中学一年生の夏──  
 あと一月ほどで十三歳になる夏海は、天空を彩る花火の下、人込みの中で、  
幼い身体を火照らせていた。  
 熱帯夜の所為もあるだろう。  
 人込みの所為もあるだろう。  
 しかしそれ以上に、芯から湧き上がる、官能の熱が身体を焼いていた。  
 背後の男は、自分を知っている。  
 自分はその男が誰なのか判らない──聞き覚えのある声ではあったが、未だ  
判別できない。  
 だが夏海には、そんなことはもうどうでもよかった。  
 いまさら判ったところで、激しい羞恥から逃れられるわけではない。  
 羞恥に昂ぶる気持ちを抑えられるわけではない。  
 夏海はもう、常識的な判断力を失っていた。  
──気持ちいいよぉ……。  
 男の指は夏海の秘処を弄び、刺激し続けていた。  
 彼女の足元にうずくまれば、くちゅくちゅと淫らな水音が聞こえるだろう。  
 絶え間なく与えられる快楽に、夏海の身体はびくびくと震えている。  
 周りには見ず知らずの人々があふれているというのに、浴衣がはだけられ、  
大きすぎる膨らみは剥き出しになっている。  
 刺激が加えられるたびに、張りのある乳房がぷるぷると揺れている。  
 自分の手で、浴衣の裾を持ち上げてしまっている。  
 男に刺激されている未熟な秘処も、子供っぽい腰も、小さな尻も、秘密にして  
いた無毛の恥丘も──すべて自分の手で曝していた。  
 隣の男は、そんな彼女のあられもない姿を写真に収めている。  
 自分の恥ずかしいところをすべて撮られてしまっていた。  
 それらすべてが、夏海を艶めかしく滾らせ、淫らに昂ぶらせていた。  
──わたし、どうなっちゃうんだろ……。  
 友達の冗談を真に受けて、下着を着けずに浴衣一枚の姿で祭りに賑わう町へ  
出た夏海──  
 友人たちとはぐれてしまった彼女は、人込みの中で恥ずかしい姿にさせられ、  
身も心も未知の刺激に翻弄され、とろけそうな官能に侵食されて、淫らな声を  
もらしてしまっていた。  
 自分がこんな目に遭うなどとは、微塵も想像もしていなかった。  
 こんな目に遭いながら、快楽に飲み込まれてしまうような、猥らな子なのだ  
とは考えたこともなかった。  
──わたし、エッチなんだ……すごく、エッチだったんだ……。  
 それは疑いようのない事実として、夏海の心を蝕んでいた。  
 まだ中学一年生の夏海は、艶めかしく喘ぎながら、快楽を受け入れていた。  
 もうどうなってもいい──  
 このまま、悦楽の海に沈んでしまいたい──男の言葉どおり、もっともっと  
気持ちよくなりたいと思ってしまう。  
 あるとき、友人たちが話していた、イくという言葉を思い出す──  
 それは、自慰を続けていると辿り着く、最高の恍惚だという。  
「身体中、がくがくなって……きゅうぅってして、頭も真っ白になって……」  
 イっちゃう──らしい。  
 ここで、このまま──  
──イってみたい……イかせてほしい……。  
 
──すっげ、マジに露出狂だわ……。  
 弘輝は右手で携帯電話を操りながら、ジーパンのポケットに突っ込んだ左手で、  
自らの怒張したモノをさすっていた。  
 極度の興奮に、それは硬く大きく屹立し、突端からはとろりとしたぬめりが  
あふれ出し、下着を濡らしている。  
 少女は、自らの手で浴衣の裾を握っていた。  
 彼女は、彼の動きに気づいているだろうに──  
 弘輝の眼は、彼女の下腹部をはっきりと捉えることはできなかったが、彼の  
携帯電話には、少女のすべてが写されていた。  
 保存した写真を確認する。  
 浴衣は帯まで捲り上げられ、少女の子供っぽい下半身を隠すのは、背後から  
伸ばされた男の手だけ──  
 彼女は、ショーツを穿いていなかった。  
 少女の白い下腹部を覆うべき下着はなかった。  
 下ろされているわけではない。初めから、穿いていなかったのだろう。  
 なだらかな曲線を描く脚の付け根は、大きすぎる乳房とは対照的に、子供の  
ままで──  
──ノーパンだし……生えてないし……。  
 ごくりと音を立てて唾液を飲んだ。  
 弘輝は竹下と違い、とりたてて幼い少女が好みというわけではなかった。  
 しかし、まだ中学生だというのに、これほどに淫らな性癖を持っている少女に、  
強い好奇心と、激しい情欲を抱いていた。  
 彼女の家も知っている。佐伯という姓も憶えている。  
 なつみか、なつきか──はっきりと記憶していないが、彼女は友人からそう  
呼ばれていた。  
 彼のバイト先に現れたとき、彼女の制服の襟元には、臙脂のリボンが結ばれ  
ていた。  
 学年カラーとして、臙脂、濃緑、濃紺の三色が、入学年によってつけられて  
いたはずだ。  
──えーと、今年は……赤だと、一年か?  
 彼の記憶と逆算が確かならば、そうなる。  
──中一でこれかよ……やばいだろ……。  
 大人顔負けの大きな乳房は、とても中学一年生のものとは思えない。  
 顔立ちや背丈は小学生のようだし、おとなしそうに見えたのに、三十近いで  
あろう男とこんな──  
──露出羞恥プレイか……。  
 それは弘輝がもっとも惹かれる、性的行為のひとつだった。  
 
