教室に戻ると、バッグの中で携帯電話がLEDランプを点滅させていた。  
 送信者は予想どおり、竹下だった。  
 つい今し方、廊下で出くわした彼を思い出す――  
「もう始まってるよ。早く教室に戻りなさい」  
 そう自分たちに言った竹下は、ごく普通の大人の男――至極真っ当な教師の  
顔をしていた。  
 直前に夏海が感じた、卑しい視線とゆがんだ笑みは、一瞬で消えていた。  
 あの夜、自分を辱め、今も燻る劣情を呼びました者だとは思えなかった。  
 冬香は彼にいつもどおりの軽快な調子で返事をしたが、夏海は眼を逸らして  
頭を下げただけだった。  
 指先でキーを押し、メールの内容を確認する。  
 夏海は、またしても身を強張らせなければならなかった。  
『あと一時間で夏海ちゃんとの授業だね。  
 恥ずかしくてエッチな気分になってるんだろうね』  
 そのとおりだった。  
 自分は羞恥に震えていただけでなく、淫らな気持ちになっていた。自慰まで  
してしまったのだ。彼はそれすらお見通しなのだろうか──  
 メールはさらに続く。  
『スカートは短いままにしているかい? もし長くしていたらお仕置だ。  
 みんなの前で恥ずかしいことをしてあげよう。  
 夏海ちゃんはエッチだから、楽しみだ……』  
――みんなの、前で……!?  
 間違いなく、あの男は自分を恥ずかしい目に合わせた男だ。  
 メールの内容と着信時間から、それが廊下で遇う前に書かれたものだと判る。  
 彼に送信した画像のスカートは、今よりもさらに短い。股下ギリギリだ。  
 彼は訝しく思ったのだろう――画像のスカートは、あまりにも短すぎた。  
――ほんとに、あんなことに……。  
 未明に見た淫夢――あんな恥辱を受けることになるのだろうか。  
 隣の冬香を覗う。  
 冬香も携帯電話をぽちぽちといじっていたが、夏海の視線に気づくと、どう  
した? と眼で問いかけてきた。  
 冬香に助けを求めたいと思う。  
 だが、彼女に何ができるだろう──  
 夏海は眼を伏せ、首を小さく横に振った。  
 冬香にだって、できることとできないことがある。  
 冬香にできることなら、彼女はきっとなんでもしてくれるだろう。  
 冬香は自分を好いてくれているはずだ。  
 千月の言葉とクラスメイトの反応に見せた、激しい怒り──  
 それだけじゃない。いつも自分を気にかけてくれる。  
 ふと思う──あの夜、自分の恥ずかしい写真を撮っていた、もう一人の男は  
何者なのだろう──  
 竹下の仲間なのだろうが、どんな人物かは想像できない。  
 彼の身元が判れば、事態は好転するだろうか――  
 ふたりの身柄が同時に拘束されれば、自分の恥ずかしい写真がばら撒かれる  
ことはないかもしれない。  
 その男が何者か判れば、法に訴えることも可能ではないか──  
 それでも、やはり、自分はきっとみじめな想いをするだろう。  
 人前で、恥ずかしい証言をされることになるだろう。  
 そんなことは、耐えられない──  
 それだけじゃない──そもそも自分は本当にこの状況から逃れたいと思って  
いるのだろうか。羞恥に昂ぶりながら、その先の快楽を求めてしまっているの  
ではないだろうか。  
 本気で逃れたいのなら、みじめな想いにも耐えられるのではないか──  
 夏海は溜め息をついた。  
 同じようなことばかり考えてしまっている。  
 あんな夢の中のようなことなど、現実に行なえるわけがない。  
 もう一人の男のことなど考えてもしかたがない。  
 三時間目の英語の担当教諭が、教室に姿を現した。始業時間より、五分以上  
遅れての登場だった。  
 
──次は竹下先生……。  
 三時間目が終わった。  
 休み時間を挿み、ついに竹下の担当する数学が待っている。  
 夢で見た非現実的な事態はありえない。あるわけがない──そう思うのだが、  
夏海は不安で身体が震えそうだった。  
 前の休み時間──夏海は衝動を抑えきれず、官能に溺れかけた。  
 冬香の声が止めてくれたが、身体の奥の疼きはずっと燻っていた。  
 授業に集中していればだいじょうぶだと自分に言い聞かせはしたが、それは  
意識の表層に浮かび上がり、淫らな想いが湧き起こってきた。  
──わたし、ほんとにエッチだ……。  
 三時間目も答案の受け取りはあったし、一度指名されもした。  
 夏海は起立し、回答しなければならなかった。  
 教室の後ろから二番目の席──ほとんどの生徒は夏海の姿を見ることはない。  
