「ああ、麻耶ちゃん!やっときてくれた。助かったよ、今日はなんだかお客さん多くてさ」  
 
店長をはじめ、バイト仲間が労いと安堵の声をかけてくれる。  
弱ったなあ。すごく期待されてしまってる。わたしも、今日は休んでしまえばよかったのに、  
お人よしなのが災いしてか、結局こうしてバイト先のカフェにシフトの30分前に来てしまった。  
 
本当に弱ったなあ…  
 
わたし今日…パンツ穿いてないのに。  
 
 
水泳部の練習が終わって着替えようとしたとき、わたしのロッカーに、つけてきたはずの  
ピンクの下着が入っていなかった。ブラも、パンツも。  
とても悪質な悪戯…とは、考えられなかった。お人よしって言われるけど、わたしの友達や  
先生がわたしを辱めようなんて思うはずないし、鍵もちゃんとかかってた。きっとちゃんと  
探せば出て来るんだと思うけど、わたしは他の用事が済んでいなかったのでその件の連絡は  
後回しにして、とにかく下着なしでプールを出た。  
 
そういうわけでわたしは、たぶん人生初めて、下着を纏わぬ格好で、往来を走ることになってしまった。  
 
 
だから、その後はずっと、不安でどきどきしっぱなしだった。不可抗力とはいえ、下着を  
身につけてないなんて知れたらと思ったら、そりゃ、わたしだって気が気じゃなくて。  
それに、やっぱりスカートの中がスースーして変な感じだし(少し慣れたけど)、  
なんだかウチモモがとても敏感になってしまって、変な汗をかいてしまうし。  
 
 
そういうわけでわたしは決してベストコンディションでないのだけれど、  
みんなは、わたしにとっても期待している。なんとかして応えなくちゃ。  
わたしは、自分でもこんな顔できるんだと思えるような、曇りひとつない笑みをみんなに振舞ったりした。  
 
わたしは一人ロッカー室に入ると、えいと高校の制服を脱いだ。  
ブラウスの下から生のおっぱいがふるんと飛び出す。90センチのバスト。  
いつも私の肩を悩ませてばかりいるくせに、こういうときには威勢がいいみたい。  
むしろ黙ってて。乳首が浮いたりしたら、大変じゃない。  
 
スカートを脱ぐと、最近なんとなく剃り揃えたばかりの恥毛がすましている。  
何気なくいつもの癖で、姿見に映す。プロポーション自体には自身があるので、  
鏡を見ること自体はすきなのだけれど、今日はかなり変な気持ちだった。  
ロッカー室は服を脱ぐところだけど、素っ裸になったことなんかない。  
下着姿と、生まれたままの姿は、やっぱり全然違うよ。  
 
でも、みとれている暇なんてない。  
早く仕事に取り掛からなくちゃ。お客さんを待たせたら、大変!!  
 
 
ウェイトレスの制服を着てみると、やっぱり心もとない。それもそのはず。  
ブラウスはまあおいとくとしても、問題は膝上10cmほどのフレアスカート。  
もともとフワフワとひらめきやすい、薄くて白い生地。  
 
はっきりいってしまうと、下着を着けてない今このスカートだけというのは、  
何 も は い て な い の と 同 じ ような気分。  
それに靴下やストッキングもなし。生の脚に、ヒール。  
 
最初はかわいい制服だと思っていたけど、今になって、ちょっと、いや結構、  
えっちな制服だったのだと気がついてしまった。  
 
 
でも、今文句を言っても始まらない。仕事をしなくてはいけないんだから。  
弱ったなあ、なんて弱音を吐いてちゃだめだ!麻耶!  
わたしはえいとロッカー室を出て、さっそく仕事モードに入った。  
 
