割れ目から陰茎が抜かれると、何度も膣内に吐き出され、収まりきれない精液がこぽりと溢れ出てくる。
「マリア、とてもいい格好だね」
マリアの両足を大きく開き、痙攣する秘部を見つめながらマリアを犯す青年はうっとりと溜息をつく。
青年の体力が続く限り続けられる行為に、マリアは身も心も擦り切れそうになりながら、肺に酸素を取り込もうと、
大きく口を開けて必死で息をする。
まだ体力に余裕があるらしい青年も額から汗を流しながら、慈愛のこもった目でマリアを見下ろす。
「大丈夫かい?マリア」
マリアの上気した頬に触れ、親指で涙を拭いながら、青年は訊ねる。
マリアはふるふると首を振り、縋りつくように青年の手をぎゅっと握り締める。
「もう……無理よ。お願い、ヨハン。こんな意味の無いことはもうやめて。
あなたには婚約者と輝かしい未来がっやあっ……!」
ヨハンと呼ばれた青年はマリアの左足を肩に担ぎ上げて、マリアの秘裂に自身の先端をあてがう。
青年の陰茎はすでに硬さと大きさを取り戻し、今にもマリアの奥深くまで貫こうと、狙いを定めている。
無理やり行われている行為とは裏腹に、青年はマリアを魅了し続ける翡翠の瞳を細め、優しげな笑顔を怯えるマリアに向ける。
「マリア。初めて僕達がキスをした時、君から僕にキスしてきたね。そして服を脱ぎ捨てて僕を誘ってきたのだって君だ」
マリアは唇を噛み締め、瞳を涙で潤ませる。
否定はできない。しかしここで抵抗しなければ、この素晴らしい青年の未来を奪うことになる。
「でも、違うの!私はあなたに諦めてもらうつもりであんなことをしたけど、でもあなたは違う。だから駄目なのよ」
ヨハンの顔からすっと表情が消える。
そしてマリアの奥深くに重い衝撃が走る。一気にヨハンに貫かれ、引き抜かれたと思えば、また最奥に熱を打ちつけられる。
悲鳴とも嬌声ともつかない声がマリアの寝室に反響する。
どうしてこんなことになってしまったのか。
マリアがかたく目を閉じると、彼女の脳裏に彼との思い出の数々が次々と流れていく。
一番古い記憶は数ヶ月前の春――。
春の包み込むような陽気の中、深い森の奥でマリア・ドナウアーは夫の墓標の前で手を組み、祈りを捧げていた。
背後で草を踏む音が彼女の耳に届き、マリアは瞼を開け、すっと立ち上がり、背後を振り返る。
「こんにちは、ドナウアー夫人」
明るい翡翠の瞳を細め、背の高い精悍な顔立ちの青年は柔らかくマリアに微笑みかける。
「ヴァレンシュタイン家の……」
「ヨハンです」
ヨハン・ヴァレンシュタインは腕に抱えた花束を墓標の前に捧げ、膝をつくと、先ほどのマリアと同じように手を組み祈りを捧げる。
「あなたの名前くらいちゃんと覚えてるわよ。いいのよ。こんなに頻繁に来てくださらなくても」
彼女の棘のある言葉にも青年は気分を害した様子もなく、いいえと首を横に振る。
「亡くなられたレオナルト・ドナウアー氏は私の親友の兄君です。幼い頃はとても可愛がってもらいました」
マリアは口の中で嘘吐きと呟く。
生前レオナルトの口から弟の名前は滅多に出ることはなかった上に、彼は面倒見のいい男ではけしてなかった。
この青年がここに来る理由はわかっている。他ならぬ自分が目的だ。
こんな年下の若い青年がどうして自分なのか、マリア自身も不思議でたまらない。
ヨハンはレオナルトとは比べ物にならないほど顔立ちは整い、ヴァレンシュタイン家の名は国中に響き渡るほどだ。
まだ結婚はしていないらしいが、婚約者は確実にいるだろう。遊び相手を探すにしても、二流貴族の未亡人でなくとも良い。
それなのに彼はマリアが森の中で夫の墓の前で祈りを捧げていると、どこからともなく現れ、熱心にマリアに愛の言葉を囁くのだった。
「さぞここはお二人にとって思い出のある場所なのでしょうね」
森の中を見渡しながらヨハンがマリアに訊ねると、マリアは顔色を曇らせ黙り込む。
「どんな夫婦生活だったのですか?」
矢継ぎ早に質問を浴びせるヨハンにマリアは背を向ける。
「若いあなたに聞かせるような話ではないわ」
「……ということは、あまり良い夫婦生活ではなかったと」
マリアは再びヨハンに体の正面を向けるとヨハンをきっと睨みつける。
これまではヨハンの失礼な言葉も受け流してきていたが、今日はできなかった。
ヨハンの言葉が図星だったからだ。
「あなた、私を見ていてそんなに楽しいの?
