面には大きく映し出さ 
れている。  
その度に脳の神経を焼き尽くすほどの快感が送り込まれ、2度目の絶頂がすぐそこまで近づいてき 
ている事が感じられた。  
しかし、今回はそのまま突き上げられる事はなかった。  
突然戦闘員の手が止まったのだ。  
刺激が中断され、快感の代わりに切なさともどかしさが胸を中心に吹き荒れる。  
「や、やだぁ……おねがい……最後までやってぇ……」  
手が動くなら自分で揉みしだきたい。だが手を拘束されている以上誰かの手を借りるしかない。  
このまま放置されたらおかしくなる、そう感じたときには祐美の口から恥も外聞もなくおねだりの 
言葉が飛び出していた。  
言ってしまってからそのあまりに淫らな内容に赤面するが、このままでは我慢できないのも事実だ 
った。  
「貴様ばかり善がっても仕方あるまい。これは戦闘員達を喜ばせるためにやっていると言う事を忘 
れるな」  
レザードの冷徹な声が響くと共に、戦闘員が祐美の身体を跨いで膝をついた。  
戦闘員の身体で遮られない様に、カメラが祐美の頭側に移動する。  
つづいて戦闘員は戦闘スーツから自身の肉棒を取り出した。  
それは間近から祐美の痴態を見ていたせいで既に限界までそそり立っていた。  
身体を跨がれた状態で現れたその肉棒は、ちょうど乳房の上を通って祐美の顔の前に突き付けられ 
る形になる。  
いくら初めての性的快楽で蕩けかかった頭でも、目の前に突き付けられた醜悪な肉の塊に祐美は恐 
怖を覚えた。  
全体は赤黒く、周囲には血管が浮き出て脈打っており、これからの行為に期待する様に時折ビクビ 
クと身を震わせている。  
先端は滲み出した液体によって光っていた。  
 
亀頭がちょうど胸の中心にくるように戦闘員は少し腰を引き、その状態でゆっくりと腰を下ろした。  
亀頭が胸の中心部に着地すると、両手で祐美の胸を中央に寄せ先端を乳房で包み込む。  
火照った胸でなお熱く感じられるその肉棒によって乳房を圧迫されただけで、痺れるような感覚が 
湧きあがってきた。  
心では吐き気すら催すほどの嫌悪感を感じているにもかかわらず、身体は正直に反応してしまう。  
いまさらながら祐美が自分の敏感過ぎる身体を恨んでいると、戦闘員がいきなり腰を突き出した。  
乳房の中に埋まっていた先端が谷間から一気に姿を現し祐美の顎の手前まで来る。  
そして次の瞬間には腰が引かれて再び谷間の中に姿を隠す。  
最初に塗り込められた液体が潤滑油になっているらしく、その動きは極めてスムーズだ。  
周期的に胸の内側を擦られる事による快感が徐々に嫌悪感を押し流して頭の中を支配し始めた。  
「今だけはスクリーンを見ていなくてもいいから、その先端が頭を出したときに舐めてみろ」  
突然レザードから指示が飛んだ。  
しかし大分薄れてきたとはいえ、やはり男の排泄器官も兼ねる性器に口をつける事に一瞬の躊躇が 
生まれる。  
ましてこの様子は世界中の人間に見られているのだ。  
自分から舌を伸ばす事など出来るはずがない。  
そして、レザードはその躊躇を見逃さなかった。  
「指示に従えなかった時はどうなるか言っておいたはずだ」  
その声にしばらく動きがなかった画面の中に変化が生じた。  
晶子はついに上下の下着まで切り裂かれ全裸の状態になってしまう。  
叫び疲れたのか少しの間おとなしくなっていた晶子が再びくぐもった叫びを上げた。  
「ご、ごめんなさい。やる、やりますから……」  
祐美は慌てて頭を起こすと、突き出された状態で一旦止められていた肉棒の先端に下を伸ばし舐め 
上げた。  
塩っぽい味が口の中に広がり吐き気がする。  
それでもレザードの機嫌を損ねまいと何度も何度も舌を往復させた。  
よほど気持ちいいのか、腰を震わせながらしばらくその状態でいた戦闘員だったが、しばらくする 
と腰を引き再び先端が乳房の間に消えた。  
わずかに安堵した祐美だったが、舌の上には嫌な味が残ったままだった。  
 
