私は羽山君に連れられて、ざわめきだけが聞こえる廊下を進む。  
 保健室は一階。私たち一年生の教室がある四階の廊下を折れ、階段を下りる。  
 階段の上り下りは今の私にとって、苦痛だった。  
 羽山君に背を押されながら階段を下りている私の乳房は、一段一段と足を動かす度に  
大きく上下に揺れる。ブラウスに擦れ、刺激が身体を駆け抜けていく。  
 彼はどうして私を助けるような真似をしたのだろう。理解できない。私の常識では理解  
できない理由で彼は動いているのだろうか。それとも、私が空想する彼との関係を、彼も  
また望んでいるというのだろうか。  
──ありえない、彼が私なんかに……。  
 二人とも無言のまま階段を下りていく。授業中だから人と擦れ違う事は無いが、こんな  
格好をしているのに、すぐそばに他人、しかも憧れていた少年がいるのだ。  
 私の肩越しに、彼には見えているのだろう、大きく揺れる私の二つの膨らみが。  
 彼になら見られても良い。見て欲しい。張りのある乳房に手で触れてほしい。硬くなった  
乳首を唇で啄ばんでほしい。甘噛みして舌で転がして欲しい……そんな妄想が浮かんでは  
消えていく。  
──私、いやらしい。こんな事考えて……濡れてる。  
 スカートの中のその部分は、はっきり判るほどに潤っている。溢れた蜜が滴り落ちるの  
ではないかとすら思えてしまう。もしそんな事になれば──。  
 秘処から蜜をこぼし、彼に見咎められる私。  
 彼の手は、突然スカートの中へと侵入してくる。乳房とは対照的な小振りなお尻を撫で  
られ、その谷間に沿って、まだ誰にも触れられた事の無い部分に、意外に骨ばった彼の  
指が這い寄る。淫らな体液に濡れた割れ目を抉じ開けられ、柔らかな粘膜を、ぷっくりと  
膨れ上がった蕾を蹂躙される……。  
「さっき言った事だけど……」  
──ッ!  
 びくりとして足が止まった。  
 三階と二階の間の踊場。淫らな妄想を浮かべていた私は、耳元で囁かれ硬直する。  
「柏原さん、ブラしてないけどどうして? 朝はしてたよね」  
 一息に言い切った、そんな感じのセリフ。  
 どういうつもりで、こんな質問をするのだろう。彼はあまり口数の多い方ではない。無口  
というほどでもないが、必要な時、必要な事だけを口にするタイプだ。沈黙が耐えられなく  
て口をついて出た、という風でもない。  
 だからこそ、どうしてそんな事を訊くのかが気にかかる。  
 彼女らに盗られたのだろうと、言ってしまおうか。  
 しかし確証は何も無いのだ。彼女らが、さも当然というような態度を取っていただけで、  
そんなものは証拠にはならない。いや、そこまでは言わなくても良いだろう。水泳を終えて  
更衣室に戻ったら、下着が無くなっていた。それだけ言えば良いのだろう。  
 けど、それを言ってどうなるのだろうか。下着が無いから下着を着けていないだけ。  
 更衣室での出来事なのだし、教師に言えば探してもらえるかもしれない。担任か、学年  
主任か、または生活指導の先生でもいいだろう。これから向かう保健室の担当医でも  
構わない。誰かに話を聞いてもらえれば或いは……彼に打ち明け、彼を通して伝えて  
もらえれば……。  
──ダメ、それはいけない。  
 彼のためにならない。彼を通してそんな事をすれば、彼に迷惑がかかる。私なんかに  
手を貸した事は誰にも知られてはいけないのだ。  
 だからこそ、疑問にぶつかる。  
「どうして、こんな……」  
「え?」  
 思わず口に出してしまった私に、彼が訊き返す。  
 俯いたまま、もう一度息を吐き出す。  
「どうして、こんな真似するの……」  
「こんな真似って」  
「助けてくれた……んだよね」  
「まぁ、そうなるかな」  
 背後に立つ彼の表情は見えない。トーンの抑えられた声からも、感情が読めない。  
 ふぅと一息ついた彼は、  
「ぶっちゃけ、こうしたかった」  
「え──!?」  
 直立していた私の両腕の上から、彼は私の身体を抱きしめた。  
 彼の掌は、私の乳房を包んでいた。  
 
 気が動転するというのはこういう事なのだろう。  
 私はまったく身動きが取れなかった。自分の置かれた状況が理解できない。何をして  
良いのか考えられない。羽山君が後ろから抱き付いてきて、ブラウスの上から乳房に  
手を重ね、包み込んでいるのは判る。  
 けれど、何故? どうして彼がこんな事を?  
