とうとう高校3年生の夏休みを迎えてしまった。いわゆる受験生だ。  
お父さんは家計を考えて地元の国立大学に行ってほしいと言っていたが、私はどうしても都会に出たかった。  
都会に出るとなると一人暮らしの必要があるので余計にお金が懸かる。となると、せめて国立大学に入らないといけない。  
だから、今年はかなり勉強しないといけない。都会の国立大学となると基本的に難関だ。  
 
今年の夏休みは、ずっと家で勉強していた。  
お父さんは会社、お母さんは朝から夕方までパート勤めだ。  
年子の兄さんは地元の大学に入学したが、夏休み中は朝から晩までほとんど毎日野球部の練習や試合があるらしく、ほとんど家にいなかった。  
つまり、昼間は完全に私一人だ。  
 
勉強というのは、一旦集中モードに入ることができれば他のことはたいてい気にならなくなるが、集中し始めるまでが大変なものだ。  
要するに、暑い。汗が噴く。  
 
私はクーラーが苦手なので、クーラーに頼らずにTシャツを汗だくにしながら毎日勉強していた。  
兄さんも去年の夏休みは地元の大学に入学するために汗だくになりながら猛勉強していたものだ。  
ただ兄さんの場合は、毎日毎日パンツ一枚の裸で過ごしていた。外出しない日は兄さんは一日中裸で過ごしていた。  
お母さんに、洗濯物が出なくて助かるとまで言われていた。  
 
とうとう高校3年生の夏休みを迎えてしまった。いわゆる受験生だ。  
お父さんは家計を考えて地元の国立大学に行ってほしいと言っていたが、私はどうしても都会に出たかった。  
都会に出るとなると一人暮らしの必要があるので余計にお金が懸かる。となると、せめて国立大学に入らないといけない。  
だから、今年はかなり勉強しないといけない。都会の国立大学となると基本的に難関だ。  
 
今年の夏休みは、ずっと家で勉強していた。  
お父さんは会社、お母さんは朝から夕方までパート勤めだ。  
年子の兄さんは地元の大学に入学したが、夏休み中は朝から晩までほとんど毎日野球部の練習や試合があるらしく、ほとんど家にいなかった。  
つまり、昼間は完全に私一人だ。  
 
勉強というのは、一旦集中モードに入ることができれば他のことはたいてい気にならなくなるが、集中し始めるまでが大変なものだ。  
要するに、暑い。汗が噴く。  
 
私はクーラーが苦手なので、クーラーに頼らずにTシャツを汗だくにしながら毎日勉強していた。  
兄さんも去年の夏休みは地元の大学に入学するために汗だくになりながら猛勉強していたものだ。  
ただ兄さんの場合は、毎日毎日パンツ一枚の裸で過ごしていた。外出しない日は兄さんは一日中裸で過ごしていた。  
お母さんに、洗濯物が出なくて助かるとまで言われていた。  
 
まだ朝9時だというのに、蝉は灼熱の不協和音をけたたましく奏でている。  
窓を閉じても蝉の声が聞こえる。煩わしくて仕方がない。  
私はTシャツを汗で濡らしながら勉強していた。閉め切った部屋でクーラーも点けずに過ごしているのだから、暑い部屋の熱はさらにこもる。  
部屋の窓は元々風通しは悪いが、窓を開けていたところで蝉の声が圧力となって部屋に入り込んでくるから、とても開けていられない。  
 
この日はなかなか勉強に集中できなかった。  
汗だくのTシャツが気持ち悪い、と思った瞬間だった。  
私は、去年の兄を倣ってTシャツと短パンを脱ぎ、部屋の中でパンツ一枚になっていた。  
心地良かった。普段衣類で覆われている部位を空気に晒すことは、本当に解放的だった。  
今は家に誰もいないので、パンツ一枚のまま部屋を出て、廊下を歩いた。  
久しぶりだ。家の中とは言え、お風呂と自分の部屋以外で裸で歩くなんて。  
 
