人通りも絶えた夜更けの街角に少女が小さなバスケットを持って佇んでいた。
その少女の前を通り過ぎようとした時
「おじちゃん、マッチを買ってくださいな。」
小さな声で少女が俺に話しかけてきた。
「・・・いくらなの?」
少女のあまりの幼さに、つい応えてしまった。
「一本百円なの・・・。」
「一本で百円?ずいぶん高いな。」
「でも、10秒くらい幸せな気持ちになれるマッチなの。」
「?・・・、じゃあ一本もらおうか・・・。」
「ありがとう。」
少女はマッチを一本擦って火を点け、それをそっと地面に置きスカートを
腰まで持ち上げた。下には何も着けていなかった。
そして燃えているマッチの前に足を広げてしゃがみ込み、俺を見上げて
そっと微笑んだ。
10秒間の御開帳。
(原作 三島由紀夫)