犯人の人質になった私たち。  
 私はどうなってもいい──  
 少しの間だけ、あいつの注意を引くことができれば、みんなが逃げ出す  
チャンスが生まれるはずだ。  
 けれど、大声を上げるにも、私は声が小さい。  
 暴れだすにしても、どんくさい。  
 どうしよう、どうしたらいいの……?  
 
 そうだ!  
 
 脱ごう──  
 
 脱いで私に意識を向けさせよう。  
 スタイルなら少しは自信がある。  
 胸だって大きいし、腰も括れているし、お尻だって……!  
 
 そうと決めたらやるしかない。  
 人前で脱ぐのは恥ずかしいけど、女は度胸……っ!  
 
「おいお前! なんで脱いでんだ!?」  
 犯人が私に眼を向けた。  
 さぁみんな! お願い今のうちに逃げて!!  
 私は心の中で思いっきり叫んだ。  
 
 だが、しかし──  
 私に眼を奪われたのは犯人だけじゃなかった。  
 その場にいた全員──  
 そう。  
 人質を含めた全員が、私を唖然とした顔で見つめていたのだった。  
 
「意味わかんねぇ……なんだこの女?」  
 犯人の呆れた声に、私はいろいろな意味で涙した。  
 
 
──おわり。  
 

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