そう言えば小さい頃は兄さんと一緒に毎日裸で過ごしていたが、私だけが裸で過ごすことを卒業してしまった。  
中学生になったと同時に胸が膨らみだしたので、それが丁度良い区切りとなってしまった。  
もちろん家族とは言え他の人に胸を見られることが恥ずかしいとは感じるようになってきたからそれでいいんだけど、  
その恥じらいのせいで兄さんのように家で裸で過ごすことができないことも少し厭だった。  
家族内での性差が煩わしいと思うこともあった。  
 
パンツ一枚で家の廊下を歩く。  
歩くと同時に身体が押しのける空気の流れを、体全体で感じる。身体で感じる空気の流れが気持ちいい。  
「ああ、私、家の中で裸なんだ……」  
何かいけないことをしているような感覚も、そのときの私の気分を高揚させた。  
リビング。誰もいない広いリビング。  
もちろん他の家族がいたら大変だ。でも、この広い空間に裸でいる解放感はたまらなかった。  
 
……ふと我に返った。  
「何あほなことやってんだろ……」  
とりあえずパンツ一枚のままリビングの冷蔵庫からジュースを取り出し、自室に戻った。この日の勉強は捗った。  
誰かが帰ってくる夕方まで、私は自室でパンツ一枚で過ごした。  
 
家に誰もいないことをいいことに、私のパンツ一枚での受験勉強は続いた。  
たまに部屋の外に出て、リビングでジュースを飲みながら休憩した。  
1週間ほどそんなことを続けたある日のことだった。  
 
今日は気分を変えてリビングのテーブルで勉強しようと思って、教材を何冊も持って裸でリビングに入った。  
 
リビングにお父さんがいた。  
 
私は裸のまま固まった。お父さんも固まっていた。  
 
 
「……えー、あ、あれ、お父さん会社は?」  
「……ああ、最近残業が続いたから、3日間代休をとることにしたんだ」  
 
胸は隠せない。両手に教材を持っているからだ。  
 
「お前は、勉強か?」  
「……そ、そう!部屋で勉強するのも飽きちゃって!」  
「おう、頑張れよ、未来の◯◯大学生さん。俺は大学に行かなかったから、どんな所かはわからんが」  
 
パンツ一枚の姿のまま、私は普段通りにお父さんと会話してしまった。  
お父さんはそのまま、ハードカバーの小説を読み始めた。  
それっきり、私の方は気にせず読書を続けていた。  
リビングには勉強しに来たと言った以上、自分の部屋に引き返せなくなってしまった。  
 
(見られた!……お父さんに、私が裸でいるところ、見られた……!)  
 
お父さんは私がパンツ一枚でリビングに入ったとき、まず胸に視線を向けていた。  
そしてその次に、視線は私のパンツに移動していた。  
視線は私の全身を泳いでいた。  
 
でも、私のパンツ一枚の裸の姿を見てびっくりしていたはずのお父さんは、今は私に目もくれず読書を続けている。  
 
(お父さん、私裸なんだけど……。全然気にしてないのかな?例えば注意するとか、もっと驚くとか、(絶対嫌だけど)じろじろ眺めるとか、嬉しがるとか、ないのかな?)  
 
私はお父さんに裸でいるところを見られて、どうしたらいいのかわからなくなってしまっていた。裸で家をうろうろしていたことへの後ろめたさもあった。  
「お父さんのエッチ!」などと漫画風に叫ぶとかするのが一般的なんだろうか。  
あるいは、「あ、あはは……お父さんがいるなんて思わなかったんだ」などと言いながら、すごすごと自分の部屋に戻って行ってもよかったはずだ。  
 
これでもし、かろうじて咄嗟に胸を隠すことだけでもできていたら、私にもまだ恥じらう理由ができていたはずだ。  
でも、多分中学生になって以来、胸が膨らんで以来で、初めてお父さんに裸をばっちり見られてしまったんだ。  
今更、隠しても仕方がなくなってしまった。  
 
私は、お父さんもいるリビングのテーブルで、パンツ一枚で勉強を開始した。  
 
意外にも勉強は捗った。  
テーブルの高さが丁度胸の先っぽ辺りにあるので、よくテーブルの縁に先っぽが触れてびっくりすることはあったが、  
服を着ていないので涼しいことと、お父さんもそばにいるから一人の時のように気が抜けずに済むという理由で、かなり集中できた。  
 