──夏海ちゃん……キミをもっと感じさせてもらうよ……。  
 竹下はいったん腰を引くと、自由になった左手でジーパンのジッパーを下ろし、  
痛いほどに勃起した剛直を掴み出す。  
 このまま彼女を──少女の純潔を奪ってしまいたかった。  
 欲望の滾りで、少女の未熟な果実を割ってしまいたかった。  
 白濁したどろどろの子種を、中学一年生の胎内へ──もっとも深いところへ  
解き放ってしまいたかった。  
 きっと彼女の中は、きつく狭く、熱く潤っているのだろう。  
 怒張を締め付けて、未知の愉悦を味わわせてくれるに違いない。  
──でも、ちょっと……このままじゃ無理があるな……。  
 竹下の背は高くない。脚も短いほうだ──腰の位置は低い。  
 とはいえ、その竹下よりも二十センチは背の低い夏海の秘処は、さらに低い  
位置にある。  
 挿入するとなれば、彼女を持ち上げるか、竹下自身が腰を屈めねばならない。  
 さすがに──そこまではできない。  
 あと少しで、彼は欲望を満たすことが──熱い精を放出できるのだ。  
 竹下の頭は欲にまみれ、自制心を失っていたが、だからこそ──それを遂げる  
までは、誰の邪魔も入らない方法を選んだ。  
 今日だけではないのだ。チャンスはまだある──  
 彼女を真に手に入れる機会は、これから先も絶対に訪れる──そんな根拠の  
ない確信が彼にはあった。  
 だが、確かに彼は、その機会を作り出そうと思えば、できる立場にいた。  
 竹下は夏海の尻にかかる浴衣を捲ると、少女のきめ細かな肌へ、それを押し  
つけた。  
 びくんと震える夏海の身体──  
「ひっ……」  
 彼女も当然、なにをされたのか理解しただろう。  
 淫らに火照った肌は、じっとりと汗が浮かんでいる。  
 彼自身の先走りと彼女の汗が混じり合い、竹下の怒張はそれだけで暴発して  
しまいそうだった。  
「夏海ちゃん、僕のちんぽ……すごいでしょう? こんなになってるよ」  
「あっ! んぅ……」  
 夏海は異物の押し付けられた腰を浮かせる。  
 自由になった左手が、夏海の身体をがっちりと抱え込んだ。  
 
「はっ……あぅ……」  
 夏海の剥き出しの小さな尻に、硬く強張ったものが押し付けられた。  
──男の人の、あれが……お尻に……。  
 小学生のころに習った、大人の男女の交わりについての授業──  
 愛し合うふたりだけに許された、子孫を残す神聖な行為だと、学校ではそう  
教えられたはずだった。  
 しかし、快楽を貪るためだけに行われることがあるとも知っていた。  
 アダルトDVDの映像──あられもない姿で街を歩かされ、乳房を晒され、車の  
中で淫らに声を上げていた女優──  
 男のモノを挿入された彼女は、艶めかしく身体をくねらせ、大きな乳房を  
揺らして、痙攣したように全身を震わせていた。  
 成人男性向けのいやらしい雑誌だって見たことがあったし、少女漫画にだって、  
過激な描写があふれている。  
 いくつもの情景が頭に浮かび上がり、性行為──セックスという言葉が像を  
結んだ。  
──入れられちゃうのかな……。  
 初めはすごく痛い──そう聞いていた。  
 彼女の親しい友人には、経験済みの子はいなかったが、さまざまなメディア  
では、そういわれている。  
──痛いのは、やだな……でも……。  
 痛いのは最初だけ──そうも聞いていた。  
 セックスは激しい快楽を伴う──自慰とは比べ物にならぬほどの強烈な快感  
だという。  
「夏海ちゃんのお尻、気持ちいいよ……」  
 男のモノが、夏海の幼いままの尻肉をぐりぐりと押してくる。  
 柔らかな肉の谷間に沿って、男の怒張が蠢いていた。  
──ほんとに、気持ちいいんだ……こんなのでも……。  
 自分にはまだ早いと思っていた性行為──  
 子を生すための、神聖な生殖行為だけではない。  
 快楽を得ることを主目的とした行為──手で男性器を握って刺激したり、口に  
銜えて舌を絡めたり──そういったものも知らないではなかった。  
──お尻……変な気分……。  
 背後の男によって無理矢理突き落とされた、快楽の海──  
 夏海はその波に翻弄されながら、未知の世界へと沈み込んでゆく。  
 
