「わたしのゆめは、けーきやさんになります。
いちごや、めろんや、りんごをのせます。
ちーずけーきもできます。
いっぱいたべられるからなりたいです。
くらすのみんながくるおみせにしたいです。
おわり」
「よくできました、輝ちゃん。お店が出来たら招待してね?」
「うん! いっぱいごちそうするよ!」
「うふふ、たのしみねー」
「うん! あきらもたのしみ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ん・・・・・・」
珍しい。自分だけで起きられた。
隣ではメグミが寝息を立てている。げ、まだ5時じゃん。
まぁいいや。今日の朝飯はアタシが作ってやろう。きっと驚くぞ。
メグミを起こさないよう立ち上がり、キッチンへ向かう。
なんだか、懐かしい夢を見た気がする。
「ケーキ屋、ね」
笑わせる。
『貫殺天使リア』
14.甘い少女
――1年B組
「じゃあ、ネコミミメイドとネコミミお化け、ネコミミシンデレラに決定だね」
「うぅ・・・・・・。なんでこんなことに・・・・・・」
7時間目、ロングホームルーム。
文化祭の衣装の話だ。
「雰囲気としては、お祭りみたいな装飾をした店内、出すものはケーキと牛乳とたこ焼き、
ウェイトレスの格好はさっき言った奴ってことで」
「わけがわからない・・・・・・。衣装とかはそっちチームが負担でいいんだよね?」
「そ。食べ物はリアちゃんチーム、装飾は千崎さんのチーム」
出し物が決まってから2週間。だいたいのものが決まってきた。
衣装のデザインは書き始めているらしいし、装飾も考えられているとのこと。
「牛乳は萩さんの家が安く仕入れてくれるって。土御門さんの家からもオーケーもらったし・・・・・・。
あぁ、カナエが絶対必要だって言ってるケーキ屋に今日行ってみるつもり」
「お願いするよ。あ、販売価格とかも決めといてね」
「はいはあーい」
最初は嫌だったこの仕事も、けっこう楽しくなってきた。
文化祭まで、あと3週間。
楽しい日に、したいな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――ケーキ屋『Fragola e Crema』
カナエに連れてこられた、ケーキ屋さん。綴りが英語でもドイツ語でもないからなんて意味なのかわからない。
「ここだよぉ〜。ここのケーキがおいしぃんだ!」
「まぁとりあえず話だけでもしてみよう・・・・・・」
るーあちゃんや萩さん、津南くんみたいな頼れる人たちは、委員会に部活に係の居残り。
突撃はカナエとわたしだけ。
・・・・・・。
超不安。
「おじゃましま〜す!」
「あ! ちょ、ちょっとまって!」
からんからん、と扉のベルを鳴らして入っていく。う、謎の緊張が・・・・・・。
「いらっしゃいませ♪ 今日も来てくれたんだ!」
お、なんだか柔らかそうな雰囲気。でもなんか聞いたことある声・・・・・・。
「うん! しかも友達つきです!」
「お、おじゃましま〜す」
「は〜い♪」
からんからん。入店。
そこには、
少し茶髪の入った髪を長めのショートにして、
ピンクのふりふりエプロンをして、
とても柔らかな満面の笑みをした、
アキラさん。
「ぶふー!!」
「り、リ、リ、リアちゃん!? なんでてめぇ、ここに!」
「それはこっちの台詞ぶふー! なんでここにげほっ、げほっ!」
「笑いすぎだ! いいだろこんぐらい!」
だめだ、見るだけで笑ってしまう・・・・・・!
からんからん。
「おじゃましまーす」
「おっと、いらっしゃいませー♪」
「ぶふー!!」
「わらうなー!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なるほどね・・・・・・。それでここに協力してもらいたいと」
「はい・・・・・・っ。で、できればっ、来週中までに返事を頂きたいんですけど・・・・・・っっ」
笑うな。耐えろわたし。
ここに来た目的を(笑いながら)伝えて、今この状況。わたしたちを巡り合わせた張本人は今、
店のカフェルームでケーキをむさぼっている。
アキラさんのバイト。
ケーキ屋さん。
・・・・・・にあわな!
