「あ……」  
と、沙砂(ささ)の隣で間の抜けた声をあげたのは由香(ゆか)だった。  
何事かと隣を見ると、由香はばつが悪そうに  
「ぱんつ忘れてきちゃった」と、笑った。  
 
  ・・・  
 
まだ桜の開花を待つ3月。  
暖かくなってきたといっても、日中やっとコート無しでも過ごせる程度だ。  
こんな時期にわざわざプールに行こうなんて言いだしたのは、  
保育園からの幼友達、牧野由香だった。  
去年、開館したばかりの市民体育館には全天候型の屋内プールがあって、  
学生証さえ提示すれば市内の中学生は300円で利用できるのだ。  
開館前から行こう行こうと話していたのだけれど、去年の夏は終わってしまい、  
結局は由香の思いつきで、こんな時期に来ることになってしまったわけなんだけど……  
 
「中学生にもなって、どうして着替えを忘れるかな…」  
「だって、持ってきたと思ってたんだもん」  
「しかも、そんなスカートの日に……」  
「しょうがないじゃん、だって、ぱんつ忘れたなんて思わなかったんだもん」  
こんな時に限って由香のスカートは股下20センチもなさそうな真っ赤なフレアスカート、  
元々がちょっと男の子っぽいところがある由香のことだ、  
いつもみたいに走ったり、自転車の立ち漕ぎなんてしたら、きっとお尻が丸出しになってしまう。  
「もお、どうするの? バスタオル巻いて帰る?」  
「ん〜………、あ! そうだ!!」  
言うが早いか由香は沙砂のバックを引っつかむと、沙砂の下着を引きずり出した。  
 
「ちょ、ちょっと由香ちゃん!」  
沙砂が真っ赤になって、下着を握る由香の手にすがりつく。  
「わ、わわわ、わたしのぱんつどうするの!」  
「ん? ちょっと借りるだけよ」  
「由香ちゃんがわたしの穿いちゃったら、わたしのが〜!!」  
「待った、待った、違うって」  
「なにが違うの!?」  
「とりあえず、あたしがこれ借りてひとっ走り家までぱんつ取りに行ってくるの、  
 そしたらまた戻ってくるから。これなら問題ないでしょ?」  
「じゃ、じゃあ、私が取りに行ってくるから由香ちゃんが待ってて!」  
「ダメよ、沙砂ったら自転車乗れないじゃない?  
 それに体育館はあと一時間で閉館よ。  
 自転車で急いでも沙砂じゃ戻って来れないでしょ?」  
「でも………」  
「それとも、沙砂はあたしにノーパンで帰れって言うの?」  
「そういうわけじゃ…ないけど……」  
「じゃ、きまりねw」  
沙砂がまごまごしている間に、由香は下着を穿いてしまった。  
止める間もなく、すこし日焼けの残る由香の素肌を真っ白な沙砂の下着が包みこんでしまう。  
「ん? ちょっとちいさいかも……」  
由香は笑いながらスカートの端をめくって沙砂に下着を見せたが、  
沙砂は顔を真っ赤にして「やーめーてー!!」と、じたばたするばかりだった。  
2人は子供の頃からお隣同士で、今だってお互いの家にお泊りをするような仲だ。  
お風呂だっていっしょに入るし、ついさっきだって着替えているところも互いに見たばかりなのに、  
沙砂の下着を由香が穿いているのが、どうしてか沙砂には無性に恥ずかしい。  
「沙砂ってお尻ちいさいからなー、ま、ちょっときついのは仕方ないか」  
「……!? ばか! 由香ちゃんのバカ!!」  
「じゃ、速攻で取ってくるから待ってるんだよ〜」  
そう言い残して、由香は逃げるように更衣室を飛び出して行ってしまった。  
「バカ……」  
 
沙砂は仕方なく、脱ぎかけの水着を直してプールへ戻ることにした。  
由香なら2人乗りでも家まで20分。一人ならもっと早く付けるはずだ。  
往復40分として、由香が戻るまでノーパンで、しかも、  
外で待つなんて、考えるだけでも恥ずかしい。  
一人でプールに戻るのは心もとないが、それでもノーパンでいるよりは幾分ましだ。  
そう決心して、プールへ戻った沙砂だったのだが………  
 
