早朝の電車の中。例に漏れず、乗車率100%超えの車内だ。
その中で少女は必死に祈っていた。
『神様仏様おじいちゃんおばあちゃんお父さんお母さん、どーかどーか今日だけは絶対の絶対に痴漢に合いませんよーにっ!』
少女は、そう必死に祈りながら、短いスカートをギュッと抑えた。布越しに自分の何も身につけていない尻を感じながら…。
*
その日は少し寝坊して。そんな日に限って寝癖が酷くて。母は絶対に朝食抜きを許してくれなくて。車通勤の父は出張中で。つまり遅刻ギリギリのカードが揃ってしまったのだ。
「うわーっ!ヤバすぎる乗り遅れるー!」
今日の一時限目の小テストが受けられなかったら放課後が潰れる=バイトに行けない=お小遣いピンチ=夏休みの旅行が絶望!という方程式が頭の中を駆け巡る。
自宅から駅まで歩いて10分走って7分。公園の中を通って近道したら5分。雨の日の翌日は通らない道だが仕方ない。少女は公園に駆け込んだ。
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公園の中は舗装してないので所々に昨夜の雨でできた水たまりがあり(これが普段使わない理由だ)走りにくくて仕方ない。
「う〜後5分…なんとか間に合うかなぁ…うわっ!?」
そんな中、ちょっと携帯で時間を確認した途端、足を滑らせ尻もちをついた。
「ったぁい…つか、嘘ぉ…」
尻もちをついた先には、ちょうど少女の尻の大きさくらいの水たまり。
「冷た…つかマジで?」
幸い…というか、短いスカートはつまずいてめくれ上がったお陰で汚れなかったが、下着は完全に泥水まみれだ。
「う〜どうしようどうしようどうしよう」
悩んでる時間はない。辺りを見回しても人影はない。時間は、ない!
「…う〜っ!」
少女は素早く下着を脱いだ。
*
濡れた下着は絞ってポーチに入れた。学校に行けば体操着がある。つまり、行くまでの数十分を乗り切れば、なんとかなるのだ。
『どーかどーかお願いします』
彼女の祈りが天に届いたかどうかは…神のみぞ、知る。
終われ