 高校二年生のとき──  
 弘輝は、ひとつ年下の少女と付き合っていた。  
 初めてできた恋人だった。  
 おとなしくて内気な、どちらかといえば奥手なタイプだった。  
 背が低く、身体つきは華奢で──彼の隣で裸体を震わせて悶えている少女に  
よく似ていたようにも思える。  
 部活の先輩後輩という関係で、いつしかふたりは親しくなり、ふたりで映画を  
見に行ったり、買い物をしたり──デートをするようになっていた。  
 彼がその手の行為に興味を持ち始めたのは、そのころだった。  
 インターネットで見た、淫らな体験談──  
 それは女子高校生の手記という体裁を取っていた。  
 今思えば、作り話だったのだろう。  
 しかし、彼はその体験談に激しい興奮と興味を覚え、身体を滾らせた。  
 高校生二年生──弘輝と同い年の少女が、恋人に強制されて行なっていると  
いう、淫らな行為の数々──  
 弘輝はとくに、校内でのプレイに強く惹かれ──チャンスは訪れた。  
 冬の日の放課後、部活を終えた彼は、偶然と必然が重なって、部室で彼女と  
ふたりきりになった。  
 そのころには、彼らはすでに男女の交わりを持っていた。  
 だが、彼はそれ以上を望んだ──  
 キスをして、制服の上から胸に触れた。彼女の小振りな乳房を揉みながら、  
制服を脱がそうとした。  
 彼女は抗った──  
「誰か来たら、困りますよぉ……」  
 興奮していた彼は聞く耳を持たなかった。  
 強引に彼女の制服をはだけさせ、下着を剥ぎ取った。  
「先輩、ダメです……」  
 彼女は涙を浮かべていた。  
 弘輝は彼女を窓際に立たせた。  
 校舎の三階にある部室の窓際──彼女は慎ましやかな膨らみを曝し、羞恥に  
震えていた。  
「やらしいだろ? 感じるよね?」  
 だが、彼女は首を横に振るだけで、彼の望む答えは得られなかった。  
──あったなぁ、そんなことも……。  
 現実に立ち戻り、弘輝は苦笑いを零した。  
 彼はその後も、映画館やカラオケボックス、図書館など──あらゆる場所で  
少女に羞恥を強要した。  
 彼女は──弘輝から去っていった。  
──普通はそうだよ……こんなの、まともな子なら嫌がるって……。  
 弘輝は、すぐ横で震える夏海に眼を向ける。  
「んっ、ふぁ……んぅ……」  
 彼女の小さな喘ぎが聞こえる。  
 剥き出しの乳房には、男の左手が重ねられていた。  
 立っているのが精一杯であろう少女を、背後にいる男は左腕で抱きながら、  
同時に乳房を弄んでいる。  
 男の右手は細い脚の付け根に伸びていて、ずっとそこを弄んでいる。  
 花火爆音、場内アナウンス、周囲の喧騒がなければ、きっと艶めかしい水音が  
聞けただろう。  
──でも、この子なら……。  
 艶やかな肌を朱に染めて快楽に身を振るわせる少女──  
 彼女なら、きっと自分の嗜好を満足させてくれる。  
 そう、今すぐにでも──  
 弘輝はおもむろに携帯電話をポケットにしまうと、右手を伸ばした。  
 中学一年生でありながら、人込みの中で肌を曝し、淫らに喘ぐ少女の手に、  
自分の手を重ねた。  
 
 夏海が初めて快楽を憶えたのは、まだずっと幼いころだった。  
 小学生になったばかり──男の子にはついているものが、自分にはついて  
いない──そんな、ちょっとした好奇心だった。  
 指で触れていると、むずむずとくすぐったいような、痒いような、不思議な  
感覚が湧き起こった。  
 だがそれは一過性のもので、続けることはなかった。そんなところに触れる  
のは汚いと、ごく真っ当な子供らしい判断だった。  
 その正体に気づいたのは、もっとあと──  
 学校で性教育の授業を受けてからだった。  
 徐々に変わり始めた身体に不安を抱き、しかしそれが大人への変化なのだと  
意識した、小学校高学年のころ──  
 性的な興奮を明確に意識したのも、そのころだった。  
 夏海の胸は急成長を遂げ、男子たちには好奇の眼で見られ、女子たちからは  
羨望と嫉妬の眼差しを向けられた。  
 からかわれて触られることもあった。痛くて恥ずかしくて、泣いてしまった  
ことが何度もあった。  
 父子家庭だった彼女は、親に相談するのも恥ずかしく、ひとりですすり泣く  
日々を送っていた。  
 けれど、今思えば──  
──恥ずかしかった……嫌だったよ……でも、わたし……。  
 今の夏海は、官能に飲み込まれてしまっている。  
──エッチな、気分に……なってたのかな……。  
 尻に押し付けられた男性の象徴が、彼女の興奮に拍車をかけていた。  
──わたし、ずっと前から……エッチな子だったのかも……。  
 彼女を襲った男の不意打ちから、ほんの二十分ほどしか経っていない。  
 その間に、大きな乳房も、無毛の秘処も曝されて、淫らな刺激を浴びせられ、  
恥ずかしい写真を何枚も撮られて──  
 たったそれだけの時間だというのに、そんな非現実的な状況は、夏海の過去の  
意識までをも改竄してしまった。  
──子供のころから……わたし、エッチで、いやらしい子だったんだ……。  
「ふぁ……っ!?」  
 不意に手を握られた。  
 背後の男は、夏海の一番敏感なところを右手でずっと刺激している。  
 彼女の身体を抱き支えている左手には、乳房を弄ばれている。  
──隣の人だ……。  
 抵抗する気はまったく起きなかった。  
 夏海は、導かれるままに、左手を伸ばしていった。  
 
