今年も女二人の初詣──  
 いいよね、彼氏とラブラブ初詣のできる子は……。  
 でも、神様って嫉妬深いって言うじゃない? 彼氏と一緒に行ったりしたら、  
嫉妬されて破局〜なんて事にはならないのかな。  
 っと、それはともかく──  
 由香はびしっと着物で決めてきた。  
 あたしはふつーに、コートにミニスカだけど。  
「えっへへー♪ 買ってもらっちゃったんだ〜」  
「レンタルじゃないんだ? すごーい」  
「今年は卒業でしょ? 成人式にも使うしね。それに着物って憧れてたしー」  
 そんな風にはしゃいだ由香だったけど──  
 でもさ。  
 そりゃあね、着物はノーパンって言うけど、寒いのは解かってるんだから、  
穿いてくればいいのに、って思うんだ。  
 しかもね、どうしてあたしまでノーパンにさせられるわけ?  
「だって、親友じゃーん」  
「意味解かんないないよ、それ」  
「ちょっと恥ずかしいの。梨奈ちゃんも一緒に恥ずかしくなろうよぉ」  
「どーしたらそういう発想になるのか解かんないんだけど……」  
「だって、親友でしょ?」  
 はいはい、わかったわかった……。  
「ちょっとそこのトイレ行ってくるから待ってて──」  
「だーめっ、今すぐ〜♪」  
「ええぇ!? 今すぐって、あのさ、確かにまだあんまり人いないし、日の出も  
まだ先だし、ここ薄暗いし、うちらの事見てる人なんていないけど……」  
「あたしずっとノーパンだったんだよぉ? 家からずっと。早く仲間が欲しいん  
だよぉー」  
 だから意味解かんないっての……。  
「お・ね・が・い♪」  
「そういう媚びた顔は男の前でしたら? 馬鹿な男、いっぱい釣れるよ?」  
「こんな事、梨奈ちゃんにしか言えないもん」  
 顔は可愛いし性格も良いのに、男と縁の無い由香は、口を尖らした。  
「しょうがないなぁ……」  
「やった♪」  
 あんまりはしゃがないで。人に見られたら恥ずかしすぎるから……。  
 
 あたしはこの小さな神社の境内に、まばらに立った街灯の下、ちょっとだけ  
木陰を意識してスカートの中に手を入れた。  
 由香がきらきらと眼を輝かせてこっちを見てる。  
 いくら由香とはいえ、こんなところでショーツを脱ぐところを見られるのは  
さすがに抵抗がある。  
「あんまりこっち見ないでよ……」  
「うぅ〜、梨奈ちゃんの意地悪ぅ」  
 意地悪なのはどっちだ。  
 溜め息をつきながら、あたしはショーツに指を掛け、するすると下ろした。  
「わ、ピンク♪」  
 口に出すなってば……。  
「わぁ、すごいかわいい〜」  
「口に出すなってば……」  
 レースとフリルのついたショーツ。  
 まぁ、ね。  
 一年の最初の行事だし、一番のお気に入りを穿いてきたわけで。  
「わぁ……なんか、あたしまでどきどきしてきたぁ」  
 あたしがどきどきしてるって言いたいのか。  
 ええ、してますよ。してるとも。  
 周りにはそれほど人影は無いが、しかし屋外でショーツを脱いでいる事には  
変わり無い。  
 こんな事したの、初めてだ。  
 いや、そりゃ小さい頃ならあったけどさ。おしっこしたりとか。  
 でも、あたしは花も恥じらう高校三年生。  
 ていうか、すっごい恥ずかしい。  
 膝まで下ろし、そこからは脚を交互に上げて抜き取る。  
 ブーツだから脱ぎづらい。  
「えへ〜、梨奈ちゃんもノーパン♪」  
 だから言うなって……。  
「なんか、あっちにいる人がこっち見てるような気がするんだけど……」  
「だいじょうぶだよぉ、あたしもノーパンだもん」  
「どこがどうだいじょうぶなのか教えて欲しい」  
「うぅ〜ん……ほら、赤信号、みんなで──」  
「渡ったら死傷者続出だっての」  
 って、ちょっと待って!?  
 あそこにいるのって……。  
「あ、あれって川根君たちじゃない?」  
 同じクラスの男子が数人。  
 川根将人は、近所に住んでいる、いわゆる幼馴染みというやつだった。  
 まぁ、高校に上がってからはほとんど口も利いてないけど。  
「どうしよ、あたしたちノーパンだって気づかれたら襲われちゃう……」  
 いや、それは飛びすぎだって。  
「こっちから声かけなけりゃ、向こうも気にしないでしょ」  
「そう? 川根君ってけっこう梨奈ちゃんの事気にしてるみたいだけど……」  
「そういう根も葉もない噂をすぐ信じるなってば」  
「そうかなぁ」  
 そうですよ、と。  
 あー、でも確かに──  
 っとと、手にショーツ持ったまんまだった。  
 さっとポケットに突っ込む。  
「お参りしよっか」  
「そうだねー」  
 
