(どうしてこんなことに……?)  
私は、今、幼馴染の夕君と物置小屋に、二人っきりで居た。  
しかも夕君は私に覆いかぶさってマジでヤバイ体制だった。  
「どうする? このままオレにヤラれちゃうか」  
「い、イヤ」  
「ふーんなら、外に出る?」  
「そ、それもイヤ」  
「全く、ワガママだなひーちゃんは」  
息が掛かるほど近くで、夕兄はニヤリと笑う。  
今、この小屋から出て行けるはずも無いと分かっているくせに……。意地悪だ。  
 
私は小さい頃におばあちゃんのいるこの村に住んでいた。  
中学生になってから、親の都合で村から引っ越したけど。高校生になった今、久しぶりに帰ってきたらこの村は「祭」の最中だった。  
小さい頃は分からなかった「祭」それは、遙か昔から続く風習で。なんと、今時夜這いの習慣があるというものだった。  
「祭」の期間中に、16歳以上の女、18歳以上の男が、夜外にでたらそれは祭りに参加する合図。  
「祭」に参加したくなければ家から出なければいい。  
私はそれを知らずに、夜、蛍を見るためにうかつに外に出て、好色そうな目をした男に襲われそうになった時、幼馴染のお兄ちゃんの夕君に助けられた。  
小屋に隠れたときはとてもほっとしたのに、助けてくれたハズの夕兄からいきなり今日の祭の本当の意味を聞かされ、二択を迫られている。  
ここで夕君に抱かれるか、それとも拒否して外に居る誰かわからない男に抱かれるか。  
「ゆ、夕兄がそんな事しないっていう選択肢は無いの?」  
「ないね。この祭に参加して女抱かなかったら、村の男衆に何言われるか……」  
「そ、そんな……」  
幼馴染の夕兄は初恋の人だ。  
こう、ムードのある誘い方なら……あるいはぐらりっときてたかもしれないけど。  
そんな言い方されると、絶対、イヤだ。  
というか、初恋の人の変貌に凄く幻滅してしまう。  
昔は頼りがいのある、優しいお兄ちゃんだったのに。  
 
「そんなにオレに抱かれるのが嫌なのか?」  
「……」  
「分かった、じゃあ返事はいらない」  
「!!」  
そう言うなり夕兄は私を押し倒す。胸を押し返すけれどびくともしない、男の人の力に怖くなる。  
夕兄は、私のTシャツを胸までめくり上げるとブラを無理やりずらす。  
外気に晒されその頂はつんと反り立っていて、夕兄の視線に堪らなくなる。  
「いやぁ……! み、見ないでよ」  
「別にオレがイヤだって言うんだったら、帰ってもいいよ。  
 その代わり、他の男共に、ここにひーちゃんがいるって教えるけど?」  
「っ!!」  
「どうする? 一人で済むかな?」  
「……ヒド……い」  
「相変わらず、泣き虫だなぁひーちゃんは」  
どうしようもない選択を突きつけられて、私は思わず涙がこぼれた。その涙を、夕兄は舌でなぞる。ぞくりとした。  
(どうしよう、私、こんなムリヤリなのに……感じて……る?!)  
この脅されてムリヤリ……な状況が、私を現実味の無い倒錯的な雰囲気に飲み込む。  
 
「さ、OKだったら、自分で足開いて?」  
 
夕兄のその悪魔の台詞に、私は従えばいいのか、逆らえばいいのか……。  
 
 
 
毎年行われる、この村独特の祭りに、オレは興味が無かったといえば嘘になる。  
しかし、どうしても参加する気力がわかなくて参加資格が得られた年になっても、数ある「予約(誘い)」をよけてまで、参加しなかった。  
しかし、今年は特別だ。ひーちゃんが帰ってきたのだ。  
彼女は小さい頃、引っ越して行った幼馴染だ。  
泣き虫で、事あるごとにオレを頼るその姿が可愛くて、オレには大事だった。  
大きくなっても相変わらず可愛くて……泣いたらもっと可愛いんだと思う。  
 
ひーちゃんは小さい頃この村を離れたので、この村の祭りのことを知らない。  
村の男がオレの目を盗んで蛍の話をしていたのが、嫌な予感がして祭の夜ひーちゃんの家の近くに行く。  
すると案の定、男がひーちゃんを襲おうと、彼女の腕を引っ張って茂みに連れ込もうとしていた。  
見た瞬間、俺は頭に血が上るよりも早く容赦なく男に蹴りを入れる。  
先にひーちゃんを逃がすと、倒れている男にオレは無表情でこういった。  
「お前、重大なルール違反だな」  
時折、「祭」のルールを破る男は出てくる。  
この「祭」で強姦は許されない。  
いつもなら呆れて見てるだけ。けれどひーちゃんがその相手というのなら別だ。  
「うっ、待ってくれ」  
「死ねよ」  
鳩尾に容赦なく、畳み掛けるように蹴りを入れたあと、ひーちゃんを追いかける。  
追っ手から逃げ隠れするように見せかけて小屋に入った。  
ひーちゃんは蒼白な顔をしている。けれど泣いては居ない。すがるようにオレを見つめてくる。  
オレは嗜虐心をそそられて、この村の「祭」の事をひーちゃんに殆ど話した。  
案の定、彼女の目は不安に塗りつぶされる。  
 