 弘輝は、巾着の紐が絡んでいる夏海の左手首を掴んだ。  
 弘輝もまた、自らのモノを剥き出しにしていた。  
 彼女はまったく抗うそぶりもなく、弘輝はその可愛らしい手を、いとも簡単に  
引き寄せることができた。  
 触れた瞬間、ほんのわずかに、少女の汗ばんだ手がぴくりと震えて引っ込め  
られたが、それは抵抗ではなかった。  
 異物に触れたときの、生理的な反射行動だった。  
 彼が手に少しだけ力が籠めると、少女の手は素直に従った。  
──俺……やばいよな……。  
 中学一年生──まだまだ子供といえる歳の少女に、自分の卑猥なモノを触れ  
させている──  
 常軌を逸した行動に、鼓動はますます早く、呼吸も荒くなっていた。  
 沸騰するほどの興奮に正常な感覚は麻痺させられ、欲望だけが膨れ上がって  
弘輝を覆い尽くしてゆく。  
──やべぇって……これ、マジでやばいよ。  
 弘輝は少女の手に自分の手を重ねる。  
 指を広げて少女の小さな手を包み込むと、彼女の細くしなやかで柔らかな  
指が、弘輝のいきり立ったモノを握った。  
──中学生に手コキさせるとか……俺変態じゃん……。  
 そんなまともな感覚も残ってはいたが、だからといって、欲望を抑え込める  
だけの理性はどこにも存在しなかった。  
 
 
──へぇ……お隣さんも大胆だね……。  
 竹下もまた、弘輝が夏海の手を自分の股間へと導くのに気がついていた。  
 夏海の大きすぎる乳房の所為で、見えはしなかった──例え見えたとしても、  
男のモノを見る気にはなれなかった──が、彼女の左腕と、男の腕の角度から  
容易に想像できた。  
「すごいね、夏海ちゃん……どんな気分なのかな?」  
「んぅ、ふぁ……」  
 彼女は、自分のペニスを尻に押し付けられ、隣の若い男のモノを握ったまま、  
喘ぎ続けている。  
「男ふたりのちんぽ……どうだい?」  
「あっ、や……やぁ……」  
「もっと、ぎゅっと握ってあげるんだ……握って、こすってあげるんだよ」  
 竹下はほんの少し後悔していた。  
 尻に押し付けるのではなく、隣の青年のように、握らせればよかったと──  
そうすれば、彼女を独り占めにできたと──  
──でも……今の方が、ずっといやらしいな……。  
 そうも思っていた。  
 竹下は指先で彼女を責め続け、自分自身もまた、夏海のまだ小さい、若さに  
満ち溢れた尻肉を堪能する。  
──今日のところは、夏海ちゃんの手はあんたに貸すよ……。  
 誰とも知らぬ若者に、心の内で呼びかけた。  
 相手に竹下の言葉が届くわけもないが、ふたりは──いや、三人の男女は、  
人込みの中で恍惚の頂へと達する坂道を登り続けていた。  
 
 夏海はいわれるままに隣の青年の陽根を握り、手をぎこちなく動かした。  
 背後の男の台詞は、夏海をさらに淫らな少女へと変貌させていた。  
──おちんちん……硬い……こんな、すごいんだ……。  
 子供のころに見た、小さな筍のようだった、男の子のモノ──  
 縮れた毛に覆われた、父親の赤黒いモノ──  
 それは、そのどちらとも異なっていた。  
 幼い少年のそれとは、大きさからしてまったく違う。  
 最後に見たのは数年前──父親のそれとも、まったく違う。  
 アダルトDVDではぼかしがかかっていたし、大人向けの雑誌も修正が入って  
いた。少女漫画では眼に見える形では描写されていない──  
 唯一、インターネットのアダルトサイトで、そのグロテスクで生々しいモノを  
見たことがあった。  
 重力に逆らって天を衝くようにそそり立った不気味なモノ──  
 当然のことながら、触れたことなど一度もなかった。  
──気持ち悪いって、思ってたのに……。  
 尻に押し付けられ、手で握っているふたつの男性器──  
──わたしの、あそこに……こんなすごいの、入っちゃうんだ……。  
 いったいどれほどの大きさなのだろう──  
 眼で見ているわけではない。  
 だが、尻に当たる感覚、手に握った感覚──それらから察するに、どちらも  
太字の油性マーカーよりも太く、長い──  
──そんなの、入るのかな……。  
 夏海はまだ、自分の性器をよく知らなかった。  
 恥丘から尻にかけて股の間を縦に走る秘裂──そのいちばん前に、もっとも  
敏感なクリトリスがあり、裂け目の中は熱く潤む粘膜でできていて、どうやら  
小さな襞があるらしく、その中に、男性自身が挿入される──  
 その程度の記号的な知識しか持っていなかったのだ。  
──あそこ……おまんこ……さっきより、すごくなってる……。  
 夏海のそこは、快楽の露でぐっしょりと濡れている。  
 男の指が蠢くたびにじわじわとあふれ出し、腿の内側にまでべっとりと付着  
しているのが判る。  
 性的な興奮が高まると、そこが濡れるということは知っていた。  
 だが、強い刺激を与え続けることで、これほどまでに淫らな露があふれ、腿を  
伝い落ちるほどになるとは思ってもいなかった。  
──おっぱい、揺れてる……見られちゃって……写真も……。  
 肉体的な刺激だけではなかった。  
 羞恥という精神的な刺激もまた、快楽になるのだということも初めて知った。  
──エッチで……気持ちよくて……わたし、やらしいよぉ……。  
 そう思えば思うほど、夏海は昂ぶってゆく。  
 気持ちの昂ぶりと反比例するように、全身の力が抜けてゆく。  
 なんとか立っているものの、背後の男の支えを失えば、その場にうずくまって  
しまうだろう。  
 それなのに、隣の男のモノを握る指には、力が残っている。  
──やっぱり、わたし……エッチだからなんだ……。  
 そんなことも、自分がずっと前から淫らな本性を持っていたのだと錯覚して  
しまう要因になっていた。  
──お尻……不思議……気持ちいい……。  
 ペニスを押し付けられた尻が、快感を訴えはじめている。  
──おちんちん、すごいよぉ……わたし、ふたつも、おちんちん……。  
 ペニスを握る左手からも、快楽が湧き立つようだった。  
──気持ちいい……気持ちいいよぉ……!  
 濡れそぼった秘処からも、大きすぎる乳房からも、子供と変わらぬ尻からも、  
可愛らしい手からも──  
 何もかもから官能の刺激が漲ってくる。  
 周囲でざわめく人々の存在も、夜空で炸裂する大輪の花も、自分を知っている  
らしき背後の男も、自分のあられもない姿を撮影した青年も──  
 幼い身体を淫らに震わせている自分も──  
 すべてが、夏海を未知の悦楽の頂へといざなう刺激となっていた。  
 