「ちょっと待ってろ・・・・・・。店長に聞いてくる」
「お願いします・・・・・・。げふっ」
「てめぇ、覚えとけよ・・・・・・」
そう言って店の奥に消えるアキラさん。なんだアレ。超かわいい。
かーわーいーいー。
少したって、奥からアキラさんと女の人が出てきた。23くらいかな。若い。
「この娘?」
「はい」
話は通してくれたみたいだ。感謝感謝。
「高校の文化祭だったかしら?」
「はい。そこで、ここのお店のケーキを使わせていただきたくて」
「いいわよ。ついでにいっぱい宣伝してちょうだい?」
「ほんとうですか!? ありがとうございます!」
いい人だ! さすが大人の女!
「おー、よかったな、リアちゃん」
「ふふ、アキラちゃんのお友達だもの。無下に扱うわけにいかないわ」
・・・・・・いまなんといった?
「て、店長、それは呼ばないでって・・・・・・」
「アキラちゃ・・・・・・アキラちゃん・・・・・・」
いかん。腹筋が痛い。
「あぁもう! 笑うなこのロリっ娘ー!」
「ぶはっ! やっぱだめです! アキラちゃん! あはははは!」
「あらあら、にぎやかなお友達ね〜♪」
「次のケーキどれにしようかな〜」
姦しい時間は、ゆっくりと過ぎていく・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おじゃましました〜」
「じゃあ、また来週来ますね」
「おう、帰れ帰れ」
「ふふ、またね〜」
ようやく帰った・・・・・・。くそ、なんつー失敗だ・・・・・・。
「てか店長も、あそこまでいろいろ話さないでくださいよ」
「だってアキラちゃんのお友達に会えて嬉しかったんですもの」
この人、アタシのバイトはじめの頃の失敗だのなんだのをリアちゃんに吹き込んでいきやがった。
「それじゃ、私は仕込みを続けるわね。あと30分、がんばって」
「ふーい」
ふんふんと楽しそうに厨房に消えていく店長。20代の見た目に反して、なんと30歳。
わけえ。
「そうだ、リアちゃんに口止めしとかないと・・・・・・」
メグミに知られるのは嫌だ。絶対笑ってくる。ケータイはたしか裏に・・・・・・。
からんからん。おっと客だ。笑顔笑顔。
「いらっしゃいませ〜♪」
「・・・・・・アキラ?」
「・・・・・・メグミ、おねえさまぁ・・・・・・」
もうやだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日、4時頃。
ここはカフェ形式のお店なので、幼稚園帰りのママさんたちが子供を連れてやってくる。
昼とあわせて、けっこう忙しい時間だ。
『えとね、こえと、こえと、こえ!』
『もう、そんなに食べられないでしょ? 店員さん、イチゴショートとチョコティラミスをお願いします』
「はい、ショートとティラミスですね」
まぁ忙しいといってもこの立地、都会ほど人はいない。せいぜい4組ほどだ。
「あ、ショートは少し待ってもらっていいですか? 今、できたてのが・・・・・・」
「はいアキラちゃん、新しいの」
「ありがとうございます、店長」
奥から運ばれてきたケーキをトレイに乗せる。園児の目が輝いた。
「わぁ〜、すごい! おかあさん! みうもおっきくなったらおねーさんみたいなけーきやさんになる!」
「あら美優、いい夢ね。お母さん楽しみ」
ケーキ屋さん、か。たしかアタシの小さい頃の夢もそんな感じだったな。
「はは、嬉しいね。そうだ美優ちゃん、これあげるよ」
「!! ありがとおねーさん!」
渡したあめ玉に素直に喜ぶ美優ちゃん。ここの常連さんだ。
席について、楽しそうにケーキを頬張る少女。
いいな――――
「うらやましい、な」
ちょっとだけ、そう思った。
少しだけ、そう思った。
――4年前、岩手のある町
どしゃああ!
