竹下の右手が、露わになった夏海の右の乳房を鷲掴みにした。  
 大人の手でも包み込めないほどの乳房が形をゆがめ、竹下はそれをぎらぎらと  
した眼で凝視していた。  
 とても今年十三歳の少女とは思えないサイズだった。  
──何カップあるんだろう? DかEか……Fカップはあるんじゃないか?  
 夏海の姿を見るたびに意識していた乳房が、今竹下の目の前にあった。  
 しかも、夏の夜、花火大会の人込みの中で──  
──あぁ……すごいね……夏海ちゃんも興奮してるんだろう?  
 指の隙間から飛び出した突起を挟み込み、乳房全体を揉みながら指を震わせる。  
「んっ、くぅ……」  
 夏海の喉から小さな嗚咽が漏れた。  
──感じてるんだね……でも、恥ずかしくて声が出せないんだ……可愛いぁ。  
 それは痛みによるものだったが、竹下はそうは受け取らない。  
 自らの手が与える刺激に快感を覚えているのだと解釈している。  
──こんな人込みでおっぱい丸出しにして、エッチだね……。  
「くっ、ぅ……」  
 竹下は淡い色の突起を抓み、乳房全体を引っ張り上げる。  
 夏海の吐息は、花火の轟音と周囲のどよめきに掻き消されてしまい、竹下に  
しか届かない。  
──しかも、感じてるじゃないか……露出が好きなんだね……。  
 竹下は指を広げ、夏海の双丘を寄せて揉み続ける。  
 夏海の身体の震えが、竹下の興奮を激しく掻き立てた。  
 
「夏海ちゃん……」  
「ひっ……!?」  
 ついに竹下は、彼女の耳元で囁いた。  
 夏海は予想もしない呼びかけに、身体を縮ませた。  
──やだっ、誰……? なんで、名前……。  
「どんな感じ? エッチで興奮するでしょう?」  
 人込みの喧騒の中では、かろうじて聞き取れる程度の声だったが、夏海には  
はっきりと知覚できた。  
──誰っ? 知ってる人、なの……?  
 夏海はわずかに引っ掛かりを覚えた。  
 どこかで聞いたことがあるような気がするが、思い出せない──  
──やだ、誰なの……?  
 首をめぐらせて顔を確認しようかとも思うが、あられもない姿を曝している  
羞恥心に、眼を開けることすら叶わない。  
 それに、もし知人であるのなら──こんな姿を見られてしまっているのだ、  
とてもまともに眼を合わせることなどできはしない。  
「おっぱいすごいね……こんなにおっきい」  
──見られてる……やだぁ……。  
 確かに聞き覚えのある声だった。  
 だが、動転し、羞恥に侵された頭では、声の主を特定することができない。  
「恥ずかしいのに、エッチな気分なんでしょう?」  
「──っ!」  
 夏海は、思わず声を上げそうになってしまった。  
──エッチな、気分? そんなことないっ!  
 男の言葉が理解できなかった。  
 恥ずかしくて死んでしまいそうなほどなのに、エッチな気分だなんて、ある  
わけがない──  
「おっぱいも、あそこも曝されて……助けも呼ばないんだもんね」  
──だって、見られちゃう……もっと、いっぱいの人に見られちゃう……。  
 そんなことは絶対に避けなければならない。  
 周りの人たちに見られてしまわないように、耐えているだけなのだ。  
「夏海ちゃんは、こういうのが……露出が好きなんだよね?」  
──露出……? やだっ、違うっ!  
 いつか友達に見せられたDVDを思い出す──  
 成人男性向けのアダルトDVDだった。  
 女優が、あられもない姿で街を歩いていた。  
 ブラジャーも、ショーツも身に着けず、肌が透けるほどに薄いブラウスと、  
股下ぎりぎりのミニスカートで──  
 ブラウスのボタンは胸の下まで外され、大きな膨らみが今にも零れてしまい  
そうだった。  
 敏感なところを刺激する器具をあてがわれ、公衆の面前で女優は淫らに顔を  
ゆがませて昂ぶりながら、快感を堪えていた。  
 それは夏海の想像を超える世界だった。  
 とても自分とは縁のない世界だと思っていた。  
 しかし、それは今──いや、それ以上の世界に夏海は突き落とされていた。  
──あんなの、好きなわけ……!  
 耳元で囁かれる男の言葉を、夏海は拒絶する。  
 そんなことないのだと、大声で言い返してやりたくもなる。  
 だが、そんなことをすれば、周りの人に知られてしまう。  
 今はまだ、自分があられもない姿をしていることを、この男しか知らない。  
 これ以上、多くの人に見られるわけにはいかない──  
 
──やっぱり感じてるね、夏海ちゃん……。  
 竹下は夏海に囁きかけながら、左手をゆっくりと移動させていた。  
 下腹部を撫で、ほっそりした太腿の付け根へと──  
 夏海の身体が火照っているのが手のひらから伝わってくる。  
 汗ばんだ乳房が熱くなっている。  
 夏海の吐息も、苦悶の呻きから、じょじょに変わってきている。  
 竹下の妄想は、必ずしも外れてはいなかった──  
 夏海は羞恥に震えながら、確かに身体を熱くさせていたのだ。  
──あそこだって……濡れてるんだね?  
 竹下の指が無毛の丘を進み、未発達の秘処へと辿り着いた。  
 秘裂の先端から、ぷくりとした小さな膨らみが顔を出している。  
 竹下は指先でそこを探り当てると、指で軽く弾いた。  
 
