建物から出ると、陽はだいぶ傾いて、風が少し出ていた。  
 気温も多少下がってきたようだが、冷房の温度に慣れた身体には、まだまだ  
蒸し暑く感じられる。  
 夏海はあのあと、セクシーな下着が陳列された一角にも連れて行かれたが、  
恥ずかしすぎて顔を上げていられなかった。  
 ずっと弘輝のTシャツを握ったままだった。  
 自分にひどいことをする男なのに、彼に縋っていなければ、立っていること  
すら叶わない。  
 彼がいなければ、自分はこんな恥ずかしい想いをすることはなかった。  
 けれど今は、彼がそばにいることで、わずかに羞恥が安らぐのだ。  
 彼から離れられない。  
 インナーショップでは、飾り気の少ない白いブラと、淡いピンクの地に白い  
レースが飾られた、大人っぽいブラを買った。  
「あ、そうだ。ちょっとこれお願い」  
 そう言って、弘輝は手にしていた洋服と下着の入った袋を夏海に手渡す。  
 夏海は両手で受け取り、彼を見上げる。  
「煙草吸ってくるから、ここで待っててくれる?」  
「えっ……」  
「灰皿、あそこにあるんだよ」  
 弘輝が指差したのは、車を止めてある場所から遠ざかるほうだった。  
 といっても、十五メートルほどだ。  
「そこ、座って待ってて」  
「あっ、あぅっ……」  
 そばのベンチを指差すと、夏海が止める間もなく、彼は早足で去っていった。  
──座れって……無理だよぉ……。  
 下着に包まれていない大切なところは、ぐっしょりと潤んでいるのだ。  
 心もとない姿のまま、取り残されてしまった。  
 彼の背中が遠ざかるにつれて、不安が増してゆく。  
 彼を追いかけるにしても、ひとりでは歩けないほどにふらついている。  
 周りの人々を気にしてしまう。  
 いきなり胸を鷲掴みにされたらどうしよう。スカートを捲られたら──  
 そんな恥ずかしい想像をしてしまう。  
 ここが自分の家なら、自室なら、ベッドの上なら──  
 間違いなく、熱く潤んだ秘処へと指を伸ばしていただろう。乳房に手を重ね、  
大きさを確かめるように揉みながら、指先で突起を責める。股を広げ、潤みを  
指に絡めて、快楽の雌蕊を刺激する──  
──やだ……ダメ、エッチなこと考えちゃ……。  
 自らの妄想に、さらに昂ぶってしまう。  
 彼は灰皿の前で煙草を吸っている。もう少し待てば戻ってくる。  
──弘輝さんの意地悪……早く戻ってきてよぉ……。  
 彼はきっと、自分がいやらしいことを考えているのも解っているのだろう。  
 これも彼の調教なのかもしれない──自分に恥ずかしい想いをさせ、淫らに  
昂ぶらせて、もっと恥ずかしい想いをさせられるのに違いない。  
 そんな手に乗ってはいけない──  
 だが、そう思う一方で、彼に身を任せてしまいたいという気持ちも強い。  
 ついさっき、店内で秘処を撫でられた所為もある。  
 抑えきれないほどの激しい昂ぶりが、夏海の身も心も震わせていた。  
 スカートの中は恥ずかしい露の匂いが充満しているだろう。  
 ひくひくと震えるたびに、そこから熱い蜜があふれ出している。  
 このままでは、地面に滴り落ちてしまうのではないか──  
──弘輝さん……お願いだから、早く……。  
 脚がふらついて、倒れ込んでしまいそうになる。  
 眼が潤んでいる。彼の顔がよく見えない。  
 彼に戻ってきて欲しい。  
 彼と一緒にいたい──  
 今、夏海の羞恥を和らげてくれる者は、弘輝しかいない。  
 彼が戻ってくれば、きっとまたいやらしいことを言われ、恥ずかしいことを  
させられると解っているのに──  
 
「エッチなこと考えてたでしょ?」  
「あぅっ……」  
 案の定、彼は戻ってくるなり、すぐそばに人がいたのにも関わらず、そんな  
ことを言った。  
 彼は煙草を半分も吸わないうちに戻ってきた。  
 夏海は瞳を潤ませ、責めるように弘輝を睨んだ。  
「ごめんごめん……持つよ」  
 苦笑しながら弘輝は荷物を受け取る。  
 夏海は倒れ込むように彼の腕にしがみついた。  
──恥ずかしいけど……こうしないと……。  
 周りの眼が気になる。  
 自分の胸が彼の腕に押しつけられているが、そんなことも気にしていられる  
状態ではない。  
 ひとりでは一歩も動けないほどに脚がふらついていた。  
 立っているのがやっとだった。  
「夏海ちゃん……もう限界?」  
「うぅ……」  
 弘輝は夏海がしがみついている腕から、反対の手に荷物を纏める。  
「気持ちよくなりたい?」  
「あうっ……」  
「ここでしてあげようか?」  
「──っ!?」  
 弘輝のとんでもないセリフに絶句し、しがいみついた腕をぎゅっと握る。  
──意地悪だよぉ、ひどいよぉっ……!  
 あの夜のように、人が大勢いる中で責められてしまう──  
 そんな自分を想像し、ますます昂ぶってしまう。  
「想像しただけで、気持ちよくなっちゃうんでしょ?」  
「やっ、そんなの……」  
「周りの人たち、なんて思うかな?」  
「やだ……ダメです……」  
 彼の声が鼓膜を震わせるたびに、夏海の官能は刺激される。  
「すごいエッチな子って思われるね」  
「あうぅ……」  
 泣きそうな顔をして、弘輝の腕を強く抱え込む。  
「おっぱい、触りたいって思われるよ」  
「ダメぇ、ダメです……」  
 彼に言葉で責められながら、彼に縋らなければ立っていることすらできない。  
「じゃあ、そろそろ行こうか」  
──意地悪だよぉ……。  
 弘輝がゆっくりと歩き出す。  
 彼の腕を抱えたまま、夏海も歩きだす。  
 車まで、百メートル近くはある。  
 車に乗れば、少しぐらいは羞恥が和らぐかもしれない。  
 それとも、もっとひどいことを言われるのだろうか。  
 もっといやらしいことをさせられるのだろうか。  
 服を脱げと言われたらどうしよう。  
 二日前、竹下にさせられたように、股を開けと言われるかもしれない。  
 車の中とはいえ、外から丸見えになってしまうだろう。  
 華奢な身体に似合わぬ、大きな膨らみを見られてしまう。  
 しとどに濡れた、未熟な秘処を見られてしまう──  
「気持ちよくなりたいんでしょ? オナニーしていいんだよ」  
 そんなことを言われたら──  
──ほんとに、我慢できなくなっちゃう……。  
 淫らな想像に歯止めが利かなくなっていた。  
 濡れそぼった秘処は、ついに決壊した。  
 腿の内側を、雫が伝い落ちてゆく。  
 走れば十秒もかからないであろう距離が、何十倍にも感じられた。  
 
