学校の僕の引き出しには休みの間中に大量に突っ込まれたプリント類がそのままになっている。
必要最低限な書類は同級生によって家に届けられていたが
授業で使った演習プリントは溜め込まれていたらしい。見るだけで嫌になった。
僕は溜まりに溜まった宿題をたんまり貰っていた。
登校をはじめた数日は、先生が気を使ってくれて宿題は元気になってからでいいとのことだったので
僕もそれに甘えて放置していたが、流石にそれでやり過ごせるわけもなかった。
担任は遅れた分をこなし、はやく授業に追いつくように指示した。
分からないところは放課後指導するから、まずは溜まっているものを数日に分けて提出しろとのことだった。
家で集中できる気がしなかったので放課後、僕は家から程近い神社に向かうことにした。
整備はしっかりされてはいるが普段は無人で、山の裾にあって地元民でも、用がない限り
あまり立ち寄る者はいないところだった。僕は宿題がたくさん出ると極たまにだが、ここに来ることがある。
境内の中の建物の一つが、鍵が掛からないので開放されていている。
といっても、戸を空けると畳の間があるだけで他には全く何も無い。僕はよくここの縁側の板の間に寝転がって宿題をするのだ。
その日、僕はそこに行った。夏も過ぎ、少し肌寒いかった。
宿題を広げる。予想よりも多くあった。僕は早速取り掛かった。しかしなかなか集中できなかった。
数日前の秘密基地での情事を思い出してしまう。
あの後僕達は帰宅し、下着を着替えた。
最初、僕達は洗濯機に二人の汚れた下着を投げ入れたのだが、その時どこからか天の声が聞えたので
母が帰宅する前に自分達で洗うことにした。
だから両親には怪しまれていない。安心して欲しい天の人々。
ボーっと、縁側に座り水筒のお茶を啜りながら境内の建物や木々を眺めた。
僕達はまた一定期間経てば体を重ねるのだろうか。
そうすると次は一体どんな事をするのだろうか。そんな事を考えていたら少し勃起した。
そして何を馬鹿な事を考えているんだと少し自己嫌悪になった。
今は勉強だ。僕はコップを水筒に戻し宿題を再開した。
開始して数十分経った頃。鳥居の方から砂利道を歩く音が聞こえた。誰だろうか。
極たまにやってくる口煩い神主なら少し厄介だ。挨拶くらいはしておこうと思い、僕はその足音の方へ向かった。
ここから鳥居までは木々のトンネルになった砂利道が続く。しかし、その砂利道は途中がL字になっているので
ここから境内の外は見えない。鳥居を出るとT字路になっている。そこには田んぼが広がっていた。
どうやら足音も鳥居の方からこちらに向かってくるようだった。
よく耳を澄ますと、若い男の声がした。
昔チンピラをやっていたという濁声の神主ではなさそうだ。僕は引き返そうとしたその時。
「だから違うんだってば!」女の声。
「何が違うんだよ。俺は確かに見たぞ。」
僕は境内の建物の影に隠れた。そして二人が見える位置まで移動した。
影から除き見ると、そこにはなんと姉がいた。どうしてこんな所に?こちらに向かってくる。
隣には高校の制服を着た男だが・・・あれは・・・確か・・・
「本当に・・・キスだけで許してくれるんだよね・・・?」
姉は言った。キス?何の話だ。
「キスかぁ・・・キスだけねぇ・・・」
「さ、さっきと話が違うじゃない!」
なんだか様子が明らかに変だ。
「いや別に俺はいいんだがな?お前がそんなに嫌なら無理することはない」
男の顔を確認した僕はゾッとした。そいつは近所に住む高校生だ。姉の事が好きで、姉が中1の時、つまりそいつが中3の時だ。
卒業間際に姉に告白した。しかしそいつは姉にフラれたはずだった。そいつが今更何故姉を?
「お前ら姉弟の仲がいい事は素晴らしい事だ。ただ・・・なぁ?二人でコソコソあんなことやってるとはなぁ」
その男は嬉しそうに、俯く姉の顔を覗き込んだ。
「いやぁ、俺もビックリしちまってさ、あん時はちょっと事情があって逃げっちまったけどよ
まさか姉弟で子供まで作っちまってたとは見ていた俺も開いた口が塞がらなかったぜ」
姉は俯き、唇を噛み締めていた。
「もしも・・・世間にバレたらお前らどうなるか・・・」
何故あいつがその事を知っている??あの秘密基地であそこに居た男が・・・まさかあいつだったのか!?