 小学生の頃や、中学生になってからも、男子からの性的嫌がらせ──私に近づき、  
いきなり乳房に触れて、鷲掴みにして走り去る──そんな事は何度もあった。  
 けど、こんな風に抱きしめられ、まるで恋人同士がするように、掌で乳房を包み込み、  
その感触を確かめるかのように、揉まれるなんていう事は無かった。  
 ブラウスの下には何も無い。厚手ではあるものの、布切れたった一枚だけに隔てられた  
彼の手は、私の乳房を揉んでいるのだ。  
 背中に密着した彼の身体。私よりも10センチほど背の高い彼の顔は、私の髪に押し付け  
られている。彼の呼吸が耳元で感じられる。  
「は、羽山君……?」  
「やわらかいね」  
「え……?」  
 少し痛い。けど、それだけじゃない。  
 尖った乳首に指が触れた。  
「あっ……」  
 思わず声が出た。  
 両の指が、私の乳首を探り当て、その形をなぞって動く。  
「羽山く、んぅっ」  
 身体がびくんと跳ねる。  
 自分で触れるのとは違う、さっきまでの布地に擦れたそれともまた違う、他人に触れ  
られ、苛まれる刺激。  
 二本の指に突起をくりくりと転がされる。  
「んっ……ん、やっ」  
──気持ちいい……。  
 学校で、階段の踊場で憧れの少年からこんな行為を受けるなんて。  
 さっきまでの、淫らな妄想が現実に──。  
「なんでこんな硬くなってるの?」  
 彼が耳元で囁く。こんな時も、彼の口調は普段と変わらず、落ち着いている。  
 彼の掌が、私の乳房を包んで持ち上げる。  
「羽山君……?」  
「大きいおっぱいだな。ここまでされた事、無いでしょ?」  
──それはどういう意味?  
「ブラも着けないで制服着てるなんて、柏原さんってすごいな」  
──違う! そんなの私だって嫌……。  
「乳首、敏感みたいだね」  
「あっ、んくっ!」  
 両方の乳首が、きゅっと抓まれ、引っ張られた。  
「ひぁっ! やっ……ダメ」  
「教室に入ってきた時、すぐ気づいたよ。ブラしてないって」  
 やはり、気づいてたのだ。気づかないはずがない。ただでさえ目立つ大きな双丘。湿った  
肌に張り付いたブラウスは、形をはっきり浮かび上がらせていたのだから。  
「どうしてブラしてないの?」  
「それは……」  
「あいつらの仕業?」  
「え……!?」  
 彼がどういう経過でその推測に辿り着いたのかは判らないが、頭の切れる彼の事だ。  
私が下着を着けないまま教室に戻ってきた直後には、あらかたの予想はできていたの  
かもしれない。  
「ま、そんな事どうでもいいんだけど」  
 彼の酷薄な笑みが耳元で響いた。  
「ふふ、感じてる。柏原さんって、いやらしい子なんだな」  
 私は周囲の視線に晒され、淫らな妄想に意識を飛ばし、敏感な突起を硬く尖らせ、  
恥ずかしい蜜を溢れさせ……いやらしい子になっていた。  
「きっとこっちも、もう……」  
「あ、あっ──」  
 彼の右手が、スカートの裾を持ち上げた。  
 
「やだっ!」  
 私のスカートにかかった羽山君の右手を両手で押さえつけようとしたが、素早く動いた  
彼の左手が、私の両手首を一掴みにしてしまう。  
「やっ……」  
「柏原さんの手、細いな」  
「あっ!」  
 掴まれた両腕が、ぐいと持ち上げられる。すらりとした外見からは想像のつかない剛力  
だった。  
「あまり乱暴なのは好きじゃないんだ。おとなしくしてくれる?」  
「痛っ……」  
「痛いのは嫌だよね」  
 あまりにも普段と変わらない彼の口調。  
「離して……」  
「離して欲しい?」  
「う、うん」  
「そう? でも俺は離したくないな」  
「え──」  
「俺、柏原さんの事気に入ってたしね」   
──それは、どういう……?  
