――終わった。  
   
   
 高校の卒業式を一ヶ月前に終えたわたしは、友人たちが新大学生としてキャンパスライ  
フを楽しんでいるであろう今このとき、ただひたすらぷよぷよをやっていた。  
 落ちてくる色とりどりの不定形生物、繋げて、くっつけ、ただただ消す。  
 最初の内は大連鎖を狙っていたのだが、インターネット回線の向こう側にいる対戦相手  
には、どうやらわたしの思考は筒抜けらしい。  
 わたしが「十五連鎖きた! これで勝つる!」と喜んだ瞬間に、相手が先に着火して妨  
害してくる。  
「ああ、くそくそくそ」  
 そんなことを繰り返すこと十数度。  
 いまや無限に等しい時間を得たわたしは、連鎖を狙うよりも勝利を狙うことにした。  
 対戦相手を待つロビー画面では個人の勝敗が表示されてしまうため、勝利数よりも敗北  
数の多いものは、初心者狩りに狙われやすい。――そう、わたしのように。  
 敗北数三桁、それに対する勝利数はといえばたったの九回しかない。  
「あー、もうだめだ。放置しよ」  
 うず高く積まれた連鎖の可能性のないぷよぷよたちを見捨て、わたしはパソコンの前を  
離れベッドの上に寝転んだ。  
 晩御飯を食べてからというものずっとやっていたからか、肩や腰がどうも痛い。  
 それに最近はなんか身体をあんまり動かしてないせいか、身体のあちこちがさびついて  
しまったかのような錯覚に陥る瞬間がある。  
 それに無駄な肉のついていなかったお腹が、すこしぷにっとしはじめてきていた。  
 高校に通ってた時は部活動でバレーボールをやっていたから、いきなり運動しなくなっ  
てしまって、その反動がでてきているのかもしれない。  
 運動をしていない、というよりも、今現在のわたしを正確に表現するのなら。正しくは  
ひきこもりだろう。  
 四月になってこの半月、わたしの行動範囲は家の中だけ、家から歩いて五分のコンビニ  
にすら行かなくなってしまっている。  
 その理由は理解していた。  
 受験に落ちてニートしている自分を誰かに見られるのが、知っている人間に遭遇するの  
が――怖い。  
 そのことで馬鹿にするような友達なんていないだろうし、今でも連絡をくれる連中だっ  
ている。だから、これは自意識過剰なんだろうけど。でも……。  
「うー……ああっ、もうっ」  
 段々と鬱屈してきた感情を晴らすように怒鳴ると、ベッドの下に隠してあるお酒を取り  
出した。  
 未成年の飲酒は禁止されています?  
 そんなの知ったことか。  
 今は飲まなきゃやってられないんだ。  
 プルトップを勢いよく開けると、缶に口をつけ、一気に缶チューハイを呷った。  
「ぷはーっ」  
   
   
***  
   
   
「……やばい、どうしよう」  
 気づいたらわたしは外にいた。  
 確かお酒が足りなくなって、それで買い足そうと思って、コンビニに行こうとしたんだっ  
たはず。  
 それで家から一番近いコンビニで、高校時代の同級生がアルバイトしてるから、そこは  
避けることにしたんだった。  
 そこまでははっきりと憶えていた。  
 だが、ひとつ、分からないことがあった。  
 それは――、  
「なんで、わたし裸なんだろう」  
 わたしが素っ裸で外に出た理由。  
 靴下すら履いてないわたしが自分の置かれている状況に、ふと冷静になったのは、家か  
ら歩いて三十分の公園のトイレで吐き終わった後だった。  
 