 それなのに、夏海は数多くの視線を意識してしまった。  
 下着を着けていない自分を、同級生たちが見ていた。彼らは、自分がトイレ  
してしまったことも知っているのではないか──  
 そう思うと、激しい羞恥に見舞われた。  
 羞恥は夏海の疼きを刺激した。  
 疼きが身体に熱を呼び、熱は疼きを昂ぶらせ、夏海を羞恥の悪循環へと引き  
ずり込んだ。  
 痛くなるほどに拭ったはずの秘処は、とっくに潤みを取り戻していた。  
 キャミソールの内側で、小さな突起が尖っていた。  
 あの夜から、自分は変わってしまったのだと、改めて思う。  
 そして、その認識が、さらに夏海を責めるのだ。  
──ダメダメ、考えないようにしないと……。  
 隣の冬香に眼を向けると、ちょうど彼女もこちらを向いたところだった。  
「あのさ、夏海」  
「うん?」  
 冬香が身を乗り出してきて、夏海は、冬香に思考を読まれたのではないかと  
焦ってしまう。  
「午後、空いてる?」  
 冬香は夏海の焦りに気づかぬまま、にっと笑った。  
「美和が、カラオケ行こうって。千歳も一緒」  
「わ、いいね……」  
 小さな町だが、一軒だけ有名チェーン店が営業していた。  
 校則では生徒だけでそういった店へ入ることを禁じられているが、ほぼ黙認  
状態である。  
 夏海はカラオケが好きだった。  
 歌が特別好きというわけでもないし、上手いわけでもない。むしろ、大きな  
声を出すのが苦手な夏海にとって、歌うことはあまり好きではない。  
 だが、冬香たちが歌っているのを眺めるのは大好きだった。とくに、冬香の  
はっちゃけぶりを見ているのが──  
「何時から行くの?」  
「ん〜、学校終わったらそのまま、って思ったんだけど……」  
 冬香の視線が下がった。  
「ちょっと無理か」  
「うん……」  
 夏海は下着を着けていない。このままカラオケ店には行くのはつらい。  
「うざいぐらい天気いいし……もう乾いてるよなぁ?」  
 後半は声を抑えて言った。  
 この天気なら、夏海の父親がドジで洗ってしまった下着もすべて乾いている  
だろう──彼女はそう考えている。  
「そうだね……たぶん」  
 夏海は曖昧に頷いた。  
「んじゃさ、いっぺん家帰ってから、どっか集合しよっか」  
 親指を立てた冬香に、夏海はこくんと頷いた。  
 
 竹下は三時間目の授業中、口元がゆがみそうになるのをずっと堪えていた。  
 今は教師としての人格でいなければならない──湧き上がる劣情を抑え込み、  
普段どおりの授業を行なっていた。  
 竹下は学校にいる間、本性をひた隠しにしている。  
 彼はこの学校の教師なのだ。生徒を正しく指導し、社会に適合できる大人へ  
と教育すべき職務を帯びているのだ。  
 未熟な少女に淫らな想いを募らせ、それどころか、実際に手を出してもいる  
などということは誰にも知られるわけにはいかない。  
 幼い頃から、彼は周りと真に打ち解けたことがなかった。  
 仮面を被ることには慣れていた。  
 自分の嗜好を隠すことは、さして難しくない。  
 だが、最高の獲物を釣り上げた彼は、いつも以上に気をすり減らしていた。  
 予定していた授業内容を、五分以上も早く終わらせてしまったのもその所為  
だったといえる。  
「じゃあ、終わりまで適当に……質問があれば受け付けますよ」  
 そう言って、教室の隅に立てかけられていた折り畳み椅子を開いて座る。  
 質問にきたのは、女子生徒が一人──田舎の子供らしい垢抜けない少女だが、  
まだ小学生のような幼い顔立ちと、大きく膨らんだ胸は彼好みだった。  
──でも、夏海ちゃんほどじゃない……。  
 そんなことを思いながら丁寧に解説してやる。  
 彼女はぺこりと頭を下げ、礼を言って席へと戻った。  
 やがて、三時間目の終了を告げるチャイムが響き、彼は教室をあとにした。  
 廊下に出た瞬間、卑しい笑みが彼の顔をゆがめた。  
 竹下は、これといって特徴のある容姿ではない。  
 背は高くもなく低くもない。太っても痩せてもいない。成人男性の平均的な  
体格だろう。のっぺりとした顔立ちも、美形とはいえないが、といって醜男と  
いうわけでもない。  
 黒い髪は短く刈られ、銀縁の眼鏡は少々厚いレンズが填まっている。  
 どこにでもいそうな三十前後の青年と言った風貌である。  
──さぁ、夏海ちゃん……やっと時間だ……。  
 先ほど、偶然彼女と出くわしたのは幸いだった。  