 
「ひっ──!」  
 夏海は突然襲ってきた強烈な刺激に、びくんと身体を奮わせた。  
──やっ、えっ? 今の……えっ!?  
「すごいね、夏海ちゃん……」  
 男が耳元で囁く。  
「クリ……気持ちいいんだね?」  
──クリ……って、やだ、あそこ……!  
 夏海はようやく、男の手が自分のもっとも敏感な場所に触れていることに  
気がついた。  
「や……」  
 あわてて脚を閉じるが、遅すぎた。  
 竹下の指は腿の間に入り込み、幼いクレバスをなぞってゆく。  
「やっぱりだ……夏海ちゃん、濡れてるよ」  
「──っ!!」  
 男に指摘され、夏海も気づいてしまった。  
 乳房をもてあそばれ、快感とは程遠い刺激を与えられていたのに、夏海の  
そこからは、とろりとした蜜があふれ出していたのだ。  
「夏海ちゃんのおまんこ、エッチなおつゆがあふれてる」  
「うぅ……」  
 夏海はぎゅっと太腿を閉じるが、すでに入り込んでいる指をどうすることも  
できなかった。  
「おっぱい弄られてて……露出して、感じちゃってるんだ……エッチな女の子  
なんだ、夏海ちゃん」  
──エッチ……違う、わたし……そんなんじゃ……。  
 男の粘り気のある声が、夏海の心を侵してゆく。  
 性的に興奮すると、そこから蜜があふれ出す──それぐらいは知っていたし、  
意識したことだってある。  
 少しだけなら、入浴のときや、ベッドの中で、弄ってみたこともあった。  
 えもいわれぬ快感に襲われ、身体も心も包まれてしまいそうで、漠然とした  
恐怖と後ろめたさを覚え、それ以上の刺激を止めたことが何度かあった。  
──わたし、エッチじゃないもん! 違うもん!  
 心の中で必死に否定する。  
 だが、男の責めに、身体は確かに反応してしまっていたのだ。  
「エッチな夏海ちゃん……もっとエッチになろうよ」  
──違うの! わたし、エッチじゃない……。  
 夏海の心の叫びは男に届くはずもなかった。  
「夏海ちゃんは、もっといやらしいことだってできるはずだよ……」  
 男はそうつぶやきながら、太腿に挟み込まれていた左手をそっと抜いた。  
 そのまま持ち上げられた左腕は、夏海の左腕を押さえ込んだまま、襟元へと  
伸ばされた。  
 かろうじて肘を曲げ、男の手を払い除けようとしたが、間に合わなかった。  
──えっ? やだっ……あぁっ!  
 男の手が左の襟を掴むと、夏海の想像通り──  
 ぐいと浴衣がはだけられ、左の乳房までが曝け出されてしまった。  
 
──あぁ……すごい、なんてすごいんだ……!  
 大きすぎる乳房が、小刻みに揺れていた。  
 夜空に咲いた花火が、若くてみずみずしい少女の肌を照らす。  
 さすがに誰か気づく者がいるかもしれないと、危険だからもうやめておけと、  
わずかに残された竹下の理性が訴えていた。  
 だが、そんな常識的な思考は、燃え滾る欲望の前ではなんの意味も持たな  
かった。  
「夏海ちゃん……おっぱい、両方とも出しちゃったね」  
「うぅ……」  
「どうだい、エッチだろう? 周りにこんなに人がいっぱいいるのに、夏海  
ちゃんはおっぱい出しちゃってるんだよ……」  
 囁きながら、竹下は露わになった夏海の乳房に手を重ねる。  
 汗のにじんだ乳房に指がめり込んでゆく。  
「大きいし……張りもあるし……綺麗だよ、夏海ちゃん……」  
 