「これから先端が顔を出すたびにちゃんと舐めろ。もし出来なかった場合は毎回ペナルティとして 
カウントするぞ」  
レザードの宣言と共に戦闘員の腰の往復運動が再開された。  
祐美は神経を集中し腰の動きに合わせて舌を伸ばす。  
しかし、最初は周期的だった腰の動きがいつからか不規則になっていった。  
戦闘員が面白がっているのだ。  
1番引いた状態で腰を止め、突然全力で腰を突き出してすぐさま腰を引く。  
舌が届く範囲にはわずかしかいないそれを、祐美は全神経を集中させて追いかけなくてはならなか 
った。  
それはまさにもぐら叩きゲームだった。  
だが、実際のもぐら叩きと違うのは穴ともぐらが1つずつしかない事、そしてもぐらが動く際に全 
身に快感という電流が流れ思考を奪い取ろうとしてくることだ。  
前者は祐美にとって有利な点だが、後者は絶望的なまでに不利な点だった。  
しかも肉棒の動きに全神経を集中させているために、ただでさえ敏感な身体がさらに感度を増して 
いるのだ。  
だがこのゲームにも徐々に終わりが見えてきた。  
祐美が受け取る快感も膨大な量であるが、対する戦闘員が祐美から与えられる快感も決して小さい 
ものではない。  
覆面越しでもその息が荒くなっていることは容易に察する事が出来るほどだ。  
しかし肉棒に集中している祐美にはそれを感じている余裕はなかった。  
そして終わりが訪れる。  
力強く打ち出された肉棒、祐美はそれまで同様乳房の内側から発生した快感によって逆に仰け反り 
そうになる喉を必死に前に倒し  
すぐに逃げてしまう肉棒の先端に全力で舌を伸ばした。  
だが、今回は肉棒が逃げる気配を見せない。  
代わりに舌が到達する直前、その先端が爆発した。  
 
第一射は祐美の鼻頭に直撃した。  
鼻頭で弾けた白濁は目元や舌の上に飛び散っていく。  
突如舌の上に現れたそれまでと違う強烈な苦味、顔全体を覆うように後から後から降り注ぐ熱さ、 
そして鼻をつく男の性臭、それら全てが一斉に祐美の脳に情報として押し寄せる。  
それと同時に放出の度にビクンビクンと乳肉の中で肉棒が跳ねる快感が2度目の絶頂へと祐美を押 
し上げた。  
起こしていた頭が力を失い後ろに倒れ込む。  
鼻や口に飛び込んで呼吸を妨げる白濁液を苦渋の思いで飲み込みながら、祐美は必死に荒くなった 
息を整えた。  
そしてようやく祐美の乳房を蹂躙していた肉棒が離れ、戦闘員が台から降りていった。  
変身前と対照的にふくよかな、密かに気に入っていた変身後の胸を汚らわしい男の性欲処理の道具 
にされた事に涙が溢れ出す。  
(お、終わった……の……?)  
涙で霞む視界の中でその後ろ姿を見送りながら、そんなことを考えていた祐美の耳にレザードの残 
酷な言葉が届く。  
「まだまだ休むのは早いぞ。なにせまだ9人も残っているのだからな」  
戦闘員の人垣の中から先ほどのとは別の戦闘員が前に出てきた。  
(そんな……1人だけでもあんなに辛かったのに、あと9人なんて……)  
祐美は驚異的な集中力を見せ、1人目のもぐら叩きゲームはミス無しでクリアする事が出来た。  
しかし消耗は激しく、とても残り9人分をノーミスでやり遂げる事など出来そうにない。  
だが失敗すればその分晶子が辱められるのだ。  
諦める事は出来ない。  
そんな祐美の考えなどお構いなしで、2人目の戦闘員は最初の戦闘員と同様肉棒を取り出すと祐美 
の身体に跨り乳房で先端を包み込んだ。  
もぐら叩きゲームが再開される。  
しかし1人目でミスがなかったことが不満だったのか、レザードから難易度を高めるための指示が 
飛んだ。  
腰の前後運動に加えて、乳房を両側から支える両手に揉む動きが追加される。  
これによって常に乳房が変形することによる絶え間ない快感が襲いかかり、その中に紛れて肉棒が 
顔を覗かせる。  
胸の谷間の感触で動きが察知できた1人目とは違い、今回は視覚情報のみで反応しなくてはならな 
かった。  
 
しかし常に変形する乳房は戦闘員側が受け取る快感も増幅したのか、2人目は1人目よりも短い時 
間で達した。  
対する祐美はその短い時間の中でも2度の絶頂を向かえ、その2回はさすがに舌が届かせる事が出 
来なかった。  
顔をパックするほど大量の精液を浴びながら、祐美は次に向けて必死に息を整える。  
顔の横から流れる2人分の精液がうなじを伝っていく感触に鳥肌が立った。  
「2回か……、ならば向こうの娘にも口でやってもらおうか」  
画面の中の戦闘員が肉棒を取りだして晶子の頭の上に跨り、彼女の口からボールギャグを外すと代 
わりに肉棒をつきたてた。  
向こうの部屋でも晶子の口元を上手く映せるようにカメラが動く。  
『あぅ……やへ、て……そんなほの、いれはいれぇ……』  
喉の奥を突かれてえづきながら必死に懇願する晶子だったが、乱暴に腰を振られて徐々にその抵抗 
も薄れていった。  
しばらくすると、もはや人形の様に力を失っていた晶子の身体がビクンと跳ねる。  
直後口の端から白い液体が溢れ出した。  
口いっぱいに広がる液体に条件反射で晶子の喉が動く。  
十分飲んだ事を確認するとようやく肉棒が引き抜かれ、晶子は首を横に倒して残った精液を吐き出 
すと咳きこんだ。  
『けほっ……えほっ……もう、やだぁ……んぅ!?』  
再びボールギャグがはめられ言葉を奪われる。  
 
