高校生にもなって、お父さんにお仕置きとして家から閉め出されるなんて思わなかった。  
しかも、よりによってこんなかっこでーー。  
 
 
 
私、四辻つばさ(よつじ つばさ)はずっと悩んでいた。  
身内の恥を晒すようであまり気が進まないが、私の家族はよく裸で過ごしている。  
お父さんも、年子の妹のてらすも、諸っ中下着姿や素っ裸で過ごしている(お母さんは既に他界していていない)。  
さすがにお父さんはパンツは穿いているけれど、てらすは家に帰ってくるなりずっと全裸だ。  
特にもう夏真っ盛りで、お隣の老夫婦の清水さんにもその姿はたまに窓越しに目撃されている。  
 
早い話が、四辻家は裸家族なのだ。  
お父さんも、てらすも、家で裸なのを何とも思わないのだ  
(いかに仲の良いお隣さんだとは言え、窓越しに清水さんに見られることすら気にしないのだ)。  
そして(それなのに)、私は家族相手でも、裸でいるのは恥ずかしい。  
きっと、私の方が普通なはずなんだ。  
 
「あーさっぱりー!」  
てらすがお風呂からあがってきた。いつも通り、素っ裸のままで。  
「……てらす」  
「ん?なに?」  
「いくら家族でもさあ、やっぱ裸はやめようよ……」  
「お姉ちゃん何恥ずかしがってんの。家族相手に気にしてどうすんのー」  
「でも、私は女だけど、お父さんもいるじゃん」  
「お父さんはお父さんじゃん」  
「でも……」  
「お姉ちゃんの方が気にしすぎだってー」  
てらすの身体から湯上がり特有のぽかぽかした体温を感じながら、私はてらすと会話していた。  
この子は私に似ず幼児体型で華奢だから、今でもあまり女として肌を隠さないといけないという感覚になれないのかもしれない。  
(余談だが私は、望んだわけでもないのに、モデル体型だとよく言われる体格だ。  
そのせいですれ違う男の人の目線を集めてしまうのが正直言うと嫌で、妹のてらすと身体を替えっこしたいと思っていたりした)  
 
「お父さーん、お風呂空いたよー」  
「おー」  
ソファーにパンツ一丁で寝転びながらテレビを見ているお父さんに、素っ裸のてらすが話しかける。  
いくらてらすが幼児体型とは言え、ほんのり膨らんだ胸の先の乳首の突起と股間に薄く生えている陰毛は、てらすの身体が既に性徴を迎えていることを示している。  
言ってしまえばもう子供ではないてらすの裸を、何の意識もせずにお父さんは見ている。  
親なら、「はしたないから服を着なさい」くらい言えばいいのに、と思う。  
寝転がっているお父さんの頭は、てらすの股間より下にある……てらすはお父さんにばっちりあそこを見られている。  
 
しばらくして立ち上がったお父さんが、(下品に股間をボリボリ掻きながら)私のところにやってきた。  
「つばさ、風呂先に入るか?」  
「ん?私は最後でいいよ」  
「でもお父さんも今日は遅いぞ。この後のスペシャル番組見たいから」  
「ふーん、でも後でいいよ」  
「そうか。……お前相変わらず暑そうなかっこしてんな」  
「ジャージ穿いてるだけじゃん、上はTシャツだし。むしろお父さんやてらすの方が珍しいと思うよ」  
 
別にお父さんは「お前も服脱げよ」と言いたいわけではないし、まさか娘の裸を性的な興味で見たがっているわけではない。  
ただ、娘の格好や性徴に対して無頓着なのだ。  
無頓着というか、無神経なのだ。  
 
お父さんがこんな性格だから、私が嫌がっていることを自分の感覚で平気でやってくる事がある。  
例えば、私が着替え中でもお構い無しに部屋に入ってくる。  
出て行ってと強く言うこともできないので、その時はそのままお父さんとお話するけれど、私は下着姿を見られるのすら嫌なのだ。  
もっと嫌なのが、平気で服を捲ってくること。  
私もてらすもウエストが細くて心配になるからか、お父さんはよく「お前もっと食えよ、倒れるぞ」と言って着ているTシャツを捲り上げて、お腹を覗き込んでくる。  
お父さんにシャツを捲り上げられて、お腹を丸出しにさせられてしまうのだ。  
私は内心恥ずかしさでいっぱいで、「(わ、ち、ちょっと、お腹でも恥ずかしいって!おへそ見えちゃう!)」と心の中で必死に抵抗している。  
でも、お父さんには通じないし、私も「あ、うん、そうだね……」と曖昧な相槌を打つことしかできない。  
 
もっと強くお父さんに「私は裸は嫌なの!てらすとは違うの!」と言えればいいんだけど、お父さんは怒ると恐いのであまり強く言い出せない。  
それに、お父さんは小さい頃よく、躾の一環で私たちを裸にして、玄関の外に閉め出していた。  
子供心に裸で外に出されることの不安感と、家から閉め出された絶望感とで、  
私はこのとき玄関をドンドン叩きながら「お父さん、ごめんなさい!ごめんなさい!」と繰り返していた。  
今でも私がお父さんのお説教を恐れているのは、小さい頃にされたこの躾のせいかもしれない。  
 