 
──やだぁ……わたし……こんな……。  
 夏海にできるのは、携帯電話を握ったまま耐えることだけだった。  
 誰もが上を向き、隣にいる少女が乳房を露出しているなどとは思いもしない。  
 だが、ふとしたはずみで視線をおろせば──  
──見られちゃう……やだ、見ないで……。  
 アダルトDVDのあの女優は──  
 雑踏の中、彼女は快楽に耐えきれず、立ち止まってしまった。羞恥と快感に  
歪んだ顔でカメラを恨めしそうに睨んでいた。  
 やがてよろよろとしゃがみ込み、身体をびくびくと震わせた。  
 男優は笑いながら、おもむろに彼女のブラウスをはだけ──  
 女優の豊満な乳房が、公衆の面前で曝け出された。  
 彼女は慌てて胸を隠そうとしたが、男優がそれを阻んだ。  
 周囲の通行人たちは、何事かと立ち止まったり、眼を丸くして指差したり、  
素知らぬ振りで歩み去ったりと、反応はさまざまだった──  
──やだよぉ……見られちゃうの、やだぁ……。  
 幸いというべきか、それとも不幸だろうか──周囲の人はみな夏海よりも  
頭ひとつ以上は背の高い男性ばかりだった。  
 もっと背の低い者がいたのであれば、夏海に密着し身体を弄ぶ竹下に気づく  
者もあったかもしれない。  
 胸を曝される前に気づき、男を止めてくれる者もいたかもしれない。  
──お願い、気づかないで……。  
 それ以前に、友人とはぐれなければ──たとえはぐれたとしても、冗談を  
真に受けずちゃんと下着を着けていれば、こうはならなかったかもしれない。  
「夏海ちゃん……気持ちいいだろう? エッチだろう?」  
──そんなことない……わたし、エッチじゃないもん……。  
 必死に否定するが、しかし、夏海は自分でも気づきはじめていた。  
 じっとりと汗ばんだ肌が、高鳴る鼓動とともに火照ってゆく──  
 男が卑猥な言葉を囁くたびに、身体が熱くなっていた。  
 痛みでしかなかった乳房への刺激が、次第に別のものへと変貌していた。  
 DVDの映像が浮かぶ──  
 男優は彼女を立ち上がらせると、そばに待機していた車に乗り込んだ。  
 スモークガラスで覆われたワンボックス車の後部座席で、女優のスカートが  
捲られ、彼女の脚が大きく広げられた。  
 ぐっしょりと塗れた器具がアップになり、男優が彼女を言葉でなじった。  
 ぼかしがかかっていて、彼女の秘処を見ることはもちろんできなかったが、  
どうなっているかは想像に容易かった。  
 夏海のそこも、女優と同様に──下着に染みができるほどにぐっしょりと  
濡れていた──  
──違うっ、違う……わたしは、違うもん……。  
 否定すればするほど、意識してしまう。大きな膨らみを揉まれ、小さな突起を  
転がされ、それが気持ちいいと感じてしまっていることを──  
 人込みの中で乳房を曝し、気持ちが昂ぶってしまっていることを──  
──やだやだっ、こんなの違う! 絶対に、違うの……。  
 
 何度目かのスターマインが打ち上げられた。  
 連続したいくつもの花火が、光の雪崩となって、頭上を明るく照らす。  
 爆音と轟音が鳴り響き、耳だけでなく、腹の底にまで震わせる。  
 そのとき──  
 軽快にして、勇壮なメロディが流れだした。  
 花火の轟音と、人込みの喧騒の中、それはあまりにも小さな音だったが、  
たしかにその周囲の者の耳に届けられた。  
 携帯電話の着信──そう誰もが理解するのに一秒もかからない。  
 夏海の手にある携帯電話が鳴ったのだ。  
 彼女はずっと閉じていた眼を、反射的に開いていた。  
──わたし、おっぱい……出してる……。  
 スターマインの光に照らされ、露わになった双丘がはっきりと視界に飛び  
込んできた。  
 人込みの中であるのに、浴衣をはだけ、乳房を曝している自分──  
 解っていることだった。  
 何をされたのか、浴衣がどうなっているのか、解っていたはずだった。  
──おっぱい見えてる……わたしのおっぱい……。  
 だが、視界に映ったそれは、あまりにも現実離れしていた。  
 周りではたくさんの見物客が、閃光の煌く夜空を見上げている。  
 その中で、浴衣をはだけられ、ふたつの膨らみが曝されている──  
 夏海は軽い眩暈を覚え、足元がふらついた。  
 背後の男に乳房を鷲掴みにされ、崩れそうになった身体を支えられる。  
 男がなにか呟くが、花火の轟音に消されて聞き取れなかった。  
 着信メロディはまだ鳴り続けている。  
──止めなきゃ……早くしなくちゃ……!  
 夏海は震える指先でキーを押し、着信音を止めようとするが、思うように指が  
動いてくれない。  
 携帯電話はずっと開かれたままだ。キーをひとつ押すだけでいいのだ。  
「ほら、早く止めないと気づかれちゃうよ?」  
 男が早口で囁く。  
 言われなくても解っていた。  
 男はそんな言葉を口にしながら、双丘を鷲掴みにした指をぐにぐにと蠢かせ、  
夏海を刺激し続ける。  
 アダルトDVDの映像が脳裏にゆらめく──  
 何十人もの人前で、乳房を晒された女優の姿が、自分と重なった。  
 あの女優のように、自分も乳房を見られてしまう──  
──やだ、ダメ……そんなの……!  
 あわてればあわてるほど手が震えて、携帯電話を落としてしまいそうだった。  
 落とさないように手に力を込めるが、ただ握り続けるだけで、たったひとつの  
キーを押すことすらできないでいた。  
 