 お酒が好きだけど、特段強いわけでもないし、飲みなれてもいない。それなのにストッ  
クしてあった六缶パックを飲みきったせいだろう、わたしは飲んだ酒を全て吐いてしまった。  
 酒を吐いたら、先ほどまであった酩酊感は消え去って。頭痛と強い後悔が残った。  
「ああ、思い出した」  
 そうだお酒を飲んでいる最中、だんだん身体がほてってきて、「暑いから脱いじゃえ」  
って、  
「わたしのバカァ―――――!」  
 後悔の重さにその場にうずくまってしまった。  
 暑いからと服を脱いだわたしは、お酒が足りないからと、そのまま外にでてしまった。  
 どうやらそういうことのようだけれど。  
 自分のやったことではあるんだけど。  
 でも、でも、わたし自身のことながら、  
「……バカすぎる」  
 酔いが醒めた頭痛が、自分の馬鹿さ加減を呪う痛みのようだった。  
 ああ痛い、頭がズキンズキンする。  
 どうしよう、具合悪いからこのまま寝転がって眠ってしまいたい。なんでわたし外にな  
んか出ちゃったんだろう。  
 家の中にいればよかった。  
「もう……やだ……」  
 このまま家に帰らないで、ここで死んじゃおっかな。  
 四月とはいえ、まだ雪が残っていて肌寒い。  
 このまま外にいたら朝になるころには凍死しているかも、  
「って、そんなのやだなあ」  
 素っ裸で公園のトイレで凍死とか、正直死に方として最低じゃないか。  
 ただでさえ受験失敗してみんなの笑いものなのに、更に笑いものになるとか嫌だ。  
 そう思った時だった。  
 遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。  
 なんだろう事件でもあったのかなあ。  
「いや」  
 事件なら、起きている。  
 何故分かるかって?  
 それは、今この場に犯人がいるから。  
 深夜とはいえそこそこ人通りのある住宅街。  
 わたしは歩いて三十分の距離を歩いた。しかも、酔っていたからまともな警戒心があっ  
たとは考えられない。  
「やばい……」  
 なんだっけ、ああくそ、思い出せない。  
 裸の女の人をみる趣味の人がいても、女が裸で歩いてたら罪になる。  
 公然なんとか、わいせつだっけ? 公然わいせつ罪。  
「…………」  
 わたしは暗闇を照らす蛍光灯の灯りに照らされた自分の身体を見た。  
 バレー部時代に友達たちから「バレーボールぶら下げてる」と笑われるほどだった、実  
際には野球のボール程度の大きさの胸。  
 ブラジャーで抑えていないと、右へ左へ揺れ動くから邪魔でしかないのだけれど。今は  
下着すらまとっていない。  
 そうつまり、下半身にもなにもつけていない。  
 洗面所に備え付けられた鏡を見た。  
 そこには全裸の女が映っている。  
 パトカーのサイレンが遠くに聞こえる。  
 あのサイレンはなんなんだろう、なんの事件を、ていうか誰を探しているんだろう。  
 ああ、頭が痛い。  
 だめだ、どう考えても。考えられる答えはひとつ。  
 酔っ払って全裸で出歩いたわたしは、誰かに見られて通報された。  
   
 「……終わった」  
   
   
***  
   
   
 何分くらいそうしていたのだろう。  
 時計も携帯もないから時間が分からない。  
 ただ、手足がじんじん痺れるほどに凍え、身体の震えが止まらなくなって、わたしはよ  
うやく決めた。  
 警察がわたしを捜そうとうろついているかもしれない。  
 今が何時かは分からないが人とすれ違う危険性はある。  
 でも、それでも、ここにいてもしょうがない。  
 わたしはそうと決め、トイレから出る決意をした。  
「よし、誰もいないよね……」  
 恐る恐る壁から顔を出しあたりを見回す、公園の周囲に人影は見えない。  
 この公園のそばにあるのは小学校だったり幼稚園だったり、昼間の人通りは多くても、  
夜間の人通りは少ないから当然といえば当然だ。  
 わたしは誰にも見られていないと分かりながらも、胸と下腹部を手で隠しながらトイレ  
から出た。  
「――っ」  
 足の裏に痛みが走った。  
 なんだろうと思ったが、答えは簡単だ。公園の砂利を踏んだのだ。  
 大小さまざまな小石が足の裏を刺激してくる。  
 ガラス片とかあったらやだなあ、そんなことを思いながら公園から歩道に出て、足の裏  
についた砂の粒を手で払った。  
 この公園から家へ帰るルートは大まかに二通りある。  
 街灯がある明るい道。  
 街灯が殆どない暗い裏道。  
 わたしの今の状況を考えると、後者を選ぶのが正解のような気がする。  
 だけど、裏道はその名のとおり家と家の隙間だとかで、足元すら見えないから何を踏む  
か分からないし。正直、そんな道を歩くのは怖い。  
 だから街灯はあるけど人気のない道を選んで行くことにした。  
   