 車を停めていた、二階建ての立体駐車場の一階──  
「どうぞ、夏海ちゃん」  
 そう言って、弘輝がドアを開けてくれる。  
 これで、多少は羞恥が和らぐ──そう思うと身体の力が抜けてしまう。  
 夏海は倒れるようにシートに手を突いた。  
 腿の内側を、官能の蜜が滴り落ちてゆくのが判る。  
──やだ、見られちゃう……。  
 弘輝にそれを悟られまいと、身体をひねって腰かけようとした瞬間──  
「よっ……と」  
「──っ!?」  
 弘輝が、夏海のスカートを捲り上げた。  
 彼女はショーツを穿いていない。  
 子供っぽい小さな丸い尻も、しとどに濡れて蜜を滴らせた秘処も──  
──嘘っ!? やだっ……!  
 夏海は身も心も硬直してしまう。  
 シートに手を突き、腰を突き出した姿勢で、夏海は固まっていた。  
 頭が真っ白になる。  
 ここは二階建ての立体駐車場である。影になっているおかげで、露天駐車場  
よりは目立たないだろう。  
 夏海の左手──車の正面方向に、今自分たちが出てきた建物がある。  
 開かれたドアの陰になり、そちらからは見られはしないだろう。  
 すぐ横のスペースは車が停められていない。  
 夏海のすぐ後ろには弘輝が立っている。  
 買ったばかりの服と下着の入った袋を手に提げている。  
 彼の身体と買い物袋が、陰を作ってくれている。  
 だが、夏海の右手──車の後部方向には、遮るものがなにもない。  
 駐車場は広い。  
 何十台もの車が停められている。  
 そちらに人の乗っている車があれば──  
──わたし、こんなとこで……お尻出して……!  
 心臓が破裂しそうなほどに高鳴る。  
 血液が全身の血管を濁流のように駆け廻る。  
 夏海は一気に昂ぶってしまう。  
 いや──とっくに限界を超えて昂ぶっていた。  
──ダメっ、ダメだよぉ……!  
 羞恥が暴風のように唸りを上げて身体中を翻弄する。  
「ふぁっ……んっ」  
 身体が大きく震えた。  
 触れられてもいないのに──  
「あぁっ……はぁぅ……!」  
 二日前と同じだった。  
 竹下に命令され、秘処を剥き出しにし、見られているだけで、秘処が激しく  
疼き、興奮と快楽が湧き上がった。  
「夏海ちゃん……もしかして、感じてるの?」  
「あっ……んぅっ!」  
 弘輝の声に、夏海の身体がびくんと大きく跳ねた。  
 幼い裂け目を曝し、夏海は身悶える。  
 ぷくりとした柔らかな秘唇が、ひくひくと痙攣している。  
 とろとろと蜜があふれ、可憐に膨らんだ肉芽から──  
 ぽたり、とアスファルトに滴った。  
「すっご……垂れたよ、愛液」  
「やっ、やぁ……ふぁっ!」  
 夏海は力なくシートに肘を突き、膝が崩れ──  
「っと──っ!」  
 弘輝が慌てて差し出した手が、彼女の腹に触れた瞬間──  
「ひぁッ──!」  
 夏海はびくんと大きく弾んだ。  
 彼女は、軽い絶頂に達してしまった。  
 