 ラ・マルセイエーズ──フランス国歌。  
 彼の好きな曲のひとつだった。  
 こんな曲を着信メロディにしているなんて──  
 山本弘輝(やまもと・ひろき)は、どんな人がそのメロディを着信に使って  
いるのか興味を抱き、音のするほうへと眼を向けた。  
「──っ!?」  
 だが、反射的に視線を戻す──  
 そこにあったのは、思いもかけない光景だった。  
──ちょっ……いや、ええぇっ……!?  
 思考が停止し、脳裏に焼きついた残像が意識を覆い尽くす。  
 彼の右隣にいたのは、背の低い少女──  
 黒髪をポニーテールにして赤いリボンで結わえている。淡いピンクの生地に、  
金魚の模様が可愛らしい浴衣を着ていた。  
 そして、その浴衣はあられもなくはだけられ、豊満な──背丈に似合わぬ、  
大きすぎるほどの乳房が露わになっていた。  
──うっわ……マジだよ……。  
 弘輝はおそるおそる再びそちらへと眼をやった。  
 露出狂──という言葉が浮かぶ。  
 大きな乳房には、男の手が重ねられていた。  
 少女の背後にぴたりと張り付き、彼女の右肩に顔を寄せている。  
 男の手は、曝け出された少女の双丘を弄んでいた。  
 柔らかそうな、それでいて張りの感じられる艶やかな乳房に、男の太い指が  
めり込んでいる。  
 男の指が動くたびに少女の膨らみは形がゆがみ、きゅっと尖った淡い紅色の  
突起がぴくぴくと震えているようだった。  
 背丈からするに、少女はまだ十代、それも前半だろう。  
 だが、その膨らみは──とても子供のものとは思えない。  
 高校生か、大学生か──背が低いだけで成人しているのかもしれない──  
──すっげぇ巨乳……。  
 むくむくと欲望が鎌首をもたげてくる。  
 弘輝は、胸の大きな子が好きだった。  
 だが、どうも自分といい関係になる異性は、控えめな胸の子ばかりだった。  
 二十年の人生で、何人かの異性との付き合いがあった彼だが、もっとも胸の  
大きな子で、Cカップ──残念ながら、弘輝の好みはもっと上だった。  
──でかいなぁ……何カップあるんだろう?  
 まじまじと凝視したくなるが、なんとか思いとどまる。  
 彼女を弄ぶ男の顔は、よく見えない。  
 おそらく、二十代半ばぐらいから、三十ぐらいだろうと弘輝は思う。  
──見せ付けてくれるなぁ……。  
 彼は大声を上げてやろうかと思う。  
 変態、露出狂、羞恥プレイ──彼は当然、ふたりは男女の関係にあるのだと  
受け止めていた。  
 人込みを利用して、アブノーマルなプレイに興じているのだろうと──  
──くそ、うらやましいな……。  
 そう思ったのも、弘輝もまた、この手の嗜好を持つ男であったからだ。  
 彼はすらりと背が高く、さっぱりした顔つきで、それなりに女性にもてた。  
 性格も悪くはない。普段は温厚、目立つタイプではないが、細かいところに  
気の利く好青年といえる。  
 だが、性的嗜好はかなりマニアックだった。  
 彼が本性を現すたびに、交際相手は逃げるように去っていった。  
──そんな人だと思わなかった、か……女って勝手だよな。  
 嫌な思い出が浮かんできて、弘輝は顔をしかめる。  
 ふん、と鼻を鳴らし、少女の様子に意識を向ける。  
 彼女の身体はびくびくと震えている。  
 汗ばんだ肌は上気して、彼女の興奮が伝わってくるようだ。  
 男の指が、弾力に満ちた少女の膨らみをぐにゃぐにゃとゆがめている。  
 淡い桜色の乳首を指で弾かれるたび、彼女の身体は跳ねるように応えていた。  
 
「んぅっ、はぁっ……」  
 男は容赦なく乳房を責め続ける。  
 指先が乳首を弾き、転がしている。  
 夏海には、男のすべてが強烈な刺激に感じられていた。  
 耳元の言葉も、淫らな指遣いも、男の体温も、荒い息遣いも──  
 それだけではなかった。  
 胸をはだけ、男に弄ばれている自分──  
 大勢の人々に取り囲まれ、普段から周囲の視線の気になる、大きすぎる乳房を  
曝している。  
 そうさせたのは、見ず知らずの男ではない。夏海には誰か判らないが、男は  
確かに自分を知っていた。  
 自分を見知った男に、恥ずかしい姿にされて、身体を弄ばれている──  
 そんな異常な事態が、彼女に急激な変化をもたらしていた。  
「ほらほら……おっぱい見られちゃう……」  
──見られちゃう……ダメ……!  
 周りには見知らぬ人々が数え切れぬほどいるのだ。  
 恥ずかしい姿を曝している自分を、彼らに見られてはならない。  
──ダメ……ダメなの……。  
 そんなことには絶対になってはならない。  
 ならないはずなのに──  
──ダメ、やだよぉ……気持ちいい……。  
 身体の疼きが止まらなかった。  
 男に刺激され、とめどなく快感が押し寄せてくる。  
 自分で乳房を揉んでみたこともある──乳首を抓んだり弾いたりしたことも  
あった。  
 だが、性に関する事柄は、いけないことだと思っていた。忌避すべきとまでは  
いわないが、秘匿すべきものではあるし、子供の自分にはまだ早いと思っていた。  
 もちろん、自慰の経験があるなどと誰にも伝えたことはない。  
 新しくできた友人の中には、ときどき自慰をしているといっている子もいたが、  
夏海は何も知らぬ振りを通していた。  
 友人たちから、夏海はそういうことに疎いと思われていたので、追求される  
こともなかった。  
──どうしよう、気持ちいい……エッチだよぉ……。  
 男に与えられた数々の刺激が、彼女の貞操観念を蝕んでゆく。  
 性に対する忌避感を解かしてゆく。  
 全身がとろけてしまいそうだった。  
 身体が震えるたびに、携帯電話が滑り落ちそうになる。  
 夏海は、着信音が自動的に停止したのにも気づいていなかった。  
 ほんの数十秒程度だったが、そのメロディは、夏海の理性を崩す前奏曲だった。  
 