そして、ここが多分身内の恥として最も語るのが憚られるところなのだが、  
このお仕置きは、私とてらすが高校生になった今も続いているのだ。  
いくらお父さんにとっては、娘が大人の身体になろうがいつまでも子供だとは言え、胸も膨らんだ娘を平気で外に閉め出すのは本当にやめてほしい。  
 
私がこのお仕置きを受けたのは、今のところ中2が最後だった。  
このお仕置きが恐いので、私はお父さんの前で努めていい子でいるようにした。  
だが、てらすは今でもよくお父さんに怒られて、今でも素っ裸のまま閉め出されている。  
幸い(?)てらすは、裸で外に出されることに恥ずかしさはないみたいで、閉め出されたとしてもドラマを見逃してしまうことが嫌だという程度にしか感じていないみたいだが、  
私は未だに続いているこのお仕置きが恐くて、お父さんには逆らえずにいた。  
 
だから、とにかくお父さんを怒らせないように気をつけていた筈なのに、  
……とうとう、やってしまった。  
 
ある休日の朝、お父さんの会社の人から家に電話がかかてきた。  
そのときお父さんはトイレに入っていたので、会社の人との電話は一旦切ってあとでお父さんに電話をかけてもらおうとしていたのに、うっかり忘れてしまったのだ。  
しかも、会社の大事な人だったみたいで、お父さんはかんかんに怒ってしまったのだ。  
 
「つばさぁ、てめえふざけんな!子供の不始末は親の不始末になるんだぞ、どうしてくれるんだ!」  
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!」  
「てめえちょっと外で反省して来いや!服脱げ!」  
「え、あ、あ、あの……」  
泣いて怯えながら謝っても、今回ばかりはお父さんをなだめることができない。  
「で、でも、高校生が裸で外に出るなんて、あ、あの……だいぶおかしいと思うんだけど……」  
「ガキがいっちょまえな事言うなや!さっさとやれや!」  
お父さんが少し強く私の頬を平手ではたいた。  
私の顔は、既に恐怖の涙で濡れていた。  
 
私は観念して、着ていたTシャツに手をかけた。  
ジャージも脱いで、下着姿になった。  
今から、ブラジャーを外す……。お父さんの前で、中2以来初めて。  
すっかり成長した恥ずかしい部分を、お父さんの前で見せないといけない。  
もの凄く躊躇われるけれど、お父さんに逆らえない……。  
ブラジャーから、ぽろんと胸がこぼれる。恥ずかしさと悲しさで身体が熱い。  
とうとうパンツにも手をかけ、ゆっくりと下ろした。  
 
私が服を脱ぎ終わるや否や、お父さんが私の手首を掴んで思い切り引っ張った。  
「おら、さっさと出て行けや!」  
「いやあ!お父さんやめて!ごめんなさい!反省します!」  
私は真っ裸でお父さんに手を引っ張られていた。  
私は玄関口で床に足を踏ん張って抵抗していたが(もうお父さんに股の間を見られることも気にする余裕がなかった)、その甲斐無く私は玄関の外に放り出されてしまった。  
 
いやあああああ……!  
外!家の外だ!しかもこんなに明るいのに!!  
家の外に、真っ裸で放り出された……!  
見られる!清水さんや、通りすがりの人に見られる!  
恥ずかしい……!!お父さん、つばさが悪かったです!お願い、中に入れて!!  
 
こんなに身体が成長してから裸で外に放り出されるのは初めてだった。  
子供の頃のようにドアをドンドン叩いてお父さんの許しを乞いたかったが、清水さんや近所の家に声が聞こえるのが嫌だったので、  
私はその場にしゃがみ込んでただすすり泣いていた。  
 
見られる……。  
こうしていても、いずれ人に見つかっちゃう!  
そうだ、恥ずかしいけど、清水さん家に匿ってもらおう!  
それしかない……。  
全く知らない人に裸を見られるより、お隣の清水さんだけに裸を見られる方がましだ!  
 
私は立ち上がって、清水さんの玄関に向かって歩いた。  
四辻家と清水家は道の突き当たりなので、滅多に人が歩いて来ることはない。それが救いだった。  
それでも、誰にも見つからないように祈りながら、私は家の敷地を出て、道路に足を踏み入れた。  
裸足で踏みしめる灼けたアスファルトが熱く、地肌に照りつける日射しが鋭い。  
服を着ていないだけで、道路を歩くというたった一つの行動が全く別のものに感じられた。  
 
清水さんの家の玄関。  
このままインターフォンを鳴らしてしまうの?  
こんな、胸も股間も丸出しの姿を、清水さんに見られちゃうの?  
裸を見られることが恥ずかしいし、裸で道路を歩く様な女の子だと思われるのも嫌……  
私は、そんなんじゃないのに……!  
 