このお店はテラス席と室内席に分かれていて、今日は室内席はほとんどいっぱい。  
テラス席にも、風があるけどちらほら人が埋まっている感じだった。  
 
「あぁ!!」  
 
突然の風で、カナとひろみのスカートが派手に捲くれ上がっていたのだ。  
 
わたしのあそこが、キュンとなった。ウチモモに、脂汗が滲むような思い。  
あれが自分だったときのことが一瞬頭に浮かんだけど、すぐに振り払った。  
いけないいけない、しっかりしなくちゃ。  
 
カナは今コーヒーをお持ちした私とすれ違いざまに、「気をつけてね」と声をかけてくれた。  
嬉しいけど、いわれなくても気をつけなくちゃいけない。なにせわたしは、何もはいてないんだ。  
わたしはほんの少し内股目に歩き、片手はスカートに当てるようにしてコーヒーを運んだ。  
 
バイトを始めて何ヶ月かたつけど、いまさら、このお店が割と男性客にも人気なのは、  
このちょっと(わたしにとってはかなり)えっちめな制服がかなりウェイトを占めていたんだろうなと  
気がついた。他のお店と比べたことはないけど、やっぱり高校の制服のスカートに比べて、  
捲くれる率は高い気がしてきた。バイト代が他のカフェより高いのも、そういうところがあるのかな。  
 
でも、今のカナとひろみは上手に対応していて、下着は見えなかったし。  
風は吹いているけど、そこまで強い風じゃないみたい。それに、結構この仕事は慣れているし、  
屋内のほうを重視してやっていれば、まあまあ大丈夫かなと、感じがつかめてきた。  
 
 
「お待たせいたしました、エスプレッソでございます。ごゆっくりどうぞ。」  
 
 
どういうわけか、カフェの制服を着ていると、本当に自然と笑顔が出てくる。お客さんもとても  
優しい笑顔を返してくれる。やっぱりこのバイト好きなんだなと、改めて思った。  
 
ちょっとコーヒーを置くとき、スカートの後ろが捲くれちゃったらどうしようかとドキドキしたけど、  
全然平気だった。そう、この調子でポジティブにやらなくちゃ。お客さんがこのカフェを好きに  
なってくれるように頑張らないと。  
 
それから1時間くらいは、何度かテラスにも出たけど、何事もなく仕事が進んだ。  
わたしは相変わらず、すこしお尻が見えてないかとか、おっぱいが透けてないかとか、ガラスや鏡を  
チェックしたり気が気でなかったところもあったのだけれど、よく考えたら今までもハプニングって  
なかったし。もうちょっと肩の力を抜かないと、シフトを終えきる前に参っちゃう。  
 
でも次のご注文は、やっぱりちょっとやっかいだった。コーヒーだけでなくてサイドメニューもあるから、  
ちょっと広めのトレー。片手で持つと、持てなくもないけど少しバランスが悪い。  
慎重に運ばないと、落としたりしてしまったら、大変!  
 
テラスに出て…まだこんなに日が明るい。今日は本当にいい天気。…もそうだけど、  
お客様の席は11番だから…ああ、あそこだ。割合近い席で、ちょっと安心。  
さあ、早くできたてのドーナツとコーヒーを味わってもらわなくちゃ。  
 
わたしはそれでも、片手をお尻の方にあててスカートが浮かないように配慮しつつ、  
内マタめでお客様のところに向かった。そのときだった。  
 
ぶわっ  
 
突然の突風で砂埃が目に入り、おもわずわたしは軽く腰を落とした。でもそれが、まずかったみたい。  
体の重心が崩れたのか、トレーが風に運ばれるように傾き始めた。いけない!!  
わたしは慌てて両手で少し浮き上がったトレーを支えたのだが、それも、うん、いけなかった。  
 
スカートの裾が、みるみる浮いていく。真下から扇風機で吹かれたように、スカートがしっかりと  
風を受け止めて、パラシュートみたいに膨らんでいった。ウチモモに太陽の光が差したのが、  
暖かさでわかるほど。それらは、ほんの一瞬のことだった。ほんの一瞬――  
 
