真夏の熱気が漂う、蒸し暑い教室──  
 夏海は黒板の前に立ち、クラスメイトたちの、好奇と、侮蔑と、興奮の入り  
混じった眼に曝されて震えていた。  
──やだ、見ないで……。  
 夏海は制服を着ていたが、背後に立つ教師が、スカートを捲り上げている。  
 夏海は下着を穿いていなかった。  
 クラスメイトたちは、彼女の剥き出しの下腹部を凝視している。  
 彼女のそこには一本の恥毛も生えておらず、子供のままの姿を、クラスの皆に  
曝していた。  
 竹下という名の男性教師は、竹下は始業のベルが鳴るとすぐ、夏海を教室の  
前まで引っ張り、彼女の身体に手を伸ばした。  
 夏海は、中学一年生──背が低く、華奢で顔立ちも幼い。まだ子供っぽさの  
残る、小学生といっても通じるような少女だ。  
 だが──彼女の胸の膨らみは、同年代の少女たちをひとまわりもふたまわりも  
上回っている。  
 白い制服のブラウスの下には、何も身に着けていない。  
 薄い生地は汗ばんだ肌に張り付いて、彼女の身体のラインを──小柄で華奢で  
あるがゆえに、さらに大きく感じられる乳房も浮かび上がらせていた。  
──やだぁ……ダメだよぉ……。  
 竹下に捲られていたスカートは、いつの間にか夏海自身が手で握っている。  
──あっ、ダメっ……!  
 竹下は夏海のブラウス上から夏海の乳房に手を重ね、合わせを掴んだ。  
 ぐいと強引に左右に広げ、ボタンが千切れて跳んだ。  
──あぁっ!  
 夏海の大きな乳房が露になった。肌は上気し、汗が浮かんでいる。  
 彼女の荒い息に合わせて揺れる双丘には、桜色の小さな突起がつんと勃って  
いて、あどけなさと艶めかしさを醸し出している。  
──見てる……みんな、わたしのおっぱい……。  
 だが、眼を閉じて、クラスメイトたちの視線から逃れることができない。  
 暴れて竹下の腕から逃れることもできない。  
 いや、できないのではない。しないのだ。  
 夏海は、身体を震わせて、羞恥に曝されながら、昂ぶっていた。  
「あっ、んぅ……」  
 竹下の手が、夏海の乳房を掴んだ。  
 男子生徒たちはどよめき、女子生徒たちは小さな悲鳴をもらす。  
「はぁっ……あぁ……」  
 反対の手は、秘処を弄ぶ。夏海の小さな口から、快楽の吐息がもれた。  
──エッチだよぉ、わたし……エッチになってるよぉ……。  
 夏海は一気に官能が昂ぶるのを自覚する。  
 竹下の責めに、身体が反応してしまう。快感が押し寄せ、全身が震える。  
 艶めかしい声がもれ、幼い秘裂から淫靡な蜜があふれだす──  
「あっ、あぅっ……ふぁっ……!」  
 クラスメイトたちは、携帯電話を手にしていた。  
 背面のカメラを夏海に向けていた。  
 いくつものシャッター音が響く。  
──撮られてるっ、わたしのエッチな写真……みんなが撮ってる!  
 クラスメイトたちが近寄ってくる。  
 写真を撮りながら、手を伸ばしてきた。  
 男子も、女子も──夏海の身体に手を伸ばし、制服を剥ぎ取ってゆく。  
「あぁっ! ダメっ、触らないでぇ……」  
 腕を掴まれ、脚を掴まれ──夏海は全裸にされてしまった。  
 脚を広げられて、濡れそぼった秘処を弄られる。  
 乳房を揉まれ、乳首を抓まれる。  
──やだっ、やだぁ!  