でも、このまま躊躇って人に見つかるのだけは避けなきゃ……!  
どうしよう、何て言おう……  
お仕置きで裸で追い出された、って正直に言おうか……  
それも嫌だな、説明してる私が惨めだ……  
そうだ!この際何も言わずに、ただ遊びに来ただけってことにしよう!  
今日はお休みの日だから、私はお隣の清水さん家に遊びに来ました。全裸なのはたまたまです。妹のてらすもずっと裸だし、それと一緒です。  
……これでいこう!  
ってことは、身体は隠しちゃ不自然だよね……。へ、平常心、平常心!  
清水さん夫妻にとっては孫娘みたいなもんなんだから、きっと私が全裸でも、普通通り受け入れてくれるよ……!  
 
ピンポーン……  
「(できればおばあちゃんの方に出て来てほしいなあ)」  
「……はあい」  
「(おじいちゃんの方だ……)隣の四辻つばさでーす。遊びにきたんですけどいいですか?」  
「おお、つばさちゃんか。待ってなさい今玄関開けるから」プツッ  
 
そろそろ、ドアが開く……。  
私は身体も隠さず、直立で待っている。  
もうすぐ、清水のおじいさんに素っ裸を見られる……!  
早く開けてほしいけど、開けないでほしい……!  
 
ガチャッ  
あ、開いた……!  
おじいさんが出て来た……!  
見てる……私を見てる。私の裸を、見てる……!!  
恥ずかしい!胸隠したい……!  
 
「……つばさちゃんいらっしゃい。涼しそうだねえ」  
「つ、つ、梅雨が明けていきなり暑くなりましたからねえ、て、てらすを真似したんですよ!」  
「ほっほっ。どうぞおあがり」  
「おじゃまします!」  
私はやや駆け込み気味に玄関に入り込んだ。これで一安心だ……。  
おばあさんの方にも挨拶して、私は素っ裸のまま、何回か上がり込んだ清水さん家の畳に座り込んだ。  
おじいさんもおばあさんも、私が裸なことを全然気にしてない……ああ、良かった……  
 
ゲームもない清水家では一人では特にすることもなく、陽の当たる部屋の畳の上でごろんと寝転んで、ひなたぼっこしていた。  
恥ずかしさを越えて、裸であることが認められてしまえば、裸で過ごすことも心地良いもののように思えてきた。  
全身に浴びる眩しい日射しが、ぽかぽかしていて気持ち良かった。  
ああ、このまま(まだお昼前だけど)昼寝しちゃおっかなあ……。  
 
「つばさちゃん、お茶にしようか」  
おばあさんが呼びかけにきてくれた。  
「あ、はあい。ありがとうございます」  
私は少し高揚した気分のまま、清水家の居間に足を運んだ。  
 
三人で食卓を囲んで、おばあさんがいれてくれた濃いお茶を啜っていた。  
私だけが素っ裸でとても不自然だったが、なるべく不自然だと思わないように頑張っていた。  
お尻に直接感じる座布団の感触がくすぐったくて気持ち悪い。  
 
「今日はてらすちゃんは?」  
「友達の家に遊びに行っちゃいました」  
「おおそうかい。今度はてらすちゃんも連れておいで。歓迎するよ」  
「あ、ありがとうございます。お茶おいしいですね」  
ごく普通の世間話が楽しかったけれど、同時に私の格好の不自然さがありありと感じられてしまう。  
今日が生理じゃなくてよかった……。  
 
「トイレ貸してください」  
そう言って私は途中でトイレに入った。  
トイレで何も脱がずに用を足すこともすごく新鮮だった。座布団を汚さないように、尿道を念入りに拭いた。  
トイレを借りて戻って来ると、突然おばあさんが言い出した。  
「つばさちゃんはもう大人の身体だね」  
 
えっ……!  
それは言わない約束なんじゃないの……?  
「おっぱいおっきいなあ、立派立派!」  
お、おじいさんまで……!  
どういうこと?どういうつもりで私の身体のことを話題にしてるの!?  
「ほらおじいさん、私たちが中学生の頃いたよね、あの子みたい。ほらあの……あの子……」  
「練子(ねりこ)さんかい?」  
「そうそう、練子さん。あの一人だけおっぱい立派だった子。あの子みたい」  
二人とも、さっきまでの世間話ち全く同じトーンで話し続けている。  
私の裸の話題なんて、恥ずかしくて仕方ないのに……!  
 
続けておばあさんが、(私にとっては)とんでもないことを要求してきた。  
「ちょっとつばさちゃん、こうやってみてよ」  
右手を頭の後ろに、左手を腰に当てる仕草をとった。いわゆるセクシーポーズだ!  
全裸の私に、そんなポーズをとれっての!?うわああああ……  
 
「ん?こ、こう……?」  
私は言われるがまま、おばあさんの言うポーズをとった。  
心の底から恥ずかしいのに、恥ずかしくないふりをしながら。  
自分からおっぱいと腰を、見てくださいと言うかのように晒すその仕草に、私はどうしようもない心細さを覚えた。  
「ほっほっほっ、こりゃすぐにいい男見つかるなあ」  
おじいさんが私の空いた方の腰にひたひたと触れてきた。  
 
