んん、あ〜… 今何時だ…?  
重い体と目を動員して目覚まし時計を見る。短針の指が3を指しているのが見えた。  
……また風呂入らずに寝ちまったか。一人暮らししてるとこうなってしまう事がよくあった。  
……今日はバイトもねーし、しゃーない、寝直すか。  
 
……寝返りを打とうとして、何かが足に当たった。  
「んう……」  
足に当たったその何かがうめき声を発した。 ……何かが俺の膝に乗っている。  
いや、今まで膝に乗っていたそれが、寝返りを打った拍子に膝から布団に落ちたのだ。  
 
さらにその何かはもぞもぞと動いて元の通り膝の上に乗ってきた。  
「な、なんだ…??」  
その何かを確認すべく、ひっついてなかなか離れない瞼をこじ開ける。  
 
……何のことはない。 寝ている俺の膝を枕にして、女が眠っていた。  
静かで穏やかなその寝息が、逆立った気分を落ち着かせていく。  
「……また来ちまったのか。」  
 
俺が身を起こすと、女はさっきの一撃で目を覚ましていたらしく、顔がゆっくりとこちらを向いた。  
「……あ、……おはよ。」  
「おはよじゃねーよ。ったく……」  
「……うん。」  
無愛想付きつつも、猫を撫でるみたいに頭を触ってやる。  
 
コイツは昔からそうだった。  
何か嫌な事があったり、気分が落ち込んだりした時に、俺の膝枕を借りていくのだ。  
普通こういうのは男が女にしてもらう事だと思うんだが……これがもはや習慣になっていた。  
 
「で、今度は何が原因だ?」  
膝枕を貸したまま聞いてみた。  
「へ?」  
「どうせまたフられたんだろ? それともフった方か?」  
「……フった方。」  
この年になってもコイツは俺の膝枕を借りに来る。お互いにいい歳だというのに。  
 
時計の短針が5を指しても、外はまだ暗闇のままだった。  
「……今日も仕事だろ。 そんな格好で寝ちゃったから、皺になってるぞ。」  
「……。後でアイロン貸して。」  
「ついでに脱いどけよ。」  
「うん。」  
 
上着とスカート(ついでにストッキングも)を脱がせて、布団の横に座らせる。  
下着同然の姿であぐらをかいてる彼女の姿は、  
いつものキャリアウーマンな印象を完全にかき消していた。  
 
「で、そいつの何が不満だったんだ?」  
「……う〜ん。」  
「……俺と比べて、どうだったんだ?」  
「そうねえ… 優しかったしぃ、お金持ってたしぃ、生活ちゃんとしてたしぃ……」  
「オイ。」  
「でもね……うん。 やっぱり、何かが違うんだぁ……」  
「……ナニがか?」  
ビン、と朝立ちしているモノを見せてみた。  
 
「もう…!朝から下品!!」  
「朝だからなんだな、コレが。 で、どうする? してくか?」  
「…………する。」  
問うまでもなかった。 コイツは、それも込みでココに来ているのだから。  
 
俺はあぐらをかいてままで、股間で上下している頭を見ていた。  
「ん… 昨日お風呂入ってないね。スゴイ匂い。」  
そう言いつつも、汚れを剥がし落とすかのように激しく吸い立てている。  
 
「…お前だってそうだろうが。」  
「あたしは、いっつも入ってるもん。 昨日は……たまたまだもん。」  
「…タマだけにか。 痛っ!」  
「……。」  
よほどつまらなかったのか少し噛まれてしまった。  
 
さらに冷たい視線がこちらを見上げている。  
「そ、そんなに睨むなよぅ……」  
「……そっちも、舐めて。」  
 
俺はそのまま身を布団に横たえ、目の前に掲げられた茂みにむしゃぶりつくように食らいついた。  
「あうん! んん…」  
俺の程ではないが、やはり少しきつい匂いがする。  
しかし躊躇うことなく舌で味わいつくしていく。それが礼儀だからだ。  
 
「……前のヤツとはこういう事したのか?」  
「うぅん… しな、かった……」  
「そうか。 お前のことだから『舐めてあげたんだから舐めてもらったっていいでしょ?』  
 とかって言ったんだろ。」  
「…………ぅん。」  
その声がうめきなのか喘ぎなのかはわからなかった。  
 
 
「うぅ、よし、出すぞ…」  
「ん! んん……」  
 
いつもコイツは、口の中で爆発した迸りを充分に受け止めて、口の中で溜めるようにしていた。  
「んく、くん…」  
そして少しずつ、味わうように飲み込んでいくのだった。  
 
「うは、エロいなぁ。」  
「……ただ単に一度に飲み込みにくいからなんだけど。吐き出すと怒る人もいるし。  
 
 それにしても濃いよねぇ。 彼女いないから?」  
「……悪かったな。」  
 
「で、まだする…よな。」  
「……当然だよ。 私まだイってないし。」」  
 
体勢を入れ替え、柔らかな体に覆い被さるようにして入り口にモノをあてがう。  
「……早く入れてよ。」  
「……何をだ?」  
わざと入り口をくすぐって焦らしてみる。  
「……。」  
「言わないとわかんないなぁ。」  
 
「…………。」  
猛烈に冷たい視線が突き刺さってくる。  
しかしそんな絶対零度の視線とは裏腹に性器周辺は熱くたぎっていて、  
心身共に待ちきれない事は確かであった。  
 
「ほら、言ってみろよ。 アイツらのところじゃあ絶対に言えない事を。」  
「!!!  
 