──気づかれた……か?  
 夏海の様子に興奮しながらも、竹下は焦っていた。  
 友人からのメールだろうか──彼女の携帯電話が鳴ったのは想定外だった。  
 眼だけで周りを窺うが、誰も自分たちに気を向けている様子はない。  
 竹下も夏海も、弘輝の視線を感じ取ることはできなかった。  
──そろそろ潮時かな……。  
 いくら周囲の人々が花火観覧に夢中になっているとはいえ、この状態のまま  
ではいずれ気づく者も現れるだろう。  
 そうなってしまえば、彼女を辱めることができなくなってしまう。  
 己の欲望を満たすことができなくなってしまう──  
 竹下は夏海を抱きながら腰を突き出し、ジーパンを破って飛び出してしまい  
そうなほどに怒張したモノを、夏海の小さな尻に押し付けた。  
 彼女の尻は、中学生離れした乳房とは対照的で、子供っぽいままだった。  
 ふっくらと丸みを帯びてはいるが、大人のそれとは到底比べ物にならない。  
 だが、それこそが竹下の好むものでもある。  
 乳房を揉みながら、彼は腰を擦りつけた。  
「あぁ……気持ちいいよ、僕も気持ちよくなってるよ……」  
 そう呟いた竹下の声は、興奮と快楽に満ちていた。  
「夏海ちゃんも、もっと気持ちよくなろう……」  
 竹下は右手を乳房から離すと、夏海の下腹部へと伸ばす。  
 夏海は抵抗らしい抵抗もせず、彼の手はあっさりとそこに到達した。  
 
 
 男が何事か囁いているようだが、聞き取れない。  
 携帯電話の着信メロディはすでにやんでいた。  
──他にも、気づいた奴いるんじゃ……?  
 周囲に意識を向けるが、ふたりの痴態に気がついた者はいないようだ。  
 いや──自分と同じく、素知らぬ振りをしているだけかもしれない──  
──いっそ俺も……。  
 手を伸ばせば、少女の剥き出しの乳房に簡単に届くだろう。  
 今まで触れたことのない、自分好みの膨らみをじっくりと味わってみたいと  
思い始めていた。  
 うつむいたままの少女の顔はよく見えない。  
 だが──異様な光景を眺めているうちに、弘輝は引っかかりを覚える。  
──この子、どっかで……。  
 小柄な少女──肌には艶があるし、よく見れば、乳房こそ成長著しいものの、  
全体的なバランスはまだ幼い。  
 やはり十代前半──おそらく中学生だ。  
 艶やかな黒髪がふるふると揺れている。  
 大きすぎるほどの乳房と、華奢な身体つき──  
 見れば見るほど、見覚えがあるように思えてくる。  
──どこだ、どこで見たっけ……?  
 記憶を探る。  
 そう遠くない過去だ。  
 一度か二度──その程度だ。  
 弘輝の意識が時間を遡る──  
 彼女の身体が大きく弾み、背を反らした拍子に顎を上げた少女の顔が、眼に  
飛び込んできた。  
──そうだっ! あの子だ……!  
 
「ひゃぅ──っ!」  
 再び、もっとも敏感なところを指で触れられ、夏海の身体はびくんと跳ねた。  
 全身が反り返り、ポニーテールが、大きな乳房が、弾むように揺れた。  
──気持ちいい……やだぁ……。  
 もはや疑いようのない、強烈な快感が身体中を駆け巡る。  
 夏海は震えて立っているのがやっとだった。  
 右手に握られた携帯電話は沈黙している。  
 先ほどの着信が、はぐれた友人からのメールであることはメロディから判別  
できた。  
 きっと、自分を心配してメールしてくれたのだろう。彼女らを心配させない  
ため、合流するために、返信しなければならない──  
 いつもならそう考える夏海だったが、今はそんな気になれなかった。  
 男がもたらす快楽が、身体中に、心の中にまで広がってきていたのだ。  
──気持ちいいよぉ……すごい、気持ちいい……!  
 男の指が蠢いて未熟な秘処を弄ぶたび、身体が快感に震えてしまう。  
 官能の波が、身体の芯から湧き立って、全身に広がってゆく。  
 突き抜けるような刺激に、幼い肢体がびくびくと脈打つ。  
 男の腕はもう、彼女の腕を押さえつけることをやめていたのに、夏海は気が  
ついていない。  
「さっきより、あふれてきてるね……」  
──そんなっ、やだ……そんなこと……。  
 言われるまでもなく、自覚していた。  
 成長途中の秘処から、淫らな蜜がとろとろとあふれ出している。  
 自分では抑えようのない身体の自然な反応だったが、夏海のかすかな理性が、  
それを受け入れられないでいた。  
──違う……わたし、違うもん……。  
 自分は淫らな少女ではない。恥ずかしい刺激に身体を疼かせる、いやらしい子  
ではない──そう思えば思うほど、淫らな気持ちが高まり身体が疼いてしまう。  
 それが嫌でたまらない──  
「んっ、や……ひぅ……っ!」  
 男の指が蜜をすくい、ぷくりと膨らんだ小さな蕾へ塗りつけるように、指を  
這わせてくる。  
 それがたまらなく、気持ちよかった──  
 刺激されるたびに彼女の身体は震え、無意識に吐息が零れてしまう。  
──恥ずかしいよぉ……わたし、エッチになってるぅ……。  
 左の乳房を揉まれ、乳首を抓まれ転がされ、秘蕾を弾かれて、夏海は快楽に  
飲み込まれていた。  
 じっとりと浮かぶ汗も、まだ三十度近い熱帯夜の所為だけではなかった。  
 男のもたらす快感に昂ぶって、身体が熱を帯びているのだ。  
「んっ、ふぁ……あぁっ!」  
──気持ちいい……やだぁ、気持ちいいよぉ……。  
 ぴたりと密着した男の身体が熱い。  
 気づけば、腰の辺りに硬く突き出たものが押し付けられている。  
──これって……男の人の、アレ……!?  
 性的興奮にある男性の性器は、硬く大きく勃起する──そういう知識だって  
持っていた。  
 いつか見た、大人向けの雑誌や、いやらしいDVD──  
 だが、実際に感じるのは初めてだった。  
──こんなに、硬いんだ……すごい……。  
 それがさらに夏海の本能を刺激した。  
 人込みの中で、大きな乳房を曝け出している。  
 男の指に、とろけそうな刺激を与え続けられている。  
 秘処からは、滴り落ちそうなほどに蜜があふれ出している。  
「んっ、ぁ……んぅ……」  
 艶めかしい喘ぎが漏れる。  
 火薬と汗の匂いに混じり、自分の秘処から漂い出る女の匂いも感じられる。  
──エッチだよぉ……気持ちいいよぉ……。  
 竹下だけでなく、夏海の理性もまた、風前の灯だった。  
 
