「あれっ、ない・・・。」
さくら女学院高校に通う二年の上坂美奈子は途方にくれていた。
今、美奈子がいるのは所属する合気道部の練習をこなした後の更衣室だ。
胴衣を脱ぎ、Tシャツを脱ぎ、
ブラジャーをつけ、ブラウスのボタンは留めた。
白い靴下も穿いた。
いつもならあとはパンティを身につけ、スカートをはくだけだ。
しかし、そこで美奈子は動けずにいる。
「どうして・・・。脱いでここに入れて置いたはずよ・・・。」
美奈子が探しているものは、放課後に胴衣に着替えるまで穿いていたパンツ。
先ほど身につけたばかりのブラとセットの薄いピンク色のパンティ。
「せんぱーい、早く帰りましょう。」
後輩の安田恭子が呼んでいる。
「すぐに行くから少し待って。」
そう返事をしたもののパンティは見つからない。
どうやら部室には、すくなくとも美奈子の鞄やその周辺にはないようだ。
「せんぱーい、どうかしたんですか?」
「何でもないわ。すぐに行きます。」
恭子は美奈子が遅いので待ちきれないようだ。
この後、恭子とショッピングにいく約束をしていた。
美奈子はスカートをはいてみたが、
股間を覆う布がないという意識を強く感じてしまっている。
そんな恥ずかしい状態で外へでられない。
「(そうだ。校舎のロッカーに行けばブルマならあるわ。)」
「それを穿くしかないわね。」
美奈子がそう決めたところで部室に足音が近づいて、そのドアが開けられた。
「まだですか、先輩」
恭子が部室に入ってきた。
「さあ、行きましょう。」
「あっ」
美奈子は「まだパンティを穿いていない」と言えるわけもなく連れ出されてしまった。
もう下着はあきらめるしかない。
「ノーパンで外を歩くなんて生まれて初めてだわ。」
「えっ、なんですか先輩」
「なんでもないわ。(大丈夫、絶対にばれないわ。)」
美奈子は自体を甘く見すぎていたのだった。
「さようなら、美奈子先輩」
「さようなら」
ちょうどほかの部活動も終わる時間なのだろう。
帰り道に何人もと挨拶を交わす。
すこし強い風が舞い美奈子たちのスカートをはためかせる。
「きゃっ」
美奈子はあわててスカートを押さえた。
「あっ、もう」
美奈子は恭子がスカートを押さえきれずいる白い下着を見ていた。
校門を出たころには、美奈子は下着を着けていないことの心細さを感じていた。
「よっ、みーなこ」
近づいてきたのは沢田あゆみと西村淳子だった。
沢田あゆみと西村淳子は、美奈子の同級生、ともに、高校入学前からの顔なじみ。
ふざけあう仲だった。
悪ふざけがすぎて、かつて、女の子同士のスカートめくりを流行らせた元となったこともあった。
それ時のことをなんとなく思い出した美奈子は、余計恥ずかしい気持ちになった。
それに、恭子は気立てが良い活発な子であるだけでなく、女の子としての嗜みをもちあわせて、
制服のスカートもきちんと着こなすタイプである。
私服の時もひざ丈のスカートのことが多く、きちんと膝を揃えて座り、階段を登るときは、スカートとの裾に常に気を配っている。
そんな恭子のスカートにも容赦ない風の吹く日に、よりによって。。。。。
あゆみ・淳子にもしスカートめくられたら、と思うと余計、美奈子はスカートの裾から手が離せなくなった。
ただ、スカートめくりがはやっていた中学時代は、あゆみも淳子も、そして美奈子も、スカートの中に短パンをはいていた。
おんなのこ同士でふざけあうのもクラスの中だけだし、それに、男子の前では恥ずかしい格好は絶対にしなかった。
あの時を除いては。。。
「このあと二人でお出かけ?」あゆみが聞いてきた。
「あ、はい、先輩と買い物に。。。」恭子が上機嫌に答えた。
「私だっておしゃれしたいし、色々見てみたいものが前からあったから・・・。」
恭子にはボーイフレンドがいる。決して美人とはいえないが、その清楚なしぐさ・ふるまいに、男女問わず好感をもたれていた。
恭子の彼氏も、恭子のそんなところに惹かれているのだろう。
「ねえ、あたしたちも一緒に行っていい?」淳子が言ってきた。
「は、はい、もちろん。素敵な先輩がもうふたり一緒に来てくれるんですから。。。いいですよね、美奈子せんぱい?」
「え、ええ。」スカートの裾に手のひらを置いたまま、美奈子は答えるしかなかった。
あゆみも淳子も彼氏がいる。中学卒業前から続いている。
一見恭子のような、女学院の模範生のような、清楚な女の子だが、その清楚さを女の子の武器にしているようなところがあった。
今の彼氏と付き合うきっかけも、それを上手く利用して作ったようなものだった。
