さて、このスゴロクも3巡目に入るわけだけど……
なんだかスゴロクそのものより危険な存在が盤上にいるせいで、あたし達は二重のピンチに晒されている。
いつも表情を変えないあの若葉も小春姉さんの前では既に陥落したも同然。
最初こそあの済ました顔に余裕がなくなるのに対し少しザマみろ&スカッとさわやかと感じたけど……だんだん見ていて可哀想になってきた。
あたしはサイコロを振って彼女の受難をなるべく早く終わらせてやろうと考えたが、あたしも次の目次第では他人を気にする余裕などなくなりそうだ。
……というか既にパンツ一枚にされてるこの状況が十分ヤバイんだけど、もはやこれくらい大してヤバイと思えなくなってる事がヤバいかも。
大きなサイコロを手渡され、あたしは隠していた胸から手を離さざるを得なくなる。
「飛鳥ちゃんの胸も育ってきたなぁ」などのどっかのオヤジの声が聞こえてきて、恥ずかしいというより腹立たしい。
その気持ちをぶつけるかのようにあたしは少し思いっきりサイコロを放ったけど、その結果丸出しの胸が揺れてしまった事に少し後悔した。
……あたしの出した数字も3、そしてその先には水着姿でブリッジしている皐月ちゃんがいる。
「次の自分の番までブリッジ(途中で床に身体がついてしまったらペナルティとして1枚服を脱ぐ)」
……この内容を既に下着一枚のあたしにやれと?
あたしは皐月ちゃんみたいに身体を後ろに倒してやろうもんなら頭打つのがオチだから、一端その場に仰向けに寝る。
ブリッジなんか最後にやったのいつだろ?……よっ!
そしてあたしは全身に力を入れて、身体を持ち上げ、ブリッジの姿勢をとった。
しかし想像通り……いや、想像以上にパンツ一枚でこの格好は屈辱的だ。
丸出しのおっぱいがこれ以上ないくらい強調されるし、股間を突き出すようにして足も開かなきゃいけないし
……こんな無防備な姿勢を必死にとってる姿を視姦されるのはなかなかに精神的にキツイ。
何より悔しいのが……隣で完璧に近いブリッジをしてる子がいるところ。
自分がどんなブリッジしてるのかわからないけど、絶対あんなに綺麗じゃないことは間違いない。
パンツ一丁で不恰好なブリッジをしてるあたしは、惨めなさらし者だ……
そして……う、マズイ……出来た時は結構持つかと思ったけど、まだ30秒も経たないのにすぐにキツくなってきた。
「弥生!……早くしなさいよ!!」
「ご、ごめんなさいお姉ちゃん」
必死の形相のあたしがさぞ恐ろしく見えたのか、弥生パンツを上げるのも忘れて急いで渡されたサイコロを振った。
どうやら出た目は2のようだ……昔からトロい子だとは思ってたけどサイコロまで遅い。
こんな刻んで進んでちゃ全部のマスをコンプリートしちゃうんじゃないの。
その先のマスは若葉が最初のターンで止まったマス。
「下着の上下を脱いでゲームを続ける」
「あ……」
ようやく穿くことが出来たパンツをまた降ろさなければいけない事になり、弥生の表情が曇った。
だけど、モタモタしてもらっちゃあたしが困るんだよ!!
「……ひっ!」
ブリッジをしたままのあたしが睨みをきかせると、弥生はまるでエクソシストの映画の悪魔でも見たみたいに怯え、
震える手でパンツを再び恥ずかしそうに下ろし、今度は完全に足から抜く。
バカだね。上から先に脱げば良かったのに。パンツから脱いじゃったら、スカートの中気にしながら上脱がなきゃいけないじゃない。
……まぁ、急かしたあたしが悪いんだけど。
ブラもまだな弥生は、腕を袖から脱いで上着の中でモゾモゾとインナーシャツを脱ごうとしている。
トロい……早くしなさいってば……!!
「きゃっ!!」
シャツを脱ぐために頭に通した途中で、視界が遮られたためか、弥生がバランスを崩して転倒した。……どこまでドンくさいのよあんたは。
「い……いたた……」
「んんっ……いい眺め。弥生ちゃんのつるつるのおま○こが見えてるよ」
周囲から歓声と小春姉さんの声が聞こえる。
どうやらノーパン状態で尻餅をついたもんだから見事にスカートの中身を正面に見せ付ける形になったようだ。
「えっ!?きゃああっ!!」
弥生は頭に自分の下着を巻きつけたような格好で上も下もどうしたらいいかわからないといったふうにパニック状態になって、床の上でもがく。
いいからはやくしろっ!!間にあわなくなってもしらんぞーーっ!!(あたしが)
そうして弥生はようやく下着を脱ぎ終わったようだ。
あたしにはもう弥生の方を見る余裕もないけど、おそらくスカートの中を見せてしまった恥ずかしさで涙目になっていることだろう。
そして自分の脱いだものをどうしたらいいのかわからず手に持ったままオロオロとしていることだろう。
可哀想な気もするけど今はあたしがそれどころじゃねー。
手痛いし腹筋つりそうだし頭に血上ってきたし、開いた足がガクガク震えだしてますますみっともない姿になってる。
そしてもはやそれを気にする余裕も無い。
「ふぅっ」
自分の番を迎えた皐月ちゃんは、あたしの横でこともなげに上半身をそのまま起こして立ち上がった。
3分以上はブリッジしてたはずなのに息一つ乱さず余裕の動作。
それに比べてあたしは……もう限界だ。
も、もうダメ……さらばパンツ……
どっちみち皐月ちゃんと若葉のターンを耐えられそうにない。そう判断したあたしはこの苦しみから逃れるためパンツを諦めた。
そうして、手や背筋の力を抜こうとした直後……
「いっ!……痛ぁああああっっっ!!!」
突如両方の胸に走った激痛に、あたしはすぐさま手足に力を入れなおす事になった。
そして一瞬遅れてあたしは何が起きたか理解する。
「ほら、飛鳥姉ちゃんがんばれー」
皐月ちゃんがけらけらと笑いながらあたしの乳首を……強く摘んで、引っ張っていたのだ。
皐月ちゃんが手を離すと、あたしのおっぱいは再び重力に引かれて、かすかに身体の上で弾む。
な、なんてことすんのよ、このガキゃあ!!
あたしは痛みと恥ずかしさと怒りと屈辱で、ブリッジの苦しみを一瞬忘れた。
そして、それと同時に、この子の目の前で無様につぶれるのだけは嫌だと思った。
どこかで聞いた……人間は限界だと思ったその時点で、実はそこからこれまでやってきた事と同じぐらいのことが出来るのだと。
こうなったら意地でも耐えてやろうじゃない……!!
パンツ一丁の情けない格好で身体を震わせながら耐えるあたし。
もう正直ブリッジをは呼べないような体勢になっているだろうけど、なんとか床に身体だけはつけないよう一度は諦めた体に鞭を打つ。
ぶっちゃけもはや潰れようが潰れまいが最高にかっこ悪い状況なのだが、もう自分自身の意地だ。
「おーい、飛鳥ちゃーん。腰が震えてるけど大丈夫かい?」
「育ったおっぱいもプリンみたいにぷるぷる揺れててえっちだなぁ」
「なんだかパンティーが透けてきたみたいだけど……汗かな?それとも見られて興奮してない?」
「おじさん達判ってないわね……あの苦痛に歪んでる顔が最エロスよ」
低俗な親戚のオッサン連中の野次が飛び、小春姉さんがさらに一回り悪趣味な台詞を吐く。
好きに言いなさい!……今のあたしの敵は己自身……どんな雑音にも負けない。
「飛鳥!がんばれっ!お父さんは応援してるぞ!!」
…………黙ってろクソ親父!
「それじゃ、ボク行くから頑張ってね♪」
そう言って皐月ちゃんは突き出されたあたしの股間をぺちぺちと叩いて、去っていく。
彼女の目はまた5とか大きい数字が出たようだ。そして着いた先は何も書いていないマスらしい。イカサマでもしてるんじゃないの?
「何にもなしか、つまんないの」
あの子に何もなしはシャクだけど助かった……一秒を惜しんでる今のあたしにはサクサク進んでくれる事はありがたい……
「……うーんなんかボク、あんまりオイしくないなぁ……」
じゃあオイシイのは誰だよっ!
「早くっ……賽を……!!」
その時、そう必死な声で叫んだのは……若葉。
いいよ、いいよー!早く振りなさい。しかし、あの子がこんな必死なのも珍しい……
「若葉ちゃんそんな焦らなくてもいいじゃない。もうちょっと小春お姉さんと遊ぼうよ」
「……やめて……っもう、胸は……!」
あ……そういやそうだった。見る余裕なかったけどあの子も大変だったんだろうね。
そしてサイコロを振った若葉の足音が近づき、丁度あたしのいる場所で止まった。
くく……あんたもこの脱衣ブリッジの苦しみ味わいな……ってあれ?……ということは?
「飛鳥ちゃん、こんにちは……」
あたしの視界に満面の邪悪な笑みが現れ……その瞬間、あたしの全身の力が抜け落ちた。
そしてその一分後、そこにはあたしの代わりにブリッジをする若葉と
……最後の一枚を脱がされすっぱだかになったあたしがいた。