「入れない……ですか?」  
「ごめんなさいね。プールは他の施設より閉館時間が早いのよ。  
 清掃もあるし、着替えるのにも時間が要るでしょ?」  
「………」  
監視員のお姉さんに諭されてしまう。こうなっては仕方が無いのだけれど……  
「どうしたの、忘れ物でもあるの?」  
「え!? な、なんでもありません!」  
と、沙砂は反射的に返事をしていた。事情を説明すれば、相談に乗ってくれたかもしれないが、  
忘れたわけでもないのに下着がないなんて、そんなこと沙砂には恥ずかしくて言えるわけが無い。  
結局、沙砂はぎりぎりまで更衣室で躊躇して、下着のないまま外に出た。  
 
今日の沙砂は膝上5センチの丈のVネックワンピース。  
花柄のシフォンプリントがお気に入りの一品だが、裾が広がった可愛らしいスカートも、  
今に限っては、沙砂の羞恥を誘うあやうい罠でしかない。  
暖かくなたと油断して、コートを着ていなかったたのも災して、  
春一番を思わせる強風がスカートの裾を掴むたびに、  
沙砂は必死になって、バッグでスカートを抑えた。  
「もお……由香ちゃんのバカァ!!」  
 
市立体育館自体は豪華に作られており、構内も有名らしい芸術家によるオブジェが並び、  
広いグラウンドも併設されている………のだけれども、  
いざ探してみると、プールのある新築体育館付近には、意外なほど座れるベンチが少ない。  
体育館を建て替えるにあたり、構内のベンチにまではあまり気が回らなかったようで、  
いくつかあるベンチには既に誰かが座っているか、残っているのはとても座る気にはなれないような、  
端の朽ち果てかけた木製のベンチばかりだった。  
少し離れた場所まで行けば、もしかすると空いているベンチもあるかも知れないが、  
あまり入り口から離れると由香が戻ったときに、見つけてもらえないかもしれない。  
せめてベンチにでも座って、スカートを押さえていたかったのに………  
待つこと5分。  
沙砂が体育館を出てからまだたったそれしか過ぎていない。  
由香が沙砂の下着を穿いて出て行ったのが4時を過ぎた頃。  
更衣室を追い出されたのが4時半だったから、そろそろ戻ってくれてもいい頃なのに。  
 
……だいたい、由香がぱんつを忘れたのが悪いのよ。  
わたしのパンツ穿いてっちゃうし………わたしの…由香ちゃんが……  
 
ノーパンの羞恥の上に、由香の下着姿を思い出してしまい、ますます沙砂の頬に羞恥の色増してゆく。  
下着のない心細さから、ついつい膝をすりあわせうような、大げさな内股になってしまう。  
 
……わ、わわ、わたし、なに赤くなってるんだろ、やだ、人が見てるよ。  
あんまり不自然にしてると、穿いてないってばれちゃう。  
 
沙砂は自身は自然を装っているつもりで大人しくしていたが、  
沙砂は同世代の中でも自然と人目を集めてしまうような可愛らしい容姿の少女だ。  
そんな子が、一目でわかるくらい恥じらいに頬を染め、もじもじとスカートを押さえているのだ。  
沙砂が注目を集めてしまうのも、当然といえば当然のことだった。  
 
……なあ、あの子なにしてんだろうな?  
……お前も見てたのか? さっきからああしてるよな。  
……もしかして、トイレでも我慢してるのか?  
……だったら、トイレ行くだろ? 体育館に入ればあるんだから、わざわざ我慢なんかしなくても……  
……友達でも待ってるんだろ。  
……いや、恋人かもしれないぜ。  
……じゃあ、なんであんな恥ずかしそうにしてるんだ?  
……もしかして、ノーパン調教中とか。  
……バカかお前w  
 
中学生らしい男の子達の話し声が聞こえてくる。  
『恋人』や『調教中』といった言葉に羞恥を掻き立てられ、  
『ノーパン』の一言に逃げ出してしまいたかったが、  
この風の中、走ったりしたら本当に無防備なお尻やらなにやら、  
口にするのも恥ずかしい場所を見られてしまいかねない。  
だからといって、過剰にスカートを押さえ続けていれば、不自然すぎて注目を集めてしまう。  
 
そ、そうよ。自然に、自然にしてないと、ホントにぱんつ穿いてないってばれちゃうもの。  
 
沙砂は自分に言い聞かせるように、頭の中で呟くと、  
スカートのお尻を押さえていた手を離し、ゆっくりと正面の鞄に置いた。  
……そののせいだろう、反応が遅れてしまった。  
 
吹き上げるような不意打ちの風に煽られ、沙砂のスカートがふわふわと舞い上がってしまい、  
無防備な沙砂のお尻が晒されてしまったのだ。  
 
普段よりスースーする無防備な沙砂の股間を、冷たい風が撫で上げた。  
直接お尻に触れる冷たい風の感覚に驚いて、次の瞬間にスカートがめくれているのに気付き、  
沙砂は慌ててスカートを押さえてお尻を隠した。  
時間にして僅か2秒にも満たない、本当にほんの一瞬のだったが……  
 
……み、みみみ、見られたッァァ!!!???  
 