 トイレに行っていたらしい彼女は、その直前に送ったメールをあのときまだ  
読んでいなかっただろう。教室に戻ってから読んだはずだ。  
 彼女はどんな気分で三時間目を過ごしたのだろう──それを考えると、口が  
ゆがんでしまう。  
 彼の予想どおり、夏海はスカートの丈を誤魔化していた。メールの添付画像  
より、十センチは長かっただろう。  
 もっとも、普段の彼女はそれよりさらに長いのだ。ショーツを穿いていない  
こともあり、そうとうな羞恥を覚えているに違いない。  
 しかも、極端に発達した膨らみを包んでくれるブラジャーもないのだ。動く  
たびに乳房は大きく揺れて、淫らな刺激に襲われていることだろう。  
 彼女はまだ、掘り出されたばかりの原石だ。  
 これから彼女を、自分の手で磨き上げるのだ。  
 彼女の輝きは、自分の腕次第──  
──楽しみだね、夏海ちゃん……。  
 喉の奥で笑いながら、竹下は普段の教師の顔へと戻ってゆく。  
 
 始業のチャイムが鳴ると同時に、竹下は現れた。  
 何人かの生徒は、早すぎる教師の登場にぼやきをもらす。  
 夏海はうつむいていた。竹下と眼を合わせたくなかった。  
 竹下が起立を促すと生徒たちはがたがたと椅子を鳴らして立ち、ばらばらに  
礼をした。  
 顔を上げるのが怖かった。  
 竹下と眼を合わせたら、どんな仕打ちに見舞われるか判らない。  
 メールに書かれていたように、クラスメイトの前で恥ずかしいことをされて  
しまうかもしれない。  
 何度打ち消そうとしても消し切れない不安が、夏海の心を揺さぶる。  
――あんなこと、絶対無理だもん……。  
 隣には冬香もいる。彼女はそんな暴挙を許すはずがない。  
 夏海はゆっくりと深呼吸した。  
――だいじょうぶ、心配ない……。  
 追い出し切れない不安を抱えたまま、心を落ち着かせようと努める。  
 竹下が、抱えていた紙の束を教卓に置き、指でとんとんとつつく。  
「それじゃあ、まずテストを返します」  
 夏期講習の前半に行われたテストの、答案用紙が返却される。  
 一時間目から毎回行われている試練――  
 一人目の生徒の名前が呼ばれ、竹下のもとまで受け取りにゆく。  
 次々に名前が呼ばれ、生徒が答案用紙を受け取って席へ戻る。  
 四度目ともなれば、ある程度の順番の予測もできる。自分が呼ばれる前から  
席を立つ者も多い。  
「岡本さん……岡本千月さん」  
 さきほど、意図したわけではないだろうが、夏海をクラス中の視線に曝した  
少女の名が呼ばれた。  
 彼女は表情を変えずに答案を受け取って席へ戻ってゆく。  
 期末試験でトップの成績を収めた彼女──夏期講習の学力テストも、きっと  
トップクラスの成績だろう。  
 夏海も数学は得意だった。  
 一学期の期末試験では、冬香とともに上位に入っていた。  
 数学はいくつかの公式と解答パターンを憶えてしまえば、ほとんどすべての  
問題が解ける。あとは、応用と閃きだ。  
 社会のように、いちいち細かく記憶する必要がないのは気楽だった。  
 二組の生徒がそろそろ終わる。夏海の番が迫ってくる。  
――恥ずかしい……。  
 鼓動が激しい。心臓が耳元で鳴っているかのようだ。  
 心細い姿をクラスメイトに曝さねばならない。  
 三組の生徒が呼ばれ、冬香が腰を浮かせる。  
 夏海はもちろん冬香の次だ――  
「さぁて、あたしゃ何点かねー」  
 夏海に片目を瞑り、歩きだす。  
「河合冬香さん」  
「はーい」  
 竹下に呼ばれた冬香は、返事をしながら答案を受け取った。  
 夏海も急いで立ち上がる。  
 竹下と眼を合わせぬよう、顔は伏せたままだった。  
 可能な限りクラスメイトたちからの視線を浴びぬよう、足早に進む。  
 彼女の大きな膨らみは激しく揺れる。  
 生地と突起がこすれて鈍い快感が広がってしまう。  
 ゆっくり歩けばそれもないだろうが、クラスメイトの視線に曝される時間を  
短縮しようと思ってのことだった。  
 まじまじと凝視する者はいないが、ちらちらと覗う視線が痛かった。  
 笑みを見せた冬香とすれ違い、教卓の手前まで辿り着いた。  
「次は――」  
 自分の名が呼ばれ、答案を受け取る――そのはずだった。  
「中村君……中村裕二君」  
――えっ……?  
 夏海は耳を疑った。  
 反射的に眼を上げると、竹下の無表情な顔があった。  
 
 夏海の名は呼ばれず、次の生徒が呼ばれた。  
――なんで……?  