お父さんはまだ読書をしている。  
私の方をちらちらとも見ない。胸も膨らみきった年頃の娘の私が、裸で家の中で過ごしていたって、どうやら一切気にしていないみたいだ。  
お父さんは、リビングのテーブルに背を向ける向きに配置されているソファーに腰掛けて、本を読んでいる。だから私からは、お父さんの後ろ頭しか見えない。  
お父さんは、ずっと私に背を向けている。  
 
そうこうしているうちに12時になった。午前の勉強は終わりだ。  
お腹がすいた。昼ご飯を作って食べようと思った。  
 
私はパンツ一枚の姿のまま、まだ本を読んでいたお父さんに近づいて、尋ねた。  
「お父さん、お昼ご飯どうするの?パスタくらいだったら私つくるよ」  
 
お父さんは顔を上げた。  
お父さんが顔を上げると、ちょうどお父さんの顔の前に私の胸がきてしまう。  
Tシャツとジャージ姿のお父さんと、パンツ一枚の素っ裸の私。  
ちょっと前屈みで尋ねているから、少し胸が強調されるように垂れていた。(……って、何でそんなことばっか考えてんだろ私は)  
 
裸のままお父さんの目線をこっちに向けさせることが、こんなに緊張するとは思わなかった。もう既にお父さんには裸を見られているのに。  
お父さんは、もう全然驚いてもいない。  
「お、マジっすか〜。じゃあ俺の分も頼むわ」  
ちょっと軽い口調で、お父さんは私にお昼ご飯を頼んだ。  
 
お湯を張って、麺を入れてゆがいて、二人分のパスタができた。  
 
「お父さん、ご飯できたよ〜」  
私はお父さんに声をかけた。  
そして、お父さんとリビングで向き合って、一緒に昼ご飯を食べ始めた。  
パンツ一枚のまま、お父さんと食卓で向き合った。  
 
「「いただきま〜す」」  
さっきまで消えていたテレビを点け、二人でテレビを見ながらお昼ご飯を食べた。  
 
「しばらく会社休みなの?」  
「ああ、残業多いから代休取れって人事が煩いんだ。有給も使い切れてないってのに。」  
「ふーん、お疲れさま」  
 
父の空いたコップに、私は立ち上がって麦茶を注いだ。  
(うわあ、おっぱい丸見え……)  
 
「はい、麦茶だけど、気分だけでもお酌してあげる」  
「お前ええやっちゃなあ〜、今のはちょっと嬉しいぞ」  
「だってお父さんほんとに帰るの遅いんだもん、疲れてるでしょ?」  
「受験で一日中勉強してるお前よりはしんどくないぞ、きっと」  
「だって私は自分の勉強してるだけでいいもん、お父さんに比べたら全然だよ」  
「へー、普通高校生って自分のことで精一杯なのに、よくそこまで言えるなお前は。でもお前はお前のことを一生懸命やればいいんだぞ」  
「うん、そのつもり」  
 
お父さんと二人きりで一緒に食事するのはちょっと久しぶりだ。  
普段通り、すっごく楽しくお父さんと会話した。  
パンツ一枚の裸で。  
 
お父さんの方が早く食べ終わったが、まだ席を立たない。  
私が食べ終わると、そのときにお父さんは席を立った。  
 
「洗い物くらい俺がする」  
そう言ってお父さんは、空いた私の食器を回収た。  
「うん、お願い。ありがと」  
 
すると、お父さんはやおら私のそばに寄って来た。  
そして、頭を撫でられた。  
私の顔を見つめながら、無言でずっと頭を撫でている。  
「あの、お父さん……?」  
(目線は、ずっと私の顔だよね?変なとこ見てないよね……?)  
 
「……勉強、頑張れよ!」  
そして、ぽんぽんと私の頭を叩いた。  
「……うん!」  
 
「昼もここで勉強するか?だったらテレビ消すぞ」  
「ん〜、やっぱお昼からは自分の部屋で勉強する」  
「おー、頑張れよー」  
 
 
自分の部屋に戻った。まだ私はパンツ一枚の裸だ。  
 
(うわー、私、変なことしちゃったあ〜……!お父さんにずっと裸見せちゃった〜!  
恥ずかしいよお……、まだどきどきしてる……!  
お父さんに裸を見られて、こんなにどきどきするなんて……!  
あれ、普通お父さんに裸を見られるのって、嫌がるものなんだっけ!?)  
 