──やべぇ、もう……出そうだ……!  
 少女の手の動きはぎこちなく、普段の彼ならば、それだけで達することなど  
なかっただろう。  
 だが、思いもかけぬところで再会した少女──  
 しかも、思いもかけぬ姿──大きな乳房をはだけて揺らし、秘処を弄ばれて  
快楽に吐息を漏らす、近所に住む女子中学生の姿が、弘輝を激しく興奮させ、  
いつもの数倍の早さで限界まで突き上げられていた。  
──なつき……いや、なつみ……そう、なつみだ……!  
 初めて会ったときのことを思い出していた。  
 彼のバイト先に現れた少女は、友人であろう少女たちから、なつみと呼ばれて  
いたはずだ。  
──字は……。  
 どう書くのだろうか。  
 夏美だろうか、夏実か、菜津美か──夏海とも書くかもしれない──  
──なんでもいいや……なつみちゃん……なつみちゃんか……。  
 
 
──夏海ちゃん、出そうだ……お尻にかけてあげるよ、夏海ちゃん!  
 荒い息を少女の耳元で吐きながら、竹下は絶頂へと迫っていた。  
 気がつけば、怒張に加わる刺激に変化が起きていた。  
 つい先程までは、自分が腰を押し付けていただけだったはずなのに、少女の  
細い腰も、艶めかしく波打っているではないか──  
──そうか、夏海ちゃんも、イきそうなんだね……。  
 中学一年生の少女とは思えぬサイズの乳房を持つ、佐伯夏海という少女──  
 彼女を初めて眼にしたときから、竹下はいつかこういう日が来ることを待ち  
望んでいた。  
 今日、この花火大会の人込みの中で、遂に念願叶い、竹下は夏海を捕らえる  
ことができた。  
 竹下の妄想──夏海の本来の姿は、羞恥と快楽に身を悶えさせる淫らな少女  
である──それは、ある意味では正鵠を射ていたといえるのだろう。  
 事実、彼女は竹下の加えた立て続けの羞恥に、心も身体も震わせ、すっかり  
快楽の虜になってしまってたのだから──  
──夏海ちゃん、これで終わりじゃないからね……。  
 無垢な少女を、自分好みの奴隷に調教する──そんな妄想に取り憑かれて  
いた竹下は、今のこの責めだけで終わらせるつもりなど毛頭なかった。  
──これから、もっともっとすごいことも教えてあげるよ……。  
 竹下は下腹部に精が集中するのを意識していた。  
「夏海ちゃん……イきそうなんでしょう? 一緒にイこうか……」  
 
「あっ、んっ……ひぅ、ふぁっ!」  
 夏海は断続的に喘ぎをもらしていた。  
 身体が勝手に震えてしまうのと同じで、声も勝手に出てしまう。  
──すごいよぉ、すごいっ! 気持ちいい……!  
 頭が真っ白になる──夏海は友人の言葉を思い出していた。  
──こんなっ、こんなの……すごい! わたし……エッチだよぉっ!  
 アダルトDVDの女優は、もっと激しく喘いでいた。  
 それはほとんどが演技である。視聴者を興奮させるための仕掛けだ。  
 だが、今の夏海にはそんな意識などあるはずもない。  
 ただ押し寄せる快楽の波に、自然に声を零してしまっていた。  
「僕もイくからね……たっぷり出してあげるからね」  
 男が耳元で囁く。  
 男の荒い息遣いが、夏海を煽ってさらなる高みへと導く。  
「ひっ、あぁっ! んぅっ……」  
──エッチな声……イく、イっちゃうの……!  
 自分の喘ぎも、彼女を煽り立てる。  
「夏海ちゃん、安心していいよ……これで終わりじゃないからね……これから、  
もっともっと、すごいこと……教えてあげるからね……」  
 夏海は快楽に翻弄されて、頭が回らなくなっている。  
 男の言葉が夏海の鼓膜を震わせてから、それを脳が理解するまでに、何秒も  
かかってしまう。  
──もっと、すごいこと……もっともっと、すごいの……?  
 未知の刺激に曝され、湧き立つ衝動に翻弄された夏海──  
「あぅっ、ふぁ……もっと、すごいこと……?」  
 夏海は初めて、男に言葉を返した。  
 喘ぎながら、かすれて消えかけた声だったが、男の耳には届いていた。  
「そう、もっと……もっとすごいことだよ」  
「んぅっ! もっと、ふぁっ、すごい……」  
 呆けたように繰り返す。  
「夏海ちゃんにだけ……教えてあげる」  
「わたし、だけに……ふぁっ!」  
 男の指が夏海の淫核の抓み上げ、彼女の身体がびくんと大きく反り返る。  
 そして──  
「今度学校で……個人授業してあげる」  
──学校……授業……!?  
 男──その声の主──  
 背後に密着し、自分をあられもない姿にさせて、抑えようのない快楽を与え  
続けてきた男──その人物に、夏海はようやく辿り着いた。  
 夏海は凍りつくような想いと──  
 それまで以上の、爆発的な興奮に襲われた。  
──竹下、先生……!?  
 背後の男は、彼女の通う中学校の教師だったのだ。  
 
