私、志田秋穂。  
この就職氷河期まっただ中の就職活動生です。  
 
 
私は多分、露出趣味がある。  
だから、就職活動をしていると面接と同時に健康診断を行ってくれる会社もあって、少しわくわくする。  
お医者さんだとは言え、男の人に裸を見せるのはどきどきするし、何故か楽しい。  
 
女と脱衣を伴う検診という問題は本来、ずっと付きまとうものだと思う。  
だから、学校でも面接時の健康診断でも、服を脱ぐのを渋る女の人は多い。  
顔には出さないし気にしていないような素振りを見せているけれど、多分みんなそんなに内心穏やかじゃない。  
胸を丸出しにして人に見せるというのは、いつだってかなりの意味を持つ行為なのだから。  
それなのに、就職や会社が絡むとみんな従順に服を脱ごうとするのが見ていて面白い。  
 
もうちょっと言うと、人事(大抵女性)の人から服を脱ぐように説明があった後、普通は他の女の子はみんなちょっと躊躇う。  
そこで、裸になるのが大好きな私がまず真っ先に服を脱ぐことにしている。  
そうすると、私につられて他の女の子も慌てて服を脱ぎ始める。それが私としては見ていて楽しかったりする。  
まるで、少しでも人事の人に迷惑をかけないことが選考の基準にでもなっているかのようにーー。  
 
 
さて、ここの会社はとうとう最終面接まで来た。  
ここの会社では最終面接時に「身体検査」を行うということで、何と人事の人からパンツ一枚になっての受診を指示された。  
この会社はかなりの大手だからか、入社時の健康診断も入念に行うようだ。  
健康診断の内容について説明し終えた人事の人は私たちのいる待合室から出て行き、部屋には入社志願者だけが残った。  
もちろんパンツ一枚になるのはそのお医者さんの前だけで良かったはずなのだが、私は少し悪戯をしたくなったのだ。  
つまり、待合室となっているこの部屋(もう既に無関係な男性が入ってくることはない)で、わざと勘違いしたふりして、服を脱ぐ……。  
「え、ここで脱ぐの?」  
「脱ぐのはお医者さんの前だけじゃあ……」  
就職活動を通じて友達になった二人から、私はたしなめられる。他の女の子も無言でこっちを見ている。  
でも、私は構わず服を脱いでいく……。  
そして、戸惑いながらも私につられて、その場でどんどん服を脱いでいく他の子たち……。  
(私もほんと不思議だと思う。就職と健康診断が絡むと、率先して裸になって自分を辱めた方がポイントが上がる様な錯覚に陥るのだから)  
 
こうして、その待合室にいた数名のうら若い女の子(←自分でゆーなっつーのw)が、全員パンツ一枚姿になった。  
同じパンツ一枚といっても、姿は色々だ。  
私のように全く胸を隠さず平然としているのもいれば、ずーっと胸を隠して今にも泣きそうなくらい恥ずかしがっている子もいる。  
パンツの色だって様々で、私は今日は薄いブルーだけど、白い子もいれば緑色の子もいる。  
でも、大抵は黒とか派手な色にせず、みんなこういうときは白や淡色のおとなしめの色の下着にするみたいだ(本来誰も見ないはずなのに)。  
そして、名前を呼ばれた人から順に(呼び出し係が男の人だったけど!)、身体検査を受けにいった。  
 
 
「身体検査」というパンツ一枚姿を指示された検査では、パンツ一枚姿でお医者さん(しかも男!)の前に立って、  
気をつけの姿勢やバンザイの姿勢をとらされたり、  
皮膚検査の名目で至近距離で舐めるように全身をじろじろ見られたりした。  
これはいくらなんでも、流石の私でさえも、とっても恥ずかしくてどきどきした。  
(同時にとてもどきどきしていて、正直ちょっと嬉しかったけど……)  
 
この検査については機会があればまた話すことにして、私たちがさらに恥ずかし思いをした話を今回は話そうと思う。  
平たく言うと、パンツ一枚の姿を、検診と無関係のたくさんの社員さんに見せてしまったのだ!  
 