 お、お兄ちゃん、の……」  
「俺の?」  
「オチン、チン……」  
「コレがどうしたって?」  
少し掻き回すようにして刺激を与える。  
 
「ん… 私の中… 入れて……」  
「お前の中に? こうやって?」  
少しだけ先を進める。 動き出しそうになった腰を留めるのは、ちょっと辛い。  
 
「そ、そう… 早く、全部、入れて……」  
「…いいのか? お前と俺は兄妹なんだぞ。そんなことしちゃいけない関係なんだぞ。」  
「な、何を今更……」  
「じゃあ、やめようか。」  
そう言って腰を引こうとしたが、  
「ま、待って……」  
腕を掴まれて引き戻される。  
 
「なんだよ。 まさか妹なのに兄のチンコ入れられるのがイイなんて言うなよ。」  
 
瞬間、痙攣のように体に震えが走った。 繋がりかけた先端にもそれが伝わってくる。  
 
「そ、そうなの… 私、お兄ちゃんのオチンチンがいいの……  
 
 妹なのに、お兄ちゃんがいいの……  
 
 だ、から… お兄ちゃんを、入れて。妹のあたしの膣内に……」  
 
「……お前、さっき少しイってただろ。」  
「え? そ…うああ!!」  
そして俺はその要求に快く応えてやるのだった。  
 
 
 
……俺と妹が一線を越えたのはそう昔のことでもない。  
ただ、俺は膝枕を貸すだけでは物足りなくなり、  
妹も、ただ兄の膝の上で頭を撫でられること以上を望んでいたのだ。  
 
努力はした。 でもなぜかダメなのだ。  
兄は妹以上に気の合う女を見付けられなかったし、  
妹も兄以上に安らげる男を見付けられなかった。  
 
相性が合うべくして合う二人なのだとすれば、  
兄妹であることが、これ程にも疎ましいものになろうとは……  
 
「お兄ちゃん…… やっぱり、お兄ちゃんがいいのぉ……  
 他の人、いろんな人としたけど、やっぱりお兄ちゃんが一番なのぉ……」  
切ない喘ぎが下から響く。  
俺も同じような思いを抱いていると知ったら、コイツはどう思うだろうか。  
 
「お兄ちゃん、お兄ちゃんのオチンチン、精液…!  
 欲しいの! 膣内に、膣内に出して!!」  
「……いいのか?」  
「大丈夫… 安全日、だか、らぁ…!」  
「よし… じゃあ出すぞ…!」  
 
溜め込まれた兄の濃い思いが、妹の中に流し込まれていく。  
最後の一滴まで出し切るように腰を動かして、汗まみれの二人の体が、静かに横になった。  
 
「はぁぁ… お兄ちゃんが、イッパイ入ってくるのぉ……  
 お兄ちゃん、お兄ちゃぁん……、…………。」  
終わりの方のセリフは聞こえなかった。  
 
朝のまぶしい光が、二人の安息の時を照らし出し始めていた……  
 
再び目を覚ますと短針は9を指していて、妹はすでに身支度を終えていた。  
「……時間、大丈夫か?」  
「大丈夫。そのくらいの無理は聞いてくれるから。」  
 
その澄ました顔が泣き乱れる姿が、俺の脳裏にまだ残っていたが、  
目の前のキャリアウーマンにはそんな残滓は微塵も無かった。  
 
「あ〜…」  
「何?」  
「いや、なんでもない。」  
「そう。」  
先ほどまで濃密に愛し合っていた二人だったが、いまは「さよなら」も「また来いよ」も言えない。  
 
 
 
「じゃ…ね。」  
「おう。元気でな。」  
鉄の扉が重い音を立てて閉められる。この空間に、また静寂が戻ってきた。  
 
することもなく、まだ残り香のする布団に身を寄せる。  
「……。」  
妹とした後は、いつもとてつもない罪悪感に襲われる。  
アイツも、充実した気持ちと引き替えに同じ罪悪感を味わっているのだろう。  
ただ今は、残していったモノで我慢するだけだ。  
 
アイツは、また満足できる男を求めて、そしてココに戻ってくるだろう。  
 
だが戻ってこないかもしれない。いや、その方がいい。  
しかしその時が来ないことを、きっと俺は願っていた。そして、知っていた。  
 
終わり  
 

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