──やっと気づいたみたいだね、夏海ちゃん……。  
 もうじゅうぶんなほどに快楽を訴えていた夏海──彼女の身体が、さらなる  
興奮を湧き立たせたのは明らかだった。  
 教師でありながら、教え子に淫らな妄想を抱き、あまつさえそれを実行して  
しまう──竹下は、そんな男だった。  
 七年目になる教師生活──彼は何人もの女子中学生と関係したことがあった。  
 その多くが、出会い系サイトで知り合った、金銭の授受がある──いわゆる  
援助交際だったし、何人かは自分の職場の生徒でもあった。  
 しかし──彼にとって、夏海ほどの逸材に出会ったのは初めてだった。  
 彼女は彼の望むあらゆる要素を備えていたし、彼の望むとおりの反応を示し、  
そして、彼の望んだ行為をことごとく受け入れた。  
──やっと出会えた……僕の真の性奴隷だ……。  
 彼はこの先、彼女にどんな責めを与えようかと夢想する──  
 学校で、下着を脱がせるのもいいかもしれない。肌の透ける服を着せて連れ  
歩くのもいいかもしれない。  
 性玩具を仕込み、授業を受けさせるのもいいだろう。口の堅そうな男子を呼び、  
淫らな姿を曝させるなんてどうだろう。  
 それよりなにより──彼女の純潔を、どうやって奪ってやろうか──  
 竹下は欲望を募らせながら、下腹部に神経を集中させる。  
「イくよ、夏海ちゃん……一緒に、イこうっ!」  
 竹下は亀頭の裏筋を、少女の柔らかな尻と細い腰にこすりつけ、指先で少女の  
身体を弄びながら、登り詰める──  
「イくよっ、出すよ──っ!」  
 竹下の欲望が爆発した。  
 夏海のおろしたての浴衣の下で、彼女の白い腰に大量の精をぶちまけた。  
 
──竹下先生……先生だったんだ……。  
 ほんの二十分あまりの時間──夏海は、自分の通う中学校の教師に弄ばれて  
いたのだった。教師であれば、自分を知っているのも頷けた。  
 彼の担当に、夏海のクラスは含まれていなかったが、一度だけ、本来の担当  
教諭の代理として、彼女らは授業を受けたことがあった。  
 その授業で指名されたことを彼女は憶えていたが、それ以外には挨拶をする  
程度で、ほとんど言葉を交わしたことはない。とりたてて特徴のない、どこに  
でもいそうな三十ほどの男性──そんな印象だった。  
 まさか、自分の教え子に、こんなことをする人物だとは思ってもいなかった。  
──わたし、先生に……こんなことされてっ……!  
 教師にこんな行為をされ、昂ぶり悶えてしまっている──そんな自分の姿が  
彼女をさらに激しく燃え上がらせた。  
「イくよ、夏海ちゃん……一緒に、イこうっ!」  
 男の──竹下教諭の声が、耳元で終着を告げる。  
──先生、イっちゃうんだ……私のお尻で……。  
「んっ、はぁっ……ぁっ!」  
 彼のモノがより激しく押しつけられ、夏海を刺激する指も、この上ないほど  
激しくなる。  
 夏海もまた──彼に尻を押しつけるように腰をくねらせてしまう。  
──わたしも……イきたいです、先生……!  
 淫らな衝動を掻き立てられ、心までもが飲み込まれていた。  
「ひっ……んっ、あっ、ふぁっ……!」  
 全身ががくがく震えて、悦楽に侵食されてゆく。  
 頭の天辺から指の先まで──痙攣したように小刻みに跳ねながら、背が反り  
返り、顎が上がってゆく──  
──あっ! 先生っ……!  
 竹下に、ずんと腰を打ちつけられると同時に──自分の腰に熱いものがぶち  
まけられるのを夏海は感じた。  
 
「んっ、はぁっ……ぁっ!」  
 少女の喘ぎが高まっている。  
 周りに気取られぬよう、弘輝は横目で彼女を伺っていた。  
──なつみちゃんも、イきそうだ……。  
 弘輝は込み上げる衝動に堪えながら、タイミングを計っていた。  
 ただ肉体的な昂ぶりだけでするよりも、精神的にも最高潮のときにするほうが、  
より激しい恍惚感が得られるものだ。  
 弘輝は夢想する──  
 中学生のなつみ──羞恥に官能を覚えてしまうこの少女に、ありとあらゆる  
羞恥を味わわせようと──  
──これ使えば……なんだって……!  
 自分には手段があるのだ。  
 少女のあられもない姿を写した写真──それを使えば、この少女を思うままに  
することができる──  
「ひっ……んっ、あっ、ふぁっ……!」  
 少女の身体ががくがくと揺れる。  
──やべ、もう……イく、出るっ!  
 限界だった──  
 弘輝は少女の手ごと、自分の滾りの先端を握り込んだ。  
 滾る欲望が下腹部に一気に集中し──  
「ん……くぅっ!」  
 少女の手のひらに握られながら、弘輝はどくどくと精を解き放った。  
 びくびくと腰を震わせながら、自分の精にまみれた少女の手のひらを味わい  
ながら、余韻に浸った。  
 