わかったわ。あなたがここに来るわけ。
あなたが私を好きなんじゃないかと思っていたけど、ごめんなさいね?自意識過剰だったわ。
あなた、レオナルトの弟と影で私を笑っているんでしょ?
私とレオナルトのこともどうせ知ってるんでしょう?
そうよ、私たちは良い夫婦なんかじゃなかったわ。
夫が私と結婚したのは、私の父親の財産が欲しかっただけよ。
最初は私も若かったし、それなりに夫婦らしいこともしたけど、流産してもう子どもを産めないとわかると、愛人の家に入り浸り。
そして愛人との旅行中に事故で死ぬなんて……いい気味だわ。
どう?世の中の夫婦なんてこんなものよ。おわかり?」
感情が昂ぶるままにマリアはヨハンに激しく言葉をぶつける。
彼は黙ってマリアの言葉に耳を傾け、そして静かに首を横に振った。
「いいえ。あなたをからかっているわけではありません。
あと最後の世の中の夫婦というのはわかりかねます。私の両親は一風変わってますので」
ヨハンの言葉が信じられずマリアは顔を赤くしたまま顔を背ける。
「そう。幸せな家庭で育ったのね。
そうよね、あなたはヴァレンシュタイン家のご長男ですものね」
どんなにマリアが感情を剥き出しにして皮肉をいっても、ヨハンは反論をしてこない。
次第にマリアの中で彼に対しての罪悪感が首をもたげる。
もし彼の言葉が本当だったら――?
彼はわざわざ貴重な時間を割いて会いにきてくれている。
思い返してみればヨハンは始終マリアに対して誠実な態度だった。
むしろマリアの方が夫を亡くした悲しみや日頃の鬱憤を彼にぶつけて、彼を酔狂だと馬鹿にさえしていたところがある。
眉間に皺を寄せ、唇を噛む。
「もう帰って……。こんな人生の終わったような女のところになんて来ちゃいけないわ」
「まだまだあなたはお若いですよ。それとあなたを好きなことに嘘偽りはありません」
「……あなた、おいくつ?」
「今年で二十歳になります」
マリアは鼻で笑う。彼に対してではなく、自分に対して。
「十近くも歳が違うわ。遊ぶならもっと若い娘と遊びなさい。遊べないなら、さっさと婚約者と結婚しなさい」
こんな若者に対して本気で怒ったり、戸惑ったりしてどうかしている。
すっとマリアに向けて伸ばされたヨハンの右手をマリアは払い退けた。
「触らないで!」
「そんなに怯えなくとも」
「怯えてなんかいないわ!馬鹿なことを言わないで!もう帰って!」
マリアは体の前で腕を組み完全にそっぽを向く。
マリアに叩かれた右手を見つめてヨハンは口を開く。
「……私はもしかするとこの世に生れ落ちていなかった人間だったのかもしれません」
いつもマリアに語りかけてくる明るい声から一転して、無味乾燥とした淡々とした口調に、マリアは驚き思わずヨハンの方を向く。
彼の表情もどこか暗く、そんなヨハンにマリアは胸を締めつけられる。
「突然どうしたの?かのヴァレンシュタイン家の家督を継ぐ人間が、そんなはずは……」
「本当なんです。だからここでこうしてあなたと話をしていることは奇跡に近いんです。……私の母親のことはご存知ですか?」
彼が自分の話をすることはあっても、積極的に彼がヴァレンシュタイン家のことを話すのはこれが初めてだった。
マリアは不意をつかれたのかのように、素直に頷く。
「だけど、ヴァレンシュタイン夫人のことは、夫婦仲がとても良いということくらいしか」
ヨハンは小さく悲しげな笑みを零す。
「今はもう忘れさられてしまったのかもしれませんね。
そのヴァレンシュタイン夫人は一般の家庭の生まれだったんです。
しかもとても貧しい家庭の。あまりに貧しく、ヴァレンシュタイン家に奉公に出たのが、私の父との出会いです」
ヨハンの話が本当ならば貴族の男と一介の使用人の女が正式な夫婦となり、子どもを作ったということだ。
貴族の男がメイドを手篭めにする話ならばよく聞く話だが正式な夫婦となるとマリアも聞いた事がない。
「親子ほども年の離れた貴族の男とメイドの少女から生まれたのが私です」
「あなたの事情はわかったわ。でも、それでどうして生まれてこなかったかもしれないなんて言うの?」
「ただの一介のメイドが屋敷の主人を誑かして身ごもったなんて、世間が許すでしょうか?