   
 アスファルトの上を裸足で歩く。  
 まだ春というには空気が冷たすぎるけれど、寒いということより、足の痛さのほうが段  
々と気になってきた。  
 歩き始めて四丁ほど、誰ともすれ違わずに来れたが。このまま歩いてたら、足が痛くて  
歩けなくなっちゃうんじゃないだろうか。  
 足が痛いせいもあるのかもしれないけれど、歩いているうちに少しずつ裸だということ  
が気にならなくなってきていた。  
 というか、なんかすこし楽しい。  
 足が痛いのをごまかそうとしている内に、そんな妙な考えに至っただけなのかもしれな  
い。ただの自己欺瞞なのかもしれない。  
 それでも、鬱屈とした日常に比べたら、開放感があっていいなあって思うようになって  
いた。  
 誰もいない、何にも縛られていない、そういうのがたまらない。  
 それに、もしかしたらこんなわたしを、本当は誰かがみているのかもしれない。  
 そう考えると背中があわ立つようだった。  
 最初の内は隠すためだった手が遊び始めていた。  
 寒さで凍えたせいで立った乳首を弄んでいたのが、気づくと乳房をもみ始めていた。  
 大きくて、重いだけの邪魔な胸だけど。  
 でも、自分のものながら、この感触は好きだった。  
 友達の胸を触るのも好きだったけど、弾力という点では自分のおっぱいが一番だった。  
 だからかもしれない、わたしは中学生くらいのころから自分の胸をいじる癖があった。  
だって触るのも、もまれてる感触も好きなんだもん。  
 歩いていると通りぞいにアパートがあった。  
 そこは近所にある大学に通う大学生が多く住んでいる。  
 ただ虫とかねずみとかが出るから、その多くは男子だと聞いた。  
 わたしはふと思いついて、そこの駐輪場へ侵入すると、一台の自転車に目をつけた。  
 鍵がかかって動かせない自転車。  
 でも、そのサドルに跨ることはできる。  
 わたしは並んでる自転車の中でも一番野暮ったいのを選んだ。  
 自転車をまたぎ、サドルに腰掛ける。  
「ひゃっ」  
 
 凍えた身体よりもなお冷たい皮の感触。  
 安っぽい合成皮は、内部の土台の固さをそのまま伝えてくる。  
 陰部に当たる硬質で冷たい質感。  
 わたしはゆっくりと腰を前後に動かし始めた。  
 最初はずらすように、サドルに股間をこすりつけるように。  
 寒さで敏感になっている身体、氷のようになっている身体、わたしは氷を溶かすように  
サドルに股間をこすりつける。  
 野ざらしに近い状態で、誰が乗っているのかも分からない、もしかしたらとても不潔な  
ものなのかもしれない。  
 だけど、構わないと思った。  
 汚れているのなら、その汚れすらこすりつけようと思った。  
「はぁ……っ……ハァ……ハァ……」  
 段々と身体がほぐれていくようだった。  
 身体の真芯が、陰部からどんどんと温かくなっていく気がした。  
 わたしはどんどん我慢できなくなってきて、サドルの先端を割れ目に押し込もう、そう  
思った瞬間だった。  
「えーと、きみ。なにしてんの?」  
 声。  
「それ、オレのなんだけど……」  
 振り返ると、そこにはジャージ姿の男。  
 わたしを見て困ったように頬を掻いている。  
 それを見た瞬間、わたしの頭は珍しく高速で回った。  
「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!」  
 喉が痛くなるくらいの声で叫んだ。  
「へっ、え、ちょ、なに?」  
 そうして相手が戸惑っているところへ、更に。  
「変態よ! 誰か助けて!!」  
「なっ――!?」  
 叫ぶと自転車から離れ、その男を突き飛ばして走って逃げた。  
   