 
 
「嫌ぁ──っ!」  
 夏海は悲鳴を上げて、タオルケットを跳ね除けた。  
 全身にびっしょりと汗が浮いていた。  
──夢かぁ……。  
 息が上がっていた。  
 教室ではなかった。引越して来て四ヶ月ほど過ぎた自宅──だいぶ見慣れた  
自分の部屋の天井──  
 夏海はベッドの上で仰向けになっていた。  
 室内は暗く、オーディオ類の赤いLEDランプと、カーテンの隙間から差し込む  
街灯の明かりだけが、わずかに部屋を照らしていた。  
 呼吸が乱れていた。  
 パジャマも乱れていた。  
 薄い水色の地に猫のイラストがプリントされた、半袖のパジャマのボタンは、  
いくつか外れてしまっていて、彼女の白く大きな乳房が露になっていた。  
 枕もとの、猫の形をした目覚まし時計は、午前三時を示していた。  
──またエッチな夢だぁ……。  
 ちょうど一週間前の夏祭りの晩、夏海はとんでもない目に遭った。  
 花火見物でごった返す人込みの真っ只中──  
 浴衣を捲られ、胸をはだけられ、写真を撮られ、快楽の虜にされてしまった。  
 まだ自分には縁遠いものだと思っていた性の戯れ──快楽の海に投げ込まれ、  
頭まで沈み込んでしまったのだ。  
──わたし……ほんとにエッチな子になっちゃったのかな……。  
 夏海はごろんと横を向き、もう一度溜息をついた。  
 エアコンは止まっている。深夜だというのに、部屋は暑い。昼間よりはマシ  
だが、今夜も熱帯夜だ。  
 息を整えながら、ぐしゃぐしゃになった髪を指で梳く。  
 パジャマの乱れを直し、乳房を隠してボタンを留めた。  
 あれから一週間──夏海は毎晩のように淫らな夢を見ていた。  
──やだ、濡れてる……。  
 秘処が濡れているのが判る。乳首も敏感になっている。  
 恐る恐る手を伸ばし、手のひらを乳房に重ねた。  
──気持ちいい……。  
 身体がぴくりと震えた。  
 今までは、胸に触れただけで快感を覚えることなどなかった。服がこすれる  
程度でも、鈍い痛みを訴えてきただけだったのに──  
 だが、あの日から夏海の身体は変わってしまった。  
「んっ……」  
 寝巻き越しに軽く触れただけで、じわじわと快感を覚えてしまう。  
 皮膚に与えられた刺激が、あのときの出来事を連想させるのだ。  
 あのとき、観衆の直中で昂ぶっていた自分──淫らに身体を震わせ、小さな  
喘ぎをもらしていた自分を、思い起こさせる。  
 快感は、肉体的に刺激を知覚しただけでは湧き立たない。  
 体験、状況、記憶、感情──それらの自分が持っている情報と、与えられた  
知覚とが結びつき、脳の中で処理されて、快感として認知されるのだ。  
──わたし、エッチな子……。  
 夏海は身体の疼きを抑えきれずに、秘処へと指を伸ばしていった。  
 
 夏海が朝食の後片づけを済ませて、自室で制服に着替え終わったとき、机の  
上の携帯電話が振動した。  
 青いLEDランプの点滅は、メールの着信だ。携帯電話を開き、確認する。  
 送信者はアルファベット一文字で、T──  
──先生からだ……竹下先生……。  
 T──TakeshitaのTであり、teacherのTなのだろう。  
 祭りの日の夜──  
 夏海は自分の通う中学の教師である、竹下という男に弄ばれた。  
 彼に自宅まで送り届けられる途中に、夏海は携帯電話を奪われ、電話番号と  
メールアドレスを知られてしまった。  
 さらに、彼は自分自身のアドレスを夏海の携帯電話に入力し、別れ際にこう  
言った。  
「これでいつでも、夏海ちゃんを呼び出して、調教してあげられるね」  
 調教という言葉が夏海には解らなかった。  
 だが、竹下から電話やメールがくれば、きっとまた淫らなことをさせられる  
だろうということぐらいは理解できた。  
 その日の出来事は、夏海を苦しめていた。毎晩のように見る淫夢。ふとした  
ことで思い返される、羞恥と官能──  
 夏海は恐る恐るメールの本文に目を通した。  
『おはよう、夏海ちゃん。今日から僕の授業だよ。よろしくね』  
──竹下先生の、授業……!  