晶子に対する責めが一段落したところで、祐美に対する責めが再開される。  
3人目の戦闘員が前に出てきて、ゲームが始まった。  
しかも今回は揉む動きに加えて、ついに乳首への責めが加わった。  
親指と人差し指で挟まれ潰されるたびに、それまでの胸に対する責めが子供だましに思えるほどの 
快感が全身をかける。  
「だめぇ! そこっ……さわらないでぇ……。だめ、イく、イッちゃうからぁ……」  
頭が白く染め上げられ、その快感を貪る事以外何も考えられなくなる。  
世界中に生中継されている事も、ミスをしたら晶子が辱められる事も、束の間頭の中から吹き飛ん 
だ。  
結局度重なる絶頂によって3人目は成功よりも失敗の方が多いくらいだった。  
「やれやれ、これではカウントする必要もないな。貴様には全員終わるまで連続でやってもらおう 
か」  
4人目が台に上ってくる。  
 
「おい、そちらも最後までやっていいぞ」  
同時に晶子の横にいる戦闘員にも指示を飛ばす。  
それを聞いても、もはや祐美に物事を考える余裕はなかった。  
 
一方で晶子は足と腹部の枷を取り外されていた。  
そのまま足を持ち上げられ、頭の横に膝がつくように体を折り畳まれる。  
「んむぅーー! うーー!?」  
晶子はその体勢に息苦しさを感じ呻き声で抗議するが  
枷を外されたとはいえ男の力にかなうはずもなく、そもそも抵抗するだけの力はとうの昔に失われ 
ていた。  
再び取り出された戦闘員の肉棒は、先ほど放出したばかりだというのに既にそそり立っている。  
だが本人の目の前に突き付けられた晶子の秘所は当然の事ながらまだ男を受け入れる準備は整って 
いなかった。  
淡い茂みの下の割れ目は閉じ、とても戦闘員のモノが入れるようには見えない。  
戦闘員は指を二本揃えてその割れ目に沿うように乗せ、V字を作るようにピッタリと閉じた陰唇を 
割り広げた。  
「んっ!」  
無理矢理広げられて痛みに顔を歪める晶子に対し、戦闘員は懐から小瓶をとりだすと  
中の液体をわずかに口を開いた膣に流し込んだ。  
祐美の胸にかけられた強力な媚薬効果を持つ香油だ。  
「あぁ……!?」  
身体の中に液体を流し込まれる感覚に全身を震えさせて晶子は耐える。  
しかしすぐに彼女の身体に変化が現れた。  
青ざめていた顔だけでなく、全身がほんのりと桃色に染まり  
恐怖で震わせていた身体を何かを求める様にくねらせはじめる。  
 
膣が収縮し中の液体を溢れ出させた。  
膣から追い出された香油と愛液の混合液が重力に引かれて大陰唇の間を流れ落ちていく。  
そしてその流れの先には徐々に膨らみ始めた陰核が存在していた。  
陰核に香油が触れるやいなや、晶子の反応は一気に加速した。  
半狂乱になって首を振り必死に刺激を求める。  
それに応える様に戦闘員の指が陰核を押し潰した。  
「んぅーーーーーー!!」  
膣口から混合液が勢いよく噴き出し、放物線を描いて晶子の顔に降り注ぐ。  
それはさながら二度目の失禁をしているかのようだった。  
その潮吹きが落ちついたところで、戦闘員が晶子の上にのしかかり肉棒の先端を絶頂の余韻でヒク 
ヒクと震える膣口にあてがった。  
「んんっ!?」  
霞んでいた頭が純潔を散らされる事への恐怖で一気に覚め、また晶子は首を振った。  
しかし、この行為に全く意味がない事は、いままでのやりとりの中で晶子自身が1番理解していた。  
案の定一気に戦闘員の腰が沈められる。  
そこには初めての相手に対する気遣いなど一切感じられなかった。  
身を引き裂くような痛みと、それを凌駕する快感に晶子は全身を震わせる。  
そのままピストン運動が始まると、晶子の身体はおこりにかかったように全身に汗の玉を浮かべ、 
押さえ込む戦闘員を弾き飛ばしかねない勢いで暴れ出した。  
前に進む時は無理矢理膣壁が限界まで引き伸ばされる感触、引かれる時はカリ首が膣壁の表面を削 
り取っていくかのような錯覚。  
その2つに繰り返し襲われ、晶子の理性は台風の前のろうそくの火のようにかきけされた。  
最後、戦闘員によって身体の1番奥深くに汚濁液を流し込まれた時も、晶子の頭には身体の中から 
満たされていく至福感しか浮かんでは来なかった。  
 