 無事に(?)初詣を済ませたあたしたちは、そのまま神社の裏山に登った。  
 登ったと言っても普通に舗装された道を歩いて登るだけなので、大した労力  
ではない。  
 山を越える道路から少し脇に入り、林の中、ちょっと開けた二人だけの秘密の  
初日の出スポット。  
 上がった息を整えながら、東の空を仰ぎ見る。  
「まだ暗いね〜」  
「そりゃまぁ、まだ五時だしね」  
 空はまだ暗く、日の出までは二時間近くもある。  
 あたしは手近な岩に腰を下ろした。  
 お尻がひんやり冷たくて、ショーツを脱いだのを改めて意識する。  
 さっき神社で、将人たちに声を掛けられた時は少しどきどきした。  
 由香の言葉を気にしたわけでもなかったけど、やっぱりノーパンで男の子と  
話すのは緊張した。  
 ちょっと、変な気分になりかけもしたのは内緒だ。  
 一緒に初日の出見に行こうと言った彼らの言葉を、由香はにべもなく断った。  
 それはもちろん──  
 途中、自販機で買った缶コーヒーをカイロ代わりに手を温めながら、近くを  
うろうろと歩き回る由香をぼーっと眺める。  
 着物いいなー。  
 紺の地に白く染め抜かれた鳥と花が散りばめられた着物は、穏やかな由香に  
よく似合っていた。  
「着物似合ってるよ、由香。アップにした髪も可愛いし」  
「ありがと〜。梨奈ちゃんも可愛いよ〜」  
「さんきゅ」  
 でもほんと、二人ともぜーんぜん男っ気が無い。  
 なんでかなー。こんなぴちぴちじょしこーせーなのに。  
 自分で言うのもなんだけど、それなりに可愛いつもりなんだけどなぁ。  
 なんて、まぁ、解かってはいるんだけど。  
 そんなことを考えていたら、由香がじっとこっちを見ていた。  
「梨奈ちゃん、そんな座り方してたら……丸見え」  
「えっ?」  
「あはは、暗くて見えないけどね〜」  
 腰掛けている岩はそんなに大きなものじゃない。  
 暗いのと由香しかいないのもあって、膝を開いて座っていたあたしは、確かに  
明るければ丸見えだったかもしれない。  
 由香がもじもじしながらあたしの横に座った。  
「なんか、へんなかんじ……」  
 由香の眼が潤んでいた。  
「梨奈ちゃんと二人で、ノーパンなんだよね」  
「……そうだけど」  
「なんかさ、さっきも、川根君たちと話してるとき……」  
 とろんとした瞳であたしを見てる。  
 こういう顔になった時の由香は──  
 
 あたしのそこを、由香の指が刺激する。  
「梨奈ちゃん、濡れてる」  
「んっ、やっ……」  
「声、可愛いよぉ」  
「ばか……ふぁっ」  
 ぷくりと盛り上がった蕾を突付かれて、あたしは変な声を上げてしまった。  
「梨奈ちゃんって、敏感だよね」  
「ばか、由香が……ひゃぅっ」  
 とろりとあふれた蜜の絡んだ指に、一番感じるところを責められる。  
 いつもマイペースな由香だが、こういう時もマイペースは変わらない。  
 つまり、あたしたちに男っ気が無いのは、由香のこの嗜好の所為だ。  
 間違いない。  
 学校でもいつもあたしにべったりだし、あたしが男と喋ってると、嫉妬剥き  
出しといった感じにあたしを別のところへ引っ張ってゆく。  
「んっ、はっ……由香、んっ!」  
「おまんこ、とろとろだね」  
「はぁっ、あぅ……」  
 たしかにちょっとは濡れてたけど、でも、今こんなになっちゃってるのは、  
由香がするからなんだ。  
 由香に責められ、あたしは嬌声を上げながら身体を奮わせた。  
「梨奈ちゃんエッチ〜。お外でエッチな声出してるよ」  
 だから、由香がするから……。  
 頭がぼーっとして、何も考えられなくなってゆく。  
「おまんこ、くちゅくちゅいってる。聴こえる?」  
「んっ、聴こえる……エッチな、音……」  
「あたしのも……ね?」  
 由香が着物の裾を割って、あたしの手を潜り込ませる。  
 由香のそこも、熱く潤んで蜜を溢れさせていた。  
「んっ、梨奈ちゃん、そこぉ……ひゃっ!」  
 あたしも由香の蕾を責める。  
 お互いに敏感なところは知り尽くしていた。  
 初詣のあと、初日の出を見るまでの間──  
 ちょっと早めに初詣を済ませたあたしたちは、秘密の場所でお互いを責め合う。  
 中学三年の頃から続く、毎年最初の恒例行事になっていた。  
「由香っ、あっ……ん、はぁッ!」  
「梨奈ちゃんっ、ひゃぅ、んっ!」  
 二人の淫らな声が、しんと静まり返った林に響く。  
 二人だけの秘密の場所で、あたしたちは思いっきり乱れた。  
 