 背筋が凍りつくような気持ちに襲われた。  
 夏海の通う中学校では、先週の水曜から夏期の課外講習が始まっていた。  
 週が明けて今日は月曜日──あさっての水曜日まで行なわれる。  
 前半の三日間は、通常通りのクラス編成でペーパーテストを行ない、後半は、  
一学期の成績とそのテストの結果を加味し、苦手な教科を中心にクラス編成が  
組み替えられ、補習授業が行なわれることになっていた。  
 今日からの後半──彼女が組み込まれたクラスの担当教師のひとりが、竹下  
なのだろう。  
 あの日の記憶がよみがえる──  
 人込みの中、浴衣をはだけられた。乳房を揉まれ、乳首を刺激された。浴衣の  
裾を持ち上げられて、誰にも触れらたことのない秘処を弄ばれ──  
 顔が上気してしまう。  
──やだ、そんな……。  
 数時間前に見た夢がよみがえる──  
 すでに断片的な記憶しかない、淫らな夢──クラスメイトの前で肌を曝され、  
弄ばれて──  
──あれは、夢……ただの夢だよ……。  
 身体が震えてしまう。  
 夢に見た、非現実的な光景などありえない。あんなことになるわけがないと  
夏海は否定する。  
 だが、一週間前の夏祭りの夜、夏海の身に降りかかった出来事は、非現実的  
ではなかったか──  
 人込みの中で肌を曝け出した夏海は、名も知らぬ男の性器を握らされ、腰に  
竹下の怒張を押しつけられ、淫らに達してしまったのだ。  
 手のひらで、細い腰で、男の精を受け止めたのだ。  
──やだ……あんなの、やだよぉ……。  
 携帯電話を握りながら、夏海は震えていた。  
 メールの本文には続きがあった。  
 そこには、夏海を絶望に突き落として余りある文章が綴られていた。  
『今日はあのときみたく、ノーブラノーパンで登校すること。いいね?  
 もし下着を着けてきたら……あの写真がどうなるか、わかるよね?  
 楽しみにしているよ、夏海ちゃん』  
 
──ノーブラ、ノーパンで、登校……?  
 思考が止まった。  
 文字を眼で追い、言葉として認識し、文章として構成される。  
 だが、夏海の脳は、しばし意味を理解することを拒んだ。  
 ほんの数秒程度の短い時間だったが、頭が真っ白になっていた。  
 そして、じわじわと内容が浸透してくる。  
──やだ……写真……やだっ!  
 小さな液晶画面に映し出された記号の羅列は、夏海の心を打ちのめした。  
 あの日の記憶が夏海の脳内を駆け巡る──  
 友人たちと楽しんだ夏祭りの一日。  
 その夜、花火大会の会場での出来事。  
 剥き出しの大きな乳房。捲り上げられた浴衣。淫らな蜜の濡れた無毛の秘処。  
 手のひらで受け止めた粘液。腰から尻にべっとりと張り付いた精液。  
 隣の男は、何枚も写真を撮っていた──  
──やっぱり……そうだったんだ! あの人もっ……!  
