23世紀、地球人は地球と似た惑星を発見。その星をライアと名付けた。
交渉時の地球側の高圧的な態度により交渉は決裂、その結果として軍事衝突が発生。
その後、停戦協定が結ばれたが地球連合の高官達はライア侵攻の機会を捨ててはいなかった。
停戦協定から一年後、自らを改造した地球連合軍VA開発部長官であるエリナを筆頭として
数千のロボット軍団及びサイボーグ兵士が決起。
ライアの首都メルカドを襲い、市民たちを連れ去り始め、ライア星に対し宣戦を布告した。
鎮圧の為、ライア軍はエリート部隊(VA部隊)を結成。
敵VA部隊の一掃と民間人の救出を目的に地球に派遣する事を決定した。
しかしこの作戦の真相は暴動鎮圧後に治安の維持と称して地球に軍を駐留させることだった。
もちろん、この事実は一般に公開されることはなかった。
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23世紀になって、科学技術は大いに発達し、「サイボーグ技術」、そこから派生し
たアンドロイド製造技術が発達していた。
地球でもライア星でも、チタンとプラスチックでできた「完全埋め込み型人工心臓」、
使う人の筋肉の動きを学習しながら進化する「コンピュータ筋電義手」、全盲者の
目の中に埋め込んで、光を電気信号で視神経に伝えるコンピュータ・チップ。
どれも障害者に対しては大いなる助けになった。
しかし、裏ではこの技術を当然軍事利用しようという向きもあった。
ライア星のとある科学専門学校では、日々さらなるサイボーグ、アンドロイドの改良を
研究していたのだが・・・
橘果穂。とある大都市で一人暮らしをし、ライア中央科学専門学校に通う2回生だ。
肩のあたりまである長い黒髪、吸い込まれるような大きな瞳。髪を染める
女性が多いこのご時世、珍しく清楚な雰囲気を持った女性だ。生真面目な
性格というわけでもないが、酒やタバコもいっさいやらない。
「橘さん、お先に」
「杉原先輩、お疲れさま」
学校の研究室から立ち去っていったのは杉原沙也香。4回生で成績はトップクラスだ。
沙也香は果穂にとっては尊敬する先輩であったが、せいぜい中の上程度の成績しか取れ
ない果穂が沙也香の優秀さをうらやんだのは一度や二度ではなかった。
今、研究室にいるのは果穂と親友の紺田和美だけだ。
「果穂ちゃーん!」
「あっ、和美」
和美はよくしゃべり、よく笑う活発な子だ。
「夏休み、なかなか会えなくて寂しかったんだから~」
そういうと和美に抱きつこうとする。
「ちょっと、和美、みんなが見えるかもしんないんだしさ」
果穂は和美を引き離す。
「果穂ちゃん、今日は一緒に帰らない?」
「ゴメン、今日は研究があるんだ」
「そっか。残念だなぁ・・・じゃあまた明日ね」
和美は校舎の外へと駆けていった。
「私もあんな風にはしゃげたらなぁ」
果穂は和美みたいに社交的なタイプではなかった。それを気にしつつも、研究室であり、AEX工場となっている場へと足を運ぶ。
兵器、戦術等がいかに進歩しようとも戦争の基礎は歩兵である。
そんな考えから歩兵を強化する「筋力強化型機動外骨格」の開発が開始。
大規模破壊兵器の使用できない局地戦においての 占領、制圧を主目的として、数多くの歩行兵器が開発された。
現在の主流はArmed Executioner(AEX)と呼ばれる歩行兵器。
これの最新型はVariant Armed Executioner(V-AEX or VA)、可変型歩行兵器と呼ばれている。
ここでは、機体の一部(もしくは全部)を変形させる事により使用可能な各種攻撃兵器を内蔵、
単体での運用範囲の拡大を想定したものをVA、と定義する。
AEX、といっても地球側のものとライア星のものとでは全く設計思想が違う。
ライア星のそれは生身にパワードスーツを装着する形なので、あくまでも
本人の体力をベースとした性能しか引き出すことはできない。過度の負担は
装着者に強い負担をかけてしまうのだ。素体・・・人間をサイボーグ化した
AEXやVAを製造しない限り、地球連合軍の軍事力に対抗するのは不可能、という
意見もあったが、コスト、倫理上の理由からその意見は取り上げられることはなかった。
ライア側が恐れたもの・・・人間を何のためらいもなく機械化した上でその上を強化装甲で
覆う、という形のAEX開発を地球連合軍側は何のためらいもなくやってのけたのだ。
地球連合軍開発のAEXは脳神経細胞と直接接続されているため、パイロットは思考するだけで