「柏原さん可愛いし、胸もこんなに大きいし」  
「あっ、あぁっ!」  
 私の手首を掴んだままの彼の指が、乳首に触れる。  
「ここも敏感みたいだし、声も可愛い」  
「そんな、んッ」  
 今度は私の手の甲で、先端を擦った。  
「ますます気に入ったよ」  
「え? ……んぅっ!」  
──気に入ったって、それって……?  
 彼が私の事を、好きだったという事なのだろうか? ますます気に入ったとは……。  
 しかし、この羽山君は、本当にあの羽山君なのだろうか? 私が密かに憧れていた、  
寡黙な優等生の羽山君なのだろうか?  
「ほら、もっといやらしくなろうか」  
「え、あっ!」  
 スカートが大きく持ち上げられる。正面から見れば、私の下腹部は丸出しになっている  
だろう。階段の踊場……授業中で人気の無い場所とはいえ、もし──  
 脚を閉じようとすると、彼の膝に割って入られた。  
「恥ずかしい格好。誰か来たらどうしようか?」  
「そんなっ!」  
 彼の右手の指が器用に動き、スカートが丸められる。  
「ダメ! やめて、お願い……」  
 彼は、か細い声で抗う私を全く意に介さない。  
 スカートは、その下に押し込まれていたブラウスの裾ごと、丸められて彼の右手の中に  
握られてしまった。  
 階段を吹き抜ける静かな風が、剥き出しにされた私の陰部を撫でていく。  
 私の肩越しに、彼が下を覗き込んだ。  
「あれ?」  
 ついに、──気づかれた。ショーツも身に着けていないと、気づかれた。  
「へぇ、下もなんだ?」  
「やだ、違う……」  
「何が違うの? もっとよく見せて欲しいな」  
「そんな、ダメだよぉ……」  
「たくさん濡れてるんだろ? 見せてよ、夕菜」  
──夕菜、って……。  
 初めて下の名前で呼ばれ、私は身体を振るわせた。  
 耳元で私の名を呼ぶ彼の、変わらず落ち着いた声に、私は身体を硬直させた。  
「ひゃぅっ──!?」  
 ぬるりとした生温かい感触が、私の蕾を貫いた。  
「ひっ、んはぁッ!」  
 初めて人に触れられた刺激に、私の全身が侵される。両手首が解放されている事に、  
しばらくの間気づかないほどに、彼の与えてくれる快楽に飲み込まれていた。  
 
「ひっ、やっ、んぁっ」  
──どうしよう、気持ちいい、羽山君にされてる……。  
 羽山君の指に、濡れそぼった秘処を弄ばれ、ぷっくりと隆起した蕾を転がされる。  
 いくつもの波が体中を駆け抜け、その度に私はびくびくと全身を震わせてしまう。  
 こんなところで、身体を弄ばれている。羽山君に、こんな事をされている。  
「たくさん濡れてる。すごくいやらしい」  
「あぁっ! うぅ……」  
 気持ちいい。でも、恥ずかしい。  