頬を叩かれる感触に晶子は目を覚ました。  
ぼやける視界が焦点を結ぶと、目の前には覆面をつけた戦闘員の顔があった。  
それを認識した瞬間、気を失う前の事が一気に頭の中に蘇ってくる。  
休みを利用し買い物に出かけた帰り、突如戦闘員達に襲われさらわれたのだ。  
そしてこの部屋に連れてこられて手足を拘束され……。  
そこから先は正に悪夢としか言いようのない時間だった。  
わずかな休息によって理性が戻ってきたことは、晶子を苦しめる結果にしかならなかった。  
「ぅあっ!?」  
ボールギャグはいまだ口の中にあり、晶子から言葉を奪っている。  
恐怖に身をよじると秘唇からは最奥に注ぎ込まれた汚濁液が溢れ出し、その記憶が決して夢ではな 
い事を物語っていた。  
晶子が身を竦ませていると、新たな戦闘員が部屋に入ってくる。  
2人に増えた戦闘員は晶子の腋の下に手を回すと、無理矢理立ちあがらせた。  
重力に引かれて秘唇から新たな精液が溢れ、震える足を伝い落ちていく。  
(な、何……?)  
突然晶子の視界が闇に包まれた。  
目隠しをされたのだ。そして両腕を腰の後ろで拘束された。  
それを晶子が認識するとほぼ同時、両脇の戦闘員が歩き始める。  
晶子は半ば引きずられる様にして部屋の外へと連れていかれた。  
 
どれくらい歩いただろうか、晶子の耳がドアの開く音を聞いた。  
「来たか」  
男の声が聞こえた直後、目隠しとボールギャグが取り外され、晶子は視界と言葉を取り戻す。  
そこには変わったデザインのロングコートとサングラスを身につけた男が立っていた。  
 
「あ、あなたは……」  
晶子はその姿に覚えがあった。  
いや、今の日本にこの男の事を知らない者はいないだろう。  
この半年、この国はこの男によって脅かされてきたのだから。  
「随分と楽しんでいたみたいだな」  
その男、レザードは冷ややかな視線を送りつつそんな事を言ってきた。  
その言葉に晶子の頭に羞恥心が込み上げてくる。  
切り裂かれた衣服は元に戻るはずもなく、いまも全裸のままなのだ。  
覆面のせいで表情が窺えず、声も発しない戦闘員に対しては命を持たないロボットのような物だと 
自分に言い聞かせる事で必死に心を守っていた。  
だが、いま目の前にいるレザードは違う。  
その視線に晶子はこれまで以上の羞恥を感じていた。  
「か、帰して……。私を家に帰してください……」  
震える声で懇願する。  
そんなことが叶えられるはずがない、それはわかっていても言わずにはいられなかった。  
だが、答えは晶子の予想外のものだった。  
「家に帰す……か。考えてやらん事もない」  
その答えに晶子は飛びついた。  
家に帰れる。汚された記憶は一生心に傷として残るだろう。  
それでももう2度と戻れないと思っていた世界に戻れるという希望が見えたことで、晶子の心は沸 
き上がった。  
「だが無条件で、というわけにもいかんな」  
「お、お願いします。何でもします。何でもしますから!」  
その言葉にレザードは口の端を上げた。  
「何でも……か。ならば向こうを見てみろ」  
レザードの右手が上がり横を指差す。  
晶子はその指が差す方向に目を向けた。  
 
レザードに気を取られ気付かなかったが、そこには2人の人物がいた。  
1人はもはや見なれた戦闘員、そしてもう一人はその戦闘員に幼児が小便をする時のような体勢で 
抱え上げられている全裸の女性だった。  
彼女は気を失っているのか、首は項垂れたままで全く動こうとしない。  
わずかに見える顔や、そして何より黒髪にべっとりとついた白濁が彼女が受けた仕打ちを想像させ 
る。  
胸の谷間に光る赤い石のついたペンダントだけが、彼女がいま身につけている唯一のものだった。  
衣装は全て剥ぎ取られているが、その女性はもちろん祐美である。  
恥辱のもぐら叩きゲームも6人目を終わる頃には既にゲームとして成立しなくなっていた。  
祐美はほぼ常時イキっぱなしの状態になり、舌を伸ばすどころか首を前に倒す事すら出来なくなっ 
た。  
そして最後の10人目が射精した瞬間に、まるで図ったかのように意識を失ったのだ。  
だが、変身によって顔も体型もかわっているために晶子はその女性が祐美であると気付く事はなか 
った。  
「か、彼女は……」  
その姿を見ているだけで、自然と自分が受けた陵辱が思い出され晶子は倒れそうになった。  
だがいまだ両脇に立っている戦闘員がそれすらも許さない。  
「お前も聞いた事くらいあるだろう。我々の邪魔をしている女がいると。  
 随分手を焼いたが、いまでは捕らえられてあの様だ」  
もちろん晶子はその存在を聞いたことがあった。  
「首から上は見ての通り精液まみれだが、下はまだ純潔を残したままだ。お前にはそれを奪っても 
らおう」  
「えっ!?」  
その言葉に、晶子は慌ててレザードに視線を戻した。  
「必死で守っていた一般人の手で純潔を奪われるというのは無様な正義の味方にはお似合いだろう」  
そう言ってレザードは1本の棒のような物を差し出した。  
それは長さは三十センチ程で、両端が膨らんでいた。  
「使い方は分かるか? 片側をお前のアソコに差し込んで、反対側で奴のアソコを突くんだ」  
淡々と説明するレザードの言葉も晶子の頭にはほとんど届いていなかった。  
 