私が両手がふさがっているのをいいことに、風は、スカートを限界まで高く持ち上げたのだ。  
そう、私はおへそのしたからつま先まで、何一つ身につけてない、剥き身の、女体を、  
今晒されてしまったのだ。でも、私は何が起こってるのかまったく理解できなかった。  
両手がふさがっていて、体の重心を立て直すことがやっとで、そんなことに気を取られている間に、  
風はスカートを下げたり上げたりひっきりなしに振り回す。そのスカートのはためき方が  
あまりに激しくて、まるでわたしのお尻を見てくださいといわんばかりだった。  
 
だめ、だめ、だめ!!やめて、やめて!!  
今日は、本当に駄目!!だって今のわたしは……  
 
 
――見せたかったんでしょ?  
 
え?  
 
――ご自慢のヒップを、ナマで、殿方に見せたかったんでしょ?  
 
違う、そんなことない!わたしは…  
 
――本当は自慢の体をみせびらかしたかったんじゃないの?  
 
そんなわけない、この声、誰なの?幻聴?  
 
――ブラウスのボタンがもう少しゆるかったら、きれいなおっぱいも見てもらえるのに!!  
 
なんてこと!!わたし…  
 
――下着もつけないで、えっちなミニスカ。なんていやらしい女の子なの。  
 
違う、わたしはただ…  
 
――本当!!なま脚よ、なま脚!!普段からふとももみせつけてさ!  
 
そんなつもりじゃないったら!  
 
――うひゃあ、すげえ!!おまんこだぜおまんこ!!  
 
誰!?恥ずかしいこといわないで!!  
 
――あの子、あのカフェの看板娘だろ?二高通ってるんだよね。  
 
え、何で知ってるの?  
 
――きれいな上に、いい体してるよなあ!  
 
そんな…わたしは…  
 
――やりてえなあ、あんな子とさ。  
 
や…やるって!?そ、そんな…  
 
――やらせてくれんじゃね?ノーパンなんて、たまってんだよ。  
 
違う、違うよ!!そんなんじゃ!!  
 
――そういや水泳部だよな、あの女。うひゃ、露出癖きわまってるね!!  
 
な、なんでそうなるわけ!?  
 
――おっぱい大きい女ってえろいしな。案外、ブラもしてなかったりして。  
 
違う、おっぱいとか、ちょっと…いや!!駄目!!  
 
――ありうるぜ、よくみてみろよ!!  
 
見ないで!!見ないで!!!  
 
わたしは、仕方なかったことだけど、そのときとっさに大声を上げてしまった。  
それはどう考えても逆効果で、みんなが、そう、お客様に、バイト仲間、それにお店が面している道路を  
歩いている人たちにいたるまで、みんなが風に目を背けていたのに、むしろそれに抵抗してまで、  
悲鳴の主の方に注意を向けたのだ。それがわたしには、わかった。  
 
 
――ほら、もっとよくみせてやれよ、お前のお尻を。奥のほうまでさ!!  
 
――なんなら、拡げてやってもいいんだぜ?  
 
――触ってみろよ、ずぶぬれだぜ、お前のおまんこはさ。  
 
――ああ、脱がしてえ!!挿れてえ!!  
 
――挿れちゃえ、挿れちゃえ!!誘ってんだよ、あの女!!  
 
 
 
そこで私は気を失ってしまって、以来、そのカフェには恥ずかしくていけなくなってしまった。  
バイト仲間や店長さん、常連のお客様が引き止めてくれたのだけど、断った。  
 
 
 
 
――スカートを押さえもせずに気を失うなんてな。  
 
――次があったら、きっと全裸になってくれるだろうね。  
 
――ちがいねえ、そしたら、あのおっぱいとおまんこを味わいまくってやろうぜ。  
 
――人気メニュー化間違いなしだな。  
 
――店を変えたって関係ないね。  
 
――ああ、そういう女なのさ!!  
 

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