もし亡きドナウアー氏が屋敷のメイドと関係を持って、そのメイドが男の子を産んでも、あなたは許しますか?」
マリアは考え、考えたことをそのまま口にする。
「……正直に答えると、許せないと思うわ」
「私はそうゆう子供だったんです」
彼の両親が世間から非難されただろうことは容易に想像がつく。
その子どもの彼もきっと生まれてきたことが罪であるかのように酷い言葉を浴びせられたのだろう。
結婚生活では惨めな思いをしてきたマリアも貴族の令嬢としては何一つ不自由のない生活を送り、蝶よ花よと育てられた。
マリア自身も幸せな子ども時代だったと思う。
本来ならマリア以上に幸せな生活を送っていていいはずの彼がそんな惨めな思いをしていたのかと想像すると、
彼へ抱いていた怒りは消え去り、同情の念さえ沸き起こる。
「ヨハン。ごめんなさい。どうしても適切な言葉が浮かんでこないわ。私、あなたに何て言ったらいいか……」
マリアの瞳から涙が零れ落ちる。
まさかマリアが泣くとは思わなかったヨハンは逆に彼のほうが慌てて、ハンカチを取り出すと、
マリアの目元に当てて涙を拭き取る。
「すみません。あなたを泣かせるつもりはなかったんですが。
今の話も本当ですが、あなたが言ったように恵まれた幸せな家庭で育ったというのも事実です。
この話をしたのは、さっき思わずあなたの過去を知ってしまったので、
あなたにも私の過去を伝えておかないとフェアではないと思って」
彼は若さゆえに真っ直ぐなのだろうとマリアは思った。
自分もこんなに真っ直ぐな頃があったのだろうかと懐かしい気持ちになり、ふっと口元を緩ませる。
「ヨハン。……マリアでいいわよ」
ヨハンの首に両腕を絡ませると、マリアはヨハンの唇を塞いだ。
それからもヨハンはマリアを尋ねて来る。
森の中だけの逢瀬も自然とドナウアーの屋敷でも行われるようになった。
いつの間にかヨハンがマリアを想うように、マリアもヨハンを想うようになっていた。
まだ肉体関係には至っていない。
それでもヨハンと過ごす短い時間はマリアの心を幸福で満たすには充分すぎるほどだった。
マリアは初めて恋をする少女のようにそわそわと落ち着きなく、鏡を見たり、髪を整えたりしながら、ヨハンを待つ。
それがまだヨハンが来るにしては早い時間だとわかっていても。
その日もそうしていると、メイドが客の来訪をマリアに伝えるが、それはマリアにとって思わぬ人物だった。
客の名前はクラウス・ヴァレンシュタイン。ヨハンの一つ下の弟だという。
ソフトなイメージの明るいヨハンとは対照的に、クラウスは真面目そうな寡黙な印象を与える青年だった。
彼は単刀直入にヨハンにはクリスティーナという婚約者がいることを告げ、マリアにヨハンと関係を切るように迫った。
まるで悪人のように責められて、マリアはクラウスを屋敷から追い出した。
しかし冷静に考えると、確かに他人の目には暇を持て余して若い青年を誑かす未亡人に映るのだろう。
マリアは考えた末にヨハンの将来を思いヨハンとの関係を切ることを決めた――。
「ねえ。ヨハン。私といると楽しい?」
マリアはソファの上で積極的にヨハンへと抱きつく。
ヨハンもマリアを抱きしめ返し「すごく楽しいよ」と耳元で囁く。
「でも、どうせ……」
「どうしたの?マリア」
急に顔を顰めたマリアの顔をどうしたことかとヨハンは覗き込む。
「だったらどうして私を抱こうとしないの?」
「大切にしたいからだよ」
そうヨハンは即答するが、マリアは納得できない。
「大切にされるほど若くないわ。男が初めてってわけじゃないってあなたも知っているでしょう?」
むきになるマリアにヨハンは苦笑する。
「今日のマリアはすごく我儘で気の強いお嬢様だね」
ヨハンの言うとおり、年を取ってもいつまでもお嬢様が抜けない。
それに比べて常にヨハンは落ち着いている。
どちらが年上で年下なのかわからない。
「あなたより年上よ?」
お子様扱いは年上としてのプライドが許さなかった。