「そ、そんな事……できるわけが……」  
自分が無理矢理純潔を奪われた時の絶望感が思い出される。  
同じ気持ちを自分の手で他人に味わわせる、それもその身を犠牲にして自分たちを守ってくれてい 
た恩人とも言える相手に。  
そんな事が出来るはずがなかった。  
「帰りたくはないのか? 一生ここで戦闘員達の慰み者として生きていきたいというなら無理強い 
はせんが」  
耳に届く悪魔の囁きにも晶子は動けなかった。  
「それなら一生ここで暮すがいい。そうだな、一人では寂しいだろうから  
安藤祐美……と言ったか、お前の親友も連れてきて同じ目にあわせてやろう。親友と一緒にいられ 
れば寂しくはなかろう?」  
その言葉に晶子は雷に撃たれたかのような衝撃を受けた。  
次の瞬間、気付いた時は手を伸ばし双頭バイブを掴んでいた。  
幼い頃からずっと一緒にいた親友。  
最近、ちょうどレザードが現れた頃からだから半年くらいだろうか、時折憂いを帯びた表情をする 
ようになった彼女の顔が頭によぎる。  
理由を聞いても誤魔化されてしまい、打ち明けてくれない事に寂しさを感じていた。  
既に汚されてしまった自分はともかく、彼女にだけはこんな思いをさせたくなかった。  
晶子の頭にはそれしかなかった。  
何故レザードが自分や祐美、そしてその関係を知っているのかという疑問を抱く余裕すら今の晶子 
にはない。  
「ほう、やる気になったか」  
サングラスの奥でレザードの目が細められる。  
祐美を人質に取られては晶子に選択肢は残されていなかった。  
震える腕でその先端を自らの秘所に当てる。  
長さはともかく、太さは先ほど入れられた戦闘員の物よりは一回り細い。  
とはいえ、他人の目の前で自ら挿入する事に激しい抵抗を覚えたが、晶子は意を決して腕を引き寄 
せた。  
亀頭を模した先端の膨らみがまだ未熟な膣口を押し広げる。  
まだ膣内に残っていた精液と愛液の混合液が押し出されるように隙間から流れ出し晶子の恥辱を煽 
った。  
「ん……くぅ……」  
痛みに耐えながら先端が子宮口に達するまで押し込むと、晶子は大きく息を吐いた。  
 
そうやってバイブを咥えこむと、晶子は祐美の方へ身体を向け一歩ずつ歩き出した。  
足を動かすたびにバイブが膣壁を刺激して膝が崩れそうになる。  
後ろ手で拘束されているために手を使ってバランスを取る事も出来ず、一歩踏み出すだけにも全神 
経を集中させなくてはならない。  
晶子が苦しみながら歩く姿を見て楽しむためなのだろう、先ほどまで両脇に立ち晶子の身体を支え 
ていた戦闘員は既に離れていた。  
わずか数メートル、たったそれだけの距離を歩いただけで晶子はもう息も絶え絶えになっていた。  
遠目では気付かなかったが、戦闘員に抱えられている彼女は先ほどまでの晶子と同様ボールギャグ 
を嵌められ口の端から流れ出す唾液が胸まで伝い落ちている。  
まだ眠りつづけるその顔に晶子は罪悪感を覚えずにはいられなかった。  
自分と親友の為とはいえ、この女性を犠牲にしようとしていることは否定できない事実なのだ。  
「どうした。親友と自分2人分の生活と、見ず知らずの女1人の純潔、どちらが大事か考えるまで 
もないだろう」  
動きが止まった晶子の心を見透かした様にレザードが背後から声をかけてくる。  
もう後戻りは出来なかった。  
慎重に腰の位置を調節しバイブの先端を祐美の秘所に当てる。  
直接触れられてこそいないものの、度重なる胸への責めによって祐美のそこは十分過ぎるほど潤っ 
ていた。  
「ん……」  
先端がそこに触れた瞬間、眠りつづける祐美の口から声が漏れた。  
祐美はわずかに身じろぎした後、再び安らかな寝息を立て始める。  
「ごめんなさい……」  
謝って許される事ではない、それはわかっているが思わず謝罪の言葉が口を突いて出た。  
そして一気に腰を前に出す。  
まだ何も受け入れた事のない祐美の膣の抵抗は強く、晶子は逆に子宮口を強く押されて腰が砕けそ 
うになった。  
それでも、晶子は親友の顔だけを頭に思い浮かべて必死に腰を前に出した。  
 