 日陰に停められていたため、車内はさほど暑くなってはいなかった。  
 夏海はぐったりと身体をシートに沈め、涙のあふれた瞳を潤ませて、弘輝を  
じっと見つめている。  
「夏海ちゃん、もうちょっと我慢してね」  
「うぅ……」  
 弘輝は助手席に身を乗り出して、彼女のシートベルトを締めてやる。  
「ひっ……ふぁっ……」  
 彼の手が彼女の身体をかすめると、夏海は身体を震わせて吐息をもらす。  
 ほんのわずかな刺激にすら快感を覚えてしまうほどに昂ぶっているのだ。  
──なんか……ほんとに、すごいな……。  
 彼女のスカートは脚の根元まで捲られていて、可愛らしい尻がシートに直に  
触れている。  
「どうしたの?」  
「あぅ……」  
 弘輝が眉を上げると、夏海は眼を逸らした。  
──気持ちよくなりたいんだな……。  
 彼女の頬は赤らんでいて、耳まで真っ赤だ。  
 うっすらと日焼けした白い肌も、じっとりと汗ばんで火照っている。  
 腕にしがみつかれていたから、心臓の高鳴りもよく解った。  
 長時間与え続けられた羞恥に、限界を超えて昂ぶっている。  
 助手席のドアを開けてやったとき、周りには人がいなかった──  
 弘輝は彼女の羞恥をさらに煽ろうと、スカートを捲った。  
 もちろん彼は、見られてしまう位置には誰もいないことを確認していたが、  
頭が車の中にあった夏海は、そうは思わなかったのだろう。  
 その反応といったら──  
 彼女が軽く達してしまったのは、弘輝にも解った。  
──可愛そうだよな、ちゃんとしてあげないと……。  
 さすがに今ここで──車の中でというのは無理がある。  
 車を十五分も走らせればホテルもあるが、こんな昼間に、こんな幼い少女を  
連れてホテルに入るのもまずいだろう。  
──やっぱ、あそこでいいよな……。  
 行き先はもう決めてあった。  
 あまり思い出したくない記憶のある、カラオケボックス──  
 ここから数百メートルほどのところにある、個人経営の小さな店だ。  
 以前、つきあっていた相手と、淫らな行為に及んだことがあった。  
 キスをして、胸に触れ、スカートの中に手を伸ばし、指で刺激した。  
 彼女は抗いながらも快楽に染まっていった。  
 弘輝は欲望に導かれるまま、彼女の服を脱がそうとして──  
 しかし、拒絶された。  
 それでも弘輝は想いを遂げようとしたが、本気で抵抗され、睨みつけられ、  
罵られた。  
──あいつはダメだったけど……夏海ちゃんなら……。  
 弘輝が関係を持ったことのある複数の異性は皆、彼の欲望を満たしてはくれ  
なかった。それが当然の反応なのだと何度も身に染みていた。  
 だが、夏海なら──羞恥に昂ぶり、限界を超えている彼女なら──  
「夏海ちゃんは、カラオケ好き?」  
「あぅ……?」  
 夏海が潤んだ眼を弘輝に向けてくる。  
「歌は、苦手……ですけど……」  
 か細い声も震えている。  
「嫌いじゃ、ないです……」  
「じゃあ、行こうか。行って──」  
──あそこなら、カメラなんてないしな……。  
 そのときは、服を脱がそうとするまでにかなりの時間があったが、店員から  
注意を受けることもなかった。  
「気持ちいいこと、してあげる」  
「あっ、あぅ……!」  
 夏海の身体がびくんと震えた。  
 小学生にも見えるあどけない顔に、蠱惑的な色香が浮かび上がっていた。  
 
──恥ずかしい……ノーブラって、気づかれちゃう……。  
 アルバイトであろう高校生ぐらいの女性店員が、ちらりと自分の胸を見た。  
 羞恥が刺激され、昂ぶりが増してしまう。  
「こちらになりまーす」  
 ショッピングモールからさほど離れていない、カラオケボックス──  
 夏海と弘輝は、三、四人用であろう狭い部屋に案内された。  
 ドアを入ってすぐ左手に、モニタとカラオケ機器を収めたボックスがあった。  
 左手の壁に接するように、テーブルが置かれている。  
 右側から奥にかけて、合皮のソファがL字型に置かれていて、奥の壁には、  
可愛らしい蝶の絵が飾られていた。  
 木目調の壁は落ち着いた雰囲気を漂わせ、暗い照明がこれから起きることを  
暗示しているようでもあった。  
 部屋には煙草の匂いが染みついている。  
 煙草は嫌いじゃなかった。父親がいつも吸っている。  
 身体に悪いからやめたほうがいいだろうとも思うのだが、煙草を吸う父親の  
姿が夏海は好きだった。  
 テーブルにはドリンクや軽食のメニューが書かれたシートと、分厚い歌本が  
三冊、灰皿がふたつ、綺麗に並べられていた。  
 夏海が奥に、弘輝は入り口側のソファに腰を下ろす。  
「では、すぐにドリンクお持ちしますねー。少々お待ちくださーい」  
 店員が部屋を出てゆく。  
 他の部屋の歌い声が響いてくる。流行りの男性アイドルグループの曲だが、  
お世辞にも上手いとはいえなかった。  
「吸ってもいい?」  
 弘輝は灰皿を自分の前に引き寄せながら言った。  
 夏海はこくんと頷く。  
 さっきはきっと、自分のことを想って、根元まで吸わなかったのだろう。  
 二日前に入った弘輝の部屋に、灰皿らしきものは見当たらなかったし、車の  
中も煙草の匂いはしなかった──家族に内緒で吸っているのかもしれない。  
 父親も喫煙者への風当たりの強さに、ときどき愚痴をこぼしている。  
 弘輝は一本銜え、ライターで着火した。  
 彼が息を吸い込むと、先端の火がぼうっと光を放つ。  
 上を向いた彼の口から、紫煙が吐き出される。  
 冷房の風に乗って室内に拡散してゆく。  
 父親の煙草とは違う匂いがした。  
 夏海は顔を伏せ、上目遣いに弘輝を見ている。  
 弘輝は彼女の視線に気づくと、嗜虐的な笑みを向けてきた。  
「夏海ちゃん……エッチな格好、してみてよ」  
「えっ……?」  
 びくんと大きく震えた。  
 夏海はずっと恥ずかしい格好のままだ。大きな胸を覆うブラジャーもなく、  
濡れそぼった秘処を包むショーツもない。  
 今もスカートを腰の後ろに回し、尻がソファに直に触れている。  
 これ以上恥ずかしい格好となれば──  
「スカート持ち上げて、脚開いてこっち向けて」  
「あ、あぅっ……」  
──そんな、ダメだよ……店員さんが……。  
 カウンターで注文したドリンクがすぐにも運ばれてくるはずだ。  
 そんな姿を見られてしまうわけにはいかない。  
「ほら、早くしないと、店員が来ちゃうよ?」  
「うぅっ……」  
──ダメだよぉ、ダメなのに……。  
 ドアはガラス張りだが、衣装ガラスであり、直視されることはないだろう。  
 それでも、いきなり開けられたら──  
 危険だと解っているのに、夏海の中の、膨れ上がった淫らな本性は、理性を  
追いやってしまっていた。  
 恥ずかしいのに、嫌なはずなのに──夏海は求めてしまっている。  
 夏海の両手が、スカートの裾を抓んだ。  
 ゆっくり持ち上げてゆく。  
 脚のつけ根まで曝し、膝を開いてゆく──  
 
