制服の下に何もつけていなくても、そう簡単には知られないものなんだ。  
 
あの日から私は、当番のときは下着を脱いでから図書館に来るようになって  
しまっていた。  
でも、そもそも図書館のカウンターの内側にいると、腰から下なんて他の生徒  
からは見えないし、セーラーの布を持ち上げる胸の先端も、それとわかって  
いる自分だから目立つように感じるだけで、普通は気付かれないと思う。  
誰にも絶対に気付かれないのなら、それはしていないのと同じじゃないのかな。  
そんなことを考えてしまうのは、この刺激に自分が慣れてしまったからなの  
かもしれない。  
 
「返却お願いします」  
声をかけられて顔を上げると、そこには見知った顔があった。  
「この前はありがとう」  
「どういたしまして」  
閉館間際に駆け込んできて、本を借りていった男子生徒。  
あのときは見られたかなと思って何日かはドキドキしていたけど、別に何かを  
言ってくるようなこともなく、やっぱり気付かれなかったんだろう。  
安心して……なのに、ちょっと残念だとも思った自分に少し焦る。  
もしも見られていたら、どんなことになったかわからないのに。  
 
カウンターを挟んで、彼と少し雑談をした。  
授業のこととか、来月に迫った試験のこととか、ごく普通の会話をかわしながら  
……そっと両膝を開いてみる。  
閲覧室からは、カウンターの内側はもちろん見えないようになっている。  
だけどもし、このカウンターがいきなり透明になってしまったら。  
ありうるはずのない想像は、この前みたいに私をドキドキさせた。  
目の前にいる男子は気付いていない。にこやかに話している私の両脚は大きく  
広げられ、その奥の恥ずかしい場所はぐっしょりと濡れていることに。  
さりげなく下ろした左手で、ゆるゆるとスカートの裾を持ち上げる。  
カウンターに隠れて……すぐ目の前に男子、そして他にも何人もの生徒が  
いる場所で、自らスカートを捲ってアソコを晒している。  
身体の奥が、痺れるように熱くなった。  
気付かれるはずがないという気持ちと、気付かれたらどうしようという気持ち、  
ふたつが私の熱を上昇させる。  
無意識に動いた右手もスカートの中に潜り、持っていたペンの丸いキャップを  
そこに押し付ける。  
「………あ!」  
「どうしたの?」  
訝しげに問いかけてくる男子に、ペンを落としたから、と告げてカウンターの  
陰に隠れる。  
もちろんそれは口実。本当はそのペンが、一番敏感なトコロを思った以上に  
強く刺激したからだ。  
身を隠したまま、もう一度キャップの先を濡れたアソコに押し付ける。  
くちゅ、くちゅ、という音は、本来静かな場所である図書館では響きすぎる。  
これ以上は、駄目。  
深呼吸してから、今度は脚をきちんと揃えて元通り椅子に座る。  
「ペン、あった?」  
「ん。ちょっと奥にいってたけどね」  
右手のペンを示してみせる。  
まだしっとりと湿っているキャップを揺らすようにして。  
 
 
閉館時間になって、他の生徒は出て行ったけど、私は少しの間、カウンターに  
突っ伏していた。  
クラシックな木目調の天板の上で、胸の膨らみが押し潰される。  
こんなの、駄目だって。わかってるけど。  
 
わかってるけどきっと、私はまた同じことをしてしまうんだろう。  
 
 
<了>  
 
 

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