「んあぁーーー!?」  
身体の中心を貫く痛みに、たまらず祐美は目を覚ました。  
だが頭の中で痛みが暴れまわっていて状況を把握出来ない。  
文字通り槍で突き刺されたらこんな痛みを味わう事が出来るだろうか。  
それほどの激痛だった。  
身体の1番奥を突き上げて、ようやく中に入ってきていた何かの動きが止まった。  
その状態でも痛みはあるが動いているときよりは幾分マシになったため、周囲を認識するゆとりが 
生まれる。  
まず目に入ったのは見慣れた顔の少女。  
しかし、その顔は苦痛に歪んでいる。  
(あ、晶子っ!?)  
画面の中にいたはずの晶子が何故目の前にいるのか。  
痛みのせいで上手く頭が働かない。  
(い、痛い……)  
下腹部から生まれる痛みの正体を確かめようと視線を下げる。  
そこでは2人の秘所がくっつかんばかりの距離で向かいあっていた。  
そしてその間では黒い棒が橋のように2人の秘所を繋いでいる。  
痛みの原因は挿入されたこの棒だと気付くと同時に、純潔を奪われたという事実が押し寄せてきた。  
「うぁっ? あぁ!?」  
ボールギャグに言葉を奪われ、意味不明の言葉を発しながら祐美はもう1度晶子の顔に視線を向け 
た。  
晶子は目を固く閉じているが、その口が小さく動いて何事か呟いている。  
「ごめんなさい……でもこうしないと祐美が……ごめんなさい……ごめんなさい……」  
自分の名前が聞こえ、一瞬正体がばれたのかと祐美は背筋が寒くなった。  
だが、どうやらそうではないらしい。  
晶子は目の前にいる自分に対して祐美と呼んでいるわけではないという事が分かり、祐美は安堵し 
た。  
「守っていた人間によって純潔を奪われた気分はどうだ?」  
晶子の向こう側から憎き敵の声が聞こえた。  
 
さらに視線を上げると晶子の肩越しにレザードが立っているのが見えた。  
その顔には心底楽しそうな笑みが浮かんでいる。  
「その娘は貴様を犠牲にする道を選んだのだ。もっとも、自分が助かるためだけでは動けなかった 
がな。  
 だが、親友が同じ目にあってもいいのかと聞いたらすぐに動き出したぞ。泣かせる友情ではない 
か」  
そう言って笑いはじめるレザード。  
部屋の中には彼の笑い声と晶子の啜り泣きだけが木霊した。  
「ごめんなさい……許して欲しいなんて言いません。でも、でも祐美にだけは、こんな思いさせた 
くないんです……」  
祐美はようやく状況を理解できた。  
それと同時に胸が張り裂けんばかりに痛んだ。  
この痛みは純潔を奪われた絶望からくるものでも、いまなお突き立てられたままのバイブから来る 
肉体的な痛みでもない。  
晶子は優しい娘だ。それはずっと一緒にいた祐美が1番よく知っている。  
その彼女が他人を犠牲にすることで、どれほどの罪悪感に苛まれているのか、それを思うだけでこ 
の上ない程胸が痛んだ。  
そこまでして自分を助けてくれようとしている晶子への感謝と、そしてその思いすら玩具にしたレ 
ザードに対する圧倒的な怒りが込み上げてくる。  
怒りの思いで人を殺せるならどれだけ良かっただろう。  
しかし現実には気持ちだけで相手を殺すことは出来ない。  
だが、目の前に晶子が現れたことは祐美に絶望と同時に、わずかな希望をもたらした。  
一方で現実はさらなる苦しみを2人に与えようとしていた。  
「さて、そろそろ次の段階に進むとしようか。感動の再会、どれだけ楽しませてくれるか期待して 
いるぞ。……おい」  
ようやく笑いが収まったレザードに声を掛けられた戦闘員が2人の側まで歩いてきた。  
そしてそのまま祐美の胸元に手を伸ばす。  
祐美はその動きに、胸を揉まれると思って身を竦ませた。  
力任せに乳房を捏ねられ、固くなった乳首は摘まれた時の快感が思い出され  
拒絶する意志とは裏腹に、期待するかのように膣が収縮してバイブを締め上げる。  
だが、予想に反して胸に対する刺激は与えられなかった。  
代わりに戦闘員の指が摘み上げたのは赤い石のついたペンダントだった。  
(そ、それは……!?)  
今度こそ祐美の全身を恐怖が駆け抜けた。  
 