 こんこん──  
 店員がドアをノックした瞬間、夏海は心臓が飛び出しそうになった。  
 ドアが開けられる──慌ててスカートを押さえ、脚を閉じた。  
「お待たせしましたー」  
 先ほどの店員が、トレイにグラスを乗せて現れた。  
 夏海は顔を伏せ、テーブルの下でスカートの裾をぎゅっと握った。  
「アイスコーヒーと、こちらオレンジジュースになりまーす」  
 店員はテーブルにグラスを置く。  
 ミルクとガムシロップのポーションを、アイスコーヒーの横に並べた。  
「ごゆっくりどうぞー」  
 ドアが閉まり、夏海は思い出したように呼吸を再開した。  
「はっ、はぁっ……!」  
「危なかったね、夏海ちゃん」  
「はぅ、うぅっ……」  
──見られなかったよね……?  
 テーブルの下だ。覗きこまない限り見えはしないはずなのだ。  
「飲みなよ」  
 弘輝はグラスを差し出し、自分もアイスコーヒーをブラックのまま飲む。  
 夏海はグラスに挿されたストローに口を寄せ、ひと口すすった。  
 果汁百パーセントのオレンジジュースが、渇いた喉を潤してくれる。  
 もうひと口──  
 しかし、冷たいジュースも、熱に侵された身体を冷ましてはくれない。  
「もう一度、できるよね? 見せて、くれるよね?」  
「あぅっ……」  
 弘輝は煙草を灰皿に押し付ける。  
 白い煙がすっと立ち昇り、火が消えた。  
「この店、カメラとかついてないから……だいじょうぶだよ」  
──弘輝さんに……わたしの、あそこ……。  
 恥ずかしいところを見て欲しい。  
 いやらしい言葉を言って欲しい。  
 快楽を与えて欲しい──  
「ほら、もっとこっちに、見えるように」  
「はぅ、はい……」  
 腰をずらして弘輝のほうへと身体を向ける。  
 心臓が破裂しそうなほどに高鳴っている。  
「スカート持って」  
 言われるままに、スカートの裾を抓んでしまう。  
 震える手が持ち上がり、太腿が露になった。  
「そう、そうだよ……ちゃんと見えるようにね」  
──見えちゃう……見せちゃう……見て、欲しい……!  
 胸まで引き上げてしまう。  
 夏海は自ら、下半身を剥き出しにしてしまった。  
「いい子だよ……自分で見せてる、エッチな子だ」  
「あぁぅっ……!」  
 全身が震えて熱くなっている。  
「夏海ちゃんみたいなエッチな子……俺、大好きだよ」  
「あ、ぅ……あぁぅ……」  
──エッチな子、大好き……弘輝さんのこと……わたしは……。  
 胸がきゅっと締めつけられる。  
「夏海……夏海のおまんこ、見せてくれる?」  
「あぁっ! あぅ……はい……」  
──先生に、見せたみたく……。  
 夏海はサンダルから足を抜いた。  
 膝を立てて右足をソファの上に乗せ、続けて左足も──。  
 背もたれに身体を預けた夏海の、細く華奢な脚が開かれてゆく。  
 
──これ、ヤバいって……マジで……。  
 弘輝の眼の前で、まだ中学一年生の幼い夏海が、股を広げている。  
 彼は夏海のその部分に、眼を奪われてしまっていた。  
 彼女の秘処をまじまじと見るのは初めてだ──  
 触れて解ってはいたが、恥丘には恥毛と呼べるものは一本も生えていない。  
 可愛らしい秘裂は薄く口を開き、未熟な粘膜がわずかに覗える。  
 裂け目の先端には、ぷくりと膨れ上がった秘芯が頭を覗かせている。  
 周囲にはぐっしょりと淫蜜があふれ、腿の内側までもが濡れていた。  
 部屋の照明が暗いのが惜しまれる──  
 しかし、それが幼い夏海の姿に、より淫靡で、蠱惑的な彩を与えているのも  
確かだった。  
「可愛いね、夏海のおまんこ」  
「あっ、はぁぅ……」  
 薄暗い部屋でも、彼女の顔が真っ赤になっているのはよく判る。  
 潤んだ瞳が、弱い室内灯に照らされて、ゆらゆらと揺れている。  
「夏海……可愛いよ、すごく可愛い……」  
「はぅ……んぅ……」  
 ふと気づけば、夏海を呼び捨てにしている。  
 二日前もそうだった──彼女を手に入れたかのような気になっている。  
──ヤバいって……俺、おかしいだろ……。  
 弘輝も激しく高ぶっていたが、まだ冷静さを完全には失ってはいない。  
 夏海は自分の与えた羞恥にことごとく、望んだとおりの反応を示してくれる。  
 色っぽい女性より、可愛らしい子が好きだという自覚はあった。  
 大きすぎるほどの胸の膨らみも、自分好みだ。  
 しかし、彼女はまだ中学一年生──数ヶ月前まで小学生だった子供なのだ。  
 それなのに──本気で昂ぶり、本気で惹かれている。  
 彼女を自分のものにしたいと思っている。  
 痛いほどに滾った欲望の象徴で、子供のような秘肉を貫きたい。  
 彼女の初めてを奪いたい──  
 