「逃げて!」
「ひぃ、ひぃぃぃ・・・・・・」
アキラがまだただの中学生だった頃。
アキラの町に、5体のデスパイアが襲来した。
B級中型、ソードマンティス。両手に鋭い刃をもつ昆虫デスパイア。
それが、アキラの目の前に現れた。
腰を抜かし脅えるアキラに、助けにやってきた天使が逃亡を促す。
しかし、恐怖に身がすくみアキラは動くことが出来ない。
「くっそ・・・・・・でやぁ!」
「ぎぎぎぎぎ!」
たったひとり、戦う天使。武器は己の拳。あまりに分が悪く、あまりに数が足りなかった。
どしゅ!
「はぁぅ!」
4体目を倒したとき、背中に一閃、斬りつけられる。血しぶきがとびちる。障壁はその鎌の前に用をなさなかった。
自らの負けを悟る天使。このデスパイアは卵を植えた後両手足を刈り取る。そうなれば万に一つも勝機はない。
「あなた・・・・・・これを!」
震える手で水晶をアキラに投げる。変身がとけ、無防備な姿になる。
「行って! そしてお願い、こいつらから人々を守って!」
それは、少女になにかを感じた天使からの、プレゼント。
必死に逃げるアキラ。逃げて逃げて、逃げて。空の色が変わるまで逃げて。
それから2日後、アキラはもう一度あの場所に戻ってきた。
返そう。あの人ならきっとここで待っている。
そんな拙い希望を抱いて。
そこでアキラが見たのは、カマキリののど笛に噛みつき相打ちとなった天使の姿。
その時、彼女はなにかを決意した。
のそり、と影から大きな蛇が出てくる。
「――――変身」
茶髪の入った髪をポニーテールにまとめ、長ラン長スカート胸にはサラシ。
年は14、日本刀を手に持つ、断楼天使アキラ。
彼女は、その瞬間誕生した。
また、彼女の普通の日々は、そこで途絶えた。
――隣県、海岸付近の家
「ふーんふんふんふふんふーん♪」
湯船につかり、くつろぐ少女。
年の頃は14。背伸びをしたい年頃だ。
「ふふんふふふふんふふふふふーん♪ ん・・・・・・ん」
なんとなく、
この頃読んだ雑誌に書いてあった、女の子の自慰。
実は、親のいない日に何度か試している。
そして、今も親はいない。
「ん・・・・・・」
そろ、と指を膨らんできた胸に伸ばす。いちばんのソコは、もっと待ってからだ。
「ん・・・・・・んん・・・・・・」
ゆっくりと、焦らすように。自分の身体は自分がもっともよく知っている。
少女は気づかない。
給油口から、薄い青色の粘体がにじみ出してくるのを。
「んあ・・・・・・はぁん・・・・・・」
充分身体は高まってきた。待ちかねたソコへ手を伸ばす。
にゅるん。
「・・・・・・え?」
のばしかけた手に予想外の感触。
「え、なに、これ・・・・・・」
閉じていた目を開くと、そこは一面の青。
「ひぃ・・・・・・んんん!?」
にゅるにゅるとした動きからは考えられないほどの早さで少女の身体を包むスライム。
少女の手の代わりに、じっとりと熟れた小豆に刺激を与える。
「んん・・・・・・んんんーーー!!」
あっけなく達する少女。一度絶頂を覚えさせればもはや障害はない。
開きかけている穴に、ずるずると軟体を注ぎ入れていく。処女膜も溶かして進む。
「んん、んんんーーー!!!」
2度目の絶頂。どうやらこの娘は中の振動に弱いらしい。
ぶるぶると軟体を震わせながら、子宮口にたどり着いたスライム。
ずずず!
「んん! んんーーー!」
何度目かわからない絶頂を迎えた少女。自分の身体は自分がよく知っているなど、戯れ言であったことをその身で知る。
スライムは、止まらない。
あの台風の日のように、あの天使から奪ったものと同じものを探し求める。
みつけた。
そのスライムの被害は、同地区の同じ時間帯に風呂にいた女性全てが受けるものとなった。
――日本海溝の底
それは集めた。極上の素材たちを。
ここから、作り上げる。最強の存在。自身をも越える魔物の王。
白く、大きな巨体を蠢かせ、それは実験に着手する。
ヒトのデスパイアを、作る。
甘い少女.end