機体を思うように操縦することができるため、極めて素早い反応速度を誇るのだ。
そのようなAEXが量産されはじめた今、地球連合軍のライア星制圧は時間の問題だと思われた。
「おかしいなぁ、こっちだと思ったんだけど・・・?」
広いホールで橘果穂は、一人途方に暮れていた。
「やっぱり和美に頼んじゃえばよかったかなぁ・・・」
何事も最後までやり遂げなければ気のすまない性格と、先ほどリリースが発表されたAEXの完成品を
この目で見てみたかった。 という好奇心がさせた行動だった。
「とりあえず情報サービスの端末を見つけよう。そうすれば何とかなる・・・、ん?」
ヴォウン、ヴォウン、ヴォウン、ヴォウン、ヴォウン、ヴォウン、ヴォウン、ヴォウン・・・。
「何かしら、あの音・・・」
何処からか、機械の作動音らしきものが重く響いてくる。その音に誘われるままに歩いてゆくと一つのドアに出くわした。
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれ、隙間から赤い光を漏れ出させているそれはいかにもらしい。
部屋のプレートには『VA開発室』とあった。
(早速量産計画が始まったのね・・・)
ドアの隙間から様子を伺う。
「・・・はい、仰せのままにいたします」
(誰かいる・・・)
「まずはこの校舎内に居る者をサンプルとして向かわせましょう。その後は全生徒を招集して・・・」
(エリナ主任?)
隙間から漏れてくる声は確かにVA開発室:エリナ主任のものだ。だ。 しかしどうも様子がおかしい。
(サンプル・・・、招集・・・?いったい何の事?)
果穂はドアをノックしようとしてやめた。 何か嫌な予感がする・・・。
とりあえずこの場は離れた方が良さそうだ。そして他の誰かを伴なってから、もう一度来る事に・・・。
しかし彼女が覚えているのはそこまでだった。何か重い鈍器のようなものが、彼女の後頭部に降り下ろされたのである。
・・・果穂は、意識を失った。
果穂が目を覚ましたのは何かのポッドの中だった。
後頭部が、ズキズキとうずく。
「これは・・・一体!?」
『目が覚めた?果穂さん』
「その声はエリナ主任・・・!?ここから出して下さい!」
『悪いけれどそれは出来ないわね。貴方は貴重なサンプルだからね』
(・・・サンプル)
先ほどドアの中から聞こえた言葉だ。
『私にはこのビルの中すべてのことが、手に取るように解るのよ』
「・・・エリナ主任・・・貴方は・・・一体・・・」
『見せてあげるわよ・・・』
すると、果穂の前に何かの立体映像が浮かび上がった。
「ひっ!」
それは、全身が白色の装甲で覆われた巨大なAEXだった。
『AEX-10M 【ブロディア】・・・貴方の新しい名前よ』
「一体私をどうするつもりよっ!」
『言ったでしょう?貴方は貴重なサンプルだって・・・。私は貴方たちを使って、新しいVAの開発をしなけりゃならない』
見ると自分以外にも多数人の入ったポッドが見えた。顔までは解らないが、男女まちまちのようだ。
『そこの彼女・・・河合可奈さんなんかは、自分から、力が欲しいって、言ってきたのよ?』
「なっ! 貴方、可奈さんに何をしたのっ!?」
『ちょっとした催眠術よ。さ、おしゃべりはここまで。 作業を始めるよ』
「出して! 出しなさいよー!!」
果穂はポッドの蓋を、ガンガン蹴りまくるがびくともしない。
『無駄よ・・・。それにライアの人間は、いずれ全てが貴方と同じ様になるんだから・・・』
『私はもともと地球の人間・・・ライア人はちょっと調子に乗りすぎたみたいだから、お詫びに少しだけ協力してもらわないとね』
『そして、どんな方法を使ってでも必ずこの戦争に勝たせてあげる。・・・プログラム通りにね・・・、くすくす・・・』
果穂はもともとライア星出身だった。AEX研究のため、ライア中央専門学校には地球出身の技術者の卵が
多数移住してきた。だからと言って果穂はライア星出身を卑屈に思うことはなかった。むしろ、それを後ろ盾として生きてきた。
(私は死なない! 必ず生き残ってやる!そして全てをぶち壊してやるんだ! あんたの作る世界、全てをっ!!)
『さあ、始めるよ』
ウィィィィィィン・・・という音とともにマニュピレーターが動き出す。
(壊してやる! 壊してやる! 壊してやる! 壊して・・・や・・・る…)
To the next chapter・・・
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