うそっ……いや、触らないで!  
おじいさんはにこにこしながら私の身体を撫で回してきた。  
おじいさんが身体に触ってきているのを、おばあさんもにこにこしながら見ていた。  
二人にとって、私の裸を触るのも単なるスキンシップ、いや、他愛のない話題の一つに過ぎないらしい。  
「腰もしっかりしとるし、丈夫な子供が生まれるだろうねえ」  
「あはは……ありがとうございます……」  
私は相変わらず『セクシーポーズ』のまま、おじいさんに触られるがままにしていた。  
腰から脇腹にかけて大きく撫でられ、次にお腹を撫でられた。  
不意に入れられた指でくりくりとおへそがくすぐられて、私はむず痒さで身体を少し仰け反らせた。  
よじ上ってきた掌は、とうとう遠慮なく私の胸をぐにぐにと揉み始めた。乳首まできゅううっとこすられ始めていた。  
あ……あん……やめて……きもちいいよぉ……  
声を殺すので精一杯だ……心地良いようなくすぐったいような感覚に顔が歪む……  
何より、とても恥ずかしい……  
「おじいさん、女の子の身体をそんなに触るもんじゃありませんよ」  
おばあさんのその言葉で、おじいさんは私の身体を触るのをやめた。  
別に残念そうな表情でもない、最初と同じ笑顔のままだった。  
あんなにイヤらしい手つきだったのに、顔が全然イヤラシくないのが不思議だった。  
 
そんなことより、触られてしまった。  
揉まれてしまった。  
おっぱいを揉まれてしまった……!  
乳首が気もちいいと感じてしまった……!  
すごく恥ずかしい!でも、この二人にとっては恥ずかしいことでも何ともないらしい。  
だったら、もう今日は開き直って、何も恥ずかしがらずに真っ裸で過ごすしかない……!  
最後におじいさんが、ぽんぽんと私のお尻を叩いた……。  
 
「つばさちゃん、お昼ごはん食べていくかい?そうめん作るよ」  
「あ、じゃあいただきます。お手伝いしますよ」  
おばあさんと私で並んで台所に立つ。おじいさんは私たちが料理するところを見ている。  
おばあさんがそうめんを湯がく。私がトッピング用の長ネギをみじん切りにしていく。  
「つばさちゃん、お塩とってちょうだい」  
「あ、はあい」  
少し前に手を伸ばさないと届かないところに置かれていた食塩瓶に手を伸ばす。  
私の後ろに向かって、お尻を突き出すような姿勢だ……  
おじいさん、見てる……  
見えちゃう……おじいさんに、あそこが……!  
恥ずかしいのもそうだけど、すっごく失礼だ……お尻の穴も丸見えだ……!  
おじいさん、お願いだから何も言わないで!  
 
ピンポーン  
 
「お、誰だ?」  
おじいさんが玄関に向かって行った。  
……まさか、家の中に上がり込んで来るようなお客さんじゃないよね……。  
 
「おお、育雄君。それに昭博さんも」  
「いやあこの度は育雄がご迷惑をおかけしまして」  
「いやいや、気にしとりゃせんのに」  
「とは言え、親に黙ってお義父さんやお義母さんに金を無心するなんて、あってはならないことです」  
「もうその辺にしてあげてくださいな昭博さん」  
「本当に申し訳ありませんでした。育雄、お前も謝らんか!」  
 
「つばさちゃん、ちょっと火加減見といてくれるかい」  
そう言って、おばあさんも玄関に出て行った。  
話を聞くに、玄関に居るのは清水さんのお孫さんとお父さんらしい。  
清水さんはお孫さんにお金をせびられて、よろこんでお小遣いをあげていたみたいだ。  
そのことをお父さんが咎めて、二人で一緒に謝りに来たらしい。  
 
「まあまあ。せっかく来てくれたんですし、お昼ごはんでも食べていってください」  
「そうですよ。今日は隣の家の子も来ていて賑やかですよ」  
 
えっ!?  
親戚の人も家にあげちゃうの!?  
私、裸だよ!!いいの!?  
そのお孫さんとお父さんは、近所の子が裸でも納得するような人なの!?  
 
は、入ってきた……!  
 
……えっ!?  
 
何で、何であなたが居るの!?  
「え、よ、よ、四辻さん……!?」  
「し、宍田(ししだ)くん……!?」  
 
私は素っ裸のまま両手を口元に当てて驚く。咄嗟に身体を隠しそうになったけど、何とか我慢した。  
今の今まで、お隣の清水さんとクラスメイトの宍田くんが親戚だなんて知らなかった。  
 
「私、ここの隣に住んでるの。清水さんにはいつもお世話になってるし、今日もたまたま遊びに来てたから……」  
「そ、そうなんだ……」  
私の全く隠していない裸を、全く遠慮なしに宍田くんが眺めている!  
その表情は、驚きと、戸惑いと、……興奮だった。  
クラスの男の子に、私の素っ裸をじっくりと見られてしまっている!  
 
こんなに恥ずかしいことはない。今すぐに悲鳴を上げてここから逃げ出したかった。  
でも、今日は裸のままで自然に振る舞うと決めた以上、今ここで急に恥ずかしがるなんてできない……!  
 