沙砂の羞恥を煽るには十分過ぎるほどの出来事だった。  
反射的に、噂話をしていた男の子達の方を見てしまう。  
……と、5人ぐらいの男の子達のなかに、一人だけこちらを向いて真っ赤になっている男子と目が合った。  
 
………ぜ、ぜったいに見られた。  
お尻見られちゃったの? わたし男の子にお尻見られちゃったの!?  
 
まさに、穴があったら入りたい、いや、今すぐプールの水になって、溶けてここから消えてしまいたい。  
今にも泣き出ししそうなくらい恥ずかしいのが自分にもわかったが、  
そんな事をして注目を集めてしまうのが、それにも増して怖かった。  
たぶん、耳まで真っ赤になった顔を両手で隠したいのも我慢してスカートを必死に押さえる。  
と、男の子たちの声が再び聞こえてきてしまった。  
 
……お前、どうしたんだよ。  
……真っ赤だぜ。  
……あの子…ぱんつはいてない  
……はぁ?  
……なに言ってんだよ、  
……ホントだって、今スカートがめくれて見えたんだよ!  
……マジかよ  
……そういえばさっきからスカート押さえてるよな  
……じゃ、マジでノーパンなの?  
 
好奇と欲情の混じった男の子達の視線が、沙砂のスカートに注がれていた。  
 
ばれちゃった、ぱんつ穿いてないって……あの子たち、沙砂の事を変な子だと思ってるよ……  
 
沙砂は余裕もなくお尻と股間をスカートの上から押さえた。  
恥ずかしさで死んでしまいそうなくらいの速さで鼓動が騒いでいるが、  
ここで逃げ出しても、今度は家までの距離をノーパンのまま帰らなくてはいけなくなる。  
運の悪いことに先ほどからの強風も続いていて、普通に立っているのも難しい程の風を、  
沙砂はスカートを押さえながら必死に耐えていた。  
無遠慮な男子達の視線が突き刺さる。そんなはずはないのに、熱心に見られていると、  
まるでスカート越しに、直接お尻や自分でもよく知らない大事な場所さえも見られているようで、  
羞恥に煽られた沙砂は益々頬を染め上げ、過剰な仕草でスカートを押さえてしまう。  
 
沙砂自身も、見ている男子たちも気づいてはいなかったが、  
恥じらいに膝を押し合うように揺らし、股間やお尻を押さえるために蠢く沙砂の仕草は、  
それ自体、ある種の悶えに似た媚態を生み出し、男子の欲情を誘う効果を高めていた。  
恥じらいに身を隠せば男子達の視線を集めてしまい、  
かといって、隠さなければノーパンの下半身が丸見えになってしまう。  
当然隠さずにいられないのだが、その痴態が視線を集め、見られるから隠さずにいられない。  
沙砂は知らないうちに、恥辱の無限連鎖に陥っていた。  
 
……やだ、見てる……見られてる。  
わたし、ぜったい、ノーパンの変な子だと思われちゃってるよ……  
 
……!!!  
……おおおぉぉ!!  
 
男の子達から突然の歓声が湧き上がる。  
沙砂は慌てて視線をスカートに落として、思わず悲鳴を上げてしまった。  
「いやぁぁぁぁ!!」  
 
強風で煽られたサイドの裾が舞って、ほとんど腰の辺りまで持ち上げられているのだ。  
前や後ろは隠れていても、これでは下着を穿いていないことが丸分かりである。  
 
もお、いやあぁ!!!  
 
沙砂はスカートが汚れるのもかまわずに、とうとうその場にへたり込んでしまった。  
足を左右に崩した正座のような姿勢でアスファルトの上に座ると、  
下着を穿いてないせいか、ごつごつした固い感触が痛い。  
それでもしっかりとスカートの後ろはお尻の下に敷いて、膝の上にはバッグを置いてガードする。  
これでもお見られる心配はないかも知れないが、  
男の子達にはしっかりとノーパン少女として記憶されてしまったに違いない。  
 
もう、いや! これ以上見ないで!! なんでどっかに行ってくれないの!?  
沙砂がノーパンだからいじめるの? こんなの恥ずかしすぎるよ!!  
 