 そしてもう一人──弘輝も欲望に飲み込まれていた。  
──そうか、あの子か……!  
 名前は──なつきか、なつみ──友人であろう少女たちが、彼女をそう呼んで  
いたのを思い出す。  
 この町にひとつしかない中学校の生徒であることは間違いない。彼女はその  
制服を着ていた。  
 弘輝はこの町で育ち、今は隣街の私立大学に通っている学生だ。  
 夜はこの町唯一のコンビニエンスストアでアルバイトをしていた。  
 弘輝は普段は週に二日の深夜シフトだったが、ときどき代打を頼まれ、夕方や  
昼間に入ることもあった。  
 ふた月ほど前の代打の日──  
 友人たちとともにその少女はやってきた。  
 弘輝は、彼女の中学の制服──白いブラウスの盛り上がりに眼を奪われた。  
 一緒にいた何人かの友人らしき女子中学生たちよりも、頭半分は低い背であり  
ながら、彼女ら全員分を合わせても足りないほどの胸の膨らみが印象的だった。  
 少女の胸は彼の脳裏に焼きつき──夜、彼がその女子中学生をネタに妄想に  
耽ったのはいうまでもない。  
 それから半月ほどしたある日──大学からの帰りだった。  
 バスを降りたとき、たまたまひとりで歩いている彼女を見かけた。  
 弘輝は後ろめたさを覚えながらも、少女のあとをつけた。  
 そして、彼女の家が、自分の家の眼と鼻の先にあることを知った。  
 こじんまりとした一軒家で、半年ほど前には入居者募集の看板が立っていた。  
 真新しい表札には「佐伯」とだけ書かれていて、彼女の家族が、どこかから  
転居してきたのだろうと、弘輝には推測できた。  
 彼女の家ノ前を通るたび、つい意識を向けてしまった。まるでストーカーだと  
自嘲しながらも、再び彼女に会う日を思い描いていた──  
──間違いない……でも、まさか……見かけによらないっていうか……。  
 彼の思い描いていた少女とは、大違いだった。  
 歳相応の、丸みを帯びた可愛らしい顔立ち。華奢で折れそうなほどの四肢。  
 中学生離れした乳房が際立ってはいたが、全体的にはまだまだ子供──胸の  
膨らみさえなければ、小学生で通じる容姿だ。  
 胸が大きいだけで、きっとまだ中身は子供なのだろうと思っていたし、友人  
たちとのコミュニケーションを見ていても、おっとり、ゆったりした雰囲気で、  
どちらかといえば内気な少女だろうと思っていた。  
「んっ、はぅ……」  
 かろうじて聞き取れる程度の小さな喘ぎ声──  
 とても、こんな大胆なことをする少女だとは思っていなかった。  
 いや、それ以前に──自分の歳以上も離れた大人の男と関係しているなどとは、  
小指の先ほども思わなかった。  
──いけるか……?  
 弘輝の手には、携帯電話が握られていた。  
 二つ折りの胴体は開かれ、液晶のバックライトが手元を照らしている。  
 彼は自分の腰の辺りで操作すると、艶めかしく身体を震わせている少女へ、  
その背面を向けてキーを押した。  
 ごく小さなシャッター音が鳴ったが、そんなものは夜空に向けられたいくつ  
ものカメラから発せられている──ただ一人以外、誰も気にとめなかった。  
 