「な、何で裸なの……?」  
……それは聞かないで!私だって立場が逆だったら絶対聞いてるけど、それは聞かないでよぉ!  
「え?だって暑いじゃん。私、裸でも平気だし」  
苦しい言い訳……!完全に口からでまかせだ!  
そんなわけないよ!私は普通の女の子なんだよ!  
普通の感覚を持った、普通に裸を見られて恥ずかしいと思う女の子なんだよ!  
何でこうなっちゃったんだろう……昨日まで、家族にも裸を見せたことがなかったのに……  
 
「さあ、お昼にしましょう!みんな、席について」  
おじいさんとおばあさん、そして宍田くんと、そのお父さん、そして私。  
奇妙な5人が食卓を囲んで座った。  
私だけが全裸なのは、多分、もっと奇妙だよね……。  
きまずい……。  
 
「え、っと、お名前は?」  
宍田くんのお父さんが口を開いた。  
「よ、四辻つばさといいます。宍田く……育雄くんにはいつもお世話になっています」  
「いえいえこちらこそ……これからもうちの子をよろしくお願いします……」  
お父さんの目線も、ずっと浮ついている。  
極力平静を保とうとして、目は逸らしてくれているけれど、それでも私の裸が気になるみたいだ。  
そもそも、目を逸らそうとしている時点で、私が裸だって事をすごく意識しているんだ。  
やっぱりそうじゃん……!近所の子でもこんな大きい娘が全裸で人前にいるなんて、おかしなことじゃないかぁ!  
私だって恥ずかしいのに、私の裸を見ているくせに堂々と恥ずかしがらないでよ!!  
何てみじめで、屈辱なんだろう……  
 
恥ずかしくて仕方がなかった。  
それなのに、おっぱいも股間も丸出しで、特にクラスの男子の前でも過ごさないといけなかった。  
でも、私は気持ちとは裏腹な行動に出てしまう……。  
 
「あ、宍田くん、おかず要る?お皿に入れてあげるよ」  
「う、うん……お願い……」  
向かいに座った宍田くんからお皿を受け取る。  
少し腰を浮かせているので、宍田くんに胸を見せつけるみたいになっている。  
私は腰を少し浮かせたま、私の前にあったおかずをお皿に入れて返してあげる。  
「ありがと……」  
 
私は開き直ってしまいたかった。この恥ずかしさを忘れたかった。  
同時に、私の裸を見てたじろいでいる宍田親子の反応を楽しむようになっていた。  
恥ずかしいのに……惨めなのに……屈辱的なのに。  
でも、恥ずかしいのが、惨めなのが、屈辱的なのが、とても心地良く感じられた。  
私、マゾに目覚めちゃったのかな……。  
多分、人間の精神上の防衛機制なんだと思う。あまりに屈辱的でストレスを感じたら、その屈辱を快感に変えてしまうみたいだ。  
よくわからないけど、それがマゾヒズム(被虐嗜好性)なのかもしれない。  
 
御託はいい。とにかく、もっと私の裸を見せつけて、もっと気持ちよくなりたかった。  
この恥ずかしさを忘れたかったし、今日の私はそもそも恥ずかしさを感じてはいけないことになっているんだ……。  
 
ずるずる、ずるずる……。  
 
「食後はコーヒーでいいかい?」  
おばあさんが尋ねてきた。何でも良かった。宍戸親子もコーヒーで言った。  
「じゃあコーヒー準備しますよ。よっこいしょっと」  
「あ、おばあさん、私がコーヒー準備します!座っててください!」  
私は、その場にわざわざ立ち上がった。  
宍田くんもお父さんも、咄嗟に目を逸らして、澄まし顔を取り繕った。  
 
ふふ〜ん。  
宍田くんの真面目ぶったな顔を、イヤらしく綻ばせてあげたいなあ。  
ずっとイヤだったけど、男の視線を集めてしまう私のこの身体で、宍田くんをどぎまぎさせてあげたい……。  
……そう思わないと、私が恥ずかしくて倒れてしまいそうだから。  
 
空のコーヒーカップを5つ用意する。コーヒーは既にドリップが終わった。  
カップが空のまま、それらをお盆に乗せた。  
宍田くんの右手に立ち、まず空のカップを置き、目の前でコーヒーを注いだ。  
わざわざ、宍田くんに身体を見せつけるように。こんな至近距離で、手を伸ばさなくてもすぐ触れられる距離で!  
宍田くんの目の高さに私の胸。わざと少し揺すってみる。  
逸らされていた目線が胸を見た。表情が露骨に興奮に変わった……!  
やった!私の裸で、男の子が興奮した!  
ああ、気持ちいい……裸を見てもらうことが、こんなに気持ちいいなんて……  
ああ、だめ!ちくび立っちゃう!触られてもないのに……!  
 