 
「夏海……もっと近くで見るよ」  
「あっ、あぁぅ!」  
──見られちゃう……わたしの、あそこ……!  
 弘輝がソファに手を突き、身体を寄せてくる。  
 夏海は膝を閉じようとしたが、彼の手がそれを止めた。  
 幼い裂け目から、とろりと蜜があふれて滴る。  
 彼の顔が、自分の秘処のすぐ前まで迫っている。  
 暗さに、眼が慣れてきている。彼もそうだろう。  
──見られてるっ、恥ずかしいのに、わたし……。  
 自分の一番恥ずかしいところを見られている。  
 淫らに濡れそぼち、ひくひくと震える大切なところ──  
「綺麗だよ、夏海……すごく綺麗だ」  
「はぁぅ、んぅ……!」  
 彼の荒い息が肌にかかってくすぐったい。  
 触れられていないのに、そこから激しい快感が湧き起こっている。  
「まだ、エッチしたこと、ないんだよね?」  
「あぅっ、ない……です……」  
──エッチ……セックス……されちゃうのかな……。  
 夏祭りの夜、左手に握った彼のモノの感触が浮かび上がる。  
 夏海が想像していたより、ずっと硬くて、大きくて──あんなものが身体の  
中に入るなんて、とても考えられない。  
「夏海……いいよね?」  
「えっ……やっ!?」  
 彼の頭が、自分の下腹部に押し付けられ──  
「ひゃぅッ──!」  
 ぷっくりと腫れ上がった敏感な雌蕊から、強烈な快感が湧き立って、夏海の  
身体が大きく弾んだ。  
 
「ひぅっ! やっ、はぁぅ……!」  
──やだっ……そんなとこ、恥ずかしいっ……!  
 最初は何をされたのか解らなかった。  
 だが、何度も与えられる刺激と、彼の頭の位置、ぴちゃぴちゃという水音が、  
その意味を教えてくれた。  
──クリ……舐められてる……気持ちいいよぉっ!  
 指とは違う、柔らかくて弾力のある舌の感触に、もっとも敏感な蕾が激しく  
攻め立てられる。  
 自分の一番恥ずかしいところに口を寄せ、舌で愛撫されている。  
 彼の息が肌にかかる。  
 指でされたときとはまた異なる官能が、身体中を駆け巡り、下腹部から熱い  
衝動が込み上げてくる。  
「夏海のおまんこ……美味しいよ」  
「やっ、はぁぅ、ひゃんッ!」  
 呼吸をするたびに、淫らな喘ぎがもれてしまう。  
 彼の手に、腿を大きく広げられ、押さえつけられている。  
 突き抜けるような刺激に、身体がびくんびくんと激しく震えてしまう。  
 まだ知り合って間もないというのに、呼び捨てにされるのが心地いい。  
 彼に身を任せてしまいたい。  
 弘輝の頭に指をかけると、長めの髪が指に絡んだ。  
 快楽を求める本能が堰を切ったようにあふれ出す。  
 このまま、高みまで──  
「ひぁっ、はぁぅッ、ひゃぅッ!」  
──気持ちいいっ、すごい……すごいよぉ!  
 圧倒的な快感が絶え間なく押し寄せてくる。  
 激しすぎる快感に腰が逃げてしまうのに、彼はさらに顔を押し付けてくる。  
 自分ではどうしようもない興奮に満たされてゆく。  
 膨らんだ官能の渦が、身体中を翻弄する。  
「夏海……ここ……」  
「あっ、あうぅっ!」  
 彼の右手が腿から離れ、指先が夏海の未熟な秘裂を割って、たっぷりと蜜を  
たたえた入り口をまさぐっている。  
 一度だけ入れたことがあった。あまりの痛みにそれきりだった──  
「力、抜いて……」  
「んぅ……」  
──指……入れられちゃう……!  
 潤んだ眼を閉じる。弘輝の息が荒い。  
 彼も興奮しているのだと思うと、共鳴するように昂ぶりが増してゆく。  
 夏海は抗うように彼の手首に触れるが、拒んでいるわけではなかった。  
 その逆だった──彼が離れてしまわないように握っているのだ。  
 弘輝の指が、柔らかい小さな膣口へ沈んでゆく。  
「んぅ……ふぁあっ!」  
──痛いのは、やだ……でも……。  
 身体の中心に、指が潜り込んでくる──  
 初めては痛い──そんな恐怖に襲われる。  
 だが二日前、弘輝に敏感なところを痛いほどに責められたのに、それすらも  
快感に思えてしまったのだ。  
 きっとそこも──  
「ひっ……んぐっ!」  
 さらに奥へと指が押し込まれ、ずきっと強い痛みが襲ってくる。  
「夏海……痛い?」  
「んぅっ……痛い、ですっ……」  
──でも……痛いのに……気持ちいいっ……!  
 自慰を憶えたての頃に、自ら試したときとは違っていた。  
 たしかにそこは、指の侵入に痛みを訴えている。  
 しかし、それだけではない──  
 痛みだけでなく、強い愉悦が湧き起こっていた。  
 
 自分はロリコンではないと思っていたのだが──どうやら、その気があった  
らしいと、弘輝は内心苦笑していた。  
 夏海の幼い身体を責め、弘輝はインモラルな悦びに浸っていた。  
──熱くて、とろとろで……きつくて……ほんとに、子供なんだな……。  
 右の中指が、熱くとろけた秘肉に包まれている。  
 彼女の狭く小さな蜜壷は、指をきつく締めつけて、侵入を拒んでいるようだ。  
「ひっ、痛ッ……はぅっ、んぅッ!」  
 彼の指はまだ半分も入っていないのに、夏海は痛みに顔をゆがめている。  
 だが、彼女の顔は恍惚に染まり、悦楽の色をたたえてもいる。  
──でも、このまま中でイかせるのは、無理かな……。  
 クリトリスのような、激しい快楽ではないらしい。文字通り、身体の奥から  
じわじわと広がる快感だという。  
 男性であれば、クリトリスへの刺激はペニスのそれに近く、膣内への刺激は  
前立腺に近いのだそうだが──あいにく彼は、後者は未経験だった。  
「夏海の中……すっごく狭くて、温かいよ。熱いぐらいだ……」  
「ふぁっ、あぁぅ……」  
 秘洞を指先で少しずつ押し広げながら、進んでゆく。  
 同時に、彼女のキャミソールに左の手をかけて捲ってゆく。  
 夏海は抗わない。  
「おまんこも、おっぱいも……すごく綺麗だ……」  
「あぅ、やっ……恥ずかしっ……」  
 捲り上げてしまうと、彼女の大きな膨らみが、ぷるっと揺れて露になった。  
 とても中学一年生のものとは思えない、大きくて、整っていて、柔らかくて、  
弾力に満ちた乳房──彼女の荒い呼吸に合わせてふるふると揺れている。  
 対照的に、一円玉ほどしかない淡い輪郭の中心で尖る、子供のように未熟な  
突起は、自らひくひくと震えているようにも見える。  
 弘輝は淫蕾から口を離し、たわわな双丘に顔を寄せた。  
「あっ、はぅっ! んっ……!」  
 舌が触れると、小さな身体はびくっと震え、大きな乳房がぷるんと揺れた。  
 舌先で味わうように膨らみをなぞる。  
 可憐な突起に触れるか触れないかのところで円を描くように舌を這わせる。  
 汗の浮いた彼女の肌は、塩の味がした。  
「はぁっ、ひぅ……弘輝さんっ……」  
 彼女は薄く眼を開けて、縋るような瞳で弘輝を見つめていた。  
 弘輝はわざと彼女に見えるように、舌を伸ばして愛撫する。  
 左腕を彼女の腰に回し、ゆっくりとソファに横たえた。  
 右の中指が、ようやく根元まで飲み込まれた。  
 
