風呂・トイレ共同の女子寮に住んでいると、恥じらいはともかくとして慎みはなくなっていくものだ。
私が住んでいる女子寮は、女性の一人暮らし用の賃貸物件なので、特に通う学校や職場が同じというわけでもない。
だから、住んでいる人達とは特にみんな顔見知りなわけではない。
それでも、女しかいないとなると、どんどんだらけてしまうみたいだ。
例えば、食堂にノーブラTシャツとショーツ姿で来るのは当たり前、そんな寮生を目にしながら寮母さんが食器を洗っていたりする。
さらに、夏場は共同のお風呂に向かうために下着姿で廊下を歩いている人達もいた。
むしろ、夏場はお風呂に行くのに下着姿じゃない方が珍しかった。
みんな自分の部屋でブラとショーツ以外の服を脱いでから、風呂場に入る。たまにブラジャーも脱いでショーツ一枚の人もいた。
この寮は専属の警備員さん以外は、友達や親でさえ男の立ち入りが禁じられている。だから寮の中で男の人と鉢合わせることはない。
そもそも風呂場にシャンプーやソープを置きっぱなしにできないから、入浴するときには着替えの他にお風呂道具も持っていかないといけないので、
そうなると、みんな荷物(着替え)は少ない方がいいので、下着姿で風呂場に向かうのが当たり前になってしまっていた。
この寮に入りたての4月には、私も自室と風呂場以外では「外に出られる」程度の服は着ていたけれど、
ここまで普通に下着姿の女の子が平然と廊下を歩いていると、私も「まあ、別にいいか」となってしまう。
確かに、着替えを持っていくのは面倒なんだ。
とは言え、初めて下着姿で自室を出たときはすごくドキドキした。
(警備員さん以外)女の子しかいないとは言え、廊下を下着で歩くのは落ち着かなかった。
どうせ風呂場で全部脱ぐというのに、廊下で下着姿というのは妙に落ち着かない。
露出狂ってこんな気持ちなんだろうか。女しかいないから見せたって何ともないのに、
本来ありえない場所で見せてしまっている背徳感が妙に心地よく、楽しいというか……
(こんなことを考えてしまった時点で、私は多分、軽い露出趣味に目覚めてしまったんだと思う)
それでも何だかんだで慣れてしまうもので、お風呂に行くときは普通に下着姿で廊下を歩くようになってしまった。
廊下はもちろん外出用にちゃんと服を着た女の子ともすれ違うんだけど、下着姿の女の子だっている。
やっぱりドキドキはするけれど、このドキドキが楽しいのだ。
今日はサークルの飲み会で帰宅が遅くなってしまった。早くお風呂に入って寝ようと思っていた。
玄関で下足して廊下用スリッパに履き替え、自室に戻る前に、顔見知りになった隣の部屋の女の子と鉢合わせた。
その子はお風呂あがりで、大胆にもショーツ一枚にバスタオルを首からかけて胸を隠しているだけだった。
廊下でその子と立ち話していると、何と、警備員さんが見回りにやって来たのだ!
男子禁制のこの寮で唯一の、いても全く違和感のない男の人が警備員さんだ。
でも、この子はショーツ一丁なのに、それでいいのか!?
しかし、警備員さんもその子も私も、無言で軽く会釈をしただけだ。ごく自然な流れだった。
警備員さんは、もうここの寮生の女の子が下着だろうと裸だろうと、慣れちゃったみたいだ。
そういえば寮内の掲示板に、「夜間は警備員が廊下を見回りしますので、ご了承ください」と書かれてあった。
「ご了承ください」という言葉に違和感があったけれど、こういうことだったのかと納得した。
男の人に、公然と、裸を見せてしまえるなんて……。
私は自室に戻り、服を脱ぎ、ブラジャーも脱いだショーツ一枚で、お風呂道具を手に風呂場に向かった。
途中、やっぱり半裸の別の女の子とすれ違った。この子は短パンは履いていたけれど、トップレスで胸丸出しだった。
うん、私は別に間違ってない!
他には特に誰ともすれ違わず、風呂場に着いた。
入浴し、身体を乾かし、さっぱりしたところで、また履き替えたばかりのショーツだけで廊下に出た。
廊下の向こうに人の姿が見える。
わ、わ、警備員さんだ!警備員さんが向こうから歩いてきた!
私、おっぱい丸出しなのに!でも、気にしちゃダメだ!
そんな内心慌てふためく私を横目に、警備員さんは全く気にせずに通りすぎていった。
私の寮生活は、まだまだ始まったばかりだ――。