 あのとき夏海の左隣にいた若い男は、夏海の痴態を携帯電話のカメラで撮影  
していた。  
 夏海は、その男は竹下の仲間なのだと思っていた。竹下が自分を恥ずかしい  
姿にし、隣の男が撮影する──そういう段取りだったのだろうと。  
 きっといつか、写真をネタにして脅される──そんな予感があったのだ。  
──どうしよう……写真……。  
 メールの指示に従わなければ、きっと写真をばら撒かれてしまう。インター  
ネットで公開されれば──自分の恥ずかしい姿が、想像もできないくらいの人  
たちに見られてしまう。  
 きっと、学校の生徒たちも見ることになるだろう。  
 余所者の自分と友達になってくれたクラスメイトたちも見るだろう。  
 生まれ育った都会の学校に通っていた者たちにも見られてしまう。  
 大好きな父親にも、遠く離れた場所にいる親戚や祖父母にも──  
 恐怖と羞恥が、夏海を凍りつかせていた。  
──そんなのやだ……ダメ……。  
 あんな写真は、誰にも見られるわけにはいかない。  
 絶対に見られてはならない。  
 だが──  
──ノーブラ、ノーパンで……学校なんて……。  
 そんなことも、できるわけがない。  
 初めてブラジャーを着けたときは、恥ずかしくて死にそうだった。  
 しかし、夏海の乳房は同年代の子とは比べ物にならないほどに膨らんでいる。  
今となっては、ブラジャーを着けていることが当たり前なのだ。  
 着けていなければ、誰の眼にも明らかだろう。ブラジャーを着けずに人目に  
触れる場所になど出られるわけがない。  
 ショーツもそうだ。  
 ショーツを穿かずにスカートだけを穿くなど、できるわけがない。  
 確かに夏海は他の少女たちと違って、スカートをギリギリまで短くして穿く  
ことはないし、本来なら膝まであるスカートは、脚の付け根まで曝してしまう  
ことはないだろう。  
 意図的に捲らない限り、気づかれることはない。  
 それでも、下着を着けていないというのは、とてつもなく心細い。  
 あの夏祭りの日──夏海は下着を着けずに浴衣を着て町に出た。  
 けれど、それは友人が皆そうなのだと思っていたから、勇気が出せたのだし、  
それが悪ふざけだと判明してからも、事情を知っている友人──もっとも信頼  
している友達がいたから──  
 夏海はその夜、それまでの、性とは無縁の無垢な少女ではなくなった。  
 二人の男たちから、想像したこともない羞恥と快楽を与えられてしまった。  
 もし竹下の指示どおり、ブラジャーもショーツも着けずに登校したら──  
 
 竹下は、通勤に自家用車を使っている。  
 4ドアのコンパクトなファミリーカーとして人気のあるモデルだ。車に特に  
思い入れのない彼は、ディーラーから勧められるままに購入した。  
 免許を取得してから約十年──無事故無違反のゴールドドライバーだった。  
 昼食用の弁当を買いに立ち寄ったコンビニエンスストアの駐車場で、竹下は  
携帯電話のメールを送信した。  
 シートベルトを締め、満足そうな笑みを浮かべながら、エンジンを始動する。  
──夏海ちゃんは絶対言われたとおりにしてくるさ……。  
 彼女は羞恥が好きなのだ。露出行為に昂ぶる少女なのだ──そう竹下は確信  
していた。  
 確かに夏海はあの夜、自分に大切なところを露にされ、刺激されて、逃げも  
せず助けを呼ぶこともせずに、官能に溺れていた。幼い身体を震わせ、身体に  
似合わぬ大きな乳房を揺らしていた。  
 淫らな蜜を滴らせ、艶めかしく喘ぎ、ついには達してしまったのだ。  
──それに……。  
 彼女は勘違いをしているようだった。  
 彼らの隣にいた男──二十歳前後の大学生くらいの青年だった──が、携帯  
電話のカメラで、夏海の痴態を撮影していたのだが、どうやら彼女はその男を  
自分の仲間だと考えているようだった。  