 
その日ずっと、どきどきが止まらなかった。  
 
 
家の中を裸で歩くのが気持ちよかった。  
何でだろう。ただ、服を着ないという開放感が楽しかっただけだ。  
そのはずなんだ。  
なのに、お父さんに裸を見られた。  
そのとき私は、混乱した。  
まず最初に、叱られるんじゃないかと思った。子供でもないのにパンツ一枚でうろうろするなんて、無作法で見苦しいからだ。  
でもすぐその次に、裸を見られたことへの恥ずかしさが溢れて来た。お父さんとは言え男だ、男の人に裸を見られたんだ。  
でも、裸でうろうろしていたのは私だから、悪いのは私だ。  
だからお父さんに「ちょっと、じろじろ見ないでよ!」と強く出ることもできなかった。  
 
恥ずかしかった。教材を両手で抱えていたせいで、胸を隠すこともできなかった。  
お父さんは、最初だけはしっかり、私の胸を見ていた。胸の先にお父さんの視線を確かに感じた。  
 
でも、お父さんはそれっきり、私が服を着ている時と同じように私と話した。  
もちろん私は娘だ、娘を性的な目で見る父親なんてあまりいないだろう。だから、私が裸でも気にしないのかもしれない。  
しかし、この私の裸を、身体つきが成長してから見た私の知り合いは、お父さんが初めてなんだ。  
お父さんは私の裸を知っている。  
裸なんて滅多に見せるものではない。  
でも、自分で言ってしまうけど、私の身体はそれなりに手入れして磨いているつもりだ。うん、ちょっと自信あるんだ。  
だから、そんな素っ気ない態度をとらずに、もっと見てほしい。  
でもじろじろとは見られたくないから、もっとお父さんの視界に入りたい……!  
だって家族なんだもん、裸でも気にしないよね……。  
 
 
その翌日。  
お父さんは、3日間会社が休みだと言っていた。  
今日も、家に居るはず。  
 
お母さんも兄さんも出かけて、お父さんだけがリビングでテレビを観ているときに。  
「お父さんおはよう〜」  
またパンツ一枚で、お父さんに挨拶した。  
お父さんはこっちを見た。私の方を見た。  
 
「おう、おはよう」  
私の方を見たものの、またすぐテレビを観始めた。  
私は、冷蔵庫からジュースのペットボトルを取り出し、それを飲みながらソファーのお父さんの隣に腰掛けた。  
 
「ちょっと休憩。何観てるの?」  
「わからん。さっきテレビつけたばっかりだし」  
「平日の朝って面白い番組ないよね〜」  
「ああ、どうせ主婦が家事の合間に観るものだしな。」  
「……今日も暑いね」  
「ああ、涼しそうでいいなお前は」  
 
あ、お父さんは私が裸でいることを認めているんだ……。  
家族だし、おかしなことでもないんだ。それに、照れることでもないんだ……。  
 
ところで、この暑いのにお父さんがかなり着込んでいることに気付いた。  
そう思ったと同時に、ピピピピっと体温計の音がした。お父さんの顔も赤い。  
「……俺は風邪ひいたよ。寒い……」  
 
「えっ!お父さん、大丈夫!?」  
「あんまり大丈夫じゃないから熱測ってんだろうが」  
「……お父さん、顔こっち向けて」  
 
私は顔をお父さんの顔に近づけた。額をお父さんの額にくっつけた。  
ソファーで隣り合っているから、お父さんは顔だけをこっちに向けている。  
私の裸の身体が近づき、接触し、密着した。  
「うわあ〜、熱いよ……ほんとに風邪ひいたんだね」  
(私の胸、お父さんの肩に当たってる……!)  
お父さんは少し咳き込んだ。息が私の胸の先っぽにかかった。  
 
「こりゃ本格的にダメだな、ちょっと寝てくる」  
「お父さん、歩ける?肩貸すよ?」  
「大げさだっつーの。それより風邪がうつるから俺に近寄るな」  
「じゃあ、私氷枕作る!お父さんは部屋に戻ってて!」  
「おお、じゃあ頼むわ〜……」  
 