一人一人に、目の前でコーヒーを注いでいった。  
 
「え、えーっと……そろそろ僕たちはおいとまさせてもらおうかと……」  
宍田くんのお父さんが口を開いた。  
「もっとゆっくりしてくださったらいいのに……」  
おばあさんが口を開いた。  
「そうもいきませんよ。本当に申し訳ありませんでした。しかもごちそうにまでなってしまって……。育雄、帰るぞ」  
 
ええ〜、もう帰っちゃうの?  
せっかくなんだからもっと私の裸を見て行ってよお〜。  
 
「……宍田くん、よかったらもうちょっと遊んで行かない?」  
私は素っ裸のまま両手を後ろに組んで、もじもじしたような仕草で宍田くんを呼び止めた。  
清水さんの家だというのに、まるで自分の家みたいな口ぶりだ……宍田親子にとっては厚かましく映ったかもしれない。  
「う、うん……じゃあ。父さん、俺はもうちょっと四辻さんと遊んでから帰るよ」  
「あ、ああ……。晩飯までには帰って来いよ」  
宍田くんも、宍田くんのお父さんも、わけがわからないまま頷いている感じだ。  
大丈夫(?)、私だって全くわけがわかってないんだから……。  
清水のおじいさんとおばあさんは、ずっとにこにこしたままだ。  
 
呼び止めた宍田くんをつれて、畳の部屋に入った。  
私は最早「何て言ったら宍田くんにもっと裸を見てもらえるかな〜」などと考えるようになっていた。  
……完全に変態になっていた。  
 
「え、えーっと、四辻さん、何する?」  
「あ、し、宍田くん、ゲーム持ってない?」  
「持ってるけど……」  
「じゃあやってよ、私それ見てるから!」  
「でも二人用とかできないよ……」  
「いいよ、私、人のプレイ見て満足しちゃうたちだから」  
 
宍田くんが携帯ゲーム機を手にして、プレイし始めた。  
私はその後ろから膝立ちで画面を覗き込んだ。  
普通に覗き込んでるだけなのに、私は胸が大きいから、すぐ宍田くんの肩に当たる。  
わざとらしく、乳首をつんつんと肩に当てて、びっくりしたふりをして、すぐ離れてみる。  
でもそれも面倒になったので、そのまま宍田くんの肩におっぱいを押し付けてしまった……。  
 
あはは、宍田くんの顔がむずむずしてる。  
ほら、私のおっぱいをちゃんと見なさい!  
……こんなに恥ずかしい状況にさせといて、今更反応無しなんてひどいよ!  
 
「……四辻さん」  
宍田くんが、ゲームしている手を止めて振り向いた。  
「……難しそうだね〜、そのゲーム」  
「……四辻さんは、ほんとに裸でも恥ずかしくないの?」  
「うん、別に恥ずかしくないよ」  
「学校では、自分だけ女子専用の更衣室に着替えに行くくらいだから、かなり恥ずかしがり屋だと思ってたんだけど……」  
うちの学校は、体育の着替えのために女子更衣室はあるけど、ほとんどの女子が移動が面倒ということで使っていなかった。  
だから女子のほとんどが男子と同じ教室で着替えていたけど、私にはそんな恥ずかしいことはできなかった。  
元々私はそれくらい男子の目線が恥ずかしかったのに、またそれを思い出すところだった……。  
「わ、わたしどれくらい恥ずかしがったら自然なのかがわかんないから、じゃあいっそのことすごく恥ずかしがり屋だってことにしとこうかなと思って……」  
「……本当に、見てもいいんだね?」  
「だ、だから気にしなくていいって〜」  
宍田くんが私の裸を、凝視し始めた。  
 
わわっ、ちょっと、宍田くん目が恐いよ……。  
「四辻さん、俺、もう我慢できないよ」  
宍田くんが手を伸ばしてきた!  
揉まれてる!両手で、両方の胸を、揉まれてる!  
私、クラスの男子におっぱい揉まれてるんだ……!  
「い、痛い!宍田くん、痛いよ……」  
手つきは少しソフトになったけど、ソフトな手つきのまま私の乳首を摘み始めた。  
「ち、ちょっと、宍田くん!見るだけ、見るだけだってば!」  
 
私は、どこまで身体を許したらいいんだろう。正直言うと自分でもわからないんだ。  
宍田くんのことは好きでも嫌いでもない。ただのクラスの男の子だ。  
そんな男の子に対して、挑発的に裸を見せつけて、興奮させちゃったのは事実だ。  
そして、そんな露出狂みたいな行動で、私が快感を得ていたのも事実だ。  
でも、それはあくまで、見るだけならの話だ。  
まさかとは思うけど(清水さんたちも家にいるし)、このまま犯されてしまうのだけは絶対に嫌だ!  
 
宍田くんの片手が、とうとう私の股の間に伸びてきた。  
私は反射的に脚を閉じた。  
 
「四辻さん、……したい」  
「え、ええっ!?」  
「俺、四辻さんとしたい。だから……」  
「宍田くん、それはルール違反!絶対ダメ!」  
私は、強く拒否した。  
 
宍田くんの表情が、お預けを食らった仔犬のように悄気返った。  
そんな宍田くんを可哀相だと思ってる余裕なんて無い。男の子恐い……やっぱり男の子って恐いよ……!  
「じゃあ、どこまでならいい?」  
宍田くんが懲りずに尋ねてきた。  
「えっ……だ、だから、見るだけだって。見られるのは何とも思わない(って設定な)んだから」  
「じゃあ、あそこ見せてくれる?」  
うわあああ、どうしてこう恥ずかしい注文を臆面もなくしてくるかなあ……!  
「み、見るだけ、だよ。さすがにここはちょっと恥ずかしいんだから……」  
「じ、じゃあ、そこに寝転んで……」  
「うん……」  
 