服を奪われ全裸にされた身体に唯一残されていたそれはただのアクセサリではない。  
それこそが祐美の変身を司るペンダントだった。  
しかもそれは変身の際に鍵となるだけでなく、変身後もこの姿を維持する役割を担っているのだ。  
それを奪われると言う事は……。  
「やれ」  
レザードの指示を受け、戦闘員の手が強く下に引かれた。  
祐美は一瞬首の後ろに痛みを感じたが、小さな音と共にその痛みは一瞬で消失する。  
その音は止め具が外れた音であると同時に、それによって全てが崩壊することを知らせる鐘の音で 
もあった。  
「あーーーー! ぅあーーーー!!」  
この身体を構成している魔力が放散していくのを感じ、祐美はそれを引き留めようと必死に首を振 
る。  
しかしそんな事で逃げていく魔力を留めておく事など出来るはずがない。  
祐美の身体が淡い光に包まれ、晶子は目の前で起こる現象に目を見張った。  
そしてその光の下から現れた少女に晶子はさらに目を見開く事になる。  
「ひ、祐美っ!?」  
「あ、あぁ……ぐぅっ……」  
長かった髪は短くなり、手に余るほどだった乳房は小学校高学年といっても通じるほどの成長途中 
の少女のサイズに逆戻りする。  
その変化に合わせ、性器の成長具合も外見相応に戻りさらなる痛みが祐美を襲った。  
晶子は目の前の現実が信じられないのか、目を見開いたまま口をあけて唖然としている。  
祐美からペンダントを奪った戦闘員が祐美にはめられていたボールギャグを外した。  
「ごめん……ごめんね……」  
言葉を取り戻して最初に口を突いて出たのは、晶子への謝罪の言葉だった。  
「祐美……なんで……?」  
問い掛けつつも、晶子の頭の中では様々な事がジグソーパズルのピースの様に綺麗にはまっていっ 
た。  
周囲には多くの人がいたにもかかわらず自分だけがさらわれた事、半年前から見かけるようになっ 
た祐美の憂いを帯びた表情。  
思い返せば、他にもこの半年間で思い当たる節はいくつもあった。  
考えてみればレザードが自分と祐美の関係を知っていたことも疑問に思うべきだったのだ。  
 
「お前も可哀想なものだな。そいつが我々に楯突きさえしなければ巻き添えをくう事もなかったの 
だからな」  
「ごめんね……ほんとうに……」  
レザードの言葉に心をえぐられ、祐美はとめどなく涙を流す。  
そこには平和のためにその身を犠牲にする戦士ではなく、親友を失う事を恐れる一人の少女がいる 
だけだった。  
「どうだ、憎いか? お前が苦しむ原因になった目の前の女が憎いか?」  
「黙れ!」  
調子に乗って言葉を重ねるレザードを晶子が一喝した。  
晶子の心にはレザードの言うような祐美を恨む気持ちは生まれてこなかった。  
それよりも、誰にも打ち明ける事が出来ず一人で戦いつづけてきた祐美に対する愛おしさと  
気付いてやれなかったことへの自己嫌悪、そして何より親友を苦しめたレザードに対する怒りだけ 
があった。  
突如さらわれた挙句に戦闘員に陵辱され、萎えかかっていた心が怒りによって再び立ちあがり、生 
来の気の強さが蘇ってくる。  
「打ち明けてくれなかったのは残念だけど、一人でずっと戦ってきた祐美を恨んだりしない」  
低い声でそれだけ言うと、晶子は祐美を貫いているバイブを引き抜くために腰を引いた。  
たった一回とは言え、より太いものを受け入れた経験、そして身体の成長具合の差によって膣の締 
め付けは晶子より祐美の方が強い。  
そのまま腰を引いて逆に祐美の方に残ってしまうのを避けるため、晶子は全神経を集中させて膣内 
のバイブを締めつけながら腰を引く。  
自分の意思で膣を締めることに対する羞恥より、祐美の苦しみを取り除きたいという気持ちの方が 
勝った。  
「んんーーー!」  
膣内を擦られる痛みに裕美が顔をゆがめる。  
もう少しで抜けるところまで腰を引いたときだった。  
横にいた祐美からペンダントを奪った戦闘員が晶子の腰の後ろに手を当てると一気に押し込んだ。  
「ひぐぅ……!」  
せっかく抜けかかっていたバイブは再び祐美の子宮口を突き上げる。  
祐美を助けようとした行為は、結果として苦しめる事しか出来なかった。  
 
「いいぞ、もっと掻き回してやったらどうだ。その内自分から腰を振って悦びだすかもしれんぞ。  
 そうだ、お前には言ってなかったがいまこの部屋の様子は世界中のテレビで生放送中だ。  
 お前達は一躍有名なレズビアンカップルというわけだな。テレビの前の家族や友人に思う存分見 
せ付けてやるがいい」  
「くっ……」  
この様子が家族や友人に見られていると聞いて、さすがに晶子も怯んだ。  
だが、晶子は必死にそれを頭の隅に追いやり、打開策を探る。  
痛みが限界を超えたのか、祐美は口を半開きにしたまま焦点の合わない目で宙を見ているだけでほ 
とんど反応がなくなっていた。  
晶子は無力な自分に腹が立ってきた。  
祐美はずっと体を張って自分たちの生活を守ってきてくれたのに、自分は足手まといにしかなって 
いない。  
「どうした、もう動かんのか? まったく、親友とやらに罵られて壊れる様が見たかったんだがつ 
まらんな」  
「ゆるさない……絶対に、ゆるさないから……」  
「何も出来ん無力な分際で言う事だけは1人前だな。まあいい、そろそろ飽きてきたし終わりにす 
るとしよう」  
「な、何を……ぅあああああ!」  
レザードが指を鳴らすと膣内のバイブがいきなり暴れ始めた。  
激しい振動と、のたうつ蛇のような動きに無理矢理性感が高められていく。  
そこから逃れようと腰を引こうとしても、後ろに当てられた戦闘員の手がそれを許さない。  
一方的に送り込まれる膨大な快感の前に怒りも自己嫌悪も押し流されそうになる。  
後ろに逃げられず、身体を前に倒した晶子の唇が祐美の唇に重なった。  
 