 冬香の次は自分のはずだった。河合と佐伯の間に入る姓を持つ者は、彼女ら  
三組の中にはいない。  
 中村という少年は夏海を一瞥し、竹下から回答用紙を受け取る。  
――見られたぁ……。  
 顔が熱くなる。  
 彼は戻り際に、もう一度夏海の膨らみをちらりと見た。  
 胸に眼を向けられるのが、いつも以上に恥ずかしかった。  
 緊張で収縮した突起が、ブラウスの表面に浮いているのではないかと不安に  
なってしまう。  
 素早く受け取ってさっさと席に戻るつもりだったのに――答案用紙の並びが  
入れ替わってしまっているのだろうか。  
 竹下が夏海に眼を向ける。  
 夏海は咄嗟に視線を逸らした。  
「若松さん……じゃないね」  
 教卓を挿んで反対側には、すでに若松という名の少女が待機している。先の  
中村と同じく三組のクラスメイトだが、夏海はどちらとも親しくない。  
「佐伯さんだったよね?」  
 夏海を覗う竹下に、彼女は顔を伏せたまま何も答えない。  
 竹下は眉を寄せて答案を何枚か捲った。  
「んー、おかしいな……佐伯さんのがないなぁ」  
 何か言ったほうがいいだろうかと思うが、声が出ない。  
 彼は平然と教師の顔で振る舞っているが、夏海は彼のように平然としてなど  
いられなかった。まともに受け答えなどできるわけがない。  
「じゃあ、とりあえず、若松由美さん……」  
 若松は、はーいと応えて受け取る。  
 やはり彼女も、夏海の胸に眼を向けてから戻っていった。  
――きっと確認してるんだ……。  
 二時間あまり前に、千月が発した言葉の真偽を――  
 夏海は、背中に突き刺さるいくつもの視線を意識してしまう。  
 クラス中の生徒が、自分の背を凝視している。ブラジャーのラインが透けて  
いないことを確認している。これほどまで大きな乳房であるのに、それを覆う  
下着を着けていないのだと、再認識している──  
 三組の生徒ならば、普段よりもスカートが短くなっていることにも気づいて  
いるだろう。  
 派手なキャラクターの冬香と親しい夏海だが、いつもはおとなしく、目立つ  
タイプではない。スカートも、短くしてせいぜい膝上十センチ程度なのだ。  
 そんな夏海が、今日はブラジャーも着けず、スカートも短くしている──  
 この年頃の少年少女は誰もが異性を意識しはじめている。  
 異性の誰それを気に入っている、好きだ──という微笑ましい意識ではなく、  
もっと具体的な、性行為の対象として見る眼を持ちはじめる。  
 夏海はその特徴的な容姿の所為で、いつも少年たちから好奇の視線を浴びて  
いるし、少女たちからは羨望と嫉妬の眼差しを注がれている。  
 今もそんな視線があちこちから投げかけられている。どうして下着を着けて  
いないのか、単純な疑問だけでなく、卑猥な空想もしながら──  
「次は、朝倉さん……四組の朝倉和美さん」  
 竹下が次の生徒の名を呼んだ。  
 その少女もまた、夏海をちらりと見ていった。  
――ダメぇ……見ないで、お願い……。   
 夏海の身体の奥で、淫らな想いがふつふつと沸きはじめている。  
 身体中がじわじわと熱を帯びてくる。  
 消すことのできない火が、羞恥という油を注ぎ込まれ、再び炎を上げようと  
している。  
──やだよぉ……また、エッチになっちゃう……。  
 同級生たちに見つめられながら、淫らな気持ちが膨らんでしまう。  
 あの夢のように──自分は竹下にもてあそばれてしまうのだろうか。  
 衣服を剥ぎ取られ、無防備なところを曝し、身体を刺激されて──  
 
「どうしようか……」  
 困った顔をしながら、竹下は内心卑しく笑っていた。  
――みんなに見られてるね、夏海ちゃん……。  
 夏海はずっと顔を伏せていた。  
 彼女の答案が出てこないのは、もちろん彼がそうしておいたからだ。  
 下着を身に着けていない夏海に、羞恥を味わわせるための仕込みだった。  
「残りもあと少しだし、そこで待っててくれるかな?」  
「えっ……!?」  
 竹下の冷酷なセリフに、ずっとうつむいていた夏海が顔を上げた。  
 彼女の顔は羞恥にゆがんでいた。  
 彼女は、クラスメイトたちからの視線に、強い羞恥を覚えている。  
 顔は朱に染まっているし、身体は震えている。八の字にゆがんだ眉も、泣き  
そうに潤んだ瞳も──竹下の欲望を満たしてくれる。  
――夏海ちゃんは、見られて感じちゃうエッチな子だからね……。  
 キャミソールのせいで判らないが、きっと胸の突起は硬く尖っているだろう。  
 短いスカートの中の未成熟な秘処は、とろりと潤んでいるだろう。  
 一時間前に送ったメールを思いだす。  
 もしかしたら、自分の授業の時間になれば、彼女から送られてきた二枚目の  
画像のように、スカートを股下ギリギリにまで短くしているかもしれないとも  
思ったが、残念ながらそうはなっていなかった。  
 三時間目の前、トイレから出てきた夏海と遭遇していなければ、彼女はそう  
しただろうか――  