私は、脚を開いて仰向けに寝転がった。  
「これでいい?」  
「う、うん……」  
「……絶対、しようとしないでよ。大声出すからね」  
「わかった……」  
 
覗き込まれてる……。  
うわあ〜、見られてるよぉ〜!  
また私は、男の子に裸を見せている快感に酔い始めた。  
あそこも、お尻の穴も、無防備な格好のまま見せつけちゃってるんだ……  
ああ、この恥ずかしさが癖になる……  
 
「四辻さん……これが最後のお願い」  
「な、何?」  
「自分で広げてみて……」  
「え、えっ!?」  
「俺は触らないから、最後まで……奥まで見たい」  
「……」  
 
無言であそこに指を当てがい、広げた。  
消えてしまいたいほどの屈辱感と、男の子を自分に釘付けにしているという征服感とのせめぎ合いで、私のあそこが淫蕩に濡れていた。  
「指、入れてみて……」  
「……」  
また無言のまま、その要求に従う。人差し指を1本、穴に押し入れた。  
……みじめなことに、とても気持ち良かった。  
「……出し入れしてみて」  
「……」  
私も収まらなくなっていた。言われた通りに、ゆっくりと指を、出して、入れて、出して、入れた。  
 
ああ、ダメっ……!気持ちいいよ……!!  
頼まれたわけでもないのに、指の出し入れが自然と速くなっていった。  
私も快楽の虜になっていた。  
男の子が見ているまえで、オ、オナニーだなんて、すごく恥ずかしいのに、でもそのせいで興奮して、もう、抑えられなくなってしまっていた……!  
くちゅくちゅくちゅくちゅ……  
「ああっ!……、はぁ、はぁ、……はぁ、……はぁ、……」  
できるだけ声を殺して性的絶頂に達した。こんなに気持ち良く達したのは初めてだった。  
 
私は、もしいっそこのまま宍田くんに身体を触ってもらえたら気持ちいいだろうなあという欲望を何とか我慢して、まだ快感の余韻を残す身体を起こした。  
 
「ねえ……、今日のこと、絶対誰にも言わないでね」  
「わ、分かった……」  
「私、裸を見られても恥ずかしくないけど、恥ずかしくないってことが噂で広まるのは嫌なの。変な噂が広まっても嫌だし、ヤりたいわけじゃないし。ヤりたがってるって勘違いされるのも嫌だし」  
「ご、ごめん……」  
「いいよ、変なのは私の方だから。普通あんなにあっさり裸を見せたら、してもいいんだって思うよね」  
「ってか、我慢できなくなる……」  
 
「じゃあ、そろそろ私たちも帰ろっか」  
午前中にカンカンに怒っていたお父さんを思い出した。そろそろほとぼりも冷めた筈だと期待して、家に帰ろう……。  
「四辻さん、もしかして、家から裸で歩いてきたの?」  
……言われてみればそうだった。私はまだ、全身すっぽんぽんのままだった。  
うわあ……  
私ほんと、今日どれだけ恥ずかしいことしてるんだろう。  
「ん、んー、そうだよ。お隣さんだし、宍田くんのお爺さんもお婆さんに対しては、私が小さい頃から裸だったから……」  
「だ、だからって、道路を裸のまま歩いてきたの……!?」  
いちいち蒸し返さないでよ……元はと言えばうちのお父さんが悪いんだから……  
「そうだよ。別に人に見つかることもないし」  
「……」  
「だ、黙らないでよ宍田くん、……わ、私が変みたいじゃん」  
「……ってか、露出狂みたいなんだけど」  
「もう、だからクラスの誰かにばれるのは嫌だったんだよぉ、めんどくさいから」  
 
「ねえ、四辻さん……」  
「な、なに……」  
「裸で恥ずかしくないんだったら、また、裸を見せてもらってもいいかな?」  
ええっ!?  
もう嫌だよ!こんな恥ずかしい目は二度と遭いたくないのに……  
「……いいけど、そのかわり、私とあんただけの秘密だからね!」  
なのに、断る理屈が見つけられなかった。  
私はあと何回、この男の子の前で裸になればいいんだろう……。  
「ああ、ありがとう四辻さん!」  
宍田くんが私の手をとって大喜びしていた。私は裸のまま、宍田くんに手を握られていた。  
男の子って、女の裸でこんなに喜ぶことができるんだ……  
そう思ったら、また「見られる快感」が首をもたげてきた。  
夏休みが明けて、宍田くんに「裸を見せて」とまた頼まれる日を、心待ちにしてしまっていた。  
 
私は全裸のまま道路を歩いて、家に帰った。  
お父さんはもう怒っていなかった。私はもう一度お父さんに裸のまま謝った。  
てらすも帰って来ていた。相変わらず、もう全裸になっていた。  
 