 あの青年が何者か、竹下には解らない。おそらくこの町の住人だろう。  
 二十歳前後であろうから、自分がこの町の中学に赴任するより前に卒業して  
いるだろう。自分の顔は知らないはずだ。  
 もっとも、知られていたとしても、気にすることはない。  
 あの青年もまた、自分とともに彼女を弄んだのだ。同罪である──むしろ、  
同じ嗜好を持つ仲間である可能性が高い。  
 夏海を自分だけのものにすることは、とてつもなく魅力的だった。  
 だが、あの若者とふたりで責めるのも悪くない──何者かは知らぬが、彼が  
自分と同じ嗜好を持っているのなら、きっと夏海に接近するだろう。となれば、  
夏海を調教することは、もっと楽しくなるに違いない。  
 竹下はほくそえみながら、車を発進させた。  
 
──しょうがないよ……写真をばら撒かれるより、マシだもん……。  
 心の中で自分に言い聞かせる。  
 夏海は、襟元に結ばれた臙脂のリボンを解き、白いブラウスのボタンを外す。  
 ひとつずつ、ゆっくりと、震える指で外してゆく。  
 腕を抜き、ブラウスを脱いで椅子の背もたれにかけた。  
 下に着ていた白いキャミソールも脱いでしまう。  
 うっすらと日焼けの跡の残る白い肌──淡いピンクの下着が中学一年生とは  
思えぬ膨らみを覆っている。  
 鼓動が早くなっていた。羞恥に身体が震えていた。  
 夏海は両手を背に回し、ホックを外す。  
 圧迫されていた彼女の乳房は、ぷるんと音を立てるかのようにブラジャーを  
跳ね除けた。  
 外したばかりのブラジャーはCカップで、半年以上前に買ってもらったもの  
だったが、その頃にはもう、彼女の胸はそのサイズを超えていた。  
 身に着けることはできるが、カップは夏海の膨らみを覆い尽くせず、いつも  
彼女に窮屈な思いをさせていた。  
 夏海は、バストサイズをきちんと測ったことがない。  
 一度だけ学校の友人たちと下着の店に行ったことがあり、店員からきちんと  
サイズを測定することと、自分のサイズに合ったものを着けることの大切さを  
聞かされたが、夏海は測定を断った。  
 自分の正確なサイズを、友人たちに知られるのが恥ずかしかったのだ。  
 夏海の上半身を隠すものは何もない。  
 小柄で華奢な彼女の体躯には不釣合いな、大きすぎる乳房が、身体の震えに  
合わせて揺れている。  
 御椀を伏せたようなと形容するのがぴったりの整った膨らみは、瑞々しさと  
若々しい張りにあふれている。  
 その頂点には可憐な淡い桜色の突起がちょこんと乗っていて、夏海の緊張と  
羞恥を表すかのように収縮していた。  
──恥ずかしい……やだよぉ……。  
 自室であるのに、視線を浴びているような気になる。  
 自分はこれからブラジャーを着けずに登校するのだと思うとますます羞恥が  
高まってゆく。  
──パンツも……脱がなくちゃ……。  
 外したブラジャーを机に置くと、スカートに手を潜り込ませる。  
 上下お揃いのショーツに指をかけ、膝を曲げながらぎこちなく下ろしてゆく。  
──恥ずかしい……でも、我慢しなくちゃ……。  
 ブラジャーもショーツも着けずに登校しなければならない。  
 そうしなければ、写真をばら撒かれてしまうのだ。  
 片方ずつ脚を抜き、ショーツを脱いでしまう。  
 ふと、部屋の隅に置かれた、姿見が視界に入る。  
──やだ、わたし……なんで、こんな……。  
 鏡には、スカートだけを穿いた自分の姿が映っていた。  
 大きな乳房を曝し、手には脱いだショーツを掴んでいる。肌は上気し、エア  
コンが利いているのに汗が滲んでいる。  
 鏡の中の潤んだ自分の眼に、艶めかしさを感じてしまうのは何故だろう──  
 夏海は、スカートに指をかけ、ゆっくりと持ち上げていた。  
 濃紺のスカートを捲ってゆくと、細い太腿が露になり、さらに捲ると──  