 
 汗ばんだ背中に、ひんやりとしたソファの感触──  
 ソファに横たわった夏海は、あられもなく股を広げ、震えていた。  
 キャミソールは捲り上げられ、中学生とは思えない膨らみが露になっている。  
 夏海の上に弘輝が覆い被さり、穏やかに導いている。  
 煙草の匂いしかしなかった部屋に、淫らな女の香りが漂っている。  
 夏海の秘処からとめどなくあふれる露は、むせるような匂いを撒き散らして、  
より大きな快楽を求めているようだった。  
──気持ちいいよぉ……弘輝さんっ……。  
 二日前、激しく責められたときとはまるで違っていた。  
 あのときは獣のように思えた彼が、乱暴なそぶりなど欠片も見せない。  
 弘輝の舌が、乳首をちろちろと舐めている。  
 指が秘処に侵入し、身体の内側でゆっくりと蠢いている。  
 気持ちよかった──  
 ひとりでするのとは比べ物にならないほどの快感だった。  
 中はまだ痛む。  
 けれど、じわりじわりとにじみ出るような快感が、全身に浸透してゆく。  
「夏海……そろそろ、イかせてあげる」  
「ひゃぅッ──!?」  
 強烈な快楽が全身を貫いた。  
 
「ひっ……はぅッ! ん、あぁっ、ひぁッ!」  
──気持ちいいよぉっ、すごいよっ……エッチだよぉ!  
 夏海は悲鳴のような喘ぎをもらし、びくびくと全身を震わせている。  
 一転してペースを上げた愛撫の変化に、一気に高みに昇ってゆく。  
 弘輝は彼女の狭い膣孔に中指を沈ませたまま、親指に蜜を絡め、ちょこんと  
顔を覗かせた淫核を責めている。  
 左肘を夏海の右脇に突いて身体を支え、手を夏海の右の膨らみに重ねている。  
 左の乳房に吸い突くように唇を押しつけて、小さな乳首を銜え込んでいる。  
 夏海はすべてを責められ、官能に侵されてゆく。  
「そんなに……声出したら、聴かれちゃうぞ?」  
「あぅっ! やっ……ダメっ、ひゃんッ!」  
「夏海のエッチな声……他の客に、聴こえちゃうよ」  
「やっ、ダメですっ……ひぁッ!」  
──ダメだよぉ、聴かれたらっ……!  
 いやらしい女の子だと思われてしまう──  
 カラオケボックスで恥ずかしいところをすべて曝け出し、淫らに喘いでいる  
変態だと思われてしまう。  
 自分は下着も着けず、あちこちで恥ずかしい目に遭いながら、激しく昂ぶり、  
乳首を尖らせ、秘処を濡らしていた。  
 地元のコンビニの店員に、見られてしまったかもしれない。  
 次に入ったコンビニでは、ひとりでしてしまいそうにもなった。  
 ショッピングモールで秘処に触れられて、サイズを測定されてしまった。  
 駐車場で尻を剥き出しにされ──  
「エッチな夏海……変態で淫乱な、女子中学生だ」  
「あッ、やぁっ……言わないでっ、あぁッ……!」  
 七つも年上の男に責められて、彼のされるがままになって、いやらしい声を  
あげて悶えている、変態で淫乱な女子中学生──  
──弘輝さんの意地悪ぅ……!  
 そんな弘輝に責められ、今すぐにも達してしまいそうになっている。  
 涙がにじんで、こめかみを零れ伝い落ちてゆく。  
 身体が弾んでソファがぎしぎし鳴っている。  
 右手を弘輝の左手首に絡め、左手で首を抱いて──彼の昂ぶりも感じている。  
「夏海……イきそう?」  
「んッ! ひぅっ、はいっ……!」  
 素直に答えてしまう。  
 夏海はもう、快楽に身を任せることしかできなくなっていた。  
 全身を激しい快感に翻弄される。ぴちゃぴちゃと、淫らな水音が響いている。  
 どれほどの露があふれ出したのか想像もできない。  
「イかせて欲しい?」  
「はいっ……弘輝さっ、んぅッ! はぁぅッ!」  
 変態的な嗜好を持った近所の青年──まともに言葉を交わしたのは、たった  
二日前だ。そんな他人同然の男に、夏海は縋りついて快楽を求めている。  
「イかせっ、欲し、ひッ! ですっ……!」  
──わたし、変態だもん、淫乱だもんっ……気持ちいいんだもんっ!  
 竹下にも言わされた、淫らな言葉──  
 自ら、快楽を求める言葉──  
「いい子だ、夏海……イかせてやるっ!」  
「ひぁあッ! んっ、ひゃうぅッ!」  
 弘輝の責めがいっそう激しくなった。  
 敏感なところすべてが刺激され、身体中が悲鳴を上げて翻弄される。  
 背中が反り返り、びくびくと震えている。  
 下腹部に熱い衝動が凝縮し──  
「弘輝さんっ、ひッ! ひぁぅッ!」  
 全身が痙攣したように震えだす。  
 官能に顔をゆがめ、恍惚の吐息をもらし──  
「イけよっ、夏海……イくって言いながら……イっちゃえっ!」  
「イくっ、イっちゃぅッ! ひぁあッ──!」  
 弘輝の言葉が、夏海の快楽を爆発させた。  
 激しい快感に意識が押し流され、がくがくと何度も身体が跳ねた。  
 
