昔むかしある国に、とても美しく、とても優しく、とても賢い女王様がいました。
ですが、女王様には一つだけ、隠し事がありました。
女王様は、ハーフエルフだったのです。
※王様の耳はエルフ耳※
「……うう、今日は風が強くて帽子が飛ばされるかと思った」
「いいじゃないですか。帽子くらい飛ばしたって。民が拾って宝物にしますよ」
「ダメよ。帽子が無かったら、耳が見えちゃう」
「可愛いじゃないですか。俺は好きですよ、陛下の耳」
「ひゃうっ!? ……もうっ、耳には触らないでって言ってるでしょう!」
「おっと失礼。俺としたことがすっかり忘れてました」
「……もう」
「俺はそんなに気にすることはないと思いますけどね」
「私が半端者って知れたら、きっと王位に異を唱える連中が出てくるわ」
「大臣共も、貴族共も、皆、陛下の魅力にメロメロですから、大丈夫ですって」
「民は違うかもしれない。他国から嘗められるかも知れないわ」
「我が国民は皆陛下が大好きです。……他国の連中はどうだか知りませんが」
「私のせいで戦争が起きたらどうしよう?」
「大丈夫ですって」
「大丈夫じゃないかも知れないじゃない!」
「そのときは、俺が貴女を守ります」
「……本当?」
「もちろん」
「私みたいな半端者でも?」
「貴女は半端者じゃあないですよ」
「……本当に?」
「何度でも言いましょう。我が剣は貴女の為に。我が盾は貴女の為に。我が体は貴女の為に。我が命は貴女の為に。国が滅びようと、世界が滅びようと、いつ如何なる時も、貴女の為に」
「……うん」
「だから、なんでも命じてください。俺は貴女の望むままに」
「……なんでも?」
「なんでも」
「……じゃあ、ぎゅって、して」
「仰せのままに」
「……はぅ」
「……陛下」
「ん?」
「キスしても良いですか?」
「……ん、いいよ」
「では失礼して」
「ん……ひゃんっ!? なんで耳にするのっ!? ふぁっ、やだ、くわえてぺろぺろしちゃダメぇっ」
「あー畜生マジで可愛いなもうっ!!」
「あっ、やだ、もうっ、どこ触って、んっ!」