 巨乳、デカパイ、水風船、ホルスタイン──そんな風にからかわれる膨らみが、身体の  
震えに合わせてぷるぷると揺れる。鋭敏になった先端が擦れ、さらなる快感をもたらす。  
「はんっ、ダメっ、やっ……」  
 このままでは快楽に飲み込まれてしまう。抗わなければ。こんなところで、淫らな愉悦  
に身を任せては行けない。  
 少しでもそこから遠ざかろうと、私は両手で乳房を抑えつける。ぎゅっと抑えつけ、ブラ  
ウスと擦れて刺激されないようにする。  
 けれど、彼の右手がスカートを握り、左手が私の秘部を弄んでいるという事は、両手の  
自由を取り戻せたのだ。それなのに、どうして私は、私を責め苛む彼の手を払い除けよう  
としないのだろう。  
 もっと彼に刺激して欲しい。もっと続けて欲しい。ずっと妄想の中にしか存在しなかった、  
彼との淫らな交わり。こんな場所でも良い、たっぷりと蜜を溢れさせた秘処を、熱を帯びて  
顔を出した肉芽を、悦楽の頂きに登りつめるまで弄ばれていたい。  
──ダメ、そんなのダメッ!  
 ここは学校だ。それも、いつ誰が通りかかるか判らない階段の踊場なのだ。授業中で  
誰も通るはずが無くとも、いや、そもそも授業を抜け出してこんな行為に身を任せている  
なんて、とんでもない事ではないか。  
 私はまだ中学一年生。こういう行為に及ぶにはまだ早い、早すぎる。大人になりきって  
いない中途半端な身体でしかないのに、ただただ快楽だけを求めて同級生に責められる  
など、もってのほかではないか。  
──羽山君、もっとして、もっといじって……。  
 理性と欲望とが互いにせめぎ合って火花を散らしている。  
「夕菜のここ──」  
 淫核の周り、弾力を帯びたなだらかな丘を撫でられる。  
「ぜんぜん生えてない」  
──やだっ、言わないで!  
 乳房ばかりが成長し、腰から下はほとんど子供のままの私の身体。  
 羽山君の指が、私の恥丘を這い回る。  
「覗き込んでもよく見えなかったけど、ほんとに生えてないなんてね。驚いた」  
──そんな事、耳元で言わないで……。  
 心臓を握り締められるようだった。彼にそんな指摘をされたくなかった。  
 胸は驚くほど大きな私。けど、下腹部には極僅かな薄い体毛しかない。  
 去年の秋、小学校の修学旅行で入った旅館の大浴場が思い返される。乳房は僅かに  
膨らんだだけなのにも関わらず、茂みと呼べるほどに覆われている子がいた。彼女ほど  
ではなくとも、クラスの半数近くの子が、その部分にある程度の発毛が見られた。  
 自分はあれから全く変わっていない。ほんの少しだけ、産毛が増えたような気もしない  
ではないが、細くて薄茶色のそれは、あの時に見た黒々と縮れたそれとは大違いだ。  
──やだ、やだっ! やっぱりヤダッ!  
