俺の名はガウアー。  
 行く先々で護衛やモンスター退治を引き受け、剣の腕を磨いている。  
 しかし、人間の常識を無視した特異な生態系の方々を相手するのは、なかなかどうして骨が折れる。  
 そんな訳で俺は、魔導師系の相方を連れて旅をしていた。  
 その相方は一見小柄な少女だが、既に俺の三倍以上の年月を生きていた。  
 ちなみに俺は二十五歳だ。  
 子猫のようにクリクリした青い瞳。  
 旅の日差しなんぞ屁の河童と言わんばかりの白い肌。  
 豊かな金髪はその日差しにキラキラと煌めいて、一本一本が純金で出来てるんじゃないかと思えてくる。  
 そしてその耳はピンと尖って、感情の動きに合わせてピコピコ動く。  
 魔法と弓に長けた、エルフの少女フィリエル。  
 敵を直接攻撃する魔法こそ使えないものの、彼女の補助魔法は、道中で何度も俺を救ってくれた。  
 今では俺だけの、掛け替えのない女だ。  
 少し世間知らずで、それ故に面倒を起こす事もあるが、可憐な容姿と基本的に素直な性格の為か、どうにも憎めない。  
 ガウアーさんガウアーさんと俺の腕を引っ張っては、興味を覚えたものに関してあれこれ質問してくる様は、見た目相応な少女そのものだった。  
 
◆  
 
 さて、俺は今、宿屋でベッドの端に座り、腕組みしている。  
 正面の床にはフィリエルが座っていて、そのエルフ特有の長耳もしょんぼり垂れていた。  
「なぁ、フィリエル……」  
 俺の呼びかけに、彼女はビクッと肩をすくめた。  
「俺も博打は好きだ。余った小銭を、その場限りのスリル欲しさに軍鶏に賭けて、ガキみたいに熱くなったりもするさ」  
 フィリエルは答えず、うつむいたままだ。  
「だがな、そのスリルの為に、旅に必要な金までつぎ込むようになったら、それはもう博打じゃない。人生を狂わせる恐ろしい呪いだ。わかるだろう?」  
「はい……」  
 ポツリと、彼女は返事をした。  
 森の中での暮らしが長かったフィリエルは、外界の刺激に対して免疫がない。  
 俺との旅で、少しはそれが身に付いたかと思っていたのだが、まさか預けておいた旅費の大半をドッグレースですっちまうとは思わなかった。  
 以前、ほんの気まぐれで賭場に連れて行ったのがまずかったか……いや、そもそも暇つぶしにチンチロリンを教えたのがきっかけかも知れん……。  
 そんな事を考えていると、  
「ごめんなさい、ガウアーさん……」  
 フィリエルの目から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちていた。  
 
「私、いつもガウアーさんにお世話になってて……仕事の報酬だって、たくさん分けてくれるし……」  
 たくさんと言う程じゃない。正確には、俺が四割でフィリエルが六割だ。女の子は色々と必需品も多かろうしな。  
「何だか申し訳なくて……綺麗な帯飾りが露店に売ってたから……お礼に買ってあげようと思って……でも、私のお小遣いじゃ足りなくて……」  
 嗚咽混じりに事情を説明するフィリエル。  
「俺の為、か」  
 何だか胸が熱くなる。  
 方法論と結果は誉められたもんじゃないが、その気持ちだけは嬉しい。  
「もうしません、ごめんなさい、許してください……」  
 えぐえぐと泣きながら謝り続けるフィリエル。  
「博打のやり方が、よくわかったろ。約束だぞ?」  
 そう言って俺は、彼女の金髪を優しく撫でてやった。  
 今の時代、俺のような男が金を稼ぐ機会はいくらでもある。  
 確実性の高い仕事を二つもこなせば、博打ですった分は簡単に取り戻せるだろう。  
 窓から、夕陽が差し込んでいる。明日、冒険者ギルドで仕事を探す事にして、俺達は食事を済ませて床についた。  
 
◆  
 
 深夜。  
 俺のベッドに潜り込む気配に目を覚ます。  
 身体に絡みつく二本の細い腕。  
 服の上から背中に押し当てられる小さな、しかし柔らかな二つの膨らみ。その先端が堅くなっているのもわかる。  
 耳たぶに、小さな硬い物がゆっくりと触れた。  
 複数並んだそれが二列、耳たぶを挟んでいる。  
 フィリエルだ。  
 フィリエルがその華奢な裸身を絡め、耳を甘く噛んでいた。  
 エルフの長耳は鋭敏だ。  
 聴覚だけではなく、その長耳で空気の流れを読む事すらある。  
 鋭敏な分、敏感でもあり、フィリエルもそこが一番感じるらしい。  
 そんなフィリエル――そしてエルフが、相手の耳を噛む。  
 自分の一番感じる場所と同じ場所を噛む。  
 それは情愛の証しであり、交合の誘いでもあった。  
「金の事なら気にするな」  
 俺はそう言った。  
 フィリエルは、こういった事には未だに奥手だ。  
 俺が一通り教え込んだ今でも、俺の方から誘う事はあっても、彼女からはない。  
 そんな彼女が、俺の寝床に潜り込み、耳を噛む。  
 彼女なりの詫びのつもりだと、俺は思った。  
「でも、こうでもしないと、私の気が済みません」  
 少女の手が、股間に潜り込む。  
 いつもと違う角度のせいか、愛撫の手つきがぎこちない。  
 それでも、その手の感触に俺の物が反応した。  
 