私は相変わらずパンツ一枚の姿のまま、氷枕を作ってお父さんの部屋に持ち運んだ。  
「はいお父さん、氷枕。……ちょっと頭上げて」  
私は片手でお父さんの頭を抱え、少し浮かした。  
(何でわざわざ、お父さんの顔に胸が近づくようなことばかりやってるんだろう……)  
「ありがとう、気持ちい〜。……いいからお前はさっさと勉強してこい」  
「お昼、お粥つくってくるね」  
 
 
 
 
朝。私は一人でお留守番だ。  
今日はお父さんも誰も家にはいない。  
それでも(いや、普通「だから」だよね?)、私はパンツ一枚で部屋で勉強していた。  
やっぱりこの暑さはどうにかしてほしい。  
 
それにしても、お父さん、本当に私が裸でも、何とも思わないのかなあ。  
私、女っぽい身体じゃないのかなあ……。  
 
 
ピーンポーン  
 
玄関の呼び鈴が鳴った。  
 
(えっ、ちょ、ちょっと。私こんなかっこなのに……)  
「はーい」  
私はドア越しに話しかけた。  
 
「おはようございます。あなたは今、幸せを感じていますか?」  
「……え?」  
「僕は『◯◯の会』に入会して、この世で幸せになる手がかりを掴みました」  
 
要約すると、玄関越しのこの男性は、振興宗教の勧誘員だった。  
 
「あの……すみませんが私、そろそろ用事がありますので……」  
「あ、ついお時間をとってしまって申し訳ありません。  
できれば、僕たち『◯◯の会』の冊子だけでも受け取っていただきたいので、扉を開けていただけないでしょうか」  
(えっ!?)  
 
扉を開けてくれと言われても困る。  
私は今、家の中だからということでパンツ一枚なのだ。  
 
(……でも、家の中なんだから、パンツ一枚でもおかしくないよね。  
どうしよう、このままドア開けちゃう?この宗教の男の人に、裸見せちゃう?  
わーわー、何考えてんの私!それは危なすぎるし、変態だよ!!)  
 
「……わ、わかりました。でも、少しだけ待っていてください」  
「はい。どれくらいお待ちすればいいでしょうか」  
「え、えーっと、服を着てくるので、3分くらい……」  
「はい。お願いします」  
 
何を口走っちゃってるんだろう私……。  
「さっきまで裸でいた」という情報を、何で態々この得体の分からない男に教えないといけないんだろう。  
 
自分の部屋に戻り、あわてて服を探す。  
まずはブラ。とりあえずこれで、致命的なところは隠すことができた。  
この上から、ジーンズとTシャツを着ることにする。  
 
(……こんなTシャツ、持ってたんだ)  
一年前に衝動買いしてしまったものの恥ずかしくて一度も外に着て出たことはない、裾がおへその上までの丈のチビT。  
それを引っ張り出して、着てみる。  
 
へそ出し。おへそ丸出し。  
外国に行けば女の子のファッションとして当たり前かもしれないが、日本ではお腹周りにある程度自信のある女の子じゃないと着られない服装。  
そして、このTシャツは胸のサイズにぴったりフィットしていて、少し胸が強調されていた。  
でも、確かにこんな格好をしてみたい気持ちだってあるんだ、私は。  
(ふ、普段からこんなかっこしてる人だって、この人に思わせちゃえばいいのよ)  
へそ出しチビTとジーンズ姿で、私は玄関に戻った。  
 
チェーンはかけたまま、鍵を開け、ドアを開ける。  
丸刈りで、華奢で小柄で、眼鏡をかけた、童顔の、……言い方は悪いがいかにも冴えなさそうな男の人だった。  
背は私より低い。もしかしたら、私より年下だろうか。  
 
「どうも、ありがとうございます。どうかお読みください」  
笑顔もなく、幾分棒読み気味に彼は言い、私に冊子を手渡した。  
私の服装には興味は無いようだった。  
 
「これからも◯◯の会機関紙が出来次第、お届けさせていただきます。では失礼します」  
(えっ、また来るの!?)  
 
 
次に彼が来たら、多分この程度では満足できないかもしれない。  
「家の中」という口実のもと、私は、家族以外の人に裸を見せたくなってきていた。  
確実にエスカレートしていた。  
 

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