「羽山君、お願い……これ以上、しないで……」  
 喉の奥からようやくの思いで声を絞り出す。  
──恥ずかしい、恥ずかしすぎる……。  
 彼に知られたくなかった。大きすぎる乳房はその存在を隠したくても隠せない。けれど、  
その部分はいつもなら着衣に覆われ、誰にも見せる事など無いのだ。  
 頬を雫が伝い落ちていく。  
 彼に乳房を揉まれ、乳首を弄ばれ、秘処を刺激されても溢れる事の無かった涙が、  
とめどなく零れ落ちた。  
「ひっ、くっ……」  
 しゃくりあげ、その場に立ち尽くす。  
 気づけば、私は羽山君に正面から抱きしめられていた。  
 背中を抱かれ、頭を撫でられながら、彼の肩に顔を埋めて泣いた。  
 彼のワイシャツが、私の涙を吸ってくれる。  
 彼が一言も発しない事に、私は何故か安堵していた。  
 
 
 あれからどれぐらいの時間が経ったのだろう。  
 十分か、十五分か……淫らな気持ちも、恥部が無毛である事を知られてしまった絶望  
感も、だいぶ和らいでいた。その間、羽山君はずっと私を抱いて、頭を撫でてくれていた。  
──なんか、恋人同士みたい。  
 そう思うと、再び鼓動が早くなる。  
「柏原さん、落ち着いた?」  
──あ、戻ってる……。  
 夕菜ではなく、苗字で呼ばれた。  
──羽山君……恭也君……。  
 心の中で、下の名前で呼びかけてみる。  
「柏原さん?」  
「あっ、……うん、だいじょうぶ」  
──私、何してるんだろう……。  
 つい先ほどまで、自分は彼に身体を弄ばれていたのに。  
 密かに憧れを抱き、独りで空想に耽る時、いつも想っていたクラスメイト、羽山恭也。  
歳相応の幼さは残るものの、整った目鼻立ちで落ち着いた声音を持ち、他の男子とは  
違って、大人びた雰囲気の彼に惹かれていた。  
 下らない虐めっ子グループの女子に下着を奪われ、制服しか身に着けずに教室に  
戻った私を待っていた、気味の悪い数学教師。その男の辱めを受ける寸前、彼は機転  
を効かせて救ってくれた。  
 しかし、彼はまるで全てを見透かすかのように、淫らな気持ちに火照った私の身体の  
敏感なところを責め立てた。  
 それなのに、私が涙を流すと、優しく包み込むように、何も言わずに抱きしめ、子供を  
あやすように頭を撫でてくれていた。  
「俺、柏原さんの事気に入ってたしね」  
「ますます気に入ったよ」  
 どういう意味なのだろう。  
 私が密かに想いを寄せていたのと同じく、彼もまた私を気にしてくれていたのだろうか。  
 ろくに話した事も無い、無口で無愛想で友達すらできないような私を?  
──そんなわけないよね。  
 気に入っていたというのは、きっと、私の身体の事だろう。彼もまた、他の男子と同じで、  
私のこの大きな乳房を気にしていただけなのだろう。  
 そして、私が彼の愛撫に身体を震わせたため、淫らな声を挙げたため、欲望を満足  
させる良い相手が見つかったと、そんな風に思っただけなのだろう。  
──きっとそうだよ。  
 彼みたく大人っぽくてしっかりした人は、私みたいな暗い子を好きになるわけが無い。  
 私のような、心の中で他人を見下して優越感に浸っているような子を好きになるはずが  
無いのだ。  
 けど、よく解からない。彼はどうして私にあんな事をしたのだろう?  
「どうしたの? まだ動けないかな」  
「えっ? あ、あっ──!」  
──私、ずっと抱きしめられて……。  
「ご、ごめんなさい……」  
 背中を抱いてくれていた腕を、なかば振り解くようにして彼から離れた。  
 二、三歩下がった私は、彼と正面から向き合った。  
「謝らなくてもいいのに」  
 いつもと変わらない、ほんの少しだけの微笑。ついさっきまで、あんな事をしていたとは  
思えない、まるで何事も無かったかのような彼の笑顔。  
「どうして……」  
 私は無意識に訊いていた。  
「どうして、あんな事を……」  
「あんな事って、どんな事?」  
「──ッ!」  
「はは、柏原さんって、ほんとに可愛いな」  
 真実、心から愛しいと思っているような、そんな笑顔だった。  
 表層通りに受け取っても良いのだろうか? けど、そんな隙を見せたらまた──。  
「ま、ちょっと顔洗った方が良いかもね」  
「え?」  
「目、真っ赤だよ。待ってるから、洗ってきなよ」  
 彼はそう言うと、私の頭に手を置いて、くすりと笑った。  
 

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