美奈子が何事もないように振る舞おうとしていることに内心にんまりとしていた。
「(うふふ、あんたのパンティはここにあるのよ。)」
「(予想通りの反応ね。この分だと楽しめそうじゃん。)」
「(穿いてないことはとっくにわかってるのに。)」
「くすくす」
「どうしたの?」
二人がとても楽しそうな様子な理由は美奈子には想像もつかないことだった。
「なんでもないわ。じゃあ行きましょう。」
そう言って3人は歩き出した。
「先輩、どうしたんですか。」
「なんでもないわ。」
美奈子はノーパンの股間への不安に怯えながら後を歩き出した。
4人で歩き出したが、美奈子はスカートの裾の広がりを束ねるようにしたまま手を放せなかった。
「ふふ、美奈子っ、今日は風がつよいね?私たち、気をつけないとね。」あゆみが、おどけたように言うと、さらにちょっと小声で
「恭子ちゃんも、周りにだれもいなくて良かったね。ちらっとだったけど。。。」
それを聞くと、恭子は顔を赤くしながらも少し安心したようだった。
校則に違反しない白いショーツをちらっと見られて恥じらう恭子以上に、美奈子は顔を赤らめていた。
(どうしよ、私なんか、今スカートがめくれてしまったら。。。)
決して短く履いているわけではない。
あゆみが膝から12・3cm足を見せている程度である。
3人は膝をのぞかせているくらいで、皆、あからさまに男を誘うような格好ではなかった。
二人は美奈子の恥じらう姿を横目に恭子に話しかける。淳子が
「でも恭子ちゃんは、そういう仕草がなんか、女の子らしくてかわいいよね。」と言うと、あゆみが合わせたように、
「そうそう、いつもスカートで女の子してます、って感じでね。それでいて絶対スカートの中は死守する、っていう恥じらいみたいなのがいい。」
「私服の時もかわいらしいスカートだよね。恭子ちゃんは。」
「あまりタイトスカートもはかないよね?手で押さえて隠さないと見えちゃう、ってのが似合っているんのかもね?
さっきみたいに。。。」と少し冗談交じりにあゆみは言うと、
「もう、先輩ったらー!あたしみたいなのがミニスカート履いても喜ぶ人いないけど、やっぱり女の子らしくしたいですもん。
せめてこういうスカートだと、女の子であることどうしても意識するし、そういう恥じらいがいいって、彼も言ってくれてますから。」
恭子は照れながら答えた。やはり、へんな風が時々吹くので恭子もスカートへの注意は怠らなかった。
「それはそれは」「ヒューヒュー!」
あゆみと淳子も同じように自分のスカートを手で押さえて歩いていた。
(!!!手で押さえて隠さないと見えちゃう!?)
美奈子はそんなフレーズを耳にすると、恥ずかしい気持ちがさらに増してしまう。
「私からしたら3人とも女としてもうらやましいですよ!」
などど、女の子らしい会話をつづけていた。
美奈子にとっては、そんな、女の子を意識する会話は、かえって恥じらいを増すものであった。
街中へ行くにつれ、だんだん人通りが多くなってきた。
カップルの姿もちらほらみられ、おしゃれな格好をする人も少なくない。
いわゆるマイクロミニの20代と思われる子や、スカートを短くしている他校の女の子もいた。
風が強いことで、そんなに短くないスカートを手で押さえる姿は、不自然ではなく、
このことは、美奈子にとっては少しは救いだった。
目的のお店が近づいてきた。
会話はさすがに小声になる。信号待ちになると、美奈子が淳子とあゆみの間に位置するように立ってから、淳子がささやく。
「街中は変な向きで風が吹くからね、スカート短いんだから一番気をつけないと。」
と話を振ると、あゆみは意識して内股気味なしぐさを見せて合わせる。
「わかってるわよ、短いったって淳子と比べるとってことでしょ、
いくら見せパンだからって、私だって恥じらいあるわよ、ねぇ、みなこ?」
(あゆみは、スカートの中見せパンなの?一番気をつけなきゃいけないのは私じゃないのよ。。。)
スカートを押える手は汗がでてきた。
「みなこ?」淳子が声掛けると、美奈子は赤らめながら
「う、うん、あゆみは、、、おしとやかな子で、、、スカートの中短パンでもめくれたら恥ずかしがってたくらいだし。。。
こういう日は、最近のぞき見する人いるようだから気をつけるにこしたことないよ。。。」
スカートを押える自分に言い聞かせるように答えるほかない。
4人とも両脚をくっ付けて立っている。あゆみは耳元でささやくように、
「スカートの中盗撮されたりして。。。そういうの迷惑だよね、
でも美奈子はさっきからガード固いから大丈夫だと思うけどーー!」
(い、いや!!)