その日の夜、私は眠りにつく前にベッドの中で泣いた。  
思い返せば思い返すほど、あまりにみじめで屈辱的な一日だった。  
そして、そんな状況を楽しいと思って、もっと淫らな快感に流されてしまいたいとも思っていた。  
屈辱を快感に感じてしまい、流されたことが嫌で自己嫌悪した。  
マゾヒズムに目覚めたことや、露出する快感に目覚めてしまったことが、その日の私には許せなかった。  
 
 
 
「お父さーん、お風呂空いたよー」  
私は素っ裸のままお風呂から上がって、お父さんを呼びに行った。  
お父さんはソファーに寝転がっていた。お父さんが顔を上げると、すぐそこに私の股間がある……。  
 
私はあの日以来、できるだけ「裸でも恥ずかしくない」と思い込もうとしていた。  
家でも全裸で過ごして、自分が裸だということを意識しないようにしていた。  
てらすには「お姉ちゃんどうしたの?」と訊かれたけど、すぐに何とも思わなくなったみたいだ。  
お父さんはいつだって、何も言わない。  
 
家の中で高校生の女の子二人が、全裸でテレビゲームに熱中している。  
お父さんは全裸で姉妹仲良く遊ぶ私たちを視界に入れつつ、パンツ一丁でゴルフのマンガを読んでいる。  
つくづく、変な家族だ……。  
自分が裸でも意識しないようにするつもりが、その行動が結局自分が裸であることを思いっきり意識しちゃっていることに気付いてしまった。  
やっぱり私は、てらすの様にはなれない……。  
 
「お父さん、お誕生日おめでとう!」  
8月中旬のある日、お父さんの誕生日プレゼントをてらすと二人で買いに行った。二人分のお小遣いを出し合って、ネクタイを買った。  
家に帰ってきたお父さんをお出迎えして、二人でプレゼントを手渡した。  
プレゼントを手に持つ私たちは二人とも全裸のまま……。  
お父さんはプレゼントに泣いて喜んでくれたけれど、状況としては高校生の女の子二人が全裸で過ごしていること自体がプレゼントなんじゃないだろうか……。そんなことをこっそり考えていた。  
 
 
そして、夏休みが明けた……。  
9月の初日だというのに、宍田くんがそわそわしている。私の方に目線を向ける度に落ち着かない目線をこっちに向けている。  
宍田くんの挙動不審な態度で他のクラスメイトに感づかれるのが嫌だったので、私は自分から、宍田くんを呼びつけた。  
 
「……じゃあ、これから裸になってあげるけど、どこか誰にも見つからない場所ないかな?」  
「バレーボール部の更衣室とかどう?あの部屋、多分全然使われてないよ」  
「うん、いいよ。じゃあそこでまた待ち合わせね。二人揃って歩いてると怪しまれるし」  
「それにしても……四辻さん自ら『裸になってあげるよ』って声かけてくれるなんて……!」  
「うるさいなあ////あんたがキョドってるからじゃん……」  
「もうすっかり露出狂だね」  
「……やっぱ裸見せるのやめる」  
「ああ、ごめんなさい、俺が悪かったです!」  
 
 
何だかんだで、宍田くんとはこの奇妙なノリとつながりのまま、ちょっとずつ仲良くなってきていた。  
バレーボール部の更衣室は何故か(バレーボール部の部員はいる筈なのに)全然使われておらず、私と宍田くんはそこでほぼ毎日会うようになっていた。  
でも、私は宍田くんを恋人として見ることはできなかった。多分、それは向こうも同じ筈だ。  
あくまで、私は裸を見せてあげるだけだし、向こうは私の裸を見るだけだ。  
 
「……じゃあ、脱ぐよ」  
「……」  
「……どうかな?」  
「ほんと綺麗だよ、四辻さん。俺が独り占めしちゃうのが勿体ないくらいだよ……」  
「お願いだから独り占めしてて。他の人にばれるのだけは絶対嫌なんだから」  
「も、もちろん冗談だよ。それくらい綺麗で素晴らしい身体だって言ってるんだよ」  
 
宍田くんは私が裸になる度に、いつもいつも絶賛してくれる。  
裸になるのなんて死ぬほど恥ずかしかった筈なのに、何だかんだで裸を褒めてもらえると嬉しいと思うようになっていた。  
自分の裸を綺麗だと褒めてくれる人に裸を見せるのって、女の幸せなんじゃないかな……。  
あーあ、私また裸見られて喜んでる……あくまで頼まれて、仕方なく裸になっていた筈なのに……。  
 
「……ねえ、宍田くん、今日は好きなポーズ一つだけとってあげるよ」  
「ど、どしたの?今日は随分気前いいね」  
「宍田くんのこと、ちょっと信用したから。それに、今日の私は気分がいいんだ」  
「ああ、まさかアイドル級に美人な四辻さんが、露出趣味に目覚めるなんて……」  
「……」  
「ああ、怒らないで、パンツ穿こうとしないで!……じゃあ、俺にお尻を向けて、そこで四つん這いになってくれる?」  
相変わらず最初から露骨な注文をしてくれるなあこいつは。  
私は膝と手を地面に着いて、理性のない動物の様に、性器と肛門をみっともなく見せつけていた。  
 
私は、露出の愉しさから当分抜け出せそうにないみたいだーー。  
 
 
終わり  
 

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