明くる日の午前中、学校を休ませた恭子の父親は恭子に…  
「ちょっと出掛けて来るから…」  
と一言だけ言い残し家を出て行った。  
妻に誤解されたアノお風呂場での出来事を何とか解こうと妻の実家へ赴く為だ。  
呼んでおいたタクシーに乗り込み行き先を告げるとシートに深く身を預けどうやって誤解を解こうか一人思案しだした。  
その手には製造した企業を知るために買った例のドリンクが握られていた。  
 
 
アノ出来事の後…  
家を出てしまった妻は少々軽率気味な自分の行動に胸を痛めていた。  
 
あの少々無邪気過ぎな娘の性格と夫の優し過ぎて娘を叱れない性格から考えるとアノ出来事は娘の起こした悪戯だっただろうという事がたやすく想像出来たからだ。  
それに娘がお風呂場に入るのを自分は止めれなかったという事もある。  
 
しかし…  
だからと言って夫が娘を対象にして射精をしたという事実には凄い憤りを感じとても許せる事では無いのも本音で…  
まだ昼食には早いといった頃、実家の縁側に座りながらそんな板挟みの思いに妻は軽くため息を吐いた。  
 
ぼんやりとだが妻は少し時間を潰したら直ぐ帰ろうと考える。  
きっと今頃は夫がドリンクを製造した企業に今回の珍事を連絡して解決の方向に向かっているだろうとも考えた。  
 
良い人過ぎるのがちょっと欠点かな…  
ふと夫の事を考え始めたら連鎖して次々と懐かしい記憶が頭に浮かぶ。  
 
知り合った頃や付き合い始めた期間…  
二人の初めての夜、プロポーズされた日…  
結婚式から娘の出産…  
そして今、娘に起こっている事態…  
 
そうなのだ!!  
何よりも娘には今とても非常識としか言えない現象が起こっている。  
いくら科学が進んだ世の中だからと言って、あれはあまりにも非常識過ぎる。  
娘は大丈夫なのか?  
夫の事は深く信用してはいたがそれでも妻の中には娘に対する大きな不安がよぎる。  
 
その時実家の玄関前から自動車の止まる音が聞こえた。  
 
 
妻の実家へとついた夫はタクシーから降りると一度大きく家を見渡し、縁側に座っている妻の姿を見つけると玄関を通り抜け妻へと近づいて行った。  
タクシーが着いたのに気付いた妻の方も腰掛けていた縁側からサンダルを履き立ち上がると夫へ近づいて行く。  
お互いがお互いを見つめ続け、視線を外さずお互い歩み寄る。  
 
妻は立ち止まる。  
夫は近づいていく。  
 
二人の距離がもうお互い会話するのに支障無い距離に来て夫の歩みはやっと止まった。  
 
そして深く静かな…でも力強く頭を下げると弁解を始めた。  
緊張している為か早口で上手く言葉として紡ぎだせない。  
お互いが認識はしている筈の娘の12歳にしては少々素直すぎる面と性的知識を教えなかった事、アレはその為に起こった無邪気すぎる娘が父親を心配して起こしてしまった悪戯…等々のアノ出来事に対する言い訳を述べるが最後に一言  
「すまない…」  
と口にした。  
 
黙って聞いていた妻は  
「よし…許す」  
と返す。  
 
とりあえず…  
こうして仲が回復した夫婦は妻の両親にお詫びの挨拶をすると愛娘恭子の待つ自宅へと急ぐのだった。  
 
オマケ…完  
 
 
 

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