信号が変わると、美奈子はやや遅れ気味、小股で横断した。
美奈子にとっては長い道のりだったが、ようやく店に着いた。
恭子や美奈子が好きそうなお店で、おとなしめの女性向けの服が所せましと並んでいる。
恭子は、内面外面とも、少しでも自分を磨こうとしている。美系というわけでもない、
体系もややぽっちゃりとしたいわゆる性格美人の恭子にとって、
ボーイフレンドはかけがえのない存在であり、彼氏にとって可愛い恭子でありたいという気持ちから、
自分なりのファッションに興味をもちだした。
こつこつためたお金で、次のデートに着ていく服を買うために来たのである。
そんな恭子の誘いで美奈子は何度かこの店には来た事があった。
更衣室で失くしたピンクの下着もここで買ったのだった。
美奈子にはボーイフレンドがいない。
合気道に夢中な女子高に通う女の子でもあり、恭子と同様な感じの女の子なのだが、なかなか男の子と縁がなかった。
店内はカップルは別とすると、ほぼ女性、あとは
恋人か奥さんへのプレゼントをさがしに来たと思しき男性くらいだった。
美奈子は少しはほっとして、スカートから手を放した。でもやっぱり落ち着かない。
スカートの中は何も履いていないことが、こんなにも落ち着かないなんて。。。
本当なら、恭子のお付き合いとちょっとした息抜きになるはずだったのだが、
店内で自分だけ股下を覆っていないなんて。。。
(たぶん私だけよ、ノーパンなんて。)
そんなことは知らずに恭子は美奈子たちに先んじて、「こっち、こっちどうです?」って引っ張っていく。
来店したことのある美奈子はいやな予感がした。恭子の目当ての服は2階にある。
おしゃれな造りなこの店は、2階は一部吹き抜けとなっていて、
上に上がる階段はやや急ならせん階段。
頑丈に造られているとはいえ、柱にステップがらせん状に巻かれているが、外側にはいわゆる目隠しはなく、
垂直方向の支えがステップの段差に合わせた間隔で手すりを乗せているにすぎなかった。
よくあるアパートの鉄階段のように段差の部分は何もない。
開放感はあるのだが、裾が膝上のスカートでは、どうしても気にしながら歩くことになる。
普通に気にしていれば見えることはない。
階段の横幅自体は広く取ってあるし、逆に見えないように歩くことで、女らしい歩き方になる。
品のない短すぎるスカートの女性はお断りというようなお店なのだ。
にもかかわらず、恭子たちの前を、スカート丈を極端に詰めた制服の子たちが上に上がっていた。
中には裾を気にしている子もいたが、それでも恥ずかしいものを美奈子は見てしまう。
(いやだ、あの子たち、パンツ丸見え。。。)
(階段の中心近くだと、後ろの人に見えてしまうかも。外側だと下の階から見えてしまうのでは。)
初めて来たときも同じ制服で普通に歩けたのに、何故か階段の手前で立ちすくんでしまう。
布きれ1枚無いだけで。。。
恭子が促した。
「大丈夫ですよ、姿勢よく一段ずつ普通に登れば。」
「う、うん。。。」
ノーパンであることを意識しながら、おそるおそる登り始めた。。。。
(えっ?)