 夏海は、ソファに腰かけた弘輝の膝に乗せられて、キャミソールに覆われた  
乳房を優しく愛撫されていた。  
 快楽の余韻が全身に漂って、ふわふわと宙を漂っているような気分だった。  
 彼の腕に抱かれているのは恥ずかしい。  
 だがそれ以上に、気持ちが和らいでいる──  
 二日前、竹下に責められたあとも、弘輝に責められたあとも同じだった。  
 どうして自分は、こんなにも恥ずかしい想いをさせた男に、安らぎを覚えて  
しまうのだろう──夏海は不思議でならない。  
「夏海はちっちゃいな……軽くて、子供みたいだ」  
「うぅ……」  
「それなのに、こんなおっきくて……」  
「んっ、ふぁぅ……」  
 膨らみを下から持ち上げられる。  
「好きだよ、夏海……」  
「あぅっ……」  
──わたしは……弘輝さんのこと……。  
 嫌いではない。でも、好きなのかというと──  
「いいよ、夏海……まだ解らないなら、答えなくてもいい」  
 弘輝の腕が、夏海の華奢な身体をぎゅっと抱き締めた。  
──好き……なのかな、わたし……。  
 今この瞬間のような、優しい彼なら、好きになれるかもしれない。  
 恋愛がどういうものなのかよく解らない。人を愛するということがどういう  
ことなのか、夏海にはまだよく理解できない。  
 けれど、こんなふうに、一緒にいて穏やかな気持ちになれるのなら、それは  
きっと好きだということなのだろう。  
 冬香と一緒にいるときもそうだった。  
──でも、それは……友達として好き、っていうこと……?  
 弘輝と友人というのは語弊があるし、友人ならこんなことはしないだろう。  
「ごめんなさい……」  
「いや、いいって……謝るようなことじゃないさ」  
 弘輝は照れくさそうに笑った。  
 夏海は自分を抱く彼の腕に、手を重ねた。  
 そして──尻に当たる硬いものの感触が、意識に浮かび上がってきた。  
「弘輝さん……あの……い、いいんですか……?」  
「ん……何が?」  
 ぽそぽそと喋る夏海に、弘輝は片手で頭を撫でてやる。  
 夏海はくすぐったそうに吐息をもらす。  
「んぅ……その、弘輝さん……えっと……まだ、だから……」  
 弘輝は彼女の言いたいことを察してくすりと笑う。  
「そうだな……出したいなぁ……」  
「あぅっ……」  
 自分で言い出しておいて、夏海はびくっと身を竦ませる。  
「今すぐにも、押し倒して、犯したい」  
「──っ!」  
 絶句した夏海に、弘輝は頭をゆっくりと撫でてやる。  
「でも……満足した。夏海がイってくれただけで、じゅうぶんだ」  
「はぅ……」  
 また彼に導かれてしまった──恥ずかしかった。  
──やっぱりわたし……エッチだ……。  
 自分は露出行為に昂ぶる変態で淫乱な女子中学生──けれど、彼に抱かれて  
いると、そんな低俗な言葉ですら心地よく感じられてしまう。  
 変態淫乱女子中学生の自分を、彼は好きだと言ってくれる。  
 歳の差は七つもあるし、自分はまだ中学一年生だ。世間一般には、受け入れ  
られない組み合わせに違いない。特に弘輝は、白い眼で見られるだろう。  
 彼のそこはまだ硬いままだ。今すぐ犯したいという言葉は、本心なのだろう。  
 だが、自分は自由の身ではない──  
──竹下先生……先生にも、また、こういうこと……。  
 竹下の顔が浮かぶ。  
 弘輝は、再び自分が竹下にもてあそばれたら、どう思うのだろう。  
 自分が逆の立場なら、どうするだろう──  
 