 
その日は身体検査が終わった人から順に帰宅しても良いことになっていた。  
身体検査を終えた私は、もう既に着てもよかったはずなのに、待合室でしばらく裸で待っていた。  
とりあえず、今まだ検診を受けている郁美と初奈を待たないといけない。敢えて、裸でーー。  
 
人一倍羞恥心の強い郁美は、泣きながら帰ってきた。  
パンツ一枚ですすり泣く郁美はとても色っぽく、女の私でもどきっとしてしまうほど儚げだった。  
とりあえず、まるで男の人に何かされたみたいだから裸でうずくまって泣くのはやめなよ……。  
私が裸のまま郁美をなぐさめていると、続いて初奈も帰って来た。  
おーおー、初奈は礼儀正しいねえ。  
呼び出し係の男の人に、パンツ一丁で堂々とお辞儀しながら「ありがとうございました!」って言ってるよ。顔真っ赤なのに。  
こうしてちょうど、私たち3人がパンツ一枚のまま待合室で会話していたときだった。  
鍵のかかったドアの向こう側で、何かが倒れる大きな音がした。そして、男の人の低いうめき声が聞こえた。  
 
この待合室は会社の会議室で、左右にドアがある。  
そのうちの片一方は鍵が閉じられていて、そのドアが面する廊下は普通に社員が通行できるようになっていた。  
だから、私たちがこんなエロっちい姿をしているすぐ向こうで社員さんが歩いていたのだ。  
その大きな音は待合室にいた他の二人にも聞こえたようで、私たちはぴたりと会話をやめた。  
 
そこでまたーーほんとに我ながら趣味が悪いと思うーー私の悪戯心が湧き上がってきてしまった。  
その物音が気になるから、パンツ一枚のままで、鍵のかかっているドアを開けてしまった。  
「えっ!ちょっと、秋穂!?」  
後ろから、郁美と初奈が驚く声が聞こえた。  
 
倒れていたのは、ーー社長だった!さっき面接を受けた社長だったのだ!  
廊下には他に誰もいない!そもそも普段人通りの少ないような廊下だから、身体検査の待合室のそばにあるんだ!  
とにかく、社長がいきなり倒れた!もしかして心臓発作!?  
 
「社長が倒れてる!!周りに誰もいないのに!!」  
「嘘っ!?」  
咄嗟に飛び出したのは初奈だった。裸の私を押しのけ、パンツ一枚のまま廊下まで飛び出しちゃった。  
初奈、ひょっとして私より度胸あるかも……。  
つられて私も廊下に飛び出した。  
この非常事態に不謹慎だけど、裸で廊下(検診とは異なる、裸であることが不自然な環境)に出て行くことがすごく爽快だった。  
郁美は、パンツ一枚のままでまごまごしていた。  
 
「心臓発作じゃない!?」  
私が言った。  
「まず呼吸確認するから……!……息してない。脈は……脈もない!!」  
社長の口元に顔を近づけ、手首から脈を触知しようとしていた初奈が応える。  
続いて初奈は、社長のスーツをはだけて、胸をはだけさせた。  
そしてそのまま、両手を胸に重ねて当てて、体重をかけて圧迫し始めた。心臓マッサージだ。  
心臓マッサージはかなり力一杯やらないといけないってことは自動車の教習で習った。  
一回の圧迫ごとに、初奈の綺麗な胸がぷるぷる揺れる。  
やるじゃん、初奈……こういうときに冷静に心臓マッサージを実行できる人って凄いよ……。  
「初奈はそのまま(心臓マッサージを)続けてて!私、人呼んでくる!郁美は救急車(呼んで)!!」  
「お願い、秋穂!」  
「ひっ……う、うん……」  
3人全員、パンツ一枚のままだった。  
私は、裸で会社の廊下を走って、色んな人に裸を見せられる口実ができたことが嬉しかった。  
初奈は、多分自分が裸なのも忘れて、一心不乱に社長に心臓マッサージを施していた。  
郁美は、ずーっと半泣きのまま、それでもこの非常事態への対処を優先させて、裸のまま携帯を取り出していた。  
3人とも、一刻を争う事態であることだけは認識を同じくしていた。  
 
パンツ一枚、素足にスリッパだけで、会社の廊下を走る。ときおりスリッパが脱げそうになってもどかしかった。  
ブラもつけない裸で全力疾走すると、胸がめちゃめちゃ揺れることを今知った……。ぷるんぷるん揺れている。痛い。  
辿り着いた近くの事務所。何課かなんか知らない。私はノックもせず、事務所に押し入った。  
「社長が倒れてます!みんな来てください!!」  
みんなが注目する。みんなが一斉に、私の裸に目を向ける……!  
この瞬間の爽快感はいつになっても忘れられないだろう。  
 
みんな呆気にとられている。無理もない。  
下着一枚の裸という気でも触れた様な格好の女が、あろうことか「社長が倒れた」などと荒唐無稽なことを口走っているのだから。  
追加の説明をするしかない。  
「私は本日御社の面接を受けました志田秋穂と申します!健康診断を受けていたら社長が倒れる音が聞こえて、慌てて飛び出してきました!」  
ようやく話を信じてもらえたみたいだ。扉近くの若手の男性二人が席を立って、こっちに寄って来た。  
「どっちですか!」  
「こっちです!」  
 
