「久しぶり」
「よう」
自然に挨拶を交わしあった。
よく考えてみれば、何年会っていなかったか……
ずっと一緒に育ってきたコイツが、家出同然に消えてから、どれくらいたつのだろう。
風の便りで、結婚したときいたが……
「里帰りか?」
「ハハハ……
出戻りだぁ」
「エッ?」
「旦那が逝っちゃってね
がさつな嫁は要らないって
跡取りは、取られちゃったけど……」
明るく笑う。
でも、この笑顔は……
「アンタこそ、子供が出来たんだって」
「ああ、姉貴が事故でな
俺が引き取った」
「……いいなぁ」
寂しさのあまり、無意識に漏らしてしまったのだろう。
すぐに、無礼な言葉に気付き、慌てる。
「ゴメン!
そんなつもりじゃ……」
「いいんだよ
俺も手を焼いてんだから」
わざと、突き放すように応えた。
「仕事もあるし、女の子の面倒なんてみきれねぇ
」
「エッ?」
突然のボヤキに、意外そうに俺の顔を伺う。
むろん、可愛い姪っ子……、いや、娘だ。
しかし、それ以上に……
まだ、視線を読んで貰えるだろうか……
「あ、あの……」
「ウン?」
口ごもるアイツから、次の言葉を促す。
「あ、あたし、手伝おうか?」
「ん?」
「ほら、今は暇だし、姉さんの子なら、あたしだって……」
「頼むよ」
余計なことは言わず、すぐさまお願いした。
『ゴメンな』
心の中で、色んな人に詫びを入れる。
でも、どんな卑怯な手を使っても、コイツを捕まえたかった。
いつでも隣にいた。
当たり前過ぎて、大事だと気付きもしないまま無くしてしまった宝物。
『もう、離さない』
俺は心に誓った。
おわり