――まぁ、さすがにあれは短すぎるからなぁ……。  
 竹下が知っている彼女の性格では、そこまではできないだろう。  
 周りの友人からも何を言われるか判らない。  
 親しい友人が同じクラスなのは、夏海にとっては幸運だったろうが、彼には  
少々残念だった。  
 とはいえ、自分が担当できただけでもじゅうぶんに幸運だ。  
──ひとりで震える夏海ちゃんも見てみたかった……。  
 だが、お楽しみはあとに取っておくものだ──  
 竹下は顔に出さずに笑い、怯えた夏海から眼を戻した。  
「じゃあ、次は……」  
 
 
──これって……もしかして……。  
 これが、メールにあった「お仕置き」なのだろうか。  
 みんなの前で恥ずかしいことをさせる──メールにはそうあった。  
 教室の前でずっと立ったままでいるということなど、普段なら、さほど気に  
しないことだ。もちろん視線を浴びるのは嫌だが、今日のように心細い格好と  
いうのでなければ、これほどの羞恥は覚えない──  
 もし想像が事実なら、答案用紙が出てこないのは、竹下が意図的に仕込んで  
おいたのだということになる。  
──こんな、ひどいこと……やっぱり、あのときの人だ……。  
 冬香から聞かされた、優しい教師というイメージは間違っている。実際は、  
こんなふうに卑しい男なのだ。  
 悔しかった──自分には反撃の手段がない。あの夜の写真を彼が握っている  
限り、自分はどうすることもできない。  
 できることといえば、ひたすら恥辱に耐えることと──  
 身体が疼いていた。  
 官能の火種が勢いづいてくる。  
 秘処がますます潤んでいる。  
 こすれてもいないのに、乳首が快感を訴えていた。  
──やだぁ……ダメだよぉ……。  
 自分にできることは、もうひとつ──  
 抗うことなどせず、竹下の淫靡な責めを受け入れて、快楽の泉に身を浸して  
しまうことだった。  
 
「っと……ようやく出てきたよ、佐伯さん」  
 竹下が苦笑しながら、夏海に答案用紙を向ける。  
 夏海は潤んだ眼で竹下を見てから、小さく頷いて受け取った。  
 ようやく席に戻ることができる。  
 竹下は眼鏡の奥で卑しく笑っていた。瞳に、暗い火が灯っていた。  
 だが、それに気づいたのは自分だけだろう。  
──恥ずかしい……やだよぉ……。  
 竹下に背を向けて席に戻る。  
 身体が熱く火照っていた。  
 秘処が疼いて淫らな露に濡れていた。  
 どれほど濡れているのだろう。歩いたりして、だいじょうぶだろうか。蜜が  
零れ落ちたりしないだろうか──  
 夏海はうつむいたまま窓際を進む。  
 わずかにカーテンが揺れて、じっとりと湿った涼しくもない風が教室に入り  
込んできた。  
 歩を進めるたびに胸が揺れてしまう。小豆ほどもない突起がこすれて快感を  
覚えてしまう。  
 スカートの裾も揺れて、秘処が露になっているのを強く意識させられる。  
 制服を着ているのに、何も身に着けていないような心細さがあった。事実、  
スカートの下には何も穿いていない。  
 どうして女子の制服はスカートなのだろう。スカートでなければ、これほど  
羞恥を覚えることもないだろう。羞恥に昂ぶってしまうことも──  
 ほんの数メートルの距離が、何十倍にも感じられた。  
 ふらつきながら席に戻り、椅子を引き出す。  
──スカート……どうしよう……。  
 いつもなら尻の下にスカートを敷いて座るのだが、今はスカートに露が染み  
込んでしまいそうだった。  
 といって、スカートが尻の下にならぬよう腰掛ければ、椅子に付着する──  
──染みになるよりいい……。  
 夏海は諦めて後者を選んだ。  
 椅子に直に肌が当たるよう、スカートを広げまま腰掛ける。  
 わずかにひんやりとした木の感触が、尻と腿の肌に触れた。  
 たっぷりと蜜を湛えた秘処も──  
──やだぁ……。  
 諦めてはいても、恥じらいは消えなかった。  
 淫らな露があふれ、椅子の表面に付着したのがはっきりと判った。  
「夏海……?」  
 冬香が心配そうに声をかけてきた。  
 夏海はぎこちなく笑みを返す。  
 冬香に、昂ぶりを知られるわけにはいかない。クラスメイトの視線を浴びて、  
そこを濡らしていることなど、絶対に知られたくない。  
 自分はきっと泣きそうな顔をしている──  
 悔しくて本当に涙が零れてしまいそうだった。  
 答案用紙の順番に細工をした竹下のことだ──きっと授業の間、自分を指名  
して解答させるだろうことも予想できる。  
 まさか、身体に触れたり服を脱がせたりはしないだろうが──  
「気分悪いの?」  
「うぅん、だいじょうぶ……」  
 冬香の気遣いが嬉しかった。  
 今日はもうこの時間で終わりなのだ。あとは、家に帰るだけ──  
「だいじょうぶだよ……ありがとう、冬香ちゃん」  
 夏海は無理に微笑んだ。  
 
「それじゃあ、一番窓際の席の人たちに、前から順番に──」  
 竹下は手元のファイルから眼を上げ、こちらを向いた。  
