考えが前向きになると僕はまたすぐに登校するようになった。
学校に行ってみると姉との出来事を知る者は誰一人居なかった。
風邪が肺炎にまで悪化し、長期の休みを余儀なくされたとかいう理由が通っていた。
両親の配慮のお陰だろうか。それだけは幸いだった。
数週間後のある週末、僕は久しぶりに姉と二人きりになった。最近は毎週末母が家に居たし
平日は姉の部活が遅く、いつも疲れて帰ってくるのであまりマトモに顔を合わしていなかった。
その日僕は姉と一緒にゲームをしていた。
「ねぇ、お姉ちゃん、秘密基地って知ってる?●▲川の上流の方にある山小屋みたいな所。」
田舎の小学生なら一度は作ったり見つけたりしたであろう「秘密基地」。
そこに行っても何があるというわけではないのだが、親の目が届かない自分達だけの空間というものは
当時の小学生にとって魅力的だった。
下校途中、川原や空き地で拾ったエロ本や、適当な漫画はそこに集め、みんなで色々楽しんだものだ。
「あー、はいはい、あそこね。知ってるよ。確か随分前に封鎖されたでしょ。」
地元の一部の小学生が代々秘密基地として利用していたが、
怪我人が出ると危ないとのことで、そこの廃墟の持ち主がバリケードを張って進入禁止にしたのだ。
僕が低学年の頃の話だ。それ以来、今まで誰も近寄っていない。
「そうだよ。でも最近僕と友達がバリケードに抜け道を作ったんだよ。」
今僕のクラスの男子の、僕がいるグループの中では最もホットな話題だった。
「そんな事して大丈夫なの?怒られても知らないよぉ?」
「大丈夫だよ。まだ一度も持ち主を見たこと無いもん。たぶんもう戻ってこないよ。」
「ふーん。で、それがどうかしたの?」
「今日さ、部活無いだろ?」
「無いけど。」
「今から行かない?」
「今からぁー?うーん・・・」
昔は姉も数度利用したことがあるのだという。あそこにはたくさんの漫画が置いてあるからだ。
まぁ懐かしいから一度行ってみるかということになった。
久しぶりに姉と二人きりで遊べるのでワクワクしていた。
山に入ると、主に林業の人が利用する狭い坂道がしばらく続く。
10分ほど頑張って坂を上ると、途中でY字路になっている。片方は山の奥へ続く道で
もう片方は「秘密基地」への入り口だ。入り口にはチェーンが張ってあり、
「立ち入り禁止。見つけ次第通報します。」とある。
しかし、これは単なる脅しであることを僕は知っていた。姉は引き返そうと言ってきたが
僕が姉の前に立ち、姉を導いていると思うと妙に気分が良くなり、そんな幼稚な優越感に浸りながら姉の手を引き、先に進んだ。
非常に急な坂を100m程上がったところにその建物はあった。
木造2階建てのそこは、遥か昔は旅館として操業していた。近くには滝や天然の温泉があったのだ。
もっとも、温泉は既に干上がっている。幾度か所有者が変わった末、今の所有者へ移り現在は廃墟として放置されている。
建物の周りには柵が張り巡らされ、柵の上部には有刺鉄線が張られている。
柵の下部を僕と友人達が掘り、柵を潜れるようにした。僕達はその隙間を潜って中へ入った。
草が背丈程も伸び、蜘蛛の巣が顔に絡みつく。それを手で払いながら僕達は建物に侵入した。
一階はガラスというガラスが全て破壊されている。風雨が進入するため非常にカビ臭く、また至るところが朽ちている。
気をつけて歩かなければ底が抜ける。10年以上前の日付けが付いた成人雑誌やボロボロになってよく分からない
漫画が散らばり、変わったものでは何故かプラモデル用のシンナーのビンが転がっている。これは比較的最近のものだ。
「汚いね・・・ねぇもう帰ろうよぉ」姉は僕の手を引いた。
「大丈夫だって、二階は綺麗だから」
二階への階段はまた柵で封鎖されている。これは登って超える必要がある。
僕は非常に苦労して登ったが、僕より背が高く運動神経の良い姉は難なく超えてしまった。
この辺はさすが姉というところだ。
「お姉ちゃん、パンツ丸見え」短いスカートから淡い黄緑色の下着が見えた。僕は笑いながら言った。
すると姉は躊躇無く僕の顔面をぶん殴った。
二階は窓が残っているため浸食は殆どない。日が当たるため湿度も低く、劣化も少ない。
僕は廊下の窓を開けた。窓には日に焼けた紙が貼ってあり、「空けたら閉めろ!雨が入って床が腐る!」と書かれている。