「お願いです……抱いて、ください……」  
 声を震わせて、耳元で囁くフィリエル。  
 俺は一旦身を起こして服を脱ぎ、彼女をゆっくりと押し倒して唇を吸った。  
 フィリエルが首に腕を回し、自分から舌を絡ませて来た。  
 互いの唇と舌を味わい合った後、俺はさっきのお返しに、彼女の耳に優しく歯を立てた。  
「ふぁっ……!」  
 可愛らしい声が漏れる。  
 舌先で付け根や耳たぶの凹凸をくすぐり、穴をほじる。  
 手で脇腹をさすり、最近膨らみが増し始めた乳房をこね回す。  
 その先端――本人曰わく耳の次に感じるらしい乳首を、指先でくすぐりながら、左右の耳を交互に舌で責めた。  
「ひゃっ……ひっ……やらっ……!」  
 ビクビクッと身を震わせるフィリエル。何度も責められているのに、相変わらずの初々しい反応だ。  
「ガウアー、さん……私も、したいです……」  
 濡れた瞳で見つめながら、フィリエルが言う。  
 俺は仰向けになった。  
「失礼します……」  
 ペコリと小さなお辞儀をして、フィリエルは天井を向く俺の物を唇で包み込んだ。  
 俺に教えられた通りに、丁寧に舌を這わし、唇でしごく。  
 口で奉仕させながら、俺も指で耳をいじめた。  
 尖った先端を摘んで、軽く引っ張る。  
 指先でくすぐり、穴の入り口をかき回す。  
「んっ……ふむううっ!」  
 くわえたまま、小ぶりな尻をくねらせてよがるフィリエル。  
「本当に敏感だな……この前も、森の中で耳くすぐってやったら、それだけで二、三回はいったしな」  
「〜〜〜〜!」  
 フィリエルの頬の赤みが、一気に耳まで達した。  
「ほら、ケツ出しな」  
 ピタピタと尻を叩くと、フィリエルはくわえていた物を離し、四つん這いになる。  
 肉付きは薄いが、綺麗な形の尻だ。  
 その下の、耳責めで充分に潤ったそこを、俺はゆっくりと貫いた。  
 元々小柄なせいか、奥まで汁を溢れさせてるくせにキツキツだ。  
 尻を両手で掴み、始めはゆっくり、そして徐々にスピードを上げて突き入れる。  
 白い背中に金髪が広がり、清楚な色香が漂う。  
「んっ……あんっ……」  
 シーツを握り締め、控えめな声で喘ぐフィリエル。  
 今は“可愛い”だが、いずれは“綺麗”になるんだろう。  
 ……俺はその時まで、男でいられるだろうか。  
 そもそも、生きてるのだろうか。  
 脳裏に浮かんだそんな考えを、無理矢理追い出す。  
 今はフィリエルを悦ばせる事に集中しろ。  
 
 剣を振り回すしか能がない俺を、蛮人だの野良犬だのと蔑まれた俺を、こいつは父親や兄貴のように慕ってくれた。  
 処女を捧げてくれた。  
 俺への恩返しがしたくて、慣れない博打で大損した。  
 振り回される事もあるが、それでもこいつは――フィリエルは、生涯唯一の、俺の女だ。  
「ガウアー、さん……ガウアーさん……!」  
 フィリエルがうわ言のように俺を呼ぶ。  
 俺は腰は止めずに、彼女の背中にのしかかった。  
「ここにいるぞ」  
 耳元で優しく囁く。  
「い、いじめてください……耳っ……フィリエルの、エッチなお耳、いじめてぇ……!」  
 言われるがままに、ピクピクと動く耳を噛んだ。  
 口に含んで、しゃぶって、舌を這わせて……その度に彼女は俺をキュッキュッと締め付ける。  
「んひぃっ! 好き、耳、好きえす!」  
 感じすぎて、呂律が回らなくなっている。  
 締め付けも激しさを増す。  
 俺も限界が近い。  
 つながったまま、フィリエルを仰向けにした。  
 フィリエルがしがみついて来た。  
 俺はピストンを再開する。  
「すき……好きです……ガウアーさん、大好きぃっ……!」  
 背中に回った彼女の細い指に、力がこもる。  
 互いの耳を噛み合いながら、俺は一心不乱に突き入れる。  
 俺がフィリエルの中に全て注ぎ込むと、彼女も俺を激しく締め付ける。  
 同時に、俺の耳に軽い痛みが走った。  
 
◆  
 
「ごめんなさい……」  
 俺の胸で、フィリエルが小さく謝った。  
 強く噛んだせいで、俺の耳たぶの端を傷付けてしまったのだ。  
 怪我の内にも入りゃしないが、エルフにとって耳を傷付けてしまうのは、かなり重大な事なんだろう。  
「気にするな」  
 俺はそれだけ言って、彼女の髪を撫でる。  
 サラサラと流れるような手触りで、ちょっと気持ち良い。  
「でも、ガウアーさんは……素敵でした」  
「そうかい……お前も可愛かったぞ」  
 その言葉に、彼女の耳がピンッと跳ねた。  
「嬉しい……ありがとうございます」  
 何度も交わしてるやり取りだが、フィリエルは飽きないらしい。  
 だからだろうか、俺も飽きない。  
 フィリエルはすぐにスヤスヤと寝息を立て始めた。  
 窓から差し込む満月に青白く照らされる、あどけない寝顔を、俺はじっと眺めていた。  
 
 

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