 座っていたところから少し離れた大きな岩に背を預け、零度を少しだけ上  
回った程度の早朝の外気に、あたしは肌を晒していた。  
 コートははだけ、セーターも捲られている。  
 ちょっと自慢のFカップの胸もあらわにされて、あたしはもう一方的に由香に  
責められていた。  
 由香は着物だから、あまり乱れるわけにもゆかず──といっても、だいたい  
いつもあたしが責められ役なんだけど。  
 受け? ネコ?  
 どっちだっていいか──  
 由香の責めで身体は火照り、気温の低さも気にならない。  
 あたしは立ったまま、ごつごつした岩にもたれて由香の指にびくびくと身体を  
震わせている。  
「はっ、んぁっ、ん……ひゃっん、あぁッ!」  
「梨奈ちゃんのエッチな声、いっぱいいっぱいだね」  
 そんな言葉にも、刺激されてしまう。  
 由香の指が心地好くて、気持ちよくて、身体がびくびく震えてしまう。  
 あたしも由香の秘処に指先を差し入れているけど、彼女を刺激する余裕なんて  
全く無い。  
 それぐらい由香はあたしを知り尽くしてる。  
 由香のそこから彼女の熱が流れ込んできて、あたしはさらに熱くなる。  
「おっぱい、おっきくて美味しい〜」  
 大きな乳房をむにゅむにゅと揉まれ、乳首をちゅぷちゅぷと音を立てて吸われ、  
舌でれろれろと転がされてる。  
「おまんことろとろ〜。くちゅくちゅびちょびちょって、いやらしいね〜」  
 指があたしの中を掻き回して、クリも同時に責められる。  
「由香っ、きもちい、もっ、……ひゃっ、ひんッ!」  
 刺激の波が身体中を駆け巡り、突き抜けるような快楽に満たされてゆく。  
「梨奈ちゃん、もう、イっちゃいそうなの?」  
 訊かなくても解かっているのに、由香はあたしに言わせたがる。  
「んっ、うんっ、もう……」  
「エッチぃ……梨奈ちゃん、イっちゃいそうなんだぁ?」  
 そんな言い方する由香の方がエッチなんだ。  
 由香がエッチだから、あたしもエッチにさせられて、あたしがエッチになって  
由香もエッチになって、二人ともエッチで……。  
 もうだめ、イきそう……。  
「イっちゃ、ひッ! イっちゃいそぉ、だよぉ!」  
「イっちゃおうね、梨奈ちゃん?」  
 由香の責めが加速する。  
 いくつもの波が重なり合い、大波になってあたしを覆い尽くしてゆく。  
「うんっ、イくっ、ひゃぅ! ひんッ! イっちゃうよぉ!」  
 気持ちよくて、すごくて、由香にイかされる。  
 またイかされちゃう。  
 中学の時から、何度もイかされて、今日もまた、今年もまた……。  
 由香の唇が、あたしの唇に重ねられて──  
「ひあぁッ、イくぅっ! イくぅぅん──ッ!」  
 びくんびくんと何度も仰け反りながら、あたしは今年最初の絶頂を迎えた。  
 
 すっかり冷めてしまった缶コーヒーを飲みながら、二人で抱き合ったまま、  
白々と明けてゆく空を見ていた。  
 もちろんもう服はちゃんと着てる。  
「由香は……いいの?」  
「うん♪ 私は梨奈ちゃんがイく顔が見れれば幸せだもん〜」  
「もう……ばかぁ」  
「えへへ〜、梨奈ちゃん可愛い♪」  
 ちゅっと音を立ててほっぺにキスされた。  
 はぁ……。  
 あたしの親友は、あたしの恋人なのかもしれない。  
 恋愛感情とは少し違う気がするけど、由香に責められるのは嫌いじゃない。  
 由香の責めに身を委ね、達した時の満足感は、ひとりでするのとは大違い。  
 ただ、もうちょっと、場所を選んで欲しいな、と思う。  
 学校でされそうになる事が多いんだもん。  
 それに──  
「今度、学校もノーパンで行っちゃおうよ」  
「それはやだ」  
「残念……そしたら梨奈ちゃん、学校でもエッチさせてくれると思ったのにぃ」  
 やっぱりそれが目的だったのか。  
 まぁ、たまになら、いいかもね──  
 とは言わないでおく。  
 あたしは今もまだショーツを穿いていない。由香もノーパンだから。  
 あたしたちは抱き合ったまま、ぼーっと空を眺めていた。  
「梨奈ちゃん」  
「ん?」  
 不意に由香が言った。  
「そろそろだね」  
 携帯で時間を確認する。  
 あと五分──  
 あたしたちは立ち上がった。  
 手を繋ぎ、じっと東の空を見続ける。  
 やがて、山の稜線に眩い光が現れ、二〇〇七年の夜が明けた。  
 初日の出に手を合わせ、とりあえずは、眼の前に立ち塞がる受験という壁を  
乗り越えられるよう頑張ります、とお祈りした。  
「梨奈ちゃん、あけましておめでと〜♪」  
「おめでとう。今年もよろしくね、由香」  
「あたしもよろしくねっ♪」  
 この国の太陽神──天照大神は、女神だそうだ。  
 女同士でのキスなら、問題無いかな、と思った。  
 

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