 幼い子供と変わらぬ、つるりとした恥丘が曝け出された。  
──わたし、こんなかっこで……学校に……。  
 心臓がどくんと鳴って、身体の奥から何かが湧き立つのを感じていた。  
 
――ほんっと、すごい胸だな……。  
 山本弘輝は、自室のベッドで横になったまま、携帯電話のデータフォルダに  
保存されている画像を眺めていた。  
 夏祭りの花火大会――彼にとっても、忘れることのできない夜だった。  
 花火を楽しむ群衆の中、近所に住む少女が、幼い肌を曝して身悶えていた。  
 少女は最近この町に越してきたばかりのようで、彼はまだ、ほんの数度しか  
顔を見たことがない。  
 制服とそのリボンの色から察するに、この町の中学一年生だ。  
 顔立ちや背丈は小学生のようでありながら、胸の膨らみは中学生とは思えぬ  
ほどに発達している。  
 弘輝は以前に見かけたときは、彼女を、おとなしい純粋そうな子だと思って  
いたのだが――  
 彼女はその夜、三十前後の男と一緒だった。  
 自分の倍以上もの歳の男に、浴衣をはだけられ、大きな乳房を曝されて揉み  
しだかれ、秘処をまさぐられていた。  
 普通の女性なら忌避するような過激な行為を、まだ中学生の彼女は受け入れ、  
淫らな喘ぎをもらしていた。  
 弘輝は画像をひとつひとつ、舐めるように見つめる。  
 剥き出しの大きな乳房や、細い太腿──  
 男の手が重ねられた無毛の恥丘──  
 彼女の秘匿すべきところが、生々しく写し出されていた。  
 あのとき、弘輝はたまたま、彼らの隣りで夜空を見上げていた。  
 もともとは、友人と花火を見物するはずだったのだが、友人は直前になって  
予定を変更──弘樹は、ひとり寂しく花火見物に出たのだ。  
 しかしそれは、彼にとって思いもよらぬ幸運に転じた。  
 ひとりだったからこそ──彼は昂ぶり、あられもない姿の少女を、カメラに  
収めることができたといえる。  
 帰宅してから数えたら、五十二枚も撮っていた。  
 残念ながら――非常に残念なことに、そのほとんどはピントがずれていたり、  
光量不足だったり、ぶれて乱れていたりして、鮮明な画像はわずかだった。  
 それでも、偶然の巡り逢わせを引き起こした運命のようなものを意識しない  
ではなかった。  
 弘輝はその晩も、次の日も、その次の日も――画像を開いて、自ら慰めた。  
これほど自分自身を刺激したのも久しぶりだ。  
 あのときの興奮と感触は、一週間経った今でも、はっきりと思い出せる。  
 弘輝は少女の手を導き、自らの怒張を、その小さな手で包ませた。  
 彼女は抗わずに従ったばかりか、ぎこちなく手を動かしもしたのだ。  
 彼は少女の手のひらに、本能をほとばしらせた。かつてない恍惚だった。  
――これで、あの子を……。  
 そして今、彼の手元には、そのときの少女の淫らな画像がある。それをちら  
つかせて強請れば、彼女を思うままにできるかもしれない──  
 だが、すぐに近所とはいえ、きっかけはなかなか見つからない。  
 彼女がもっと幼い頃からこの町にいたのなら、近所のお兄さんとして気軽に  
声をかけることもできただろうが、もちろんふたりはそんな関係ではないし、  
彼女は弘輝の顔も名前も知らないだろう。  
 小さな町だ。下手に動けば、よからぬ噂があっと言う間に伝播するだろう。  
 といって、慎重になりすぎては、彼の性的な嗜好を満たすことはできない。  
 弘輝は、女性に羞恥を味わわせて責め立てることで、無上の悦びを覚える男  
なのである。  
 弘輝はまだ、己の嗜好を満足させる女性と親密になったことがない。彼女は  
自分の欲望を満たしてくれる性質を備えている──  
 幼い少女が特に好きということははないのだが、胸の大きな女性は大の好み  
である。そういう意味でも、弘輝は彼女に強く惹かれていた。  
──少しぐらい、強引にいってもいいよな……?  