その目でオレを頼って欲しい。  
その一心でオレは彼女を追い詰めた。  
 
この村の「祭」には男女ともに「拒否権」があることが知らない彼女に、  
羞恥でどうしようもなく追い詰められ、  
おかしくなってしまいそうな彼女に、  
頼られたい。  
 
一応、彼女に選択肢はあるのだから……これは和姦だ。  
そりゃあ多少、本当の事を隠したり、強引だけれど、全てはひーちゃんを好きな愚かな男の足掻き。  
オレに抱かれるよりも、不特定多数と関係を持つほうがマシだと思うのなら、オレは諦められる。  
笑って、冗談だといって……この「祭」の全てを話すだろう。  
その天秤に掛けるものが、不条理だということには目をつぶって。  
 
おそるおそる、足を開く彼女に喜びを抑えきれず、オレは下着も取るように「お願い」した。  
彼女は許してと、瞳ですがってくる。  
でも、もっともっと縋られたいオレはそれを許さない。  
彼女の白い肌は羞恥の為に真っ赤に染まり、胸の先端ははち切れんばかりに勃起していた。  
下着の大事なところが隠されている場所を射るように見つめると、その視線を受けて段々と染みがにじんでくる。  
 
「こっちの口は、食べたくて涎まみれみたいだけどね?」  
「ちがっ……!!」  
「じゃあ、ひーちゃんはいい年してお漏らししちゃうのかな」  
「……も、許して……ぇぁ!?」  
 
開脚している足を閉じようとしたので、俺は無理矢理体をはさんで足を閉じれなくする。  
彼女が恥ずかしさのあまり顔を手で隠そうとするので、両手を片手で纏め上げると、  
なおも彼女は顔を隠そうと横を向く、そのそらす顔にオレはぞくぞくするが、  
上を脱がして見つめるだけで、ここまで濡れているなら、彼女は処女じゃないのか?  
彼女の前の男に嫉妬する。彼女にこんな風に見つめられて、縋られた男がオレ以外に居るなんて。  
 
オレは言葉で、視線で、追い詰めるだけで、ひーちゃんの感じそうな箇所にはけして触らなかった。  
意図せずオレの着ているシャツが、ひーちゃんの胸に微かに当たるたびに、彼女は色っぽい声を洩らす。どうやら胸が弱いらしい。  
そしてオレの上半身が少しでも動くと、彼女の太ももの内側を撫でることになり、益々下着に染みが広がっていく。  
「ここ、触って欲しいだろう?」  
「……欲しくない……よ」  
「何人に触らせたの?」  
聞きたいのは彼氏は居るの? って事なのにオレは自然と彼女を追い詰める聞き方になる。  
「さ、触らせてない、よ……わ、私初めて、だもんっ!」  
「じゃあ何で、こんなに濡れてるんだ? ひーちゃんエッチな子? もしかして自分で触ってた?」  
初めて、と恥らっていうひーちゃんに、オレはニヤけるほどの嬉しさを隠して。  
「そんなところは、触って、ないっ……!!」  
「は、って事は、違うところは触ってたんだ?」  
「!!」  
図星を指されたように、涙目を見開く彼女。でも言い逃れは出来ないとわかってか、いいにくそうにオレに教える。  
「……胸、は触って、た」  
彼女の顔が言わなきゃ良かったと、恥ずかしさと後悔で歪む。でも、もうオレは彼女の恥ずかしい秘密を知ってしまった。  
男と違って、女の子のそんな秘密は……誰にも知られたくない、恥ずかしさだろう。彼女の今の心境に言いようもなくそそられる。  
「やっぱりエッチだね。誰のこと、考えてオナニーしてた?」  
ひーちゃんの恥ずかしい秘密を全部知りたい。知られて恥ずかしがって、身の置き所がない彼女をもっと見たい。  
「好きな男とか?」  
「し、知らないっ……あっ……んっ……は」  
オレは胸の頂と秘所……強い快感を与えそうな場所を敢えて触らずに、周辺を必要なまでに弄んだ。  
絶頂を迎えさせないように触っているので、ひーちゃんはもどかしくて堪らないと言ったような顔をする。  
オレも堪らない。たまらないけれども、それよりもひーちゃんが言いたくない台詞を「言わせる」ことに執心した。  
嬌声と表情を頼りに、彼女の感じる場所を……羞恥を感じる言葉を、探り当てていく。  
 
「もう、ダメ。お願いだからぁっ……夕兄っ……」  
「何?」  
感じすぎて、でも絶頂を迎えられない震える目で、これ以上もないぐらいに縋られてオレは満足する。  
オレもそろそろ我慢の限界だった。でも、もう一押し。  
「ちゃんと、言ってくれないと分からないよ」  
「……意地悪しない、で」  
「だから、何が意地悪?」  
言いたい事は分かっているけれど、執拗に聞き返す。  
何度かの余裕のない押し問答のうちに、先に根をあげたのは期待を裏切らずひーちゃんだった。  
普通の状態なら言えない卑猥な言葉で、オレを求めさせる。  
震える睫も……怖がって躊躇いがちに抱きつく手も、何もかも想像以上の痴態に昂りが収まらずに有頂天になる。  
オレはその求めに応じるフリをして、まんまと彼女を犯した。  
何度も何度もイカされて、気絶したひーちゃんを見ながら。「祭」が終わっても関係を続けるようにするにはどうしたらいいのかと考え。  
オレは携帯電話を取り出すと、ほくそ笑んだ。  
 

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