「もしお前がそれなりに誠意を見せるっつーんなら、俺も鬼じゃねぇ、黙ってやっててもいい。」
男は姉と向かい合った。男はだらしなくへらへらと笑っている。姉は俯き、拳を握りしてめいた。
すると男は思わぬ行動に出た。
姉を強引に抱き寄せ、髪を掴んで無理やり仰向かせキスをした。
「んんっー!!!」姉は叫ぼうとしたが口が塞がっているので声が出なかった。
それに叫べたとしてもこんな所ではなかなか助けは来ないだろう。
僕が助けなきゃ・・・!そう思ったが、手足はガクガクと震え、前に体が進まない。
男は姉の腕を掴み、そのまま林の中へ連れて行った。
「嫌ぁ!やめて!」姉は拒んだが男子高校生の腕力には敵わない。
「うるせぇよ。小学校に広まったら愛しい愛しい弟君もマトモな生活送れなくなるぞ?
近親相姦のキチガイ姉弟の烙印を押されるだろうしなぁ!
弟だけじゃねぇ。親も一体どんな目で見られるか・・・お前はそれでもいいのか?あん?」
「ひどい・・・」
姉は脅しに屈し、抵抗をやめた。
「やだよなぁ。そうだよなぁ。賢明な判断だ。」男は勝ち誇ったようにそう言うと
二人は林の奥へ入っていった。僕は急いで、しかし見つからぬように二人を追いかけた。
木の陰から二人を確認できた。男は姉にキスを続けている。
姉は目を閉じて必死に状況に耐えていた。男はいやらしい手つきで姉の胸を揉みしだいていた。
どうにかしなければ。姉を助けなければ。しかし、奴の恐ろしさを僕はよく知っていた。
小学生の頃から空手をやっていたそいつは喧嘩だけはやたら強かった。
僕達近所の子供は奴には頭が上がらずヘコヘコするしかなかった。
男は姉を地面に押し倒した。そしてそのまま覆い被さった。制服のリボンを引き千切り、ブラウスを無理やり開けた。
ブチブチとボタンが飛び散った。
「嫌ぁ!!やめっ・・・!やめて!」姉は抵抗した。
「うるせぇよ叫んでも誰も来ねぇよ!!!」男は腕を振り上げ姉の頬を叩いた。パシン!と大きな音が鳴った。
そしてスカートを捲り上げた。
「嫌っ!いやああ!!」姉は必死に抵抗した。
助けに行かなきゃ・・・でも・・・奴には勝てっこない事は明白だった。しかし姉を助けなければ。
どうすれば・・・クソ!
僕はガクガクと震える足を押さえつけようとした。
「へへへ・・・俺はずっとこの時を待ってたんだ・・・お前をヤれる時をな・・・」
男は制服のズボンを下ろし始めた。躊躇してる暇は無い。姉を助けなければ!
「やめて!!それだけはお願いだから!!何でも言う事聞くから!ね!?」
姉は涙を流しながら懇願した。頬は先ほどの平手打ちで赤く腫れ上がっていた。
僕は太い木の棒を探した。一撃で仕留めなければ反撃され、姉を助けられない。
脂汗が額からダラダラと垂れてくる。
「やめてっ・・・っくっ・・・嫌!嫌ああああああ!いっ痛い!!んはぁ!!っはああ!!」
森に響き渡る姉の悲痛な叫び。僕は怖くて既に泣いていた。
ここから見ると姉に覆い被さる男の背中がこちらを向いている。
僕は木の棒を掴み、背後から近づいた。そして男の頭めがけて思い切り棒を振り下ろした。
「げはぁ!!」男は倒れ、頭を抱えてもがき苦しんだ。
「お姉ちゃん大丈夫!?」僕は姉の元へ駆け寄った。
姉はブラウスがはだけ、胸が露出していた。
「な、なんであんたがここに居るのよ!」
「いいから逃げるんだ!」僕は姉の手を引っ張りあげた。姉は足に絡まるパンツを脱ぎ捨て立ち上がった。
僕は姉の手を引き、砂利道まで出た。ここから鳥居まで逃げればいい。
神社の外へ出れば誰かに見つかるかもしれない。そこで助けを求めよう。
「待てこらぁ!!!」男が凄まじいスピードで追いかけてきた。
僕達は必死に逃げたが、深い砂利に足を取られて思うように加速しない。
すぐに男は追いついた。姉は腕をつかまれそのまま後ろに引っ張り倒された。そして男は僕の頭をぶん殴った。
体重の軽い僕は吹っ飛んだ。
「この餓鬼がぁ!!!てめぇこいつの弟か!!」男は倒れる僕の腹を何度も蹴飛ばした。
「やめてぇ!!」姉は男にすがりついた。
しかし男は構わず僕を蹴った。
「やめてぇ!!!もうやめて!!!弟が死んじゃう!!!」
「うるせぇ!!」男は足で姉を振り払った。しかしそれでも姉は暴力を辞めさせようと必死にしがみついた。
僕は胸部の打撃により呼吸困難になり意識が徐々に遠退いていった。
やめてやめてと泣き叫ぶ姉の声と胸と腹の激痛のみが残った。僕はもうこのまま死ぬのかと思った。
もし僕が死んだら姉はこの男に脅され犯され続けるのだろうか。
そう思うと姉を守れなかった自分の無力さに対し無性に腹が立ち涙が溢れた。
そして僕はそのまま気を失った。