 この町にひとつしかない中学校は、先週から夏期講習に入っているようだ。  
 そろそろ彼女は学校に向かう頃だろう。  
 弘輝は携帯電話を握り締めたまま、部屋を出た。  
 
「行ってきます、お父さん」  
「行ってらっしゃい。気をつけてな、夏海」  
 夏海は手を振る父親に、微笑んで玄関のドアを閉めた。  
 学校では夏季講習があるが、父親は今週から盆休みだ。普段なら夏海よりも  
早く家を出る父親だったが、今日は長期休暇らしくのんびりしていた。  
 いつも父親を送り出すときのように笑えただろうか──  
 父親は気づいていなかったのだろうか──あまりにも開放的すぎる胸周りに、  
夏海は不安を掻き立てられる。  
 学校に向かって歩き出しながら、スカートの中も意識してしまう。  
 白いブラウスの襟元は、臙脂色のリボンが結ばれていて、彼女の大きすぎる  
膨らみが、内側から押し上げている。  
 制服のブラウスは裾が短く、スカートの外に出して着るようにデザインされ  
ている。おかげで、裾の短いブラウスは浮き上がり、スカートとの間に大きな  
隙間をつくっていた。  
 それはいつものことだが、今日はいつも以上に心細い。  
 腰から下は、膝上丈の、濃紺のプリーツスカートが揺れている。いつもなら  
少しぐらいは短くして穿いているのだが、今日はそんなことはできない。  
 背中にかかる黒髪は首の後ろでひとつに束ねられ、黄色い猫のマスコットの  
ついたゴムで留めてある。  
 肩に学校指定の淡い水色のボストンバッグを掛け、運動靴に白いソックスを  
履いている。  
 彼女の歩みに合わせて、その大きな乳房が揺れる。  
 薄いブラウスには、白いキャミソールのラインが透けているが、その下には  
何も着けていない。  
 誰が見ても、ブラジャーを着けていないのは明らかだ。  
 ブラウスは薄い。せめてもう一枚ぐらい布を挿まねば、彼女の可憐な突起が  
透けてしまうことだろう。  
 ブラを着けるなとは言われたが、キャミソールまでは禁止されていない。  
 ソフトカップの施された白いキャミソールは、夏海の悲しい抵抗だった。  
 そして、スカートの下には、大切なところを隠してくれるものが何もない。  
 午前八時──すでに気温は三十度近くにまで上昇し、今日も真夏日であろう  
ことが覗えるというのに、夏海の身体は震えていた。  
 
 彼女の家は少し奥まった路地にある。  
 角を曲がり、車二台がようやく擦れ違える程度の道に出ると、ゴミ集積所の  
そばで、二人の男女が話し込んでいた。  
「あらぁ、おはよう、夏海ちゃん」  
 現れた夏海に、女性が声をかける。  
 夏海はびくっと身を竦ませた。  
「あ……おはようございます」  
「夏休みなのに大変ねぇ」  
「いえ……」  
 近所に住む主婦だった。ゴミを出したところのようだ。  
 ゴミ袋の山にネットをかけると、ぱんぱんと手をはたいて微笑んだ。  
 あまり社交的な性格ではない夏海だが、挨拶はきちんとするようと心がけて  
いる。小さな町だし、近所づきあいは大切だと父親から聞かされていた。  
 いつもならもっと言葉を返しているところだが、今日はそんな余裕はない。  
 それに、もうひとりの人物──若い男性の眼が気になってしまうのだ。  
「ほらぁ、弘輝君もちゃんと挨拶しなさいよ」  
「えーっと……なつみちゃん、だっけ? おはよう」  
 主婦が彼の腰をぽんと叩くと、その二十歳ぐらいの男は複雑な笑みを浮かべ、  
夏海に片手を上げた。  
「おはよう、ございます……」  
 夏海は礼を返したが、緊張を悟られはしないかと意識し、うつむいたままに  
なってしまう。  
「あれ? 弘輝君、夏海ちゃんとは初めて?」  
「ええ、近所づきあいのずぼらなダメ学生ですから」  
 主婦の言葉に、青年──弘輝という名で、大学生らしい──は肩を竦めた。  
「たしか、そこの……佐伯さんでしたっけ?」  
「そうよぉ、春に越してきた……旦那さんがかっこいいの」  
 あっはっはと彼女は大袈裟に笑う。  
 確かに夏海の父親は、一般的に見て優れた容姿をしている。細身で背が高く、  
無駄な肉はほとんどない。  
 すっきりと整った顔立ちで、愛想もよく、服装もいつも清潔だ。  
 優しいが、それだけではなく、厳しい面もある──大好きな父親だった。  
「ダメですよ、浮気なんかしちゃ?」  
「弘輝君も言うようになったわねぇ」  
 主婦はまた彼の腰をばんばんと叩いた。  
「ちょっ、おばさん、痛いですってば」  
「あっははは……若い男の子がこの程度で弱音吐くんじゃないわよ」  
「あの……わたし、それじゃ……」  
 ふたりを横目に、夏海はそそくさとその場を立ち去ろうとした。  
「あ、そうね。行ってらっしゃい、気をつけてね」  
「行ってらっしゃい、なつみちゃん」  
「はい……行ってきます」  
 ぺこりと一礼し、夏海は足早に立ち去った。  
──あの人、かっこよかったな……。  
 弘輝という青年を、少し父親と似ていると思った。  
 だが、まさかあの夜、自分の淫らな写真を撮り、自分の手に陰部を握らせて  
射精した男だとは思いもしなかった。  
 
「可愛いわよねぇ、あの子。弘輝君もめろめろでしょぉ?」  
 夏海の姿を見送りながら、主婦はにたっと笑い、弘輝を横目で覗った。  
「ちっちゃくてかわいらしいのに……あんなにおっぱいおっきいし!」  
「あはは……礼儀正しいし、いい子みたいですね」  
 弘輝は彼女の下品な冗談には応えず、曖昧に苦笑した。  
──確かに、でかいよなぁ……っつか、見間違いじゃないよな?  