マリアはその場で服を脱ぎ始め、下着まで脱ぎ捨て、ヨハンの前に生まれたままの姿を晒す。
若い頃ほど肌に張りはなくなったが、子どもを産んでいないためか、プロポーションは崩れていない。
ヨハンはマリアの女体をじっと見つめる。顔から余裕は消えていた。
「本当に今日は暴走するね」
「どう?」
実のところ男を誘うのはこれが初めてだった。
自分の肉体に関する評価を訊ねるのも初めてで、勢いで服を脱ぎ捨ててしまったものの、
自分が女の体としてどれほどの位置にいるのかはマリアにも自信がなかった。
「綺麗だ」
ヨハンから出た一言に、マリアはほっと胸を撫で下ろす。
そしてソファの上に乗り上げ、ヨハンの足に素足を絡め、ヨハンにもたれかかる。
「いいでしょ?ね?ヨハン」
胸を緊張でドキドキさせながら一生懸命にヨハンを誘ってみる。
ヨハンはというともぞもぞと上半身に動きをみせ――マリアの上半身がふわりと温かくなる。
「風邪をひくよ」
彼は自分の上着を脱ぐとマリアにしっかりと着せ、マリアの体を脇にどけると立ち上がる。
「え?ど、どうして?」
予想外のヨハンの反応におろおろとするマリアに目もくれずに、ヨハンは手早く帰り支度を整えていく。
支度を終えるとさっさとドアへと歩いていくヨハンをマリアは追いかけて、服の裾を握り締める。
「明日は妹のエリザベータと朝早くから花壇の水遣りをする約束をしているんだ。失礼するよ」
マリアの計画ならば、ヨハンと一夜を共にして、それでなんとか理由をつけてすっぱりとヨハンと関係を断つつもりだった。
それがここに来てのまさかの妹との水遣り。
妹との約束が優先されたことに落ち込みそうになりながらも、なんとかヨハンを引き留めようと、
ぐいぐいとヨハンの服の裾を引っ張る。
「ま、待って!ヨハン、あなた、私のことが好きだったんじゃないの?」
ヨハンは頷きながらも、服の裾を掴むマリアの手に触れると、そっと手を外させる。
「ああ。好きだよ。年上の割にいつまでもお嬢様が抜けなくて、気が強くて、
気持ちが昂ぶると子どものように喚き散らしてしまうマリアをね。
私は娼婦を好きになったわけじゃない。今日のマリアはマリアらしくない」
そういうなり、マリアの額にキスをして、ドアを開けヨハンは出て行ってしまった。
ドアが閉まると同時にマリアはその場にぺたりとしゃがみ込んだ。
翌日陽が昇るとヨハンへ謝罪の手紙を書き、ヨハンを待ちながらマリアは後悔の涙を流した。
一時間、三時間、五時間、陽が落ちてもヨハンはやって来ない。
いつしか泣き疲れてソファに横になるとマリアは泥のように眠りについた。
「マリア、マリア」
体を揺り動かされ、マリアはうっすらと瞼を開く。
目の前に恋焦がれたヨハンがいて、これはまだ夢なのだと思いながらゆっくりと体を起こす。
「マリアが暴走した理由がわかったよ。クラウスだね?あいつは余計なことをする」
遠くでヨハンが怒った声で何かを言っているが、回らない頭では正確にヨハンが言っていることを噛み砕けない。
マリアは額に右手をあて長く息を吐く。
「……クラウス?ああ、あなたの弟よね。ヨハン、ごめんなさい。あんな風にあなたを誘って、
そしてあなたとの関係を終わらせようとして」
「君、終わらせようとしてたのかい?」
「だって……あなたは綺麗なままで婚約者と結婚しなきゃ。一晩だけ、一晩だけベッドを共にして、
それを思い出に別れられると」
「……自分勝手な言い分だね。そんなの御免だ」
強い力で手首を掴まれ、マリアの寝室へと引っ張っていかれると、マリアの体はベッドへと押し倒される。
そこでマリアははっと我に返る。
「ちょっと、ヨハン!……本物なの?」
「お目覚めのようだね」
怒りと欲望を孕んだヨハンの目がマリアを見下ろしていた。
ヨハンの手がマリアの衣服にかかり、マリアは必死に抵抗するが、男の力に敵うはずもなく衣服は剥ぎ取られていく。
「駄目っ!嫌だったら!」
「昨日は私を誘ってきたくせに」