 その音は、妙な位置から聞こえてきた。  
 あちこちから響くシャッター音は、すべて彼女の上を飛び交っている。  
 だが、たった今聞こえたそれは、下から──彼女の脇腹の辺りから聞こえて  
きたのだ。  
 夏海は視界の隅、剥き出しの左の乳房の下に、ぼうっと光るものを捉えた。  
 それは、不自然に傾けられた携帯電話だった。  
──えっ!? うそっ、やだ……。  
 夏海がその意味を理解するのに、二秒と要さなかった。  
 液晶のバックライトで、その辺りがうっすらと明るくなっている。  
 男の指がすばやく動き、携帯電話の背がこちらに向けられた。  
 小さなレンズが、自分に向けられている──  
──写真……撮られちゃった……!?  
 再び、かしゃりと小さなシャッター音──  
 もちろんデジタルカメラにシャッター音など存在しないが、犯罪抑止効果を  
狙ってわざわざ組み込まれている。  
 しかし、この人込みではそんな些細な機能はまったく意味を成さなかった。  
──撮られちゃった……写真、撮られた……!  
 剥き出しの夏海の乳房──  
 男の手にした携帯端末のカメラ機能がどれほどのものかは判らない。  
 本来の写真撮影専用のデジタルカメラと比べたら、解像度も感度もはるかに  
低いだろう。  
 だが、写真を撮られたという事実は夏海の羞恥を激しく煽り、もうほとんど  
残っていない理性を崩壊させるトドメの一撃となった。  
──見られちゃう……いろんな人に……。  
 インターネット隆盛のこのご時世──  
 少女の淫らな姿を写した画像が、ネットに流出したという事件も聞く。  
 花火会場で乳房を剥き出しにした自分の写真が、そんなことになったら──  
 ネットを介して無数の人々に、恥ずかしい写真がばら撒かれてしまう。  
 クラスメイトにも、友人たちにも──大好きな父親にも知られてしまうかも  
しれない──  
──エッチな子だって……みんなに知られちゃう……。  
 周りにいる人々だけでは済まない。何千、何万という人々に知られてしまう。  
 いやらしい中学生一年生、佐伯夏海の名は、世界中に広がることになる──  
「ふぁっ! あっ……んぁ!」  
 背後の男は、容赦なく夏海を責め立てる。  
 羞恥が快楽に取って代わり、官能の疼きが艶めかしい喘ぎとなってあふれ出す。  
 身体中が淫らな気持ちに侵されてゆく──  
 
 弘輝は興奮しながら撮影された画像を確認する。  
──やっぱ暗いな……。  
 あてずっぽうで狙ったわりには、アングルは悪くなかった。  
 彼の腰の位置──少女の左脇腹の辺りから、彼女の乳房と、それを弄ぶ男の  
左腕、うつむいた彼女の顔が写しだされていた。  
 角度を変えて写したものも、彼女の乳房をくっきりと浮かび上がっていた。  
 しかし、全体的に光が不足している。  
 少女の乳房だけが、白くはっきり写っていた。  
──ライトつけたら、まずいよなぁ……。  
 携帯電話のLEDランプ程度ではたいした明るさは得られないが、ないよりは  
ましだと思う。  
 だが、そんなことをすれば、彼女の姿が照らし出されてしまう。  
──それも、いいか……?  
 人込みの中で乳房を剥き出しにしているのは、少女の意思なのか、それとも  
背後の男が強引にさせていることなのか、それは弘輝には判らない。  
 それでも、少女は明らかに興奮しているし、快楽に身を震わせている。  
 弱い光とはいえ、下から照らし出してやれば、きっと彼女はもっと昂ぶるに  
違いない。  
 このまま、絶頂にまで達してしまうかもしれない──  
 弘輝の指が、モバイルカメラの設定を変更する。  
 LEDランプ──ON。  
 白い光が発せられ、少女の身体を照らし出した。  
 
 
──えっ!? やだっ……!  
 うつむいていた夏海が、それに気づかないはずがなかった。  
──ダメ! ダメだよぉ……。  
 夜空に煌めく花火の光も、周囲の人が壁となり、彼女の下半身を照らしては  
いなかった。  
 だが、隣の男の携帯電話から放たれた光は、夏海を絶望の淵に突き落とした。  
 弱い光ではあっても、暗がりの中では強い存在感を示している。  
──もうダメ……わたし、見られちゃう……。  
 背後の男だけでなく、隣の男にまで、恥ずかしいところを見られている。  
 それ以外の人々に知られるのも時間の問題だろう──  
 花火会場の真ん中で大きな乳房を曝け出す変態女子中学生・佐伯夏海の名は、  
たくさんの人に知られることになるのだろう。  
──そんなの……そんな……。  
 激しい羞恥が暴風となって、夏海の心へ叩きつけてられる。  
 だが、それ以上に激しい官能の高波が、つぎつぎと押し寄せてくる──  
 