淳子が後ろからにやにやしながらついてくる。
一方あゆみは、階段の外側の下で上を見上げてこっちを見ている。。。
(なんかこの視線、角度。。。)
「ダメ、もし見られたら・・・。」
美奈子は不自然なほどスカートをきつく押さえ階段を上っていくがそうはいかない。
「どうしたの、みなこ。そんなに気にするなんて。恥ずかしいかもしれないけどすごく不自然だよ。」
「そうだよ。そんなにスカートを気にして歩いてるなんて、なにか理由があるの?」
「(えっ、イヤ、ばれちゃう。)別になんでもないわ。なにもないから。」
こんな状況では、これ以上スカートを押さえていることはできない。
「(うふふ、そうよね。たしかにあなたのスカートの中にはなにもないわね。)」
美奈子はノーパンのスカートを堅く押さえていた手を離し何事もないふうを装って階段をさきに上っていく。
「あ〜あ、無理しちゃってwすこしくらい押さえててもいいのにね。」
今の状態だと少しの風が舞い上がっただけで美奈子の剥きだしの股間が衆目にさらされることになるだろう。
「ねえ、ちゃんと撮れた。」
「うん、ばっちりだよ。ほらっ。」
淳子が差し出したデジカメの液晶には美奈子のあそこがしっかりと捕らえられていた。
「あはっ、本当に穿いてないよ。」
「うん。美奈子ノーパンだよw」
「変態ねwすごくよく見えてるじゃん。」
美奈子はノーパンで階段を上っているという恥ずかしさのあまり後ろの様子がおかしいことに気がつかない。
なおも美奈子の股間への批評は続いている。
「でも、コレってすごく薄くない?」
「うん、あんまり生えてないチョロ毛だね。スジまでくっきりみえる。かわいいぃぃ。」
胸は膨らんでいるし発育は人並みよりいい方だろう。
しかし、股間の毛は非常に薄く美奈子の強いコンプレックスになっていた。
「優等生な美奈子ちゃんにこんなかわいい秘密があったなんてね。」
「小学生並みね。わたしが中学になったころよりあそこの毛が少ないよ。」
(美菜子先輩、この前は同じ制服で普通に歩いていたのに。。。今日はどうしたんだろう。はしたないことしなければ見えることはまずないのに。。。)
恭子は不思議だった。(スカートの中を丸出しにして階段を上る他校の女生徒たちを目の前にしたから?)
見えても平気といわんばかりに翻している子はブルマだった。一応気にしている子もいたが、おしゃれな色した下着を隠せずにいた。
後ろを押さえて階段上っている子も一人いた。きっちり抑えているつもりなのだが、あまりにスカートが短すぎ。
お尻の肉を覗かせていた。Tバックなのかな?・・・・Tバックなど、恭子には信じられない下着であった。お尻丸出しなんて。。。
(もしかして、せんぱいも・・・?)
2階にたどり着いた時、美菜子の足は恥ずかしさで震えているようだった。
(み、みられてないよね?)
美菜子はあゆみと淳子の顔にそれぞれ視線を向けた。ふたりともなんか楽しそうな笑顔を美菜子に返す。
(あの長さじゃ見えるわけ無いのに相当な恥ずかしがりようじゃないの・・・無理やり覗いちゃったけど・・・)
美菜子は恥ずかしいけど、笑顔で返すほかなかった。
その様子を見て恭子は、「先輩、どんなのが似合うと思いますか?」声をかけた。
下にいたあゆみがようやく階段を上がって向かってきた。
スカートが少し短いからか、(この丈だとちょっとぎりぎりかも。)と、
恥ずかしげに裾をガードしながら。。。
そのしぐさを見て美菜子は。
(やっぱり手を離しちゃいけなかったの?)見えるはずの無いところが見られてしまったかのような錯覚になった。
恥ずかしさが限界に近づいた。
「美菜子せんぱい?」
我に変えると、美菜子は
「う、うん、恭子ちゃんはあまり派手な色好きじゃないようだから、この薄茶のワンピースなんかどうかしら?」
と無難に答えた。
いつの間にか隣に来ていた淳子も、
「うん、いいかも、ちょっと試着してみたら?」
「そうですねぇ。」恭子は喜んでそれを手にして壁際のカーテンの方へ歩いていった。
今度は美菜子に、「美菜子もなんか試しに着たいんじゃないの?」
ともちかける。
「あんまり派手なのタイプじゃないみたいだし、今度はちょっと長めのスカート試してみたら?膝丈でも恥ずかしいようなら。。。」
そしたらあゆみも近寄ってきて、指をさす。
「そしたら、あれなんかどう?さっきちょっと見てていいかもと思っていたんだけど。」
指した方向は、水平より上だった。
商品棚は上下複層になっていて、上の層にある商品を手にするときは、
お客さんは、数段ほどの脚立なりステップなりを使って手にしてもらうようになっている。
(え、私また段差を上るの。だって、わたし、スカートの中、何もはいていないのに。。。)確かに、美菜子の膝丈のスカートで仮に脚立を使って上がっても、足元でかがんで覗かない限りは、中を見られることは無い。
それに、店内は防犯カメラが上方から斜め下に向かって監視していて、そんなことをしようものなら、捕まってしまう。この店は、丈の長いスカートは上層に陳列しているのだ。ある意味、理にかなっているかもしれないが。。。
「どうしたの美菜子?」
美菜子はためらった。。。もう恥ずかしさの限界!