 
「あっ、あぁっ……!」  
──先生の、精液……!  
 それが竹下の白く濁った欲望のほとばしりなのだと、夏海は理解できた。  
──お尻に、かけられちゃったぁ……!  
 夏海の尻と腰に、竹下の精液が何度も何度も浴びせかけられた。  
──すごいっ、いっぱい……出てるよぉ……!  
 きっと、浴衣にもべっとりと付着しただろう。  
──先生に、されちゃった……エッチな、わたし……。  
 そして──  
 衝撃に打ちのめされた夏海に、さらに追い討ちがかけられた。  
「ひゃぅっ……!?」  
 左手で握っていた、隣の男の欲望も──  
──手に、熱いのが……出てる……!  
 想像を上回る勢いで、夏海の小さな手のひらに、男の精液が何度も何度も  
浴びせかけられた。  
──おちんちん……精液……せーえきっ……いっぱいっ……!  
 身体の芯に、未知の衝動が収束し──  
「ひっ、んっ、あぁ……っ!」  
──イっちゃう、わたし、イっちゃうんだ……!  
 官能が、快楽が、本能が──  
 衝撃となって解き放たれた。  
 
 連続した炸裂音──いくつもの閃光が夜空にほとばしる。  
 スターマインが再び空を光の海に変えていた。  
 その下で、夏海は──  
「ひゃっ、ひあぁ──っ!」  
 身体が、ひときわ大きく跳ねた。  
 なにかに打ちつけられたかのように、夏海の全身が強く弾けた。  
 夏海は──  
 初めての絶頂に達した。  
 びくびくと震えていた。  
 がくがくと痙攣していた。  
 身体だけでなく、心も恍惚に震えていた。  
 一度も味わったことのない強烈な快楽だけが、彼女を支配していた。  
 達する瞬間に、自分でも驚くほどの声を挙げていた。  
 背後の男、左隣の男──ふたり以外にも、気づかれてしまったかもしれない。  
 だが、夏海はそんなことよりも、身体中に広がった愉悦の残滓に身をゆだね、  
とろけそうな気持ちに浸っていた。  
「ふぁっ、はぁっ……」  
──頭、真っ白だよぉ……。  
 友人が語っていたとおり──夏海の頭の中は、真っ白だった。  
──これが、イく……わたし、イっちゃった……。  
 初めての絶頂──  
 背後の男──自分の通う中学で教師をしている竹下にされた、数々の淫らな  
行為が、夏海にそれをもたらした。  
 人込みの中で中学生離れした乳房を曝し、幼いままの姿を留める秘処を曝し、  
淫らな刺激を与えられて、ついに悦楽の頂点に達してしまった。  
 隣の男──彼が何者か夏海には判らなかったが、もしかしたら、彼もまた、  
夏海を知っているのかもしれない。  
 その男には、何枚もの写真を撮られてしまった。あられもない姿を撮られて、  
しかし夏海はそれにすら快感を覚えてしまっていた。  
──わたし、ほんとに……エッチな子……。  
 崩れ落ちそうにな身体は、竹下によって支えられている。竹下は右腕で腰を、  
左腕で胴を抱え、夏海の身体を抱きとめていた。  
 尻に押しつけられていた竹下のモノは、硬さを失い、存在感を消していた。  
 尻から腰にかけて浴びせられた、大量の粘液の感覚だけが残っている。  
 左隣の男のモノも、ぐにゃりと軟らかく変化していた。  
 だが、握っていた手の中は、大量の精液で満たされている。  
──やだ、わたし……!  
 じょじょに静まってゆく官能とは反対に、正常な理性が回復しはじめていた。  
──わたし、こんなこと……やだぁ……!  
 身体が震えた。  
 昂ぶりが治まると、純粋な羞恥と、強い恐怖が再び頭をもたげてきた。  
「おつかれさま、夏海ちゃん……」  
 竹下が耳元で囁いた。  
 反射的に身を強張らせ、隣の男のモノを握っていた手を引っ込めた。  
──どうしよう、どうしよう……!  
 意識が飛びかけるほどの快楽の中でも、かろうじて携帯電話は握ったままで  
いられたようだ。  
 腰には、べっとりと竹下の精液が付着している。浴衣にも染み込んでいるのは  
判らないわけがなかった。  
 左手は見知らぬ男の精液でどろどろに濡れている。  
 浴衣の裾は下りていたが、乳房は曝したままで──  
 