「問い1、問い2……とやってもらいます。じゃ、前に出てきてください」  
 覚悟はできていた。  
 黒板に書かれた六つの設問──ひとつは、きっと自分が解答することになる  
と思っていた。  
 竹下は平然とした顔で教室を見回していた。  
 指名された窓際の列の生徒たちが、次々に立ち上がって前に出てゆく。  
 冬香と眼が合う。  
 竹下がとんでもない男だと、彼女は知らない。  
 夏海は決心して腰を浮かせた。  
 椅子に触れていた秘処が空気に触れる。蒸れていた所為か、わずかに涼しく  
感じられた。それもまた、夏海の羞恥を掻き立てる。  
 椅子を急いで戻す。あふれた露がどうなっていたかは判らない。  
 匂わないだろうか──冬香に嗅がれてしまわないだろうか。  
──やだぁ……。  
 そんなことを考えるだけで、夏海の疼きは増してしまう。  
 熱を持った身体を落ち着かせようと、ゆっくりと歩きだす。  
 揺れたスカートから、恥ずかしい匂いが漂い出しはしないだろうか。  
 全身から、いやらしい匂いがあふれてしまうのではないだろうか──  
 夏海は小さく震えながら、黒板の前までゆく。  
 竹下がこちらを覗っていた。  
 彼は平然としていた。自分に羞恥を味わわせようとしているに違いないのに、  
真っ当な教師の顔をしている──その図太さが信じられない。  
 他の生徒はすでに解答を始めていた。  
 チョークを手に、黒板で数式を解いている。  
 夏海は前から五番目の席だった。問・5を解かねばならない。  
 一次方程式の簡単な問題だ。  
 いつもなら一分とかからずに解けるはずだが、今の夏海は手早く解答できる  
ほどに冷静ではない。単純な計算すら思うようにいかなかった。  
 それに、問題の書かれた位置も竹下のいやらしさがよく判る。  
 夏海が解く数式は、黒板の廊下側にある。夏海の席から一番遠い位置だ。  
 しかも、高い位置に書かれている。背の低い彼女では、背伸びをしなければ  
届かない。  
 背を伸ばせば、ブラウスが張って胸の膨らみが意識されてしまう。  
 不安定になって足元がおぼつかない。  
「あ、っと……佐伯さん、届く?」  
 わざとらしく竹下が訊く。  
「椅子、使うかい?」  
──やだっ……!  
 確かに、椅子を足場にすれば軽々と届くだろう。  
 だが、そんなことをしては──  
──やっぱり、解ってやってるんだ……。  
 夏海は首を横に振った。  
「届きます……」  
「そう? ならいいけど」  
 夏海は唇を噛みながら、チョークを黒板にこすりつけた。  
 クラスメイトの視線が、背中に浴びせられているのが判る。  
 半ば以上が露出した太腿にも、いくつもの視線を感じる。  
──恥ずかしい……やだよぉ……。  
 xを含む数を左辺に、それ以外を右辺に移す。それぞれを計算して、最後に  
右辺をxの係数で割って、値を求める。  
 震えている所為で、うまく書けない。  
 羞恥の所為で鈍化した頭で、なんとか解答を導く。  
 竹下は夏海のすぐ横に立っていた。  
 彼は生徒たちに背を向け、視線を悟られぬようにしていた。  
 竹下の視線は、夏海の大きな乳房に注がれていた。  
 間近で凝視され、夏海は火を噴きそうなほどに恥ずかしかった。耳まで赤く  
なり、身体中を焼かれているようだった。  
 そしてそれは──夏海を昂ぶらせ、股の付け根をじわじわと潤ませてゆく。  
 
──もうやだぁ……。  
 解答に、いつもの何倍もの時間がかかった。  
 夏海はチョークを置いて手を払った。  
 竹下は口元に笑みを浮かべていた。彼女には、卑しくゆがんだ笑みに見えた。  
 一刻も早く視線から逃れようと、夏海はそのまま身体を半回転させ、教室の  
後ろまでまっすぐ歩いた。  
 教室の廊下側に座っていた生徒たちには、思わぬ幸運だった。  
 春にこの町に引っ越してきた、大きすぎる胸を持つ同級生の少女──  
 彼女はブラジャーを着けていない。歩を進めるたびに大きく揺れる。  
 普段は長いスカートが、なぜか今日は極端に短くなっている。  
 男子も女子も、夏海の膨らみへと眼を向けていた。  
──おっぱい、見られてる……。  
 少年たちの多くは、彼女の身体で妄想したことがあった。  
 同級生の中だけでなく、上級生を含めても、群を抜いている彼女の膨らみは、  
少年たちの若く旺盛な情欲の恰好の的だった。  
 彼らの妄想の中で、夏海は何度も胸をもてあそばれた。柔らかで張りのある  
双丘に、幾度となく精が浴びせられた。  
 夏海は、彼らの空想の中の自分が、どんな目に遭っているのか知らない。  
 今までの夏海ならば、そんな空想は忌避していただろう。  
 だが、今の夏海は、そんな妄想に昂ぶってしまう。  
 現に今も、彼らの視線から、自分が妄想の対象になっているのだと自覚して  
いるし、その認識が彼女を激しく揺さぶっていた。  
──恥ずかしいのに……わたし……。  
 少女たちの多くは、彼女の身体を嫉妬したことがあった。  