   
***  
   
   
「はは、あは、あははははっはは」  
 走って逃げながらも、笑いが止まらなかった。  
 あの男の驚いた顔ときたら。  
 思い出すだけで笑えた。  
 わたしが股間押し付けてた自転車、どうするんだろう。  
 洗って使うのかな、それとも捨てるのかな、ていうか、その前に舐めたりするのかな。  
「ぷっ、――あっはっはっはっは」  
 わたしはその場で立ち止まると、腹を抱えて笑ってしまった。  
 お腹が痛い。  
 爆笑してると、怒鳴り声が飛んできた。  
「うっせえぞ!」  
 そっちをみると、おじさんが寝巻き姿でわたしをにらみ付けていた。  
 ただ傍に街灯がないせいだろうか、わたしが裸だということに気づいていないようだ。  
 わたしはにやりと笑っていた。  
「ごめんなさい」  
 すぐさま謝ると、わたしは股間に手をやって、愛液で湿った割れ目をいじり始めた。  
「謝ればすむってものじゃない、これだから若いもんは」  
 何かぐちぐちと言ってくるおじさんの言葉を聞き流しながら、愛液で濡れた手で乳房の  
先端をいじる。  
 周囲の家やアパートの窓から、こちらを覗き見る人影がいた。  
 ……見られてる。  
 そう思うと、鼓動が早まっていくのが分かった。  
「おい、聞いてるのか」  
 おじさんが怒鳴った。  
「は、はい、聞いてます」  
 聞いてるから、聞くから、だから、もっと見て。  
 
 わたしを、わたしの身体を、知らない人たちに裸を見られて喜んでしまうわたしのこと  
を、もっと見てほしい。  
 そう思った。  
 裸を見られるなんて恥ずかしいだけだって思ってた。  
 いや、恥ずかしくないわけじゃない。見られてすごく恥ずかしい、鼓動が止まらないし、  
呼吸がおかしくなってきてるのが分かる。だって恥ずかしいから。  
 わたし裸で怒られてる。  
 しかも色んな人に見られながら。  
 そう考えると頭がぼーっとしてきた。  
 思考がとろけていく、とろけながらもより強い羞恥を求めているのが分かる。  
 どうしたら、もっと恥ずかしくなれるんだろう。  
 そう思った瞬間、閃いた。  
 おじさんの言葉を聞きながら、わたしは足を肩幅程度に広げ――、  
「だいたいだな、近頃の……ん?」  
 おじさんの言葉がとまった。  
 ああ、聞こえてしまったんだ。  
 ――わたしのおしっこの音。  
 寒さのせいでさっきからもらしそうだったものを、一気に開放したせいか、おしっこは勢いよくアスファルトを叩き、深夜の闇の中に音を響かせた。  
 おしっこの勢いは激しくて、わたしの足はにも飛び散っていたが、気にならなかった。  
「なんだこの音は、なにをしてる?」  
 そういうとおじさんは一旦引っ込み、直ぐに戻ってきた。  
 そして――、  
「なっ……」  
 取ってきた懐中電灯の光をわたしに浴びせ、わたしの姿を見て、声を失った。  
 全裸の女が、路上で立ちションしている。  
 あのおじさんの云十年の人生の中でも、ないことだろう。  
 そう思うと、おしっこが激しさを増した。チューハイ六缶分だ、なかなか止まらない。  
 おじさんが黙ってしまうと、更に周囲の家の窓から光が浴びせられた。  
 様々な方向から懐中電灯の光をあてられ、闇の中に浮かび上がったわたしの肢体。  
 色んな人たちがわたしのことを見ている、目でわたしを侵している、そう思うとその場で様々な卑猥なポーズを取ってみたかったが、やめた。  
 ここら辺が潮時だろう。  
 騒がれて警察がきたらえらいことだ。  
「反省してまーす」  
 わたしはもう一度謝ると、走ってその場から逃げた。  
   