社長の元に向かう途中、郁美も廊下に飛び出してパタパタ走っているのを見かけた。胸元に何か機会のようなものを持っている。  
「郁美、何それ!?」  
「え、AED……初奈が、持って来いって……」  
AED、急な心臓停止の時に使う、自販機とかによく設置されているあれだ。そう言えば事務所に走っていく途中に自販機があった。  
それにしても、郁美はいつまで半泣きなんだろう……。AEDで胸を隠すようにしっかりガードしている。  
 
「初奈!」  
 
「秋穂!だめ、回復しない!!」  
「AED、郁美が持ってきたよ!」  
「ありがと、郁美!早く付けて!」  
「うん……」  
郁美が胸をかばっていたAEDを名残惜しそうに手放し、  
パンツ一枚の姿の女3人が、倒れた社長の周りをばたばたと動き回っていた。  
こんなときにこういうのもあれだけど、私たち3人ともかなりの見た目をしていると思う。  
顔もいいし、胸の大きさは色々だけど身体は無駄な脂肪がなく引き締まっている。  
そんな女が複数で裸で社長にあれこれしているのは、さながらハーレム仕えをする一端女のようで興奮した。  
人がどんどん集まってきた。  
私たちだけ、パンツ一枚……。社長は回復してほしいけど、このまま時間が止まってほしい。  
もっと、私を見てほしい!  
 
AEDを社長の胸に取り付けた。  
『放電を開始します。患者から離れてください』  
AEDの音声ガイドの声が廊下に響く。  
放電開始。祈ってしばらく待つ。  
郁美は、その場でしゃがみ込んで、半泣きのまま胸を両腕でしっかりガードしていた。  
初奈は、今さらおっぱいを丸出しにしていることを思い出したのか、私の隣に立ったまま胸をガードしていた。  
私は、……うん、言うまでもない。  
『放電が終わりました。ショックは不要です』  
私たち3人は社長に駆け寄る。初奈が社長の心臓に手を当てる……。  
「……動いてる!!」  
「えっ、ほんと!?」  
「……!」  
私たち3人のおかげで、社長が息を吹き返したのだ!!  
 
その後、遅ればせながらやってきた救急車で社長は運ばれて行った。  
救急員には、私たちの迅速な行動が褒められた。  
 
「ありがとうございます!お礼の申し上げようもございません!」  
この会社の重役っぽいおじさんが、私たち3人に向かって深々と頭を下げていた。  
「いえいえ、大きな音が聞こえた瞬間はびっくりして、どうしようかと思いましたよ〜」  
私は胸も隠さず、身振り手振り付きでずっと会話を続ける。  
「お、畏れ入ります!それより、こ、このようなお見苦しい姿ですみません……」  
初奈は胸を隠していた腕をわざわざ下ろして、赤面しながら深々とお辞儀する。  
「い、いえ、どういたしまして……」  
郁美はもう散々見られ放題見られたはずの胸をしっかりガードしながら返答する。  
「あ、あの、……この様な場にそぐわない格好のままなのは失礼と存じますので、……服を着てきますね」  
郁美が切り出した。一刻も早く服を着たいみたいだ。  
ええ〜、もったいないよお。せっかく私(たち)、裸でみんなの前にいるチャンスなんだからさ〜。  
 
ふと目の前に、デジカメを首からかけた社員さんがいることに気付いた。  
……よし、決めた!これが私の、今日最後の悪戯……!  
私は、右腕を初奈の、左腕を郁美の肩に回し、ぐっと引き寄せた。  
そして、カメラを持った社員さんに向かって、右手でピースを作ってみせた。  
郁美も初奈も、驚いた様な表情で私を見つめる。社員さんだって、多分驚いている。  
ハプニングで裸を晒している女の子が、まさかわざわざ自分の裸を撮影してほしいとアピールするなんて想像もしないだろう。  
でも、私は何も言わない。無言でピースサインを向け、アピールする……。  
社員さんがカメラを構えてくれた。郁美も初奈も、多分、観念したことだろう。  
 
パシャッ  
 
おっぱい丸出しで満面の笑みで中央に構える私と、胸を片腕でかばいながらも背筋を伸ばして凛々しい表情を作る初奈、  
そして、胸を両腕でかばっているけれどほんのりと笑顔を作っている郁美。  
いい写真が撮れた!  
 
 
数日後、めでたく3人全員にこの会社からの内定通知が来た。  
 
そして同日に、社長が倒れたことが新聞記事になっていた。  
おまけに、ちょうど健康診断を受診していて裸だった私たちが、格好も気にせず飛び出して社長を救ったことも記述されていた。  
新聞は相変わらずで、こんなセンセーショナルな見出しをつけてくれていた。  
 
『お手柄女子学生、裸で社長の命を救う!』  
 
 
 
 
終わり  
 

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