多分、何年も昔の小学生か中学生が書いたものだろう。
僕は学校の友達と一緒に秘密基地として利用している一室に案内した。
「あら、全然大丈夫じゃん」
「だろ?」
そこは最も状態が良い和室で、箒を持ち込んで掃除したお陰で綺麗になっている。
自分の部屋すらマトモに掃除した事がない僕や友達であったが、こういう所の掃除は妙に気合が入るのである。
棚には昔の小学生や中学生が残した懐かしの漫画や雑誌が所狭しと保管してある。
姉がそれを見つけて飛びついた。
「懐かしー!花より団子だって!昔よく読んだよー」
僕は染みの多い畳に腰を下ろした。そしてわざとらしくくつろぐ。
別に特別快適な空間では決してないのだが、そういうフリをするのが意味も無く楽しいのだ。
僕達はしばらく漫画を読んでいた。何処からとも無く聞える鹿の声、山の木々のざわめき。それ以外は全くの無音だ。
「お姉ちゃんっ。」僕は姉の横に座った。いつやらと同じ様に。
分かっている。つい最近あんなに悲惨な出来事があったばかりだ。
絶対にいけないことは分かっている。言い合わせたわけではないが、僕達は暗黙の了解であれ以降性行為は行っていない。
もちろん、今後とも絶対にしないつもりだ。しかし・・・狭い部屋に二人きりだ。
僕の本能は理性とは正反対の方向に突き動かそうとする。
姉はパタンと漫画を閉じた。そしてしばらく鋭い目つきで僕を見つめた。
「ご、ごめん・・・」僕は激しく自分を呪った。
最近姉を守ると誓ったばかりなのに僕はまた姉を抱きたがっている。
たぶん姉はその僕の気持ちを見破ったのだろう。
いつもそうなのだが、隠し事をしていたりすると姉は僕の心の奥深くをいとも容易く見破ってしまう。
不思議でならない。大抵の嘘はどんなに言い繕っても姉には通用しないのだ。
姉の疑り深い性格のせいもあるだろうが、女性にはある種の心理的なものの分析能力は男性より遥かに優れている気がする。
姉は黙って漫画を本棚に戻した。
「またヤりたいの?」。
「ち、違うよ。」僕は必死に誤魔化した。
「キスだけならいいよ。」姉は言った。
「本当!?」僕は思わず声を張り上げてしまった。
「い、いや違うや。そうじゃなかった。いや、いいよ・・・ごめん」僕は謝った。
「ふーん。」姉はそう言って俯く僕の方に向き直り、両手を僕の頬に添えた。
そして少し体を屈め、僕の口に唇を押し付けた。
「お、お姉ちゃん、だ・・・めだよ・・・」僕は姉を説得しようとした。
しかしそれは理性で言っているだけで本能は強く姉を求めた。僕は姉の舌の進入を許した。
「駄目・・・駄目・・・」僕はそう言うが全く拒絶しなかった。姉は僕を抱き寄せさらに激しく口をつけた。
しかし次第に僕も気持ちが昂ぶり溜まりに溜まった性欲を全てキスに集中させ姉を貪った。
これはイケナイ事なのだ、本当はもう絶対に繰り返してはならないのだと自分に言い聞かせるが
そういった背徳感が余計に姉への思いを昂ぶらせた。
姉は僕を押し倒した。そして上に覆いかぶさった。
「だ、だめだよおねえちゃん・・・」
「駄目だね。やっちゃいけないんだよね」姉はそう言いながら激しく口を交わらせた。
姉は唇を吸いつくしたあと、今度は僕の顔を舐めはじめた。
「お、お姉ちゃん!?」
「めちゃくちゃにしてあげる」そう言うと姉は僕の顔を唾液塗れになるまで舐め続けた。
そして僕のシャツを捲くり上げ、胸や腹を舐めていった。
「そんなとこ・・・汚いよ・・・」
そしてしまいにはズボンまで脱がされた。
「ね、姉ちゃん・・・ちょっとやりすぎ・・・」姉の舌がくすぐったくて僕はビクビクと体を痙攣させた。
「ふふ・・・」姉は僕の上に馬乗になり、グリグリと陰部を僕の股間に押し付けてきた。
僕の股間は限界まで膨張した。
「どう?こうすると気持ちいいでしょ。」姉は言った。
「うん・・・」僕は頷いた。
姉は短いスカートを履いているが、スカートの中は下着のみになっている。
非常に薄い布切れ2枚を壁にして僕達の性器は激しい摩擦を繰り返した。
「はぁ・・・これ、いい・・・」姉は息を荒げながら言った。
布は既に水気を吸いきっている。姉の割れ目の非常に柔らかな感触が亀頭の先端にリアルに伝わってくる。
そしてすぐに射精感がこみ上げた。
「お姉ちゃん・・・せーし・・・出る・・・かも」
「こ、このまま出すの?」