「ご、ごめんなさい。。。」
不意に美菜子はその場を離れてしまった。
あゆみと淳子はあえて精することはせず、そのまま見届けた。
もう恥ずかしくて。。。一目散に向かったのは、下着売り場だった。
とにかく、自分のサイズに合うショーツを買うのだった。
やっとの思いでショーツを手にレジに並ぶ。そのときもスカートの裾から片手を離せない。。。
やっとレジの順番が来た。
お金を払うとき、美奈子は恥ずかしさをこらえ、
小声で優しそうな女性の店員に打ち明けた。スカートの裾の広がりを絞るように手で押さえながら。。。
「あの、これ履き替えて帰りたいのです。ご、ごむが緩んでしまって。。。」
店員は状況を彼女なりに察し、その恥じらいをかばう様に、優しく更衣室を案内してくれた。
カーテンを閉め、やっとの思いでショーツを身につつけた美奈子だった。
身だしなみを確認し、更衣室を後にした。店員にはお礼をいうのを忘れなかった。
(あゆみたちには、きちんと事情を話すことにしよう。それにしても、私のショーツはどこへいってしまったの。。。)
そう思いを巡らせながら、先程の恭子が試着をしているフロアーに戻ろうとした。
が、その時。。。
「あの、ちょっといいですか?」店の制服?きちんとした身なりの女性に声をかけられた。
「ちょっと時間頂けます?」
「私急いでいますので、、、、」といいかけたが、並々ならぬ事情なのか、それを許してくれそうにもない。
しかたなく、その女性の言うがまま、店の事務室に通されていった。。。
そこには、防犯ビデオなのか、モニターがあり、その前にすわらされた。
「ちょっと、確認して欲しいのです。」「えっ?」
「ひょっとしたら、あなた、スカートの中盗撮されたかもしれないのです。。。」
(えっ?いつ?そんな。。。あたしのスカートの中を。。。い、いゃーーーーん。)
ショーツを履いて落ち着きを取り戻した今、
店内で自分のスカートの中を盗撮されるということが、どういうことなのか、
冷静のあまり、余計に顔を赤らめるより他無かった。
「不安になることはありません。もし盗撮されているとして、その写真を証拠に警察に突き出すことに抵抗があるようなら、そういう解決を取ろうとは考えていません。
もしあなたが被害者だとするならばあなたにとって最も傷の浅い解決法はないものなのか、
そういうご相談にも応じるとができます。もちろん、メンバーは全員女性です。
とにかく、問題の画面ををご覧になって下さい。」
(いつ、どこで、あたしのスカートの中、すなわち、何も履いていない下半身を。。。)
いっぽう、恭子は、試着しているワンピースがお気に入りのようだった。
あゆみや淳子が見てもとても似合っていた。二人とも、少しぽっちゃりした恭子が品良く振舞えば、絶対彼氏も幸せだよな〜、と感じていた。
淳子が「きっと彼氏惚れ直すわよ。」と言うと、あゆみも、
「今度のデートに着ていくの?がんばってね。でもわかっているとは思うけど、へんな色気だしちゃだめだよ。恭子らしく、おしとやかに。へんな所さそわれても行っちゃだめよ。」
「は、はい、もちろん。デートは昼間だけ、夕方はちゃんと帰ります。」
恭子は同姓としても応援したくなるような性格のいい子なのだ。
さて、ところで、あゆみと淳子にはもう一人応援したい子がいる。
それは云うまでも無く、親友の美奈子である。
好きな子を聞き出し、自分たちが見つけたようなやり方でボーイフレンドをゲットする作戦を考えていたのである。。。
あゆみと淳子、それに美奈子は、中学3年間同じクラスだった。
普通に恋をして普通に幸せになりたい、そういう考えの少女だった。
女の子としてのたしなみ、恥じらいも、
普通に(←この表現がはたして適切かはいささか疑問だが)持ち合わせていた。
制服のスカートも細工をして短くすることはせず、
淳子と美奈子は膝丈のスカートをきちんと行儀よく身に着けていた。。
あゆみのスカートもひざ上5cm程度少し短いくらいだった。
太ももを露出していすの上にあぐらをかいたり、
ジャージの上にスカートを短くはいて地べたに大股で座ったりするような子ではなかった。
イスにはきちんと膝をそろえて姿勢良く座り、地面には両脚をきちんとたたんでスカートで隠して座る。