どちらかといえば、沙砂の方がこんな場所にわざわざノーパン姿で立っていたのだが、  
羞恥と混乱にあふれた沙砂にはそんなことを考える余裕もなかった。  
今度こそ耳まで恥辱色に染まった頬を両手で押さえ込んでしまった沙砂だったが、  
そんなことでこの場を逃れるはずはない。  
 
「……なあ、どうかしたのか?」  
「!?」  
 
すこし離れた場所で見ていたはずの男子達がいつの間にか近づいていた。  
不意にかけられた声に、心臓が飛び上がりそうなほど驚いて、沙砂は恐る恐る視線を上げる。  
間違いない。沙砂のお尻を見ていた男の子だ。  
 
「こんなところに座ってたら汚れるぞ」  
「それともどっか具合が悪いのか?」  
 
他の男子たちにも声をかけられ、沙砂にはどうしていいのかわからず声を出すことも出来なかった。  
 
「家近いの?俺たちが送ってってやろうか?」  
「………」  
 
やっとの思いでふるふると顔を横に動かす。  
ノーパン姿を見られただけでも、沙砂には恥ずかしくて動けなくなるほどの恥辱だというのに、  
その上、見ていた男の子と話をするなんて沙砂には恥ずかしくて出来るわけが無い。  
 
「とりあえず、立ちなよ、手伝ってやるからさ……」  
 
沙砂が言葉の意味を理解するよりも速く、男の子の一人に沙砂の腕は掴まれてしまった。  
 
「!?」  
右腕を引かれ、屈む様にしていた上体がそらされる。  
「荷物持ってやるよ」  
「!!?」  
追い討ちをかけるように、しゃがんだ太股の上に抱いていたバッグが取り上げられる。  
親切心での行動かもしれないが、今の沙砂からすれば、着替えを隠していたバスタオルを、  
突然取り上げられたのも同然だった。  
 
「………!!」  
 
いや! と、言いたいのに思うように声が出ない。  
振りほどきたいのに、体が言うことを聞いてくれない。  
もう一人の男子に左手も取られてしまいスカートを押さえることも出来ない。  
強い風が、スカートの裾をはためかせる。  
このまま立ち上がれば、いたずらな風にスカートが舞い上がり、隠すことも出来ないまま、  
ノーパンの下半身を男の子達の前で全て晒してことになる。  
 
だ、だめぇ! そんな恥ずかしいこと……このままじゃ、全部見られちゃう!!  
助けて! 誰か……由香ちゃん! 速く来て!!!  
 
両肩を持ち上げられ、いよいよ膝が持ち上げられようとした、その時だった。  
 
「こらあぁぁぁ!!!」  
 
聞きなれた掛け声と共に、右肩を持ち上げていた力が消えた。  
スカートがふわりと風に持ち上げられかけていたところを寸前で押さえつける。  
まさに間一髪、あわや太股のほとんどが露出しかけていたところでスカートを押さえつける。  
それから沙砂が振り返るのと、由香がバッグを持った男子を蹴り倒したのがほぼ同時だった。  
 
「沙砂になしてんのよ!!」  
「由香ちゃん!!」  
 
思わず叫んでいた。  
沙砂の窮地に颯爽と現れ救い出してくれる。  
月並みかもしれないけれど、沙砂にはまるで由香が王子様かヒーローのように見えた。  
 
「嫌がってんでしょ! 沙砂から離れなさいよ!!」  
ポーズでも決めてるみたいに、2人目の男子を蹴り倒した格好のまま由香が叫ぶ。  
 
格好いい。本当にすごい。昔から思ってたけど、由香ちゃんが男の子だったら、  
絶対に好きになっちゃいそうだ。  
でも由香ちゃん。そんなに足を上げたら、ぱんつが丸見えだよ……って、  
それ! 沙砂のぱんつ穿いたままじゃない!!!  
 
沙砂の動揺も気にせずに、由香は男の子達を睨みつける。  
相手はというと、蹴られたのが相当痛かったらしい。蹴られた子はゲホゲホ咳きこんでるし、  
仲間らしい男の子達は由香を睨み返している。  
 
「な、なにすんだよ! 俺たちは別に……」  
「うそ! あんた達沙砂がノーパンなのをいいことに覗こうとしてたんでしょ!」  
「……へ!?」  
「ゆ、ゆゆゆ、由香ちゃん!!」  
なんてこと言うのよ! 折角一生懸命隠してたのに!!  
 
顔を真っ赤にした男子の緩んだ視線が一気に沙砂に集まる。  
再び恥ずかしさが込み上げて、由香は思わずスカートの上から股間を押さえつけた。  
 
「……あれ? 違ったの?」  
「ゆ、由香ちゃんなに言ってるのよ!!  
 わ、わたしがノーパンなんて、そんなわけないじゃない!!!」  
 
沙砂は必死になって否定を試みる。はっきり見られたわけでもないのに、  
わざわざ自分からノーパンだってそんな恥ずかしいこと教えるなんて信じられない!  
っていうか、由香ちゃん。ハッキリ言ってバカじゃないの?  
って、襟首掴んで聞いてやりたい。  
それなのに、事もあろうか由香ちゃんは、  
 
「え? …だって、沙砂のパンツあたしが穿いたままじゃん」  
 
なんて言いながら、わざわざ自分のスカートでめくって沙砂に見せてきた。  
 
「ば、バカッ!! 止めてよ!!!」  
 
沙砂は思わず由香のスカートを押さえつける。  
 
男の子も見てるのに、なに考えてるのよ!?  
下着を見せびらかすなんて……そりゃ、見られてるのは由香ちゃんで、わたしじゃないけど、  
でも、見られてるのはわたしのぱんつで、穿いてるのは由香ちゃんだけど、  
でもでも、それじゃあ、わたしがどんなぱんつ穿いてるか教えてるみたいで………  
とにかく! 恥ずかしいの!!  
なんで、由香ちゃんはそんなことも判らないの!?  
 
沙砂は必死に半泣きの瞳で訴えたが、由香にテレパシー能力を期待するのはどうにも無理があるらしい。  
逆に、不思議なものでも眺めるみたいな目で首をかしげている。  
と、思ったら、今度はごそごそポケットを探って、  
なんのつもりかストライプ柄のハンカチを取り出して、目の前で広げて見せた。  
 
……って、それわたしのぱんつ!!  
 
「ほら、安心して。ちゃーんと持ってきてあげたわよ。  
 おばさん買い物に行ってたみたいで、ちょっと時間かかっちゃったけど、  
 その代わり、しっかりかわいいの選んできたから」  
 
言いながらあやとりのような手つきで、左右両方の人差し指の間に縞柄の下着を広げる由香。  
先ほどまでの殺気立った気配はどこへやら、少し照れながらも、  
男の子達の視線は、沙砂の下着に釘付けになっている。  
 
「ば、バカッ! バカッ!! バカァ!!!」  
 
沙砂はノーパンでいるのも忘れ、下着を沙砂の下着を弄ぶ由香に飛び掛ってしまった。  
……それが敗因だった。  
 
真っ赤になって飛び掛ってくる沙砂を、由香は反射的に両手を上げて身を避ける。  
結果、沙砂の下着は見せびらかすように高く掲げられ、  
下着を追って、両手を伸ばしたせいでバランスを崩した沙砂は派手に転び、  
そこへ運悪く吹き上げた風がスカートをつかまれ、  
沙砂は無防備な下半身を晒したまま、蛙のように足を折り曲げた姿勢で頭から転んでしまったのだ。  
 
スカートは前はおへそが、後ろは背骨の窪みが見えるまでめくれている。  
足を少し曲げた膝立ちのような姿勢で転んだため、まるで、男の子たちにお尻を突き出すような格好で、  
ぷっくりと膨らんだ股間に走る秘裂から、白いお尻の終着点にあるちいさな菊座まで、  
余すところなく拝めるような格好になってしまっていた。  
 
沙砂は慌てて跳ね起きると、風に煽られるスカートを両手で押さえ込んだ。  
これ以上赤くはならないだろうと思っていた頬が、ますます熱を帯びてゆく。  
 
……見られちゃった。  
ノーパンなのに、全部見られちゃった……  
 
あまりの出来事に、羞恥や混乱を通り過ぎて、頭の中が真っ白に固まってしまっている。  
 
「……さ、沙砂? 大丈夫?」  
「………」  
 
振り返ると、いまだに沙砂の下着を広げたままの由香と、  
こちらも顔を真っ赤に染めた男の子達が沙砂を見ている。  
 
……絶対に見られた…あたしのお尻…あたしの……  
 
恥ずかしくて沙砂にはこれ以上考えることすら出来ない。  
怒りと羞恥で真っ赤になった顔で沙砂は由香をにらみつける。  
 
……こうなったのも、こんな恥ずかしい思いをしたのも元を正せば由香ちゃんが……  
 
「あははは、ちょっと遅かったみたいだけど……ぱんつ穿く?」  
「……由香ちゃんの………由香ちゃんのバカアァァァ!!!」  
 
こうして、春を待つその町に強い風の吹いたその日は、  
沙砂にとって忘れられない由香との思い出の日になったとか、ならなかったとか。  
 
 
おしまい。  
 

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