 ふたりを乗せた車が、曲がりくねった峠の道を抜けて、町へと帰ってきた。  
 太陽はもう、西の山の稜線に消えている。  
 赤信号で停車し、弘輝は助手席に顔を向けて、くすりと笑った。  
 彼女は出かける前の格好に戻っている。  
 水色のキャミソールの上に、白いプルオーバーも着て、腰を紐で締めている。  
 アイボリーのミニスカートも、腿を覆っている。  
 山頂で弘輝が奪ったブラジャーも、夏海自身が脱いだショーツも、今はもう  
彼女の大切なところを覆い、包んでいる。  
 夏海の大きな胸の膨らみは、穏やかな呼吸に合わせてゆっくり上下している。  
──寝顔も可愛いなぁ……。  
 夏海は疲れきっていたようで、カラオケボックスを出て十分もしないうちに、  
うつらうつらと舟を漕ぎはじめ、気づけば、すやすやと寝息を立てていた。  
 あれだけの羞恥に曝され、激しく達してしまったのだ──無理もない。  
──夏海ちゃん……俺、本気みたいだわ……。  
 今日のデートで、自分の気持ちがどんなものなのか、弘輝は理解できた。  
 最初は性欲の対象としてしか見ていなかった。  
 祭りの夜、彼の隣であられもなく肌を曝し、淫らに喘いでいた少女──  
 だが、二日前の部屋での出来事と今日のデートで、自分は間違いなく彼女に  
惚れているのだと自覚した。  
 彼女の反応や言葉遣い、しぐさといったものに、心から惹かれている。  
 七つも年下で、まだ中学一年生の、出会って間もない少女に──  
 二日前の夜──悶々としながら立てた今日の予定では、カラオケ店で彼女を  
犯すつもりだった。  
 大きな乳房を乱暴に揉みながら、幼い秘処を欲望で貫くつもりだった。  
 それが、ふたを開けてみれば──  
──けど……竹下、先生か……。  
 夏海は自分の学校の教師に弱みを握られている。  
 彼女はその男の魔の手から逃れられないだろう。  
 自分と彼女の仲が深いものになったとして、自分は何がしてやれるのだろう。  
 何もできないのではないだろうか。  
 法に訴えることは容易いだろう。  
 今まで彼女が受け取ったメールはもう削除されているようだが、これから先、  
彼からのメールがあれば、それでじゅうぶん証拠になるはずだ。  
 少女に淫らな行為を強要させたとして、罰せられるはずだ。  
 おそらく自分も罰せられるだろう。  
 それは確かに躊躇われる。  
 だが、彼女を自由にするにはそれしかない。それしか思いつかない。  
 自分が彼女にひどいことをしたのは事実だ。彼女に訴えられても、構わない。  
 そうは思うのだが──  
 司法の場に立たされたとき、夏海がどういう仕打ちを受けるのかを考えれば、  
安易に警察に訴えることも難しく思う。  
 果たして彼女は、それを望むだろうか。  
 弘輝もまた、夏海と同様にそのリスクを考えていた。  
 どうにかして、彼女を解放してやることはできないだろうか──  
 信号が青に変わり、弘輝はアクセルを踏み込む。  
「んぅ……あっ……」  
 夏海が小さな吐息をもらして眼を覚ました。  
「おはよう、夏海ちゃん」  
 眼をしばたかせ、ぼうっと弘輝の顔を見る彼女に、笑みを向けた。  
 弘輝はハンドルを手放し、夏海にキスしたいと思った。  
 
「おはよう、ございます……」  
 うとうとしていたのは憶えていたが、いつの間にか眠っていたようだ。  
 カラオケで弘輝に導かれ、しばしの間、うっとりと余韻に浸っていた。  
 全身が気だるい恍惚に包まれていた。  
 彼は身体を拭いてくれて、服も着せてくれた。  
 下着を着けられるのは二度目──恥ずかしかった。  
 そのあと、少しだけ弘輝は歌を歌った。夏海の知らない外国の曲だった。  
 激しいロックと、しっとりとしたバラード──  
 彼の歌声は耳に心地よかった。  
「すみません、わたし……寝ちゃって……」  
 仮にもデートなのだし、ひとりで眠りこけるのは彼に失礼だと思う。  
「夏海ちゃんの寝顔、可愛かったよ」  
「あぅっ……」  
──意地悪だぁ……やっぱり弘輝さん、意地悪……。  
 夏海は頬を赤らめ、うつむいた──でも、嫌ではない。  
 恥ずかしいけれど、心地よさも覚えている。  
 もしかしたら自分は、彼に惹かれはじめているのかもしれない。  
 意地悪でひどいことをする男だが──  
──あ……弘輝さん、もしかして……。  
 ふたつのことに思い至る。  
 カラオケボックスで自分が達してしまったあと、彼は自分の欲望を遂げよう  
とはしなかった。あれは、自分の身を気遣ってくれたからなのかもしれない。  
 激しい絶頂に身も心も疲れきっていた。それを察してくれたのかもしれない。  
 そして、もうひとつ──アンテナのある山の頂で、彼は竹下から受け取った  
下着を、剥ぎ取るように奪った。  
 それは、竹下への嫉妬だったのかもしれない。  
 自分は、弘輝を試すような行為をしていたのだと、いまさら思う──  
 竹下のゆがんだ笑みが浮かんで、背筋の凍る想いがする。  
 弘輝は自分を好きだと言ってくれた。  
 だが、自分と竹下の関係を、どう受け止めているのだろう──  
「弘輝さん……あの、わたし……」  
「ん……?」  
 夏海はうつむいたまま、眼だけを向けて、ぽそぽそと言葉をつむぐ。  
 弘輝はハンドルを握ったまま、ちらりと横目で覗った。  
「わたし……先生に、何されるか、判らないですけど……」  
 夏海は膝に置かれたポーチを握り締める。  
「それでも……いいんですか?」  
 弘輝は眉を上げると、すぐには答えず、前を向いたままブレーキを踏んだ。  
 車は緩やかに減速し、路肩に停車した。  
 すぐ横を何台もの車が走り去ってゆく。  
 弘輝は穏やかな笑みを浮かべ、じっと夏海を見た。  
「夏海ちゃん……俺はそのことには、正直、何ができるか解んない」  
 真剣な眼差しだった。  
「でも……もし夏海ちゃんが、俺にしてほしいことがあったら、できる限りの  
ことはするつもりだよ」  
 彼はそう言ってから、少し照れくさそうに口元を緩ませた。  
──弘輝さん……本当に、わたしのことを……。  
 彼の本心は、夏海には解らない。  
 これも自分をその気にさせるための罠なのかもしれない。  
 でも、騙されてもいい、嘘でもいい──  
 夏海は顔を上げ、弘輝と眼を合わせた。  
「弘輝さん……名前、呼び捨てで……いいです」  
 弘輝が眉を上げ──穏やかに微笑んだ。  
「帰ろうか、夏海」  
「はい……」  
 ふたりを乗せた車が、ゆっくりと走り出す。  
──わたし、弘輝さんのこと……。  
 自分の心に、ほのかな火が灯ったのを、夏海は感じていた。  
 フロントガラスの向こう──西の空が、ゆっくりと朱に染まってゆく。  
 夏海の頬も、朱に染まっていた。  
 

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