とある地方にあるK村の行事だ。涼しい風に吹かれた一面の稲穂が金色に波打つ季節になると、豊穣祭――いわゆる、収穫祭の前祝いのようなものが催される。  
 その村はある伝説がある。何百年も昔から伝わる話だ。 
かつてその村が飢饉にみまわれたことがあった。農業を主産業とし、自給自足の生活を営んでいたその村は、ひとたび飢饉が起これば壊滅的な被害を受けてしまう。  
そのようなことは何度かあったが、蓄えを食いつないでどうにかやり過ごしてきたのだ。  
しかし、その年は異常な冷夏に加え、代替わりしたばかりの領主が税率を極端に上げたこともあって、わずかな蓄えすらも失った村民は生きる術を失ってしまったのだった。  
 餓死者が増加の一途を辿る中、1人の若い青年が婚約者の亡骸を連れて「穣(みのり)の姫」と呼ばれる姫が祀られている祠へ願掛けをしに行ったという。  
 青年の名は小太郎。青年は近隣に住む村娘との祝言を控えていたが、娘の両親は飢餓に倒れ、明朝には娘自身の命も尽きてしまった。  
小太郎はたいそう悲しみ、不思議な力で枯れた大地を肥やし、あらゆる作物を実らせたという言い伝えがある穣の姫の祠にやってきたのだった。  
 
「今度の飢饉はひどい。両親兄妹に続き、私は婚約者の絹子までも失ってしまった。穣の姫よ、もしこの村の惨状を知っているなら、どうか我々を助けてくれ」  
 小太郎がそう祈ると、ふいに祠が光りだし、光の中から誰かが現れた。それはそれは美しい女性の姿だった。  
 「あなたが穣の姫か」  
 「その通りです」  
 「ならば、この村を救ってくれ」  
 「できません。私はとうに死んだ身。生前ならばどうにかなりもしましたが、今の私にこの状況をどうにかできる程の力はございません」  
 その言葉を聞き、小太郎はひどく落胆する。  
 「しかし、生身の身体があるのならばどうにかなりましょう。その娘の身体を貸していただけるのならば、今年だけは乗り切らせてみせましょう」  
 
 穣の姫が指していたのは、小太郎の胸に抱かれた、やせ細って命の尽きた絹子の身体だった。  
 小太郎は許嫁の身体を預けるのに少しの間逡巡したが、やがて頷くと、穣の姫は光を放って絹子の身体に吸い込まれていった。  
 すると驚くことに、みるみるうちに痩せこけた絹子の肢体が元の瑞々しい張りを戻し、女性らしく肉付きのよい健康的な姿になっていたのだった。  
 「絹子、生き返ったのか!」  
 男はひどく喜んだ。すぐに  
 「いいえ、私は穣の姫です」と返されて表情が翳ったが、姫は気に介すことなく  
 「これから豊穣の儀式を始めます。しかし、私がこの姿でいられる時間には限りがあります。そしてこの儀式はひとりではできません。貴方にも手伝ってもらいます」  
 と言った。  
 「う、うむ。私は何をすればいいのだ」  
 
 男がそう言うと、なんと姫はしゅるしゅると身に纏っていたものを脱ぎだしたのだ。  
 男は目を見開いていたく驚いた。  
今穣の姫は男の許嫁の姿をしているのだ。  
男女の区別のない幼い頃ならともかく、男は女性のやわ肌なぞを見たことはなかったし、婚前交渉などもってのほかだ。  
それが、真っ昼間の屋外で婚約者が肌を晒しているのだ。  
姫は男が何かを言おうとする前に自分の股に手を当てて口を開いた。  
 