マリアの首筋に顔を埋め、その手はマリアの乳房を揉む。
「昨日と今日は違うわ!いやあっ!やめてっ」
マリアが泣き叫んだところでヨハンは手を止めない。
右胸の先端に吸いつき、舌の上でマリアの乳首を転がしながら、右手はマリアの下半身の茂みを掻き分け、秘裂を弄る。
指を突き入れると、湿り気はあるものの、充分といえるほどの潤いはない。
指で膣内を解かし、上半身の至る場所へと舌と指を這わせる。
ヨハンの熱心な愛撫に、マリアの秘部からは次第に愛液が溢れ始め、ヨハンの指に蜜が絡みつく。
男の指をもっと奥へと引きこもうと膣内は収縮を始めヨハンの指を銜えこむ。
ヨハンは指を一本、二本と増やしていき、掻き混ぜ、擦り、抜いては奥へと根元まで差込み、マリアを悶えさせた。
マリアに行為をやめるように懇願されても、耳を傾けずに、マリアの足を割り開くと、マリアの中心に顔を寄せ、
男の指を銜えこみ愛液を滴らせていた敏感な場所を舐め上げる。
舐めても舐めても、ヨハンに応えるように、愛液は泉のように湧き出てきた。
マリアはシーツに顔を押しつけヨハンの愛撫に耐える。
ふとヨハンの愛撫が途切れ、ほっとしたのも束の間、マリアの秘裂にヨハンの熱が押しつけられ、一気に貫かれた。
「あっ!あああっ!」
必死でシーツを掴み、貫かれた衝撃をやり過ごそうとするが、ヨハンは最初から激しく腰を使い、マリアの体を揺さぶった。
「大切にしなくていいって言ってたから、遠慮はいらないね」
汗でべたつくマリアの細い腰をがっしりと両手で掴み、腰を打ちつけ、マリアの最奥を穿つ。
夫以外に体を開かれ、激しく青年の性欲をぶつけられ、駄目だとわかっていながらも青年から与えられる快楽に、
マリアも恐ろしいほど感じていた。
声に甘いものが混ざり、さらにヨハンを煽る。
「……あんっ!……ぁ……はっ……ヨハン!そっ、なに、激しくされたら、壊れるっ!」
肌と肌がぶつかり合う乾いた音がヨハンとマリアの聴覚を犯す。
マリアの体は無意識のところで、ヨハンの陰茎を締めつけ、ヨハンの精を搾り取ろうかとするかのように、奥へ奥へと誘い込む。
子宮口をぐっと押され、小刻みに刺激されて、マリアの腰はがくがくと震えた。
マリアが泣いて悲鳴を上げてもヨハンは容赦なくマリアを責め続け、ヨハンがマリアの弱い箇所を強く擦ると、
一際高い嬌声を上げたのと同時にマリアは絶頂に達した。
ヨハンと関係を切るどころか、あの日からますますヨハンとの関係は深みに嵌まっていく。
クラウスの話ではヨハンは婚約者のクリスティーナを以前よりもないがしろにするようになったという。
このままではいつヨハンの両親であるヴァレンシュタイン夫妻が動き始めるか。
マリア自身が責められるのはかまわない。
しかしこれから貴族社会で活躍していくヨハンの経歴に汚点ができるのは耐えられない。
マリアはペンを取ると、ある人物に向けて手紙を認めた。
これまでの彼女の人生、レオナルトとの結婚生活、ある一人の青年と関係を持ってしまったことへの懺悔。
そして彼女の中に生まれた一つの願い――。
数日後その人から返ってきたのは一通の手紙と、一台の馬車。
マリアは何一つ荷物を持たず、その馬車へと乗り込んだ。
馬車がどこへ向かうのかマリア自身も知らない。
それでもどこかへ連れ去ってくれるのならば、願いが満たされるのならば、何も怖くはなかった。
馬車の中から長年暮らした屋敷を振り返る。
レオナルトとは随分と喧嘩ばかりしたが、人並みの結婚生活ではあったのかもしれない。
最後にはお互い愛が薄れていたが、それでも結婚したばかりの頃は確かにお互いを思いやる気持ちはあった。
そしてマリアにとって生涯二人目の男、ヨハン。
短いゆえに燃え上がるような恋であった。
もう二度と会うことはないだろう。
それが彼の人生のためだから。
「さようなら、レオナルト。さようなら、ヨハン」
二人の男に別れを告げ、青々と若葉が生い茂る初夏の並木道を、マリアを乗せた馬車は北へと走っていく――。
おわり