幼馴染な二人の観察
一月一日
「最低だ、最低の一年だった」
「こっちの台詞よ!!」
この声は弟とその幼馴染の声だ、毎度毎度うるさい
頼むから正月ぐらいは静かにしてくれ
「お前とまた同じクラスの隣の席とかマジ最悪だった」
「その言葉そっくりそのままアンタに返すわよっ!!」
「うっせえ!!俺はお前なんか大ッきっらいなんだよ!!」
「はあ!?あたしの方がアンタなんか嫌いよ!!」
「俺の方が嫌いですー」
「アンタのその一々間延びする語尾とか超嫌い!!」
「オメーのギャーギャーうるさい怒鳴り声なんか超々嫌いだよ!!」
やれやれ、仲良きことは良いことかな
四月八日
「もうほんッと最悪!!」
「こっちの台詞だこの野郎!!」
朝っぱらから外がうるさい、また弟とその幼馴染の痴話喧嘩か
「なんでアンタとまた同じ高校行かなきゃなんないのよ!!」
「俺だってまたオメーみたいなガサツ女に朝うるさく起こされると思うと吐き気がすんだよ!!」
あー最悪、今の最悪
幼馴染ちゃんの気も知らないで最悪だ弟よ
また私が幼馴染ちゃんの相談と称する惚気聞かなきゃいけないじゃん勘弁して
こちとら彼氏いない歴イコール年齢の恋愛難民だっつーのに
「だったらあたしと同じ学校なんか受けなきゃいいじゃない!!」
「俺のほうが先に受けてましたー」
「あたしの方が先よ」
「俺のほうがお前の二倍は先ですー」
「あたしなんかアンタの三倍先だから」
「んだとこの野郎!!」
早く学校行けよお前ら
入学初日から揃って遅刻か、おめでてーな
九月一日
「あーマジ最悪、今年の夏もお前みたいなガサツ女に振り回されて終わっちまったよ」
「こっちの台詞よばーか!!」
「ああ!?お前の方が馬鹿だろうがっ!!」
「アンタの方があたしより千万倍馬鹿だし!!」
「オメーの方が一億倍馬鹿ですー」
「アンタなんかあたしよりテストの点数低いじゃない!!」
「テストで人間計れませんー」
「あーもうっ!!ほんとムカつく!!」
今日も二人はアツアツである
正直これを十何年も続けられているこっちの身にもなって欲しい
早く結婚しろよお前ら
二月十三日
今日は疲れた
幼馴染ちゃんの話に付き合っていたら夜が明けていた
弟へのチョコの渡し方はどうした方がいいかとか知るか
ストレートに渡せよ、そんで結婚しろよ
って言ったら「いやあくまで義理だしっ!!あんなヤツに本命あげるわけないしっ!!」とか抜かしやがった
じゃあお前毎年チョコ一個しか作らないのは何でだよ
ついでにハート型の型使おうとしていつも途中でやめんのなんでだよと問い詰めたい、小一時間問い詰めたい
二月十四日
今日は不思議と静かだなんかおかしい
毎年この時間帯は幼馴染ちゃんが「アンタほんとモテないわよねー、まあ仕方ないからあたしがあげる。もちろん義理だけど」でまた痴話喧嘩が始まる時間なのに
弟の部屋に入ってみると可愛らしい包みが(もちろん幼馴染ちゃんのものではない)置いてあった
何故か部屋に弟の姿はない、恐らくこれをくれた娘の気持ちに答えに行ったな
あちゃー、あいつ顔も普通性格は性悪のくせに今年ついに他の娘からもらっちゃったかー
まあ面倒見いいもんね、何だかんだいってさ
こりゃこじれるな、うん
私は部屋を後にした
四月四日
「ほんッと最悪!!」
「こっちの台詞だ!!」
「アンタね、普通一時間遅刻とかする?」
「お前の時間設定がおかしいんだろうが!!」
二人は昨日のデートのことについて口論してる様子
何でも弟は待ち合わせに一時間も遅れたんだとかなんとかずっと昨日の夜にこにこしながら幼馴染ちゃんが語っていました
なんかね、もうね、アホかと、バカかと
バレンタインデーのあの日こじれにこじれた二人ですが何だかんだいってお互い両想いなわけで
当然弟はチョコくれた娘の告白を断って、幼馴染とようやくくっついたようです(あの様子だと多分一線超えたな、うん、お姉さんはわかるよ、私処女だけど)
「えへへ、好き」
うわっ今外で好きって聞こえた
あの幼馴染ちゃんもついに心も身体も繋がったとあってやっと素直になったか、やれやれ
「俺なんか大好きだからな」
「あたしの方が大好きなんだけど・・・」
おや雲行きが怪しくなってきたぞ
「俺の方がお前のこと好きだし!!」
「あたしの方がアンタのこと大好きだし!!」
「お前の好きがコンくらいだとしたら俺の好きなんかこ ぉ ん くらいだし!!」
「あたしなんかアンタのこと愛してるし!!」
やってろ
一生やってろ
そう思いながら私は恥ずかしい小競り合いを続けるバカップルの痴話喧嘩から耳を逸らすため布団をかぶりなおした