○○スーツ(仮称)
「さて、それでは説明しましょう。
これが貴女達をスーパーヒロインに変える○○スーツ(仮称)よ。
普段はこれ。ブレスレットの状態なの。
登録された声紋でコマンドワードを唱えると、
基地から15個ある衛星の最短経路を中継してスーツが転送されてくる仕組みよ」
「はーいっ!質問です!
ということは、空が見えてないと変身出来ないんですか?
あと、声が出ないときはどうするんですか?やっぱり変身できないんですか?」
「正式な呼称は転身よ。変身でも良いけどね。
良い質問ね。
だけど、それは違います。
スーツはタキオン転換ビームで転送されるから、理論的には数十kmの岩盤くらいなら楽に透過して届きます。
さすがに地球の核を貫通して反対側に届けることは出来ないから、中継衛星がいるんだけどね。
転身可能かどうかは基地もブレスレットも常にチェックしているから、見れば分かります。
声についてはね。実は裏技を用意してあるのよ。
コマンドワードは実は本当に声を出さなくても、言ったように口を動かせばそれを関知できるの。
それも出来ないときのために、奥歯とか、体内に仕込める非常用のカプセルを作ってあるから。それを使えば一回だけ自動でコマンドワードが発信されます」
「つまり、核と同じ密度を持った物質や同じような効果を持つバリアの中では転身出来ないのですね。
注意する必要がありますね」
「そういうこと。
転身に要する時間は0.7ミリ秒です。ちょぉーっと、早いでしょ。
○○スーツを身につけた貴女達は無敵のスーパーヒロインよ。
まあ、ビルを持ち上げたり地球をひとっ飛びで一回りって訳にはいかないけどね。
耐熱限度は3千度。対衝撃なんかの限界吸収エネルギーは1.6MJよ。
パワーアシスト機能は最大で50倍増しってとこかな。
一応ジェットでちょっとだけ飛べるけど、時間は1分ないわよ」
「すごいなー。
カッコはレオタードにちゃちゃっとプロテクターつけたコスプレヒロインって感じなのにね。
太股なんか生足っぽいんですけどー」
「まあ、それは否定できないけど。
分かってるでしょうけど、このバイザーメットは通信と情報処理用の端末だし。
肩と胸と背中のプロテクターはエネルギー変換システムを兼ねているし、メタルグローブとブーツは攻撃時の衝撃から身体を守るため。
生足っぽいところもちゃんと透明被膜になってるし、全身をマイクロフィールドで覆ってなきゃこんな強度なんか出ないのよ?
もちろん各所に武器やアイテムを内蔵した優れものなんだからね」
「でもー、銃とか剣とか別にしておいた方が良かったんじゃないですか?
メンテとか楽だし予備も用意できるし。
…そっちの方が主流だし」
「う。なかなか鋭いじゃない。まあそのとおりなんだけど……
一応、ちょっとだけど一体型の方が転送時の負担が少ないのよ。
後は私の好み」
「ああ、それでこの腕についてるのシルバービームって言うんですね」
「まだ仮称よそれは。いいじゃない別に好きなんだから。
コホン…他に質問はない?」
「あの、転身したとき、着ていた服はどうなっちゃうんでしょうか?」
「あー、それはね。
実は原子分解されてます。
つまりなくなっちゃってるの。じゃあ、転身を解いたらどうなるかというと…ね。
一応復元するシステムになっています。
ただね。あんまり精度が良くないのよ。
分子レベルで合成するときに、完全に再現しきれないの。生地の微妙な不純物とかがね。
結晶鉱物とかは問題ないんだけど、高分子化合物になるとね、ちょっと。
だから高級な布地ほど多分質感や着心地が変わっちゃうと思うのよ。
悪いんだけど、これからはあんまりブランド物の服とかは出来るだけ着ないでね。再生後に偽物になっちゃうと思うから」