夏に、真っ白なワンピースを買った。  
ショップで見かけた時は、物凄くかわいく見えたのだ。とても清楚な感じで。  
でも、買ってから気がついた。  
ワンピースなんて会社には着て行けないし、  
女同士で遊びに行く時には尚更、そんな媚を売るような服裝なんてする意味ない。  
今のところ彼氏もいなかったから、そんなもの着る機会なんかなかったってことに。  
とはいえ買ってしまったものは仕方がない。  
今更お店に返しに行くのも、なんとなく気がひけて、  
だから、仕方なく啓子はそのワンピースを自室で試着してみたのだ。  
どうやって着廻そうかな、なんて考えながら。  
鏡の前に立った時にまず気がついたのは、ブラジャーとショーツのライン。  
白いブラとショーツって、実はとても透ける。ワンピースの上から、そのラインがくっきり見えた。  
だから、とりあえずその時点でブラジャーとショーツを脱いでみた。  
もう一度、鏡の前で確認。  
「うん、こんな感じかな」  
外出する時はモカ茶のブラとショーツをつければいい。  
そんなことを考えながら、鏡の前で一度廻ってみる。スカートのドレープ感も悪くない。  
ほどよく太股が見える。それでもマイクロミニというほど下品じゃない。  
ウェストラインも綺麗に出てるし、やっぱりこれを箪笥の肥やしにするのは勿体無いな、と  
啓子は思い改めた。  
ワンピースとは言え、外出着にしようと思うから着る機会がなくなっちゃうんだな。  
それならいっそのこと、普段着にしてしまえばいい。  
それで、何となくその日はずっと、そのワンピースを着たまま過ごした。  
独り暮しで彼氏もいない。誰も訪ねてこないから、何となく下着もつけなくて。  
近所のスーパーに買い物に行こうとして、何となく。本当に何となく。  
ブラもショーツもつけずに、出掛けてしまった。  
 
それでも買い物は滞りなく済んだけれど、その帰り道に、事は起こった。  
歩いていた道の数メートル先で、学生らしい男の子が散らばったレポート用紙を拾い集めていた。  
どうやら落としてしまったらしい。幸い大した風はなかったけれど  
それでも彼のものと思しきレポート用紙はあちこちに散乱していたので、  
啓子も少し膝を折り曲げて、レポート用紙を拾い集めた。  
内容を見てみる。何が書いてあるんだか、よく理解できなかった。  
道々散らばったレポート用紙を拾いながらその青年のところに行き、集めた紙を彼に手渡してやった。  
「あ、どうもありがとうございます」  
「いいえ」  
そんなふうに言葉を交わして、それから啓子は更にその周囲に散らばったレポート用紙を拾い始めた。  
その姿が目に入ったのか、青年は慌てて啓子の方を向いて口を開いた。  
「あ!もういいですよ、大丈夫です、すみま……」  
どうして彼の言葉が途中で停まったのか、啓子には最初分からなかった。  
不思議に思いながらレポート用紙を彼に手渡そうとして、でも、彼は顔を俯けてこちらを見ようとしなかった。  
それで、啓子は気がついた。  
後ろから、自分のソコが、丸見えだったこと。  
見えてた、と。  
そう思った瞬間に、急に羞恥心が涌いて来て。  
啓子は逃げるように走って、その場を去った。  
走って玄関に飛び込む。  
扉を閉めて、呼吸を整える。  
手には、手渡しそびれたレポート用紙が残っていて。  
それを見たら、急に内股が熱くなるのを感じた。  
それが、最初。  
今でもそのレポート用紙は残っている。寂しい夜に眺めると、あの日の事を思い出して気分が良くなるから。  
 
それ以来、啓子は気が向くと近所くらいならショーツを履かずに出かけるようになった。  
決まって際どいミニスカートを履いて出かける。  
普通にしていれば誰にも分からない。自分だけが、ちょっとドキドキする。  
気が向いたら、駅ビルのデパートの階段に座り込んでみたりする。  
階段を昇ってくる人にだけ、自分の一番恥ずかしい部分が見えるのだ。  
そ知らぬふりで雑誌を読みながら、昇って来たのが女性だった場合はそれとなく膝を合わせ、  
男性だった場合には、なんとなく広げてみせる。  
ちょっと驚いたような表情をされると、ものすごく嬉しい。  
見られてるのだ。  
きっとあそこはビショビショで、ひくひくと震えているのだろう。  
露骨に見られているのを感じると、膝が震えそうになる。  
彼氏がいない啓子にとって、その瞬間が一番感じる。  
もっとジロジロ見て。  
本当は指を挿れてほしい。  
見知らぬ男に指を突っ込まれて、奥まで見られたい。  
勿論、そこまで誘う度胸は啓子にはなかったけれど……。  
 
あと、一度だけとてつもなく感じたのが、生理の時だった。  
やっぱりショーツをつけずに外出したその日、啓子は予定より一週間早く生理になった。  
もっとも出血が始まったのはもう深夜に近い時間だったから、すれ違った人々の誰も気付かなかっただろう。  
帰り道をとぼとぼ歩きながら、内股を伝う生暖かい血の感触……。  
誰かに気付かれていたらなんて恥ずかしいだろうと思うと、急に出血が増えた気がした。  
血は溢れて、膝を伝い、脛を伝い、サンダルも汚してしまったけど、不思議な高揚感があった。  
最近は寒くなってストッキングを履いてしまっているから、  
何もつけずに外出することはしにくくなったけれど、また温かい季節になったらやりたいと思っている。  
 

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