 じょじょに膨らんでゆく自分の乳房は、大人への成長の表れであり、不安と  
喜びの両面がある。  
 膨らみが大きければ優越感があるし、小さければ劣等感も覚える。個人差は  
あれど、大きな乳房にはやはり憧れるものである。  
 夏海は背は低いし、全体的な身体つきはまだまだ子供っぽいのに、胸だけは  
誰よりも大きく膨らんでいる。  
 体育の前など、着替えのときには、クラスメイトの誰もが一度は彼女の胸に  
眼を向けたことがあった。  
 明らかにサイズの足りていない下着から、豊かな乳房がはみ出していた。  
 七月の水泳の時間──水着がぱんぱんに張っていた。  
 彼女らは、夏海の豊かな乳房を、羨望と嫉妬の眼差しで見つめていた。  
 憧憬と嫉妬は表裏一体である。  
 同級生も、上級生も、彼女の胸を羨みつつも、強い妬みを感じていたのだ。  
 夏海もそれに気づいていた──男子だけでなく、女子にも胸を見られている  
のだと。  
 冬香のように、あっけらかんとした相手ならまだ羞恥も少ない。  
 だが、親しくない女子生徒から、そういう眼で見られるのは嫌だった。  
 自分はこんな胸など要らないのだ。目立ちたくないのだ──  
 今日は上下とも、下着を着けていない。  
 ブラジャーを着けていない自分を、彼女らはどう思っているのだろう。  
 千月の言葉への教室の反応──  
 下着を着けずに登校した夏海に、女子生徒たちは驚きの声を上げていた。  
 それだけでなく──蔑むような、呆れたような囁きをもらしていた。  
──変な子って思われた……きっと、エッチだって思われたんだ……。  
 中学生ともなれば、ブラジャーを着けていない少女はいない。例え膨らみが  
さほど大きくなくとも、普通なら周りを意識して身に着けるものなのだ。  
 ブラジャーを着けていない自分は、普通ではない。  
 しかも、その所為で身体の奥が熱く火照り、芯が疼いてしまうのだ。  
──エッチだって……みんなに知られちゃった……。  
 羞恥に昂ぶる自分は、きっとクラスの誰よりも、この学校の生徒の中で一番  
淫らなのかもしれない──きっと、そうに違いない。  
 教室の一番後ろまで辿り着いた夏海は、左に折れて窓際へ向かった。  
 冬香がこちらを見ている。  
 夏海は眼を逸らしてしまった。  
 恥ずかしすぎて、冬香にすら縋れない──  
 腿の内側を、淫らな雫が伝い落ちてゆくような気がした。  
 
「それじゃあ、今日はここまで」  
 終了のチャイムが鳴ると同時に、竹下の授業は終わった。  
 生徒たちはばらばらに礼をして、教室に喧騒が戻ってくる。  
 竹下は教室を出る前にちらりと夏海を見たが、彼女は眼を伏せていてそれに  
気づかなかった。  
──終わった……やっと……。  
 ようやく家に帰ることができる。  
 羞恥に襲われ続けた時間も、遂に終わる──  
 夏海は早く帰宅したかった。  
 家に帰り、ブラジャーを身に着けたかった。ショーツを穿きたかった。  
 いや、それよりも──  
 臨界を超えそうなほどの疼きを、開放したかった。  
 抑え続けていた淫らな気持ちを解き放ち、思う存分快楽に浸りたかった。  
 夏海の幼い秘裂からは、官能の露があふれ出していた。  
 名も知らぬ生徒──男子生徒が使っているであろう椅子は、彼女のぬめりに  
濡れていた。  
 蒸し暑さの所為で、汗もだらだらと流れている。それも手伝ってか、あふれ  
出した粘液は、尻の肉や太腿まで濡らしていた。  
 辺りに自分の匂いが漂ってしまっているような気がするほどだった。  
「はぁー、やっと終わった! これで灼熱地獄から開放されるんだー」  
 冬香が大袈裟に両手を突き上げる。  
「帰るぞー、夏海っ!」  
「うん、一緒に帰ろう」  
 夏海はわずかに笑みを浮かべることができた。  
 バッグを机に乗せて、帰り支度を始める。  
 この椅子はどうしたらいいだろう──  
 拭き取ることなどできはしない。何をしているのかと言われるだろう。  
 といって、そのままにしておくのもまずいだろう。  
 いい案が浮かばない。気温と疼きのおかげで、頭の回転が遅くなっている。  
──仕方ないよ……だいじょうぶだよね……。  
 汚れといっても、さして目立つものでもない──それに、椅子よりも自分の  
尻周りのほうが気になってしまう。  
 ほとんどは汗なのだろうが、それでも、ぬるぬるとした感触は夏海の羞恥を  
刺激している。  
──いっぱい、濡らしたまま……。  
 そんなふしだらな姿で帰宅せねばならない。町を歩かねばならない。  
 夏休み──社会人にとっては、盆休みの時期である。昼間といえど、多くの  
人が歩いているだろう。どこにいても、夏海は他人の視線を感じてしまう。  
 ずっと冬香と一緒なら心強いのだが、冬香の家は夏海の家とは別方向なのだ。  
校門を出て少し歩いただけで、別れねばならない。  
 ひとりで無事に帰宅できるだろうか──  
 そう思ったとき、鞄の中で携帯電話が震えた。  
──また、先生かな……?  