「駄目・・・かな?」僕は姉に甘えるような仕草で言った。
すると姉は「いいよ」と耳元でそっと囁いた。
僕は小刻みに腰を動かした。
唇を交わらせながら僕はパンツの中で射精した。
はぁはぁと二人の息使いのみが部屋に響いた。僕達は激しくキスを続けた。
「すごい・・・ドロドロ・・・」姉は上半身を起こして、スカートを捲り股間を見た。
精液は僕のパンツの薄い布から染み出し、二人の下着は絞れば液が零れる程にまで濡れた。
「な、中に出してないから大丈夫だよね。前は中に出したからできちゃったんだよね」
僕は必死に言い訳を並べた。そして同時にそんな自分が少し嫌になった。
射精して少し冷静になって考えてみると、僕達はまたこうして同じ過ちを繰り返している。
「ヒッ・・・」
突然姉は短い悲鳴を上げた。部屋の入り口の方を怯えた目つきで見つめている。
「い、今・・・何か居たわ・・・」姉は震えた声で言った。
僕もそちらの方を見てみたが、別段変わった様子は無い。
「ど、どこに?い、嫌な冗談はよしてよ・・・」僕はこういう状況が本当に駄目だ。
こういう事を言われると親しんだ秘密基地が一気にお化け屋敷と化す。
朽ちた戸でさえ不気味に見えてきた。
「違うって!!本当に見えたんだってば。」
僕と姉は一旦押し黙った。先ほどまで激しい息使いが響いていた部屋は一気に静まり返った。
「ち、ちょっと見てくる。」姉は起き上がった。
「だ、大丈夫?」僕は姉の後ろに付いた。そして姉の手をギュッと握った。
そっと部屋の入り口から頭を出し、廊下を見渡す。
僕達は気配を感じ取ろうと沈黙した。しかし、何も感じなかった。
「何も居ないよ。」僕はふぅ、と溜息を付いた。
「そうかなぁ。」姉はいまいち納得しかねていた。
ギィイイイィィ・・・
床が軋む音がした。
「いやああああああああああああ!!!」姉は飛んで部屋の端に逃げた。
僕はそれを必死に追いかけた。恥ずかしながら、僕は悲鳴を上げる余裕さえ無かった。
僕と姉は部屋の壁に背中を押し付けた。姉は僕の手を握り続けていた。
「いいいいい今何か居た!絶対に何か居たって!!!!!」姉は絶叫した。
「そ、そんな・・・まさか・・・」僕は声が震えてうまく喋れなかった。
外はまだまだ明るい。そのはずなのに、今この廃墟は真っ暗闇のお化け屋敷の数百倍は怖い。
リアルに自分の身の危険を感じる怖さは娯楽施設で感じるものとは訳が違う。
シンと静まり返る建物。また一切の気配が消えた。僕達はしばらくそこでじっと耐えた。
向こうから何かアクションをしてくる可能性がある。迂闊に部屋から出たら廊下で襲われる可能性がある。
僕達は勝手に相手を人外の魔物や、幽霊の類だと決め付けていた。
手は二人の汗でぎっとりと濡れていた。
しかし、現実世界で本当に怖いのはそういった想像上の生きものではなく人間そのものだ。僕達はまだそれを知らない。
10分くらい経っただろうか。
「やっぱり気のせいじゃない?ただ建物が軋んだだけかも。」僕は言った。
「分からない・・・」姉も少し自信が無くなってきたようだ。
僕はとりあえず服を着た。
「ちょっと見てみようか」怖いが、やはり気になる。
「よ、よしなよ。もうちょっと様子見ようよ」
「大丈夫だってば」正直僕の心の中では怖くて今にも小便ちびりそうだった。しかし好奇心の方が少しだけ勝っていた。
僕はゆっくりと壁を離れた。しかし姉は僕の手を両手で握ったまま動こうとしない。
「ちょっと、何してるのさ。行くよ」
「嫌。駄目。もうちょっとここに居ようよ」
「大丈夫だってば。お姉ちゃん、怖いの?」
僕は少し笑った。自分も怖いのによくもまぁこんなセリフが吐けるものだと我ながら思う。
「ち、違うわよ。た、ただちょっと・・・その・・・ほら・・・」
「何だよ」僕は笑った。
「う、うるさいわね!じゃあ勝手に行けばいいじゃない!!!」姉は声を押し殺して怒った。
「そ、そうするよ」
まさか僕一人で部屋を回るのか?それは無理だ。予定外だ。しかし言ったからには今更引き返せない。
仕方なく僕はゆっくりと歩を進めた。
しかし姉は手を握ったまま僕に付いて来た。心底ホッとした。
「け、結局着いてくるんだね」
そういうと姉は僕の手を爪を立てて力ずくで握った。
「い、痛いってば」
「シーッ!」姉は人差し指を口に添えて言った。