人里離れた森の中、辛うじて住居と呼べる小屋がある。
森の中と言っても麓に近く、夜以外は明るくて野犬が出るわけでもない。
だがそこの住人が『自称天才魔術師』の変人で、余程の事でもない限り人が寄り付かなくなっていた。
そんな小屋の部屋の中、薄明かりの下で二つの影が揺れていた。
「もう……止めて下さい、マスター……!」
拘束の陣が敷かれた床に押し倒され、青年――と呼ぶには少し幼い少年は、すっかり息を荒げていた。
マスターと呼ばれた女は動きを止めると少年を睨みつけ、彼の胸ぐらをぐっと掴む。
炎のように赤い瞳の冷たい視線が少年に刺さる。
普段は手を上げる事のない主人の暴力的な行動に、少年は思わず震え上がった。
「使い魔のくせに、指図する気……?」
どちらのものともつかない息遣いの中、主人は使い魔を乱暴に扱う。
少年は藍色の瞳を歪めながらも頬が赤く染まったまま。
彼女はそれを見ると口元を吊り上げるように笑った。
「あんたはあたしを満足させる義務がある……そうでしょ?」
主人である女は意地悪そうに笑う。反抗する事の許されない少年は二の句が継げない。
その反応を見て彼女はゆっくり腰を沈め、再び行為に没頭し始めた。
拘束にも主人にも逆らう事は出来ず、少年はただ快感に耐える事しか出来なかった。
跨られて火照った顔で腰を振られて視覚を犯され、荒い息遣いや喘ぎが聴覚を犯す。
与えられる全ての感覚に耐え続けるのは最早限界だった。
「マスター、もう……やめっ……!」
「うる、さい……っ」
「こういう事は、マスターの……大事な方とするべきです……!」
「うるさいっ!あたしに……指図、するなっ!」
下僕の言葉に一瞬顔をしかめたが、それを振り払うかのように一層激しく体を揺らす。
耐えきれなくなったものが爆発するように放たれ、それを追うように彼女も果てた。
少年の体に体重を預けて呼吸を整え、上体を起こして主人である自分を何度も止めようとした使い魔を見下ろす。
だいぶ消耗したのか意識を失っているようで、肩で息をしながらぐったりとしていた。
「大事なやつとする事、か……」
偶然喚び出されただけのくせに何でそんな事を言うのだろう。本当に生意気だ。
そう思いながら少し頬を膨らませ、再び少年の体に身を預けた。
「……気付け、バーカ」