 竹下の視界もまた、その光を捉えていた。  
 LEDランプに照らされて、夏海の身体がはっきりと浮かび上がる。  
 光が灯った瞬間、夏海は大きく震えた。当然、彼女も当然気づいたはずだ。  
 その光で、夏海が官能を湧き立たせたのは明らかだ。  
 人込みの中、両の乳房を剥き出しにして喘ぎをもらして震える少女──  
 古臭い考え方を持つ人物ならば、彼らを咎めもしたかもしれない。  
 だが、夏海の隣にいた男は、そうではなかった。  
 いくつぐらいの年齢だろうか──二十歳前後だろうか。顔はよく見えないが、  
背が高い。黒いTシャツにジーパンというラフな格好だ。  
 右手には、白い光を放つ携帯電話──  
 シャッター音が何度も鳴っている。  
 その青年は、ちっぽけな正義感よりも、己の欲望を優先させたのだ。  
──お仲間かもしれないなぁ……。  
 隣の男にも、自分と同じ趣味があるのかもしれない。  
 少女に恥ずかしい思いをさせて昂ぶる性的嗜好が──  
──こんな可愛い子を独り占めなんて、やっぱりよくないかな?  
 独占欲がないわけではない。夏海を自分ひとりのものにしたいと思わないわけ  
ではなかった。  
 だが、同じ趣味を持つもの同士で、この少女をとことん責め抜いて、淫らな  
人形に変えてしまうのもいいかもしれない──そんなことも考える。  
 隣の男がどんな人物かは判らないが、少なくとも、自分たちを咎めるような  
まっとうな人間でないことは確かだった。  
「夏海ちゃん……写真、撮られてるね」  
「ひっ……うぅ」  
 夏海は、耐えることなく続く竹下の責めに、心まで飲み込まれている。  
 竹下は彼女への責めに集中するあまり、抵抗を封じることに意識が向かなく  
なっていたというのに、夏海はもう一切の抗いを示していないのだ。  
 夏海の未成熟な女の部分──小さな肉蕾に、彼女自身のぬめりを塗りたくり、  
指先で刺激し続ける。  
 秘裂に指を沈めて、少女の柔肉を掻く。すくい取っても、何度すくっても、  
彼女は淫らな蜜液をあふれさせ、その周りだけでなく、太腿の内側にまで滴り  
出ていた。  
「夏海ちゃんのおまんこ、ぐちょぐちょだ……いやらしいね」  
「んっ、ふぁ……」  
 竹下の悦楽も、そろそろ頂が迫っていた。  
「僕もね、すごく気持ちいいんだ……」  
 竹下は左手を夏海の乳房から離し、腰を引いた。  
 さっと腕を下ろすと、浴衣の裾を抓んで捲り上げる。  
 夏海の太腿が露わになってゆく。  
 白い光に照らされて、ほんのりと朱に染まった肌が浮かび上がる。  
 その間も、右手は夏海の穢れない秘処を嬲り続けている。  
「やっ、ぁ……」  
 脚の付け根まで露になる。  
 さらに捲られ──無毛の丘が再び剥き出しにされてしまった。  
 裾を持ち上げながら、同時に夏海の手を探る。  
「ちゃんと掴んでるんだよ……いいね?」  
 夏海の小さな手を捉えると、握った裾を押し付けた。  
「夏海ちゃんはエッチだから……できるよね?」  
 彼女は掴む──  
 たとえ拒んでも──彼女は掴まざるをえないのだ。  
──夏海ちゃんに、選択肢はないんだ……。  
 
 夏海の下半身は、再び曝け出されてしまった。  
 次々に押し寄せる激しい快感に、立っているのがやっとで、抵抗することも  
できなかった。  
 左隣の男は、ランプを点灯させたまま、続けざまにシャッターを切っている。  
 剥き出しの太腿も、腰も、尻も──無毛の恥丘も──  
 すべてを撮影されている。  
 夏海の恥ずかしいところが、何枚もの電子データとなって、メモリーに保存  
されてゆく。  
 ふたりは知り合いなのだろうか──  
 背後の男が夏海の肌を露出させ、横の男が写真を撮る──そういう手はずに  
なっていたのだろうか。  
 自分は、まんまと嵌められてしまったのだろうか。  
 与えられた背後の男の言葉──  
 自分に、捲り上げた浴衣の裾を握れという。  
 それは、自分の意思で恥ずかしいところを露出しろということだ。  
──そんな……やだぁ……!  
 かすかに残る夏海の理性が、それを拒絶する。  
 自分が肌を曝け出しているのは、自分の意思によるものではない。  
 男に浴衣をはだけられ、羞恥と恐怖と緊張で抗うこともできず、やむをえず  
曝してしまっているだけなのだ。決して自分の意志ではないのだ。  
 もし裾を掴んでしまっては、自らそれを行なっていることになる。  
 自分のいちばん大切なところを、自ら曝し、写真に撮らせてしまうことになる  
のだ──  
──そんなこと、できない……。  
 男は浴衣の裾を夏海の手に押し付けてくる。  
 彼女の震えた手は、それを握ることができない。  
「ほら、ちゃんと持ちなさい……」  
 男が囁く。  
 夏海は小さく首を横に振った。  
 涙がぽろぽろと零れ落ちた。  
 男は容赦なく、次の言葉を紡ぎ出した。  
「持たないと、声出しちゃうよ?」  
「──っ!?」  
 男の言葉が、夏海を絶望に突き落とした。  
「大きな声出したらどうなる? 周りの人たちに、見られちゃうね……」  
──やだ……見られちゃう……そんなのやだっ!  
 夏海には、拒絶するという選択肢は与えられていなかった。  
──それだけは……絶対にダメ……!  
 夏海は震える指先で、裾を掴んだ。  
 自分の意思で、下半身を露出させる道を選んだ。  
 そうせざるをえなかった──  
 
 

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