 「貴方には私の陰核を、ああ分かりますか、ここの赤くぷっくりと膨れたところです。  
顔を逸らさないで見てください。  
この身体の持ち主はもう十八になる頃でしょうが、全く毛が生えていないからよく分かると思います。  
貴方には私の陰核を刺激して貰います。  
身体が動かないように手足を縛り、貴方の指を、舌を、歯を、持ち得る全てを使って刺激してください。  
刺激が十分に満たされた時、私の身体は絶頂を迎えます。それが私の豊穣の力の源になります」  
 一気にそうまくしたてられ、男は何も言えずに姫の言葉を聞くしかなかった。  
 「この村で作られているのは稲ですね。 
水田ひとつに米を実らせるのに、八十八回、私を絶頂させてください。  
ただし先ほども申した通り、私にはあまり時間がありません。  
豊穣の力で陰核の感度はできる限り敏感にしていますが、この身体はいわば借り物です。  
包皮を剥いて軽く擦れば簡単に達してしまうでしょうが、それでも本来の私には遠く及びませんし、  
なによりこの村の全ての水田を実らせるのだから、これより七日七晩、 
貴方は食事と睡眠以外の時間を全て陰核を刺激するのに割くことになります。  
よろしいですね」  
 
 小太郎はまず、穣の姫の言うままに柔らかな草の褥に(絹子の身体をした)姫を寝かせ、足を開かせた。  
すると姫は不思議な力を使い、どこからか光の鎖を出現させ、自らの手を縛り、足を開いたままで固定させた。  
これは、刺激を受けたときに身体を捩ることにより快楽が拡散され逃げてしまうことを防ぐためだ。  
 「そんなに見つめないで下さい」  
 姫がそう言うが、小太郎は開いた股の間にある女の部分をまじまじと見つめたまま、感嘆の息を漏らしているだけだった。  
好いた女の、もっとも大切な部分だ。  
 扇情的な鎖骨の下から可愛らしい膝小僧の上まで、決して太陽に晒されるはずのない領域であり、張りのある豊かな乳房の、ピンと立った頂点部、よく通った臍の下、白く瑞々しい太もも、いかにも女性的な腰つきが小太郎の欲情を駆り立てる。  
が、なにより幼女のように全く茂りのない密やかな割れ目と、それとは対照的に、充血し覆いをどかして膨れ上がった秘芽に目を奪われる。  
 
好奇心からそっと手で触れてみると  
 「あっ、あああああ!!!!」  
 女性経験など皆無の小太郎であるが、そんなことはお構いなしに嬌声を上げる姫。  
 ほんの少し触っただけでこれなのだから小太郎は驚いた。が、  
 「ま、まだ絶頂には、達していませんよ……」と姫。  
 それならばと、陰核をきゅっと摘むと、先ほどよりも大きな嬌声を上げて姫の身体がビクリ!と震えた。  
 今のが絶頂だろうか。吐息の漏れる姫をみるに、これで一度の絶頂に達したということでよいのだろう。  
本当に軽く摘んだだけだというのに、凄まじい反応だ。  
 これならば、と小太郎は本腰を入れて刺激し始めた。  
 
 中指と親指で陰核を挟むように擦り合わせながら、時折挟む指に力を入れてみたり、開いた人指し指の爪で引っ掻いてみたりすると、それだけで容易にイってしまった。  
その度に尋常ではない快楽と絶頂による痙攣や嬌声に襲われる姫が気にかかったが、姫は「心配するな」とのこと。  
生前、十になる頃にこの能力に目覚めて以来、この飢饉に見舞われた各地を巡って豊穣の儀式を行っていたらしく、  
陰核への刺激によって一日に千や二千の絶頂は日常茶飯事だったようだ。  
 四半刻も過ぎぬうちに姫は八十八回目の絶頂を迎え、言葉通り一日ニ千回以上の絶頂を見せ、七日では計2万回にも達した。  
 このことにより、村の水田には一面の稲穂が現れ、今までにない収穫量を見せたという。  
 それを見届けた穣の姫には知らぬ間にどこかへ消えてしまったが、姫の豊穣の力の影響を受けた絹子は生き返り、小太郎と添い遂げて幸せな生涯を送ったという。  
 
 
こういう謂われがあるので、K村では毎年この季節になると、若くて仲の良い未婚のカップル1組が、  
村の外れの穣の姫の祠の前で、八十八回の絶頂に達するまで陰核を愛撫し続けるという風習があるのだ。  
それとは別に、自宅の神棚に穣の姫を祭り、その前で各々恋人や夫婦で行っていたりもする。  
抜擢された恋人達は、農業と子宝に恵まれるといわれており、現代になってもなお受け継がれている神聖な行事である。  
今年も、若いくて初々しいカップルが選ばれたらしい。  
まもなく、豊穣の儀式の始まりである。  
 
 
つづかない  
 

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