 竹下は夏海の身体を抱いたまま、浴衣の襟を正してやる。  
 大きすぎる彼女の乳房はそれを容易にはさせてくれなかったが、今は一刻も  
早くそうしてやるべきだった。  
──恥ずかしいんだね、夏海ちゃん……震えてるよ。  
 ひと時だけの責めで、這い上がれぬほどにまで彼女を沈ませられるなどとは、  
彼も考えてはいなかった。  
──これから、少しずつ、仕立ててあげるからね……。  
 強引にはだけさせたがゆえ、綺麗に元通りというわけにはいかないだろう。  
 浴衣の腰には精液も付着している。これからまた友人たちと合流し──という  
わけにはいかないだろう。  
 彼女の家はもちろん知っている。  
──送っていってあげるからね……。  
 もし、出迎えに父親が現れたとしても、気にすることはない。  
 自分は教師だ──ひとりで人込みの中を右往左往していた彼女を保護したのだ  
とでもいえば問題ない。  
 彼女の泣き顔は、友人たちとはぐれた所為だ。浴衣が乱れているのは、熱さと  
慣れぬ和服の扱いを知らぬ所為だ──  
 どうとでもいえる。  
 少なくとも表面上は、彼はまっとうな教師なのだから──  
 そろそろ自分の脚で立てるようになった夏海から手を離し、剥き出しのまま  
だった性器をしまうと、ポケットからハンカチを出して彼女の手に握らせた。  
 夏海は素直に受け取り、しばらくそのまま握っていたが、やがてごしごしと  
手のひらを拭きはじめた。  
 
 
 弘輝は久しぶりの射精感に満たされていた。  
 自分のモノをいそいそと引っ込める。  
 急速に萎えたそれと同様に、次第に昂ぶりも治まり、罪悪感が顔を出してきた。  
──やっちまった……やべぇなぁ……。  
 だが──彼は最高級の満足感も味わっていた。  
 まだ中学一年生の少女──近所に住む、おっとりとした雰囲気の純粋そうな  
女の子に、自分のペニスを握らせて、大量の精を放ったのだ。  
 彼自身のモノにもまとわりついていて不快だが──そんなことは大したこと  
ではない。  
──この子……なつみちゃんか……。  
 横目で窺う。  
 彼女はまだ震えていた。  
 背後の男が身体を抱えながら、彼女の浴衣の乱れを正していた。  
──さすがに、正気に戻ったみたいだな……。  
 彼女の震えは、もう快楽のそれではないようだ。  
 しかし、つい先ほどまでは確かに歓喜に震えていたのだ。  
──あいつ……俺のことも気づいてたよな?  
 弘輝は、彼女の背後の男が何者なのか知らない。  
 自分が彼女の手を引き寄せたことは、もちろんその男には判ったはずだ。  
 自分が彼女に自分を握らせ、手のひらに射精したことも、気づいただろう。  
──独り占めする気はないってか?  
 わずかな嫉妬が揺らめき、舌打ちする。  
──まぁいいさ、この子は俺の近所に住んでるんだ。いつだって……。  
 手を出そうと思えば出せる──そうほくそえんだ。  
 弘輝の特殊な、異常な性的嗜好を満たしてくれるであろう少女に──自分の  
欲望をすべてぶつける日を思い描いていた。  
 
 花火大会は、クライマックスだった。  
 続けざまにスターマインが打ち上げられる。  
 どれほどの資金がかけられているのか、夏海は知らない。  
 数ヶ月前まで彼女が暮らしていた都会の大花火大会とは、花火の量も観客の  
数も、比較にならないほどだった。  
 だが、この町とその周辺に暮らす人々にとって、年に一度の恒例行事として  
根付いているのだろう。  
 町の鎮守の、年に一度の例祭に合わせた、奉納花火大会──  
 祭りとは、神聖なものなのだろうと夏海は思う。  
 性行為も、神聖なものなのだろうと彼女は思う。  
 けれど、自分は──  
 そんな神聖なものを冒涜するかのように、男の愛撫に身をゆだね、淫らに喘ぎ、  
達してしまった──  
──わたし……エッチな子だよぉ……。  
 友人からのメールを読み、夏海は息をついた。  
 彼女らがどこにいるのか、メールの文面だけではよく判らなかった。  
 判ったとしても、ひとりで暗い人込みの中を掻き分けて歩くのは難儀だろう。  
 それに──浴衣が乱れている。  
 竹下が襟を戻してくれたといっても、整えられたわけではない。浴衣で胸を  
隠したというだけにすぎなかった。  
 腰から尻にかけて、彼の精液がまとわりついている。浴衣にも染みている。  
 こんな姿を、友人たちに見られるわけにはいかなかった。  
『やっぱり場所よくわかんないよ〜。終わったらひとりで帰るね。心配かけて  
ごめんね〜』  
 普段どおりの文面と変わらぬよう、無理に言葉を選んで打ち込んだ。  
 正常な判断力を取り戻した夏海の心は、絶望感に打ちひしがれていた。  
 身体にはまだ快楽の残滓が漂い、ほんの今し方まで続いていた快楽が現実の  
ものであったことを──そして、それに酔いしれていた自分が確かに存在して  
いたことを理解させた。  
──わたし、どうなっちゃうのかな……。  
 未知の世界に足を踏み入れる不安──  
 転居することを父親から知らされた日──  
 引越しを終えてからの日々──  
 中学校の入学式──  
 どれも不安でいっぱいだった。  
──もっと、すごいこと……。  
 竹下の言葉が思い返され、不安になる。  
 隣の男に撮られた写真──それも彼女を不安にさせる。  
──きっと、わたし……もっともっと、エッチになっちゃうんだ……。  
 それは──いいことなのだろうか。悪いことなのだろうか──  
 気持ちよかった──たまらなく気持ちよかった。  
 興奮した──怖いくらいに興奮していた。  
 だが、不安とは、期待の裏返しなのだ──  
 夏海は閃光に埋め尽くされた夏の夜空をぼうっと見上げながら、これから  
自分がどうなってしまうのか──不安と、しかし、強い好奇心と、確かな期待  
とが、心を支配しているのを意識していた。  
 
 

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