   
***  
   
   
 段々、自宅に近づいてくると、街灯の数が増えてきていることに気がついた。  
 先ほどまで薄暗かった周囲が、うちのある通りに来ると昼のように明るく、隠しようが  
なくなっていた。  
 だけど、もう気にしなかった。  
 わたしは車道のそばを歩きながら、ゆっくりとうちへ帰る。  
 すれ違う車からは丸見えだろう。  
 だけれど、夜でも交通量の多いここで、急ブレーキしたら事故ってしまうし。Uターン  
しようにも反対車線との間には河川が流れていて、数百メートルおきにある交差点くらい  
でしかできない。  
 わたしは最初、こんな形で家を出てしまったことを後悔していた。  
 でも今は違った。  
 だって、こんな気持ちいいんだもの。  
 まさか裸ででかけるのがこんなに気持ちいいなんて。  
 外にでるのもいいかもしれない。ううん、これからは外に出よう。  
 家にこもっていたって仕方がない。  
 外に出よう。  
 外に出て、露出しよう。  
 そう決めた。  
 自宅の玄関前まで帰ると、わたしは実にすがすがしい気分だった。  
 明日からやるべきことがみつかった、そんな気分だ。  
 わたしはまず今日は部屋へ戻り身体を温めよう、そう思って玄関のドアノブを掴み、ま  
わそうとして。  
「――おや?」  
 がちゃっ。  
 回らない。  
 まわそうとしても途中でひっかかるというか、これは明らかに――  
「か、かかっ……」  
 わたしはこの一ヶ月近く引きこもっていた。  
 親もそれを当然と思うようになっていた。  
 深夜、うちの家族は全員帰ってきている――わたし、以外。  
   
   
 いこーる  
   
   
「カギ締められたああああああああああああああ!!」  
   
   
   
   
***  
 
 
 わたしは恥ずかしさを耐え忍んで、玄関の鍵をあけてもらうと。驚く親に事情を説明し、  
正気を疑われ、母さんが泣いて「あんたも苦しかったのね」と頭がおかしくなった認定を  
押されかけ、一ヶ月の自宅謹慎を命じられ。  
 それから二ヵ月後、わたしはアルバイトを始めた。  
 家から歩いて十分ほどの距離にある喫茶店、そこのウエイトレス。  
 母さんの友達がやっている店で、結構繁盛しているため、毎日でも働けるわたしは重宝  
がられている。  
 わたしもこの仕事がとても好きだ。  
 何故って――?  
   
「はい、ただいま」  
 窓際の席に座ったカップル客に呼ばれ、そっちへ急ぎ足で向かう、決してスカートがめ  
くれないように気をつけながら。  
 ここの喫茶店に制服らしい制服はなかったが、わたしは近所のドンキホーテで買ったウ  
エイトレスだかメイドのコスプレ衣装を自ら進んで着ていた。  
 胸が強調され気味で、スカート丈が短い、エプロンドレス。それに白のニーソックスを  
合わせている。  
 母さんからはいかがわしい店みたいと笑われたが、わたしのおかげで男性客が増えたそ  
うだ。  
「ご注文お決まりになりましたでしょうか?」  
「はい、えーと、この……」  
 注文を言いながらもカップルの男のほうは、わたしのスカートを、わずかに露出してい  
る太ももをみている。  
 彼女いるんだから、別な女に欲情しなくても。  
 そう思いながらわたしは笑顔で、どうしようもなく溢れてくる快楽に耐えていた。  
 ここで、もし、わたしがスカートをたくしあげたらどう反応するだろう?  
 そう、わたしがパンツを履いていないと知ったら、この目の前の男はどういう顔をす  
るんだろう。 
 そう考えると、どうしようもなく、たまらなかった。  
   
   
 春、わたしのニート生活は――終わった。  
 そしてわたしは露出に目覚めたのだ。  
   
   
   
 了  
 

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