うざったい暑さはいまだ勢いを増し猛暑となる。  
地球温暖化なんか信じちゃいないが、この気候は異常なんじゃないかと思ってしまう。  
自販機で炭酸飲料を買おうにもポケットに小銭は無く  
公共機関をぶらつくも給水機は見当たらず、さらに喉が乾く  
かといって家に帰れば受験勉強を強要する親が待ち構えている  
前の模試の結果がアレだし、せめて午後八時までは勉強してたことにしないと危うい  
いつも図書館で自習してたことにするのだが、満員で席の取り合いが勃発する図書館で寝るわけにもいかず  
今は午後二時、あと六時間 いかに過ごすか 本当に退屈で気怠くて やる気もせず  
ダラダラと俺は公園の日陰がかかるベンチで寝転がっていた。  
「明日も、また明日も、こんな日々が続くのか」  
 
今は七月十五日、未だ高校では夏休みは始まっていない  
そして彼が在籍「してた」高校も当然今日も授業は行われているが  
 
「あ〜、本当に学校やめなきゃ良かったわ。はぁー」  
 
諸事情で一学期の半ばで自主退学した彼は学校へ登校する必要は無いのであった  
一瞬自由になった気はしたが、両親は厳しく、かえって面倒臭い日々が待ち構えていたのであった。  
 
そのまま寝入り、少しの間彼は眠ったが、  
水分を摂取せず、汗をダラダラ流し、彼は脱水症状に陥っていた。  
もはや起き上がることもできず、しんどくも覚醒するが  
意識は朦朧とする  
「もうこのまま熱射病で死んでも良いぜ」  
そう思いながら彼は再び目をつぶり、彼の意識は暗い穴の底へと落ちて行った  
 
* * *  
 
ハッと目が覚める。  
心なしか風が止んだように感じる  
ベンチから起き上がって周りを見、時計を見ると、はて、未だ午後二時二十分である。  
時計は止まっていた。  
「ついにこの熱で時計までいかれやがったか」  
 
ひょいと起き上がった彼は涼むのと時間を確認しに近くのコンビニへと向かった。  
 
公園より五分たらずで到着した  
しかし自動ドアが開かない  
閉店か?と首をかしげるが中に客はいるようだ  
ぐぐっと力を込めて扉を開き、中に入る  
 
最低なことに冷房さえも停止していた。  
まだ余韻はあるが、暑くなるのは時間の問題である。  
 
そして中へ入るとすぐに俺は何かがおかしいのに気がついた。  
微動だにしない店員、微動だにしない客。  
ちょうどアイスをレジに差し出そうとしている女子高生  
エロ本コーナーで立ち読みしているおっさん  
皆微動だにせず、ただ静止している。  
 
そして針の動かない時計 しかし彼は覚醒し自由に動くことができる。  
 
「時間が止まった?」  
 
まるでSF小説のようだが、実際に彼らは微動だにしない。  
そして自分の頬をつねると これは夢で無いと気がつく  
 
「一体これは?暑さで幻覚でも見てるのか」  
 
そう思った彼は急いでトイレに行き、洗面台の水を飲む  
暑くほてった手や首や顔に水をぬろうとして、汗一粒もかいてないことに気がついた。  
 
「やっぱりこれは」  
 
どういうわけか彼をのぞき少なくともこの辺りの世界は時間が停止したのである。  
彼の感想としては「正直何を思ったらどうなのかわからない」と言うことである。  
 
とりあえず食料と水分や娯楽がいっぱいのコンビニでしばらく休むことにした  
 
目の山には食品の山、商品の山  
ここはもはや法や倫理、常識や他人の目に支配されることの無い空間なのだ  
そう悟ったもののなぜだろうか  
何もする気がしない  
ただドキドキする心臓と、新しい世界に対する期待とすぐに再び時間が動きだすのでは無いかと言う恐怖が胸の中でせめぎあっていた  
誰もが夢見る、「時間停止」  
その力を手に入れた  
いや、たまたま次元の狭間に挟まったのかも  
 
どっちにしてもラッキーなことには違いない  
ただ、普通なら許されないことをしてる最中に、突然動きだしたりするのは困る  
商品が山のようにあるコンビニの中に居るのだが、どうしてか腹は空こうとも取って食べることができない  
この世界に慣れるまでには時間がかかるようだ  
 
人間としての理性でなく、獣としての本能が、この急激な変化に警戒している  
そして理性はこの時間停止の理由を探るべく情報を求めていた  
食品コーナーから雑誌コーナーへ移動する  
横にある新聞の中でも、字の小さな経済新聞を取り出す  
しばし一面を眺める  
パラパラ開き見出しのみを読んでみる  
そして記事の文頭を拾う  
時間が静止している異常事態に対する肉体の緊張感  
知性、権威ある新聞紙に触れ、紙の匂いを嗅ぐ  
「そうだ」  
まずは精神的に落ち着かなくては  
 
そのためにはまずは全身を弛緩させ、緊張を解くことだ  
自分の大脳の目を覚ませた新聞を床に置き、目をつぶる  
 
そして肩の力を抜き、ゆっくりと腰を降ろす  
ちょっとためらってそのままコンビニの床にことんと座り込み、  
次にほんのちょっとだけためらって背中を倒し床に寝転がった  
 
そうして息を思い切り吸い込む  
 
息を止める。  
、  
、  
 
息を全て吐き出す  
 
また息を止める  
、  
、  
 
また息を吸い込む  
 
そうして精神の活性を胎児のレベルまで下げる  
だらんと、力を抜いた手足は段々固くなってきた  
体が暑くなってゆくようだ  
そして台風のような回転を伴う気流の音を聞く  
そうしている内に全身は石の中に閉じ込められた  
、  
、  
、  
 
そのまま息をしようとして  
息が止まってることに気づく  
息苦しいことに気づく  
汗をだくだくとかく  
全身がむずかゆい  
僅かにも体は動かない  
俺は自分が死んだことに気が付いた  
 
一切体が動きやしない  
そして音も聞こえない 身体は感じるが  
息もせず 寝転がっている  
 
そよ風を感じ、段々暗くなってゆく  
 
あたりは緑があるようだ  
暗くなってゆく視界 閉じてゆく世界  
固まった体に閉じ込められた精神は死んでゆく  
 
「ああ・・・ 自分自身が」  
消えてゆく  
自分自身を観測する自分自身が消えゆく  
 
 
 
・  
 
 
・  
 
 
うだるように暑い夏  
 
ダラダラ書いた汗は俺の背中を塗らし  
シャツがベッタリ背中に張り付いている  
ふと気づくと俺は先のベンチに寝ていた  
 
立ち上がろうとして体が硬直していることに気が付いた  
必死に全身を動かすも体は応じず  
さらに体は汗をかく  
しかし汗を書いてるにもかかわらず 体は冷たくなってゆく  
 
なぜだか自分の命が尽きるような気がした  
 
高層ビルのちょうど一階から自分の体が地面にのめりこむように  
 
自分の精神は穴へ落ちてゆく  
 
 
「先輩?」  
 
誰かの声を聞いた気がした  
「先輩大丈夫ですか?」  
 
そう彼女の声がはっきり聞こえる  
そして彼女は俺の肩を左右にさすり、  
固い俺の腕を取ろうとして間接の異様な固さに驚く  
その間接を曲げようとするのを諦め、俺の手首に手を当て脈を取った  
どくん、どくんと遅く深い脈、青い唇  
 
すぐに熱射病と判断した彼女は鞄から氷を取り出し俺の首に当て  
次に水筒のお茶を口に含み霧のように俺の全身に吹き掛けた  
 
指先から解凍された俺の体は少々痛むが多少は動くようになった  
 
何度か喉を動かして、「ああ、助かったわ。死ぬとこだった」と言うことができた  
 
熱射病か  
 
まだ油断できないからとにかく休ませようとする彼女の計らいで  
俺は彼女の家に行くことになった  
 
正直まだ死にかけだから言葉に甘えることにした  
 

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