唇が重なったのは偶然だったのかもしれない。  
だが祐美の舌が晶子の唇を割り開いて入ってきたとき、晶子は目を見張った。  
『晶子、巻き込んじゃって本当にごめん……』  
「ひゃぅ……ら、なにぃ……」  
それは耳がとらえた声ではなかった。  
頭の中に直接祐美の声が響き渡る、そんな不思議な感覚。  
『声にしなくても頭の中でで思うだけで大丈夫。直接声に出すと近くにいる戦闘員にばれちゃうか 
ら』  
続いて頭の中で響く説明にしたがって、晶子は心の中で声をかけることに挑戦してみた。  
『こ、こう?』  
『うん、それで大丈夫』  
頭の中で思ったことに返事が返ってくる。  
どうやら、ちゃんと通じている様だった。  
『ごめん、祐美……私、何もできなくて……』  
『そんなことない。巻き込んじゃった私が悪いの。でも今だけ力を貸して欲しい』  
『え? でも私……』  
『力を分けて欲しいの。今の私は戦えるだけの力がないから。だから……』  
『そんなこと出来るの?』  
『うん、直接触れ合ってないと出来ないけど。晶子はすごく疲れた感じになると思うけど死んじゃ 
ったりはしないから、お願い……』  
その言葉には戦いに巻き込んでしまった晶子に対する申し訳ないという気持ちが込められていた。  
だが、もちろん晶子は拒むつもりなどなかった。  
『もちろんいいよ。お願い、あいつらをやっつけて』  
『ありがとう、本当に……』  
その言葉とともに、晶子は身体の芯から何かが抜けていくような感覚に襲われた。  
重ねた唇から力が祐美へと流れ込んでいく。  
 
レザードが最後の一押しをするためにバイブの動きを強めようとしたとき変化が起こった。  
唇を重ねていた2人の姿が白光に包まれ、近くにいた戦闘員が弾き飛ばされる。  
抱え上げられていた祐美は落下の際に膣奥をバイブで抉られ  
破瓜の血に加えさらなる血を秘所から流しつつも立ちあがると、弾き飛ばされた戦闘員の手から零 
れ落ちたペンダントに飛び付いた。  
そして先ほどの光とは比べ物にならない強い光が部屋の中を満たした。  
その光が収まったとき、そこには一人の戦士の姿があった。  
戦闘用のコスチュームは普段の服が分解再構成されて作られるため、いまの祐美は全裸のままだ。  
だが、その裸身は一種の芸術の様に神々しさを感じさせる。  
「くっ……」  
レザードの顔が焦りに歪む。  
「変身していなくても魔力さえあれば、弱い魔法だけなら使える事までは知らなかったみたいね。  
 私は貴方を絶対に許さない。消えなさい!」  
祐美はためらうことなく必殺技を放った。  
かざした両手から光の奔流が生まれ、一気にレザードを押し流そうとする。  
レザードは間一髪障壁を張って直撃を防いだ。  
だがその力の強さに徐々に障壁が後退していく。  
それは、あの繁華街での戦いの再現だった。  
だが、あのとき遅れをとる原因になった触手はここにはない。  
祐美が全身の力を振り絞って出力を上げると  
さらに太さを増した光の柱がついにレザードを包み込み、悲鳴すら上げさせないままこの世界から 
消し去る。  
光の柱が消えたとき、部屋にはもう祐美と晶子の姿しか残っていなかった。  
裏切りをなくすための予防線なのか、レザードが消滅すると同時に戦闘員達も風化する岩の映像を 
早回しで見ているかのように空中に消えてしまったのだ。  
祐美は倒れている晶子の元へと駆け寄った。  
 
「祐美……やったの……」  
全身を包む強烈な倦怠感のせいで今にも晶子は意識を失いそうになっていたが  
祐美に覗きこまれると薄目を開けて言葉を発した。  
「うん、終わったんだよ……晶子のおかげで……」  
祐美の目から涙が零れ落ち晶子の頬に当たる。  
それと同時に祐美の身体が光に包まれ変身が解除された。  
「そっか……これで帰れるんだね……あ、でも皆に見られちゃったのどうしよう……もう学校行け 
ないね……」  
あの様子が世界中に生放送されていたことが、晶子の心に重しとなってのしかかった。  
「大丈夫、ちゃんと力が戻れば魔法で記憶を消せるから」  
その言葉を聞いて晶子は安堵の笑みを浮かべた。  
「なら……万事解決、だね……ごめん、すごく眠くて……寝て、起きて、シャワーを浴びたらまた 
……」  
さすがにそこまでが限界だったのか、晶子は言葉の途中で目を閉じると静かな寝息を立て始めた。  
「本当にごめん……そして、ありがと……」  
そんな晶子を、祐美は精一杯の感謝を込めて抱きしめる。  
辛い戦いは、もう終わったのだ。  
 

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