体育座りの時も太ももの下でスカートの裾をきちんと押さえないと、恥ずかしいと感じるような子だった。
だから3人にとって、スカートをめくられることはものすごく恥ずかしいことだった。
スカートめくりはいきなりされるものなので、常に注意しなければいけない。
そういう注意を忘れないことも、彼女たちのたしなみのひとつであるといっていい。
スカートの中に短パンなりブルマなりを履き、3人の間でスカートめくりごっこをよくしていたが、
やっぱりめくられると恥ずかしい。でも、スキがあるとめくられてしまう。
そういう「スキ」がないようにする訓練になったのは結果論かもしれないが、間違いない。
そしてその訓練の発想は、美奈子が合気道を選んだ一因であったことも否定できないだろう。
そして、男子の付け入る「スキ」も無かったのかもしれない。。。
あゆみのスカートが少しだけ短いのは、(たぶん)性格的に活発なのでちょっとだけ動きやすさを求めたからだ(ろう)。
あまり短か過ぎるとスカートの中が見えてしまうし、これくらいがちょうどいいからだ(そうだ)。
これくらいなら、普段生活しているぶんには、中が見えてしまうことがない、と本人が経験則から考えてそうしている。
例のスカートめくりごっこの時、丈を上げ下げしながら、
「見えてる」「見えてない」とキャーキャー云いながらだんだんと落ち着いていった長さである(らしい)。
だから、あゆみも、めったなことではパンチラしない。
もっとも、3人の中では、スカートの中にブルマを履いていることが多かった(ようだ)。
それは、あゆみがテニス少女だったことも少し関係している(のかもしれない)。
淳子は小さい頃から着物が好きだった。七五三のとき、ものすごくかわいいと言われたのが、余程嬉しかったようだ。
着物を着たいがために高校では茶道クラブに入っている。だから、着物でのたしなみもある程度持ち合わせている。
美奈子は、モニターを見た。
画面には、階段が映っている。
まず、例の他校の女子生徒の短いスカートのグループが駆け上がっていく。
そのあと、先導する恭子が映り、そろそろと階段を上がる美奈子。途中でスカートから手を放してしまう。。。
その直後、ちょっと前にかがんでスカートの裾が広がった瞬間、美奈子のスカートの下には、デジタルカメラのようなものが。。。
(だ、だれが私のスカートの中を?まさか。)
そのまさかで、そのデジカメを持っていたのは淳子だった。。。
(よりによって。。。。こんな時に。。。なんでよ。。。)
美奈子は、自分がノーパンであることを知らずにいたずらで写真を撮られたと思っている。
「この人物に心当たりはありますか?」
「え、」動揺したが、美奈子も必死だ。「ええ、と、友達です。」「友達?」
「はい、時々こんなじゃれあう、な、仲なんです。」
「・・・」
「中学の時なんかスカートめくりなんかしたり、もう一人の友達なんかスカートのすそわざと上に引いててパンツ見えてるか確かめあったり。。。(以下略)」
「そ、そう、わかりました。でもね。この店は、そういう破廉恥なことをする場所じゃないからね。
本当はその友達もここへ呼び出して注意したいところだけど。。。
盗撮されたのが、まだ見ず知らずの人じゃなくてほっとしたわ。
さっきのあなたの恥ずかしがりようといったら。。。この子にはなんかおごってもらうことだね。。。」
美奈子もある意味ほっとしていた。みず知らずの人に自分の恥ずかしい部分がデジタルデータでいきわたっていたらと思うと。。。
美奈子は一礼して店内売り場に戻った。
(でも。。。あゆみと淳子には、ノーパンだってこと、知られちゃったよ。。。恥ずかしいけど、もう事情をちゃんと話すしかないわ・・・。)
そう言い聞かせて、3人を探した。
「せんぱーい」
「美奈子!」「どうしたのよ急にどっか行っちゃって。。。」
恭子は買い物を既に終えて、適当に3人で店内をぶらぶらしていたのだった。
「心配かけたけど、もう、大丈夫。帰りましょう?」美奈子は努めて元気にふるまった。
4人は店を出て歩きだした。美奈子は顔を赤くして切り出した。
「ねえ、じゅんこー、あたしのスカートの中盗撮したでしょぉ!」つとめて明るくふるまった。。。