 主婦に気取られぬよう見つめた彼女の胸は、キャミソールが透けていた。  
 だが、その下にあるべきものは覗えなかった。  
──ノーブラで登校だって? おいおい……。  
 自分の眼が正しければ、彼女はその大きな胸を覆うべき下着を着けていない  
ことになる。彼の視力は両方とも1.5だ──見間違いはないだろう。  
 彼女はやはり、自分の嗜好を満たしてくれる少女だ──そう彼は確信した。  
「本当にいい子よぉ? ちゃんと挨拶もできるし、家のことも一人でやってる  
みたいだしねぇ」  
「そうなんですか……」  
「奥さんは早くに亡くなったそうでねぇ。可哀想だけど……」  
「へぇ……」  
 弘輝が口篭ると、彼女は溜息をついた。  
「しっかりした、いい子よね。うちの子も見習ってほしいわぁ」  
 肩を竦めた彼女に、弘輝は苦笑で応える。  
 彼女には今年小学六年生になる息子が一人いた。圭介という名で、彼が幼い  
頃はよく遊んでやったし、今でもときどき一緒にゲームをすることがある。  
「ゲームばっかりして……ちったぁうちのこともやってほしいよ」  
「僕も子供の頃はそんなもんでしたよ」  
「ま、子供のうちはいいけど……っと、そのゲーム少年に餌あげないとねぇ」  
 主婦は腰に手を当て、背を反らした。  
「餌って……ひどいね、おばさん」  
「あんたもちゃんと朝食べなくちゃダメよ? 朝食は一日のパワーの源なんだ  
からね〜」  
「わかってますよ。それじゃ」  
「じゃあね〜。はぁ〜、今日も暑くなりそうねぇ……」  
 自分の腰をぽんぽんと拳で叩きながら去ってゆく彼女を見送り、弘輝はすぐ  
そばの自宅へと戻った。  
──ふぅん……父子家庭か……。  
 少し気の毒に思うが、同情するのも気が引けた。  
 それに──彼女の家庭環境を知っても、欲望が鎮火するわけではない。  
──気づいてなかったみたいだな……。  
 彼女が自分を──あの夜、その場にいた男だと気づいた様子はなかった。  
──おばさんがいなけりゃ……。  
 彼女にもっとアプローチできたかもしれない。写真を突きつけ、ばら撒かれ  
たくなければ言うとおりにしろと──  
 彼もそれなりにまともな精神の持ち主である。そんな脅迫は、良心が痛まぬ  
わけではない。  
 しかし、常識的な判断力を抑え込んで余りあるほどの、蠱惑的な魔力に心が  
惹き寄せられている。  
──あの男の命令なのかねぇ?  
 彼女はブラジャーを着けていなかった。もしや、ショーツも穿いていないの  
だろうか──あの夜、彼女と一緒にいた男の指示かもしれない。  
 その男がどんな人物なのか、弘輝には解らない。知ったところで、どうなる  
ものでもないだろうが、興味はあった。  
 いずれ彼女から聞きだそう──  
 弘輝は玄関のドアを開け、ただいまといいながら靴を脱いだ。  
 朝食の匂いが漂っていて、空腹感を思い出させた。  
 
 

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