 夏海の予想は当たっていた。  
 
 
 竹下は廊下を歩きながらメールを打った。  
 送信し終え、ポケットに仕舞いながらほくそえむ。  
──夏海ちゃんは本当にエッチな子だ……。  
 夏海は明らかに昂ぶっていた。  
 自分の指示に忠実に下着を着けず登校し、クラスメイトの視線に曝され続け、  
身体を震わせていた。  
 中学生の男女──生徒たちは彼の思ったとおり、夏海に視線を浴びせ続けて、  
自分の責めを補完してくれた。彼らの視線があればこその仕打ちだった。  
──さて、これからが本番だ……。  
 竹下はいったん職員室に戻ると、今朝コンビニエンスストアで買った昼食を  
手にして、数学準備室へと急いだ。  
 邪魔が入る可能性は低い。  
 竹下は同僚に悟られぬよう、ひっそりと卑しい笑みを浮かべた。  
 
「ね……トイレ、いい?」  
 鞄を肩にかけて帰る気満々の冬香に、夏海は言った。  
「ん? じゃ、いっぺんトイレいってから帰るか〜」  
「うん」  
 夏海は冬香とともにトイレに向かう。  
「美和たちはどうすんのかな? ちょっと見てこうか」  
「そだね」  
 親しい友人のうちふたり、美和と千歳は、普段の三組で授業を受けていた。  
 トイレに行く前に、いつもの教室に立ち寄った。  
「よっ」  
 冬香が片手を上げると、美和は眉を上げて、千歳は手を振って応えた。  
「もう暑くてたまんないねぇ。あたしゃ脳みそ溶けちゃうかと思ったよ」  
「あんたは年中溶けてるようなもんでしょ」  
「まぁね。どろどろ脳みその冬香さんって、よく言われたもんね」  
「聞いたことないね」  
 呆れ顔の美和に、くすくす笑っている千歳──  
 夏海は彼女らとずっと一緒にいたかった。  
 だが、そういうはいかないのだ。  
 竹下からのメールは、夏海の自由を奪っていた──  
『夏海ちゃん、授業お疲れ様。  
 恥ずかしくていっぱい濡れてるね? 身体が疼いて止まらないね?  
 個人授業をしてあげよう。  
 数学準備室で待ってるよ』  
 授業が終わり、竹下からの仕打ちも終わりだと思い込んでいた夏海は、竹下  
からのメールに打ちひしがれ──そして、悟った。  
 今までの仕打ちは、このための下ごしらえだったのだ。  
──個人授業……あのとき、言ってた……。  
 いやらしいことをされるのだろう。  
 自分をもっと辱め、淫らな身体にしてしまおうと考えているに違いない。  
 拒絶はできない。あのときの写真を握られている限り──  
 夏海は諦めていた。  
 むしろ、素直に受け入れようという気持ちすら湧いてくる。  
 昂ぶり続けた身体は、あの夜のような刺激を求めている。  
 竹下が自分の火照りを鎮めてくれるなら、任せてしまえばいいのだ。  
 あの夜から毎晩のように自慰をしている夏海だったが、あのときほどに強い  
絶頂は、ひとりでは味わえなかった。  
 自分では到達できぬ高みに、竹下はきっと導いてくれる。  
 身も心も彼に預け、快楽を受け入れてしまえば、秘処をこんなにも濡らした  
まま帰宅する必要はない。  
 すべてを受け入れて、彼のもたらす官能の海にどっぷりと浸かってしまえば、  
こんな惨めな気持ちも忘れられるだろう──  
「んじゃ、ちょっとうちらトイレね。行こっ、夏海」  
 冬香の声に、夏海は我に返った。  
「あ、うん……」  
「ん……どした?」  
「うぅん……行こ」  
「おしっ!」  
 夏海は冬香とともに廊下に出る。  
 廊下には何十人もの生徒があふれていた。  
 視線を感じ、自分がこれから受けるであろう恥辱を改めて意識した。  
 トイレは一箇所しか空いていなかった。  
「冬香ちゃん……先、いいよ」  
「そう? んじゃお先〜」  
 夏海は冬香に譲る──  
──ごめんね、冬香ちゃん……。  
 夏海はくるりときびすを返す。  
 足音を忍ばせてトイレを出た。  
 美和や千歳が廊下にいないのを確認する。  
 三組の教室とは反対側にある階段へ向かった。  
 竹下から与えられるであろう快楽に期待してしまう自分が悔しかった。  
 

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