機動少女隊レイディオン
天木智子=(変身)レイクリムゾン=(ロボ)イシュターレイ
三笠恵理子=(変身)レイセルリアン=(ロボ)ヴィーザルレイ
長柄美沙=(変身)レイサラテリー=(ロボ)パルナレイ
ロボが三体合体でレイディオンに。
あらすじ
ある日、突如として地球を襲った宇宙の犯罪者集団「ガレオス」。
彼等によって街は破壊され、生命は奪われ、捕らえられた人々は慰み物とされた。
各国の軍隊は懸命に抵抗するも、ガレオスの機動兵器にはまるで歯が立たない。
人類が希望を失いかけたその時、三人の戦女神が現れる。
彼女達はガレオスに立ち向かい、強力な機動兵器を打ち破り、囚われの人々を助け出した。
人類は歓喜に沸き、ガレオスは驚愕と怒りに満ちた。
しかし、地球の状況を一変させた戦女神の正体を知る者は少ない。
それは異星人から超常の力を与えられた、地球人の少女達だった。
「撃て! 奴等をここで食い止めるんだ!」
街中に銃声と怒号と悲鳴とが響き渡っている。
ガレオスの尖兵である、二足歩行の蟻の様な姿をした人工生物が群れをなして攻めて来たのだ。
住民は既に避難し軍が応戦しているが、通常の火器では大した効果は得られない。
蟻型生物の刃物の様な腕によって兵士達は次々に刺し貫かれ、戦線は徐々に後退していった。
惨殺されてゆく部下の姿を見ながら、部隊長の男は歯噛みした。
(やはり俺達では勝てないのか… 彼女達でなければ…)
一方、その戦場に向かって、無人の街並みをひたすらに駆ける天木智子の姿があった。
(急がないと! こうしている間にも軍の人達が…)
智子は天に向かって左手を掲げた。 その手首には機械的な形のブレスレットが装着されている。
遠目には腕時計にしか見えないその小さな装置の中には、人類の科学を遥かに超えるオーバーテクノロジーが詰め込まれていた。
「装着!」
智子が高らかに叫ぶと、ブレスレットから目も眩む光が放たれた。
その光の中で、智子は球形の防御フィールドに包まれる。
衣服が一度分子レベルにまで分解され、身体にぴたりと密着したアンダースーツとして再構成される。
続いて智子の周囲に生成された紅のプロテクターが各部に装着され、最後にヘルメットが頭を覆った。
防御フィールドが弾けたそこには、一人の戦女神の姿があった。
レイクリムゾン──智子はこの姿になった時、そう名乗っている。
彼女は自動車やバイクにも匹敵する脚力で、街の大通りを駆け抜けた。
(もはやここまでか…!)
手持ちの銃弾が尽き、もはや接近用の武器しか持たぬ部隊長に、蟻型生物の腕が迫る。
(すまん…)
この世に残すことになる一人息子とガレオスに攫われたままの妻を想い、彼は死を覚悟した。
その時、
「やあああーっ!」
裂帛の気合と共に、紅く光るレーザーブレードが蟻型生物を切り裂いた。
驚愕に見開かれる部隊長の目の前にあったのは、今までに何度も人類を救った英雄の姿だった。
「れ、レイクリムゾン…!」
「ここは私が食い止めるから、早く逃げて!」
「す、すまない! 全員、撤退だ!」
敵の群れに切り込んで行くクリムゾンを横目に、部隊長は生き残っている部下に素早く指示を下した。
「後は頼む!」
「ええ!」
遠ざかって行く軍の車両を見届けると、クリムゾンはまだ多く残る敵に向かいブレードを構えた。
「あんた達の好きにはさせないわ!」
強化スーツが与えてくれる人間を遥かに超えた運動能力で、蟻型生物を次々と切り裂く。
クリムゾンにすれば今まで何十体と倒してきた雑魚に過ぎない。
蟻型生物は今まで軍相手に猛威を振るっていたのが嘘の様に、その数を減らしていた。
「これで、ラスト!」
最後の一体は頭頂部から股間までを綺麗に両断され、その場に崩れ落ちた。
どういう原理なのか活動を停止した人工生物の肉体はみるみる内に溶けてしまい、周囲は悪臭を放つ液体が散らばっている。
装着者に何か影響を及ぼす異臭は通さぬ様になっているヘルメットの奥で、クリムゾンは「ふう」と一息ついた。
そして、声をあげる。
「まだいるんでしょう、出て来なさい!」
その言葉に答えるように、地面が微かに揺れた。
『ほう、よくわかったなお嬢ちゃん』
何処からか男の声も聞こえてくる。
「あんた達は自分の手で人を殺すのが好きなんでしょ。 こんな生物兵器だけに任せておく筈が無い」
『ハハハ、ご名答!』
突如、クリムゾンから数十メートルは離れた位置にあるビルが崩壊した。
もうもうと立ち込める砂塵の向こうから、ガレオスの機動兵器が現れる。
その下半身や胴体は鎧を纏った巨人の様な風貌だが、両腕があるべき場所からは十本近い触手の様な物が伸びていた。
ガレオスではこの機体を「アスパール」と名付けている。
『やっぱりこういうのは自分でやらなきゃな。 お前も楽しませてくれよ、レイクリムゾン』
アスパールのコクピットでは、異星人の男がニヤリと笑みを浮かべていた。
「あんたなんかに負けはしない!」
クリムゾンが左腕のブレスレットを掲げると、上空の空間が陽炎の様に揺らぎ出した。
そこに浮かび上がったのは、彼女のもう一つの体となるべき女性型ロボット。
その無表情な顔は、人間のそれを模して造られていた。
「融合!」
女性型ロボの胴体から一条の光が伸び、クリムゾンを包み込んだ。
彼女は光に導かれて浮かび上がり、ロボットの前まで来ると、その身体が空気中に溶け込むように消えていった。
(あ、う…っ)
この感覚はいつまで経っても慣れない。
体が形を失って溶けてしまう様な、或いは、肉体から解き放たれて魂だけになってしまった様にも感じる。
やがて体の感覚が戻ってきた。 しかしその体は、今までのものとは違っている。
『イシュター、レイ!』
女性型ロボット──イシュターレイが名乗りをあげる。 その声はクリムゾン=智子のものだった。
『ほう…』
アスパールから感心した様な声が漏れた。
『そいつが噂のロボットか。 パイロットが"操縦"するんじゃなく、融合してロボットそのものになる』
有機体が無機物に分子レベルで一体化し、自身の体として操る。
それは地球は元より、ガレオスにとっても魔法としか思えない技術だった。
『そのロボット、誰に貰った? こんな星で開発できる筈がない』
『あんたに答える義務は無いわ』
イシュターレイ=智子自身も、この機体や左腕のブレスレットがどういう仕組みになっているのかはさっぱり解からない。
彼女や二人の仲間はただ一連の装備を与えられただけで、それが人々を守る為に役に立つから、そのように使っているだけだ。
『だろうな。 まあいいさ、ボスに言われてるんだ。 その得体の知れない技術の出所を力づくでも聞き出せって』
『あんたの思い通りにされてたまるかっ!』
上空では軍の制止を振り切ってやって来た某テレビ局のヘリが、じっと地上の様子を撮影し続けていた。
カメラに見下ろされていることなど気にも止めず、イシュターレイは微かに腰を落とし、左腕を引いて構える。
『バーニング・ナックル!』
エネルギーが凝縮され高熱を伴ったイシュターレイの左拳が、アスパールに叩き付けられた。
『うおっ!』
パイロットの悲鳴と共にアスパールは吹っ飛び、背後の高層ビルに倒れ込む。
さらに追い打ちをかけるべく、イシュターレイが跳躍した。 容赦無くつま先から蹴り込む。
だがその追撃がアスパールに突き刺さる直前に、一本の触手がイシュターレイの足首に絡みついた。
『あっ!』
声をあげた瞬間には強力な力に足を引っ張られ、宙に投げ出されていた。
そのまま先程のアスパールと同じようにビルを倒壊させながら倒れ込んでしまう。
『う… く…っ』
苦痛に顔を歪め、立ち上がるイシュターレイ。
これもどういう技術なのか、固い装甲で出来ているはずのイシュターレイの顔は、人間の顔と同じ様によく動く。
『お返しよっ! アエザーブラスト!』
右腕に装着された砲から強力なエネルギー弾が発射される。
しかしアスパールは背中のバーニアから光を吹き、素早く横に動いて光弾をかわす。
『見え見えなんだよ!』
男が叫ぶと、アスパールの触手の先端が蛇の口のように上下に開き、その中からレーザーが発射された。
同時に十本近い光線が乱れ飛び、周囲を瓦礫の山に変える。
イシュターレイも先程のアスパールと同じく横っ飛び、さらにアエザーブラストを連発する。
両者の飛び道具が交差し、真っ昼間の街中を様々な光が乱舞した。
しかしそれも短い間のことで、火力で劣るイシュターレイは数発のレーザーの直撃を受けてしまった。
『きゃああ!』
またしても吹っ飛ばされ、建物を巻き込みながら倒れ込む戦女神。
彼女が体勢を立て直そうとする前にアスパールが一気に接近し、触手を使ってその肢体を絡め取った。
『あ、うああっ! は、放せっ!』
イシュターレイは身動きの取れぬ状態のまま、高々と持ち上げられた。
『たしか射撃は青い奴の方が得意だったな。 そういえばお仲間はどうした?』
もはや九分九厘は勝利が確定したアスパールのパイロットは、尋問気分で尋ねた。
『そ、そんなの、あんたなんかに教えないっ』
『ほう』
アスパールは空いている触手を使い、イシュターレイの腹部にレーザーを打ち込んだ。
『あっ、き、きゃああぁぁっ! あぁ、熱いっ!』
激痛と高熱に激しく身をよじるイシュターレイ。
『口答えできる状況じゃないな、え?』
『ん、く、くぅぅぅん!』
イシュターレイは歯を食い縛って必死に堪える。
十秒ほど照射されてレーザーが止まっても、その身体はびくびくと痙攣を続けた。
『あぁ、ハァ、ハァ…』
『しかし、その機体を作った奴も何考えてんだろうな? 操縦者が完全に融合しちまう割には、痛覚のカットも出来ていないようだ』
『そ、それが… ハァ、どうしたの…』
『機体をまさに自分の体として操れるのは大したもんだが、こんなんじゃデメリットの方が多いってもんだ』
言うと、イシュターレイを縛る触手に力を込める。
『ひ、んあぁぁぁぁっ!』
全身をきつく締め上げられ、悶えることも出来ないイシュターレイはただ声をあげるしかない。
そして左腕を拘束する触手だけに、他よりもさらに大きな力が入っていた。
ミシミシと音をたてて、左腕の装甲にヒビが広がっていく。
『あ、ひ、いいいぃぃぃっ!』
腕が引き裂かれる様な堪え難い激痛に、イシュターレイの悲鳴がさらに高くなっていく。
その様を眺めながら、アスパールの中の男はふと考えた。
(ん…? 機体が自分の体ってことは、もしかすると…)
急にイシュターレイの左腕を締めていた触手の力が弱くなった。 と言っても、動けなくしているのには変わりは無い。
『あ、あひ、ひいぃ… 痛いぃ…』
イシュターレイの口から情けない声が漏れている。
涙を流したり顔色が変わったりする機能は無いが、生身の肉体でいる時にこの苦痛を受けたなら、当然そうなっただろう。
『そうか、痛いか? ならこっちはどうだ』
空いている触手がうねうねと動き出した。
『あ、な、なにを…!? あっ、んあぁっ!』
一本がイシュターレイの胸に絡み付き、明らかに女性の乳房を模している二つの膨らみを締め上げた。
さらに別の触手が先端を上下に開け、やや尖った風になっているその膨らみの頂上を、口でくわえるようにする。
『あ、んん…っ! な、何を、するの…!?』
その声に構わずもう一本の触手が動き出し、ゆっくりとイシュターレイの股間部に迫った。
『! や、やめ…!』
急に湧いた嫌悪感が股を閉じさせようとするが、両足も拘束されているのでそれも出来ない。 すぐに触手は股間部に到達した。
いくらイシュターレイが女性を模した姿にできていても、その部分までが再現されている筈は無く、そこには微かに丸みを帯びた装甲があるだけだった。
それなのに。
『あ、ん、くぅぅ! あ、い、いやぁ、やめてぇ!』
イシュターレイは激しく身をよじり、嬌声をあげた。
『ハハハ、やっぱりそうか、なあ』
アスパールを駆る男は愉快そうに笑う。
『機械の体になっても、感じるところはあるんだな』
(あぁ、そんな、どうして…)
イシュターレイの脳裏で絶望的な疑問符が浮かんだ。
智子は私生活の中で、頻度は少ないが、自分を慰めることがある。
厳しい戦いに疲れた時に、密かに想いを寄せている相手を思い浮かべながらそれをするのだ。
その時と同じ感覚が、イシュターレイというロボットと融合している今でも感じられてしまう。
『あ、いや、こんなのいやぁ! は、放して、おねが、おねがいぃ!』
あの異星人を名乗る存在から力を与えられ、初めて融合した時には、機械の体にかなり戸惑った。
柔らかく伸縮する肉と皮がある人間の体とは違い、複雑な機械を固い装甲で包んだロボットの機体。
さらに搭載兵器を使う度に装置が作動し、内に溜まったエネルギーを体の表面から放出する。
その感覚に慣れるまでかなりの時間を要し、それだけに、機械の体でいる時に肉の体と同じ性感を覚えるなどとは考えもしなかった。
『俺もロボットが感じてるのを見るのは初めてでな。 面白いからすぐに止める気にはなれない』
アスパールから非情な答えが返って来る。
『や、やぁ…! ん…っ…ふぅ、はぁ! そ、そんなとこ…っ 触らないでぇ!』
触手がレーザー砲を露出させる「口」を開閉させながら、イシュターレイの胸や股間を撫で回す。
その行為によって感じているものは智子が自分でしているのと同じものだが、憎むべき敵によってそれを与えられているという事実が何よりも嫌だった。
さらに固い装甲の上を触られるのは彼女にとって新しい感覚でもあり、それだけに抗えず、翻弄されてしまう。
イシュターレイは泣くような顔をしている。 散々に嬲られる内に、その声がいよいよ危険な領域に入っていった。
『あっ…! あぁ…んん! いや…いや!!』
触手の戒めは僅かながら緩くなっており、その分だけイシュターレイの機体が自らがくがくと痙攣するのがよく分かる。
『やっ… は…っあうぅんっ! も、もう、イ…っ!!』
最後にそれだけの声を発すると、イシュターレイは上体を大きく反らして絶叫した。
(あ、あ…あぁ… そんな…)
ぐったりと力が抜けたイシュターレイの機体。 その目から涙は流れないが、彼女は間違い無く泣いていた。
アスパールを駆る男の笑い声が、周囲に響き渡る。
ヘリから見下ろすテレビ局のカメラは、その一部始終を記録していた。
(!?)
突然、イシュターレイは奇妙な感覚に襲われた。
今までの性感とは全く別のものだ。 自分が軽くなる様な、身体から魂だけが解き放たれる様な…。
それが融合が解ける時の感覚だと思い出した時、既に智子=レイクリムゾンの肉体は再構成されて、地面に横たわっていた。
イシュターレイの機体はというと、まるで大気に溶け込む様に消えていく。
『あ…!? な、なんだ!?』
今まで拘束していた物体を急に失い、アスパールの触手が戸惑ったように動き回った。
その視界に入らぬ様に、レイクリムゾンはアスパールの足元からフラフラと逃げ出す。
身体が満足に動かない。 再構成された肉体には何の損傷も無く、左腕も全くの無傷だというのに。
股間が濡れているのも感じた。 融合が解けた直後にそこから女の液が溢れ出てきている。
その「融合が解ける感覚」すら、犯されて達した後の彼女にはさらなる追い打ちだったのだ。
(こんな、こんな…!)
情けなくて、今度こそレイクリムゾン=智子は本当に涙を流していた。
敵に捕まって、犯されて。 融合が解けた時にさえ感じてしまって。
戦いの道を選んでから、これだけの屈辱を味わったのは初めてだった。
だがその直後、目の前の地面に触手の先端が突き刺さり、彼女はさらに深い絶望に叩き込まれた。
『逃がしはしないぜ、お嬢ちゃん』
恐る恐る振り向くと、向き直ったアスパールのカメラアイが一直線にレイクリムゾンを捉えていた。
さらに何処に残っていたのか、蟻人間の生物兵器がわらわらと現れる。
『まあロボットレイプも面白かったが、やっぱり俺は生身がいいな』
「わああーーーーっ!!」
レイクリムゾンは絶叫し、レーザーブレードを抜き放った。
蟻型生物たちに突撃し、手当たり次第に斬り捨てる。
しかし身体に力が入らぬまま反撃を受け、圧し掛かって来た蟻型生物に完全に取り押さえられてしまった。
「ようし、そのままにしてろ」
アスパールの胸部にあるハッチが開き、そこから異星人の男が姿を現した。
レイクリムゾンはただ震えるしかなかった。
だがその時、突如として幼い声が響いた。
「お姉ちゃんに触るなーっ!」
凄まじい風切り音と共に閃光が走り、レイクリムゾンを取り押さえていた蟻型生物が弾け飛ぶ。
「なにっ!?」
眼前で繰り広げられる光景に、男が驚愕の声をあげた。
小さな身体を純白の装甲で包んだ乱入者は、光のリボンを鞭のように振るい、蟻型生物を薙ぎ倒していく。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
「あ、あ…」
白き戦士は力無く座り込むレイクリムゾンに駆け寄る。
「レイサラテリー! ちっ、今になって現れるとは!」
男は再びコクピットのハッチを閉め、アスパールを動かした。
『勿体無いが、二人まとめて叩き潰してやる』
大量の触手が蛇の口を開け、二人の少女に迫り来る。
しかしレイサラテリーはクリムゾンの身体を抱え、触手の攻撃を素早く回避しながら建物の影に隠れた。
『逃がすか!』
レーザーで建物ごと吹き飛ばそうと、触手の先端に光が灯る。 しかし──
『それはこちらの台詞ですよ』
やけに落ち付いたその声にぎょっとして、男はアスパールを振り向かせた。
そこに立っているのは、ビームライフルを構えた青色の女性型ロボット。
『ヴィーザルレイ…!』
『イシュターレイに酷いことをしてくれましたね。 …絶対に、許しません』
全ては短時間で終わった。
三人の中で最強の戦闘力を誇るヴィーザルレイにかかっては、アスパールも敵ではなかった。
ビームライフルで全ての触手を破壊され、胸部から放たれる「アルカナ・フラッシュ」の閃光を浴びてアスパールは塵と化した。
「大丈夫ですか、智子さん」
融合を解いたレイセルリアンは、心配そうにクリムゾンに話しかける。
「うん、大丈夫…」
クリムゾンは気丈に微笑んだ。
仲間に心配をかけまいとしたが、本人の意思に反して、端から見れば無理をしているのは明らかだった。
「ごめんなさい、地下に建造されていたプラントを破壊するのに手間取って…」
「ごめんねお姉ちゃん、捕まってた人もね、助けなきゃいけなかったから」
「良かった、そっちは上手くいったのね。 私は大丈夫、そんなに大したことはされてないから」
大したことは無いのだ、と自分に言い聞かせる。
触手で好きに弄ばれたのはイシュターレイの機体であって、天木智子が生まれ持った肉体とは別なのだから。
(そう、大丈夫よ。 すぐに忘れられる…)
その日の夕方、ニュース番組ではイシュターレイとアスパールが戦っている映像が放送された。
特にイシュターレイが触手に絡め取られている場面は、何か意図を探りたくなる程にしつこく繰り返されている。
テレビ